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保育士の給料が安いのは本当に当たり前?理由や年収の実態、改善策を解説

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低年収と書かれた付箋を貼りつけられた給与明細

保育士として働く中で、「なぜこんなに給料が低いのだろう?」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。保育士の給料が低く抑えられてきた背景には、専門性が十分に評価されていないことや、業界特有の構造的な問題があります。この記事では、「保育士の給料が安いのは当たり前」と思われる理由や実際の年収、全産業との比較を解説します。給料アップのポイントも紹介するので、働き方を見直す際の参考にしてみてください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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「保育士の給料が安いのは当たり前」はおかしい

「保育士の給料が安いのは当たり前」といった意見が一部で見られますが、これは誤った認識です。保育士は子どもの成長と安全を支える専門職であり、責任の重さや必要なスキルを考慮すれば、適正な報酬が支払われるべき職業です。

保育士の仕事は、単に子どもを見守るだけではありません。年齢や発達に合わせた保育計画の作成や行事・製作物の準備、保護者との連携など、多岐にわたる業務を日々こなしています。また、急な体調不良やトラブルのように、子どもに関する緊急対応も求められ、瞬時の判断力や対応力が欠かせません。

子どもたちの未来を育む保育士が安心して仕事を続けるには、「給料が安くて当たり前」という古い価値観を社会全体で見直す必要があるでしょう。

「保育士の給料が安いのは当たり前」と思われる理由

ここでは、「保育士の給料が安いのは当たり前」という認識が世間で広まっている理由について解説します。

専門性が低い仕事だと軽視されている

「保育士の給料が安いのは当たり前」と考えられている背景には、保育士の仕事の専門性や社会における重要性が正しく理解されていない現状があります。身近な存在であるがゆえに、家庭での育児と同じような業務だと誤解されることも少なくありません。

また、人の役に立つための仕事というイメージも強く、やりがいや使命感で成り立っているとみなされがちです。こうした認識が、保育士の賃金の低さや厳しい労働環境といった問題につながっています。

資格取得が簡単な職種だと誤解されている

「保育士の給料が安いのは仕方がない」と考える人の中には、「保育士の資格は簡単に取れる」と誤解している人も少なくありません

厚生労働省の「保育士になるには?新規タブリンク」にもあるように、保育士になるには国家試験に合格するか、指定された養成校を卒業する必要があります。養成校では2年以上の専門的なカリキュラムを学び、実習もこなさなければなりません。また、国家試験も簡単ではなく、こども家庭庁の「保育士試験の実施状況(令和5年度)新規タブリンク」によると、直近の合格率は26.9%と狭き門です。

このように、保育士になるためには多くの努力と時間が必要ですが、一般にはあまり知られていないのが現状です。

出典

厚生労働省「保育士になるには?新規タブリンク」(2025年7月23日)
こども家庭庁「保育士試験の実施状況(令和5年度)新規タブリンク」(2025年7月23日)

保育士の給料・年収の実態

ここでは、保育士の給料や年収について、具体的なデータをもとに、実態を詳しく見ていきましょう。

保育士の給料は全産業の平均を下回っている

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査新規タブリンク」によると、保育士の平均月給は27万7,200円であり、全産業の平均月給の35万9,600円と比較して低い水準です。年収では、保育士が約407万円であるのに対し、全産業の平均は約527万円となっており、約120万円の差があります。

きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 平均年収(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)
保育士 27万7,200円 74万1,700円 406万8,100円
民営事業所(国及び地方公共団体以外の事業所)の産業計 35万9,600円 95万4,700円 526万9,900円

参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査新規タブリンク

※企業規模計(10人以上)・男女計を参照

近年、保育士の給与は上昇傾向にありますが、子どもたちの命を預かる責任の重さを考慮すると、現状の給与水準は決して十分とはいえないでしょう。

出典

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査新規タブリンク」(2025年7月23日)

