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保育士の家賃補助とは?住宅手当や借り上げ社宅、自治体独自の制度を解説
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「家賃補助って、いくらもらえるの?」「どうすれば利用できるの?」といった疑問を持つ保育士の方もいるのではないでしょうか。一人暮らしをするうえで、家賃の支払いは大きな悩みの1つですよね。実は、保育士の家賃補助制度は、国や自治体、勤務先によって複数用意されています。この記事では、保育士が利用できる家賃補助制度の種類や注意点を解説します。そのほかの支援制度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
保育士の家賃補助とは
保育士の家賃補助とは、保育士の住居費負担を軽減するために設けられた支援制度です。保育業界では、慢性的な人手不足が深刻な課題となっており、保育士の生活を経済的に支えることで、人材の確保や長期的な定着を図るねらいがあります。
保育士の家賃補助には、大きく分けて2つの種類があります。1つは、保育園を運営する法人などが独自に提供している制度です。法定外福利厚生のため法的な義務はなく、支給の有無や金額、条件などは勤務先によって異なります。もう1つは、国や自治体が実施している公的な支援制度で、こちらも地域ごとに補助内容や対象条件が異なるのが特徴です。
保育士が使える4つの家賃補助
ここでは、保育士が利用できる代表的な家賃補助制度を紹介します。勤務先が独自に用意しているものと、国や自治体による公的支援の両方を取り上げるので、制度を比較・検討する際の参考にしてください。
1.勤務先独自の住宅手当
保育園の中には、独自の住宅手当制度を設けているところがあります。住宅手当とは、毎月の給与に上乗せして支給される手当のことで、住居手当や家賃手当とも呼ばれます。支給額は勤務先によって異なりますが、一般的には月1万円〜3万円ほどが目安です。また、支給条件も園によって違うため、事前に確認しておくことが大切です。
住宅手当制度の主なメリットは、自由に住む場所を選べる点や、退職後も引っ越しをする必要がない点です。就職や転職を考える際は、住宅手当を含めた総支給額を確認し、生活が成り立つかどうかを判断しましょう。
2.保育園独自の寮
一部の保育園では、職員専用の寮を用意している場合があります。家賃は一般的な賃貸物件よりも安く設定されており、中には無料で利用できるケースもあります。家賃がかかる場合であっても、月額1万〜2万円程度が一般的です。
寮は園の近くに設けられていることが多く、通勤時間を短縮しやすいのもメリットの1つです。また、家具や家電があらかじめ備え付けられている場合は、引っ越しにかかる初期費用も抑えられます。ただし、寮のタイプによっては、同僚と顔を合わせることで仕事と私生活の切り替えが難しくなる可能性も。自分にとって心地良く過ごせる環境かどうかを考えたうえで、利用を検討しましょう。
3.保育士宿舎借り上げ支援事業
保育士宿舎借り上げ支援事業とは、国と自治体が連携して行っている公的な家賃補助制度です。主に家賃相場の高い都市部を中心に導入されています。この制度を利用するには、保育施設側が制度を導入していることが前提条件となります。申請手続きも保育士本人ではなく、勤務先を通じて行うため注意しましょう。
支援事業の仕組みと今後の動向
保育士宿舎借り上げ支援事業は、一般的に「借り上げ社宅」と呼ばれ、保育施設が職員向けに住居を借り上げ、その家賃を自治体が一部補助する制度です。利用する保育士は、補助後の自己負担分のみ支払えば良いので、住居費を大きく抑えられます。施設の社宅規定によっては、保育士自身が物件を自由に選べる場合もあるようです。
なお、本制度は年々縮小傾向にあり、今後いつまで継続されるかは明確ではありません。利用を検討している方は、各自治体のWebサイトや勤務先を通じて最新の動向を確認することをおすすめします。
出典
こども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」(2025年9月17日)
支援事業の補助額と利用条件
保育士宿舎借り上げ支援事業の魅力は、補助額の手厚さにあります。補助額は自治体によって異なりますが、こども家庭庁の「令和7年度 保育関係予算案の概要(p.10)」によると、月額上限は7万5,000円とされています。
対象者の基本要件は、「採用日から起算して5年以内の常勤保育士」と示されており、自治体によって下記のような追加条件が設けられていることもあります。
兵庫県姫路市:市外からの転入者や市内の通勤困難者
京都府京都市:親元の住所が京都府外にある人、または親元の住所からの通勤時間が片道1時間以上かかる人
同じ自治体内であっても、運営法人によって制度の運用方針が異なる場合があるため、地域単位のほか、施設単位での確認も重要です。
出典
こども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」(2025年9月17日)
姫路市「保育士等住居借り上げ支援事業」(2025年9月17日)
京都市情報館「保育士の宿舎借り上げ費用を月額最大65,000円まで京都市と保育園が負担します。」(2025年9月17日)
4.自治体独自の家賃助成制度
全国の自治体では、保育士の確保と定着を目的として、独自の家賃助成制度を設けているところがあります。たとえば、群馬県高崎市が実施している「保育士等家賃補助事業」では、住居手当などほかの補助制度で差し引かれた家賃の半額を最長12ヶ月間補助しています。補助額は月2万円が上限です。また、長野県松本市の「松本市保育士移住支援事業補助金」は、長野県外から松本市内へ移住し、市内の保育施設で働く保育士を対象に、月額最大5万円の家賃補助を最長12ヶ月間支給する制度です。
なお、自治体によっては申請の受付期間が定められていたり、ほかの補助制度との併用が認められていなかったりします。利用を検討する際は、事前に各自治体の公式情報を確認しておきましょう。
出典
高崎市「保育士等家賃補助制度について」(2025年9月17日)
松本市「松本市保育士移住支援事業補助金のご案内」(2025年9月17日)
保育士が自分に適した家賃補助を選ぶには?
