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保育士が妊娠したら仕事はどうなる?報告のタイミングや妊娠中の注意点を解説
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保育士は妊娠した際、喜びとともに「仕事との両立は大丈夫だろうか」という不安を感じる方も少なくありません。体力を使う保育の仕事を続けながら、母体と胎児の健康を守るためには、適切な時期に妊娠を報告し、働き方を調整することが大切です。 この記事では、妊娠が分かったときの対応や職場へ報告するタイミング、妊娠中の働き方を解説します。妊娠中に起こる身体の変化や注意点も紹介していますので、ぜひご一読ください。
目次
妊娠が発覚した!保育士がすべき対応は?
「妊娠が発覚したけど、何をすれば良いか分からない」とお困りの保育士もいるのではないでしょうか。ここでは、妊娠が発覚したときに保育士が取るべき行動を解説します。
まずは産婦人科を受診する
保育士は「妊娠したかもしれない」と思ったら、産婦人科を受診して医師の診断を受けることが大切です。市販の妊娠検査薬は手軽ですが、結果が正確でない場合もあるので、検査薬の結果だけで職場に報告するのは避けましょう。
産婦人科では妊娠週数の確認や出産予定日の算出、母体・胎児の健康状態をチェックしてもらえます。保育現場での働き方について不安がある場合は、主治医に相談し、「重いものは持たない」「長時間の立ち仕事は避ける」といったアドバイスを受けておくのがおすすめです。
早いうちに園長へ報告する
妊娠が確定したら、できるだけ早めに園長へ報告しましょう。妊娠初期はつわりがあったり、体調が安定しなかったりする場合もあります。体調不良や妊婦検診で休む可能性があることを園長に理解してもらい、身体に負担がかかる業務を避けられるよう早めに調整してもらうことが大切です。
園側はフリー保育士の配置を増やしたり、担任変更などの人員調整が必要になったりします。園長には、以下の内容を報告しましょう。
「妊娠週数」「出産予定日」「現在の体調」「業務上配慮が必要なこと(あれば)」「検診による希望休」「産休・育休の取得予定」
上司や同僚、保護者へ報告するタイミングも、園長と相談しておくとスムーズに伝えられるでしょう。
産休・育休の申請をする
妊娠した保育士が産休・育休の申請手続きをする際は、保育園が用意する書類に必要事項を記入して提出するのが一般的です。厚生労働省の「働きながらお母さんになるあなたへ(p.7)」によると、産前休業は出産予定日の6週間(双子以上の場合は14週間)前から取得でき、産後休業は出産後の8週間取得できます。育児休業は子どもが1歳になるまで取得可能で、状況によっては最長2歳まで延長できるのが特徴です。
詳しくは、「保育士は産休・育休を取得できる?条件や期間、休暇中の給料などを解説」を確認してみてください。
出典
厚生労働省「妊娠・産休・育休 特設コーナー(労働者の方向け)」(2025年8月6日)
出産を機に仕事を辞める場合は退職時期を相談する
出産後は子育てに専念したいという保育士は、退職という選択肢もあります。こども家庭庁の「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」によると、保育士は有効求人倍率が高い傾向にあり、ブランクがあっても復職しやすい職業といえます。
クラス担任を持っている場合は、子どもたちや保護者への影響を考えると、年度末に退職するのが理想的です。しかし、体調や出産予定日との兼ね合いも重要なので、いつ退職するのがスムーズか、園長としっかり相談しましょう。
保育士専門の転職サービスのレバウェル保育士では、将来的にブランクがあっても働ける職場や、パートで短時間勤務ができる職場を紹介できます。
出典
こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」(2025年8月6日)
保育士が妊娠を周囲に報告するタイミング
保育士が計画的に妊娠報告をすることで、園側が職場環境をスムーズに調整しやすくなります。ここでは、報告する相手別に妊娠報告のタイミングと伝え方をまとめました。
主任保育士・直属の上司への報告
園長への報告が終わったら、次に主任保育士や直属の上司に伝えましょう。園によっては、園長から上司に報告する場合もあるようです。