給料の安さが人手不足の原因の1つになっている

保育士の給料の安さは、保育現場から人材が離れていく要因の1つです。厚生労働省の「保育士の現状と主な取組(p.24)新規タブリンク」によると、保育士の離職理由として「給料が安い」が2番目に多く挙げられています。「仕事量が多い」「労働時間が長い」といった理由も続いており、給与と仕事のバランスが取れていない現状が見て取れるでしょう。

低賃金は、生活の安定を妨げるだけでなく、「社会から十分に評価されていない」という不満や無力感につながることも少なくありません。保育士不足はすでに深刻な社会問題であり、給与の改善は早急に取り組むべき課題といえます。

出典

厚生労働省「保育士の現状と主な取組新規タブリンク」(2025年7月23日)

保育士の給料がほかの職種よりも安い理由

保育士の給料が他職種と比べて低水準にとどまっている背景には、保育業界特有の構造的な問題があります。ここでは、保育士の給料がなかなか上がらない主な要因について見ていきましょう。

保育業界は利益を出しにくい仕組みになっている

保育サービスは公共性が高いため、一般の民間企業のように利益を最優先にした運営は難しいという特徴があります。保育園の主な収入源は国や自治体からの補助金と保護者が支払う保育料であり、家庭の経済的負担を考えると、保育料を大きく引き上げることは簡単ではありません。

そのため、保育園の収入には自然と上限ができてしまい、限られた予算の中で施設を運営せざるを得ないのが現状です。結果として、人件費に十分な資金を回せず、保育士の給料を大幅に引き上げられない状況が続いています。

国の政策なしでは根本的な改善が難しい

保育士の給料を本質的に改善するには、国や自治体による制度面での対応が欠かせません。現在、保育士の人件費は、国が定める配置基準と園児数に応じて支給されています。基準を超えて保育士を増員した場合、その分の人件費は補助の対象外となり、保育園が自費で負担しなければなりません。

こうした制度のもとでは、保育の質を高めたくても十分な人員を確保しにくい状況が続くでしょう。保育士の専門性にふさわしい待遇を実現し、保育の質を維持・向上させるためには、個々の園の努力だけでは限界があるのです。

保育士の給料の安さは今後どう変わる?

現在、政府は処遇改善等加算をはじめとする制度を通じて、保育士の賃金アップを促進しています。こども家庭庁の「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査 集計結果<速報>(p.4)新規タブリンク」によると、私立保育所に勤める常勤保育士の給与月額は、5年間で4万6,000円上昇していると報告されています(※この金額には賞与の1/12が含まれています)。

令和6年3月給与と令和5年度賞与 平成31年3月給与と平成30年度賞与
保育所(保育士) 34万8,000円 30万2,000円

保育士の給料を今後も上げていくには、「給料が安くて当たり前」という社会の認識を変え、制度改革を続けていくことが重要といえるでしょう。

保育士が「給料の安さは当たり前」と諦めない方法

保育士が「給料の安さは当たり前」と諦めないためには、今の職場でできる工夫を試したり、自分に合った職場環境を探したりすることが大切です。以下の情報を参考に、自分らしく働ける道を考えてみましょう。

キャリアアップ研修を受けて処遇改善手当を受給する

保育士が給料を上げる方法の1つに、キャリアアップ研修を受講して処遇改善手当を受給する方法があります

厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ新規タブリンク」によると、キャリアアップ研修には、「職務分野別リーダー」「専門リーダー」「副主任保育士」の3つの役職が設けられており、役職に応じて月額5,000円または4万円の手当が保育園に支給されます。研修で得た知識は日々の保育実践に活かせるため、実務面での成長にも役立つはずです。

現在の職場で役職を目指す

今の職場でさらに給料を上げたい場合は、上位の役職である「主任保育士」や「園長」を目指すという選択肢もあります。これらのポジションは責任が増す分、基本給のアップや役職手当が支給され、給与水準も高くなるのが特徴です。