どの家賃補助制度が自分に適しているかは、保育士としての働き方やどのような暮らしを望むかによって変わります。たとえば、「とにかく家賃を抑えて生活費を軽くしたい」という方には、保育士宿舎借り上げ支援事業がおすすめです。原則として1人1回限りの利用となるため、利用時期は慎重に選びましょう。
また、「職場とは一定の距離を保ちたい」「仕事とプライベートはきっちり分けたい」といった希望がある方は、勤務先独自の住宅手当を利用するのも手でしょう。どの制度を選ぶにしても、内容や支給条件、利用の可否などは勤務先によって異なります。事前の確認を十分に行い、ライフスタイルや将来設計にふさわしい制度を選ぶことが重要です。
出典
こども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」(2025年9月17日)
【状況別】保育士の家賃補助の注意点
ここでは、同居している人がいる場合や、パート勤務の場合に保育士の家賃補助がどう扱われるのかを解説します。同棲や結婚を考えている方、またはこれからパートとして働く予定の方は、事前に知っておくと安心です。
同棲や結婚で同居者がいる場合
保育士が同棲や結婚により同居者と暮らす場合、家賃補助の対象になるかどうかは制度によって異なります。たとえば、住宅手当や園が独自に設けている寮制度では、「物件の契約者のみ対象」や「単身者のみ対象」といった条件が設けられている場合もあります。
また、保育士宿舎借り上げ支援事業についても、同居者の有無が影響する場合があります。たとえば千葉県千葉市では、「本人および同居者が住宅手当、またはこれに類する手当を受けていないこと」という要件が定められています。そのため、将来的に同棲や結婚を考えている方は、自分の勤務先とパートナーの職場、それぞれの家賃補助制度の内容を比較し、どの制度を利用するのが最も生活に合っているかを見極めることが大切です。
出典
千葉市「千葉市保育士等宿舎借り上げ支援事業」(2025年9月17日)
雇用形態がパートの場合
保育士がパート勤務をする場合も、家賃補助を受けられるかどうかは制度によって異なります。住宅手当や園が独自に設けている寮制度では、基本的に正職員を対象としており、パート職員は対象外となる傾向にあるようです。
一方で、保育士宿舎借り上げ支援事業は、雇用形態にかかわらず、自治体の定める条件を満たせば利用できる可能性があります。たとえば、神奈川県横浜市では「保育所等に勤務する常勤保育士で、月に120時間以上保育に従事していること」との条件が定められています。
出典
横浜市「保育士宿舎借り上げ支援事業」(2025年9月17日)
家賃補助以外に保育士が使える支援制度
ここでは、家賃補助以外に受けられる支援制度をまとめました。住まい以外の補助や支援金が気になる方は、役立つ情報が見つかるかもしれません。
引っ越し費用の支援制度
一部の自治体では、該当地域の保育施設に就職する保育士を対象に、引っ越し費用の一部を助成する制度を設けています。たとえば、石川県金沢市では、県外からの人材確保を目的に、石川県外に住んでいる人が金沢市内で保育士として新たに就職する場合、引っ越し費用などを最大20万円まで支援しています。
また、勤務先の法人が独自に引っ越し費用を補助してくれる場合もあります。補助を受けたあとに短期間で退職すると補助金の返還を求められることもあるため、利用条件はしっかり確認してから申し込みましょう。
出典
金沢市「UJIターン保育士就労支援事業」(2025年9月17日)
一部保育料の貸付制度
一部保育料の貸付制度とは、保育士として働く保護者を対象に、子どもの保育料の一部を無利子で貸し付ける制度です。この制度の大きな特徴は、保育士として2年間継続して勤務すれば、貸付金の返還が免除される点です。
たとえば、大阪府では、これから保育士や保育教諭として働く人、または産後休暇・育児休業から復帰する人が、大阪市・堺市を除く府内の保育所などに就職・復帰する際に利用できます。貸付期間は最長1年間です。申請するには、対象区域の保育所などに週20時間以上勤務することが条件となります。
出典
厚生労働省「福祉人材センター」(2025年9月17日)
就職準備金の貸付制度
就職準備金の貸付制度とは、保育士資格を持っているものの現在は保育士として働いていない潜在保育士が、保育所などに就職する際に必要な費用を無利子で貸し付ける制度です。前述と同様、保育士として2年間継続して勤務すれば、返還が免除されます。
大阪府では、貸付の上限額は40万円以内となっており、実際に必要な金額を申請できます。対象となる費用には、転居費用や保育所などで使う被服費だけでなく、通勤に使う自転車の購入費なども含まれるようです。
出典
厚生労働省「福祉人材センター」(2025年9月17日)
給料の上乗せ・補助制度
一部の自治体では、保育士の給料に直接手当を上乗せする補助制度を実施しています。たとえば、千葉県松戸市では「松戸手当」として、市内の保育園などで正規職員として働く保育士に対し、勤続年数に応じた金額を市が補助しています。また、大阪府八尾市では、「やお保育士サポート手当」として、市内の私立保育園や認定こども園に採用された保育士などを対象に、3年間の勤務で合計30万円を支給しているようです。
保育士が就職や転職を考える際は、家賃補助だけでなく、給料への補助制度があるかどうかもチェックしておくことが大切です。補助金によって実質的な収入が増えれば、住居費などの負担を間接的に軽減できる可能性があります。
出典
松戸市「松戸市の保育士確保に関する取組み」(2025年9月17日)
八尾市「八尾市内で働く保育士さんを全力応援!! 支援事業のご案内」(2025年9月17日)
家賃補助ありの保育士求人を探して転職する方法
家賃補助ありの保育士求人を探すなら、保育士専門の転職エージェントの利用が効率的です。エージェントを介せば、求人票だけでは分からない家賃補助の具体的な金額や支給条件などを事前に確認できます。家賃補助の希望条件に合致する求人を紹介してもらえるだけでなく、各種手当や賞与、退職金制度などの待遇全体を総合的に把握できるため、安心して転職活動を進められるでしょう。
なお、家賃補助は支給期間が定められているケースもあるので、補助終了後の生活費についても事前に見通しを立てておくことが重要です。将来的に別の職場へ転職する可能性がある場合は、現在の住居に住み続けられるかも確認しておきましょう。
保育士の家賃補助に関してよくある質問
ここでは、保育士の家賃補助に関してよくある質問を紹介します。
保育士の家賃補助がなくなるって本当ですか?
2025年9月現在、「保育士宿舎借り上げ支援事業」の廃止は決定されていません。しかし、本制度は年々縮小傾向にあり、今後いつまで継続されるかは不透明です。実際に、こども家庭庁の「令和7年度 保育関係予算案の概要(p.10)」によると、対象期間や補助基準額の見直しが行われています。そのため、最新情報はこまめに確認しておくのがおすすめです。
出典
こども家庭庁「令和7年度 保育関係予算案の概要」(2025年9月17日)
公務員や派遣で働く保育士も家賃補助の対象になりますか?
公務員保育士は自治体の規定に基づき、住居手当として家賃補助を受けられるのが一般的です。一方、派遣保育士の場合、保育園独自の住宅手当や寮制度については対象外となる傾向があります。しかし、保育士宿舎借り上げ支援事業や派遣会社独自の制度を利用して家賃補助を受けられる可能性もあるため、利用条件を確認してみましょう。
家賃補助が支給されている保育士をずるいと思ってしまいます
家賃補助の有無は職場や働き方などによって異なるため、保育士によっては「ずるい」と感じることがあるかもしれません。もし家賃補助に興味があるなら、住宅手当や借り上げ社宅制度のある保育園への転職を検討するのも1つの方法です。保育士向けの支援制度は家賃補助以外にも複数あるので、自治体のWebサイトやこの記事の「家賃補助以外に保育士が使える支援制度」を参照し、利用可能な制度がないか調べてみてください。
東京の保育士の借り上げ社宅制度の補助金はいくらですか?
東京都福祉局の「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」によると、東京都における保育士宿舎借り上げ支援事業の補助基準額は、1戸あたり上限8万2,000円です。この補助金は保育施設が借り上げた住居に対して支給されるため、保育士に直接支払われるわけではありません。利用条件は勤務先によって異なるので、自治体だけでなく各施設にも確認が必要です。
出典
東京都福祉局「魅力ある保育」(2025年9月17日)
まとめ
保育士の家賃補助とは、住居にかかる費用の負担を軽減するための制度です。利用できる家賃補助制度には、勤務先独自の住宅手当や寮、保育士宿舎借り上げ支援事業、自治体ごとの家賃助成制度など、さまざまな種類があります。それぞれに対象条件や補助金額、利用できる期間は異なるため、情報収集を入念に行い自分に適した制度を選ぶことが大切です。
保育業界に特化した転職エージェントのレバウェル保育士は、家賃補助に関する情報をスムーズに提供できる点が強みです。多くの保育園と日常的に連携しているため、詳細な情報をお伝えできます。専任のキャリアアドバイザーが転職相談から入職後のフォローまで丁寧にサポートするので、初めての地域であっても安心して働けますよ。サービスはすべて無料なので、ぜひお気軽にご活用ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。