実際に、こども家庭庁の「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査 集計結果<速報>(p.11)新規タブリンク」によると、保育所(私立・公立)における職種別の給与月額には大きな差が見られます。

職種 私立(常勤)の1人当たりの給与月額(賞与込み) 公立(常勤)の1人当たりの給与月額(賞与込み)
施設長 58万1,997円 64万3,192円
主任保育士 47万3,532円 56万4,357円
保育士 34万8,119円 36万5,542円

上記の金額は賞与の1/12を含むため、あくまで目安にはなりますが、役職に就いていると一般の保育士と比べて高い水準にあることが分かります。役職を目指すためには、日々の保育業務だけでなく、園の方針や運営に関する提案を積極的に行い、リーダーシップを発揮する機会を作ることが大切です。

公立・好待遇の保育園への転職を考える

保育士がより良い待遇を求めるなら、転職を視野に入れるのも選択肢の1つです。前述の調査結果にもあるとおり、一般的に公立保育園は私立よりも給与水準が高く、福利厚生も充実している傾向にあります。また、私立保育園であっても、園独自の手当が手厚い場合や都市部の保育園では、比較的高収入を得られる可能性があるでしょう。

転職先を探す際は、基本給だけでなく、賞与や各種手当、昇給制度なども含めた総合的な待遇を調べることが重要です。また、給与面だけでなく、園の保育方針や人間関係、働きやすさなどの点もしっかり確認しましょう。

保育園以外の働き方や施設を視野に入れる

保育士資格を活かせる職場は保育園だけではありません。放課後等デイサービスや乳児院、児童養護施設、ベビーシッターなど子どもと関わるさまざまな施設で活躍できます。中には夜勤手当が支給される職場もあり、勤務形態によっては月々の収入が増える場合もあるでしょう。

また、保育の知識や経験を活かして保育園の運営会社に勤めたり、子ども服の販売員や保育関連のライターに挑戦したりと、別の分野に進む道もあります。保育士としてのスキルを柔軟に応用することで、新しい可能性が広がるかもしれません。

「給料が安いのは当たり前?」と悩む保育士からよくある質問

ここでは、「給料が安いのは当たり前?」と悩む保育士からよくある質問を紹介します。

「保育士の給料を上げろ」という声は国に届いていますか?

保育士の待遇改善は国の課題として認識されており、賃金の引き上げも段階的に進んでいます。また、処遇改善等加算の拡充によって、キャリアアップに応じた給与の仕組みも整ってきています。しかし、全産業の平均と比較すると、保育士の給与水準は依然として十分とはいえません。質の高い保育を実現するためには、保育士の専門性に対する社会全体の適切な評価が不可欠です。

保育士の給料が見合わないと感じているのは自分だけですか?

「保育士の給料が仕事に見合っていない」と感じているのは、あなただけではありません。給料の安さは保育士が転職や離職を考える一因にもなっており、年代や経験年数に関係なく抱えやすい悩みです。この記事の「保育士が『給料の安さは当たり前』と諦めない方法」では、収入アップのヒントを紹介しているので参考にしてみてください。

保育士を続けたいけれどこの手取りでは生きていけないと感じます

「保育士を続けたいけれど、この手取りでは生活が厳しい」と感じている場合は、現在の職場で給料を上げる方法がないか探ってみましょう。たとえば、上司に「処遇改善手当の対象になるか」「役職への昇進が見込めるか」などを相談するのも1つの手です。また、待遇の良い職場への転職や、保育の仕事を続けながら副業をするという選択肢もあります。

まとめ

「保育士の給料が安いのは当たり前」という認識は、保育士の専門性が十分に評価されてこなかったことや、業界特有の構造的な問題によって生まれたものです。近年では、賃金の引き上げやキャリアアップ研修といった処遇改善に向けた取り組みが進められていますが、全産業の平均年収と比較すると依然として大きな差があります。保育士が正当に評価される環境を作るためには、現場からの声を社会に届け続けることが大切といえるでしょう。

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執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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