保育士はチームで協力して働くので、同僚へ業務を引き継ぐ時期を上司に相談しておくと安心です。妊娠中は子どもを抱っこしたり、一緒に走り回ったりすることが以前より難しくなるので、今後の仕事の進め方についても確認しましょう。業務調整や引き継ぎについて、上司と一緒に考えていくことが大切です。
同僚への報告
引き継ぎなどが始まっていない場合は、安定期に入ってから同僚に妊娠報告するのが一般的ですが、園長の考えや通院先の医師の判断、体調の変化によってタイミングを決めましょう。同じクラスの担任保育士には、日々の業務で協力してもらう可能性が高いので、早めに妊娠を伝えられるよう調整するのがおすすめです。
体調に合わせて業務の調整をお願いする場合は、自分にできることは続けたいという姿勢を伝えましょう。同僚との良好な関係を保ちながら、チームワークで乗り切れるよう、配慮のある伝え方が大切です。
保護者への報告
保育士が保護者に妊娠報告をする時期や伝え方は、園の方針に従いましょう。保育園によっては、毎月のおたよりで報告する場合もあるようです。一般的には、安定期に入ってから保護者に伝えます。
妊娠報告後に保護者から質問があった際は、丁寧に答え、信頼関係を維持することを心掛けましょう。「子どもたちが混乱しないように配慮します」「後任の先生に十分な引き継ぎをします」といった言葉を添えると、保護者の不安を和らげられます。
子どもたちへの報告
保育士が子どもたちへ妊娠報告をするときは、子どもの年齢や理解度に合わせて伝えるのがポイントです。子どもたちに妊娠を伝えるタイミングは、保護者への報告が終わってからにしましょう。
子どもたちには、「先生のお腹には赤ちゃんがいます」「赤ちゃんを生むときはお休みします」などと伝え、不安を与えないようにします。産休に入ったあとの後任の保育士を紹介する際は、「先生がお休みのときは、○○先生が遊んでくれるよ」「みんなのことをたくさん話しておくね」といった安心感を与える言葉掛けをするのが重要です。子どもたちの反応に寄り添い、不安や疑問に丁寧に対応し、スムーズな移行につなげましょう。
妊娠初期・中期・後期に起こる身体の変化
妊娠中の体調の変化は人それぞれですが、一般的な傾向を知っておけば、自分の体調管理や職場での働き方の調整に役立てられます。ここでは、妊娠初期から後期にかけての一般的な身体の変化と、保育現場での注意点について解説します。
妊娠初期(4~15週)
妊娠初期は外見上の変化はほとんどないものの、ホルモンバランスが急激に変化して体調が変化しやすい時期です。妊娠初期によくある症状は以下のとおりです。
つわり
お腹が張る感覚
腰の重さ
頻尿
便秘
つわりは妊娠初期の妊婦に起きやすい症状で、吐き気や嘔吐、食欲不振などが特徴です。妊娠中で、つわりがつらい保育士は職場に相談し、無理せず休息を取りましょう。
妊娠中期(16~27週)
妊娠中期になると、お腹が徐々に目立ち始め、身体への負担が大きくなってきます。中期の主な症状は、以下のとおりです。
貧血
むくみ(特に手足や顔)
お腹の張り
体重増加
消化不良
妊娠中期は、体型の変化により動きにくさを感じ始める時期でもあります。かがんだり、しゃがんだりする動作が徐々に難しくなるので、妊娠中期の保育士が子どもたちと目線を合わせる際は無理のない姿勢を心掛けましょう。必要に応じて、座ってできる仕事を担当させてもらうよう相談するのがおすすめです。
妊娠後期(28~41週)
妊娠後期は明らかに妊婦と分かる体型となり、身体の負担がピークに達する時期になります。妊娠後期の症状は、以下のとおりです。
背中・腰の痛み
胸焼け
動悸・息切れ
頻尿
妊娠後期はお腹が大きくなり、足元が見えづらくなるので、転倒しないよう注意して歩く必要があります。妊娠後期の保育士はお腹を圧迫しないように注意し、子どもを抱き上げることや重たい荷物を持つのは控えましょう。
妊娠中の保育士の働き方
妊娠しながら保育の仕事を続けるには、体調の変化に合わせた働き方の調整が必要です。ここでは、妊娠中に避けた方が良い業務と、妊娠中に安心して取り組める業務を紹介します。
妊娠中の保育士は避けた方が良い業務
妊娠中は母体と胎児の健康を第一に考え、体に負担がかかる業務を控えることが大切です。
脚立に上って高所でする作業
重い荷物の運搬
長時間立ちっぱなし・座りっぱなしの仕事
激しい運動
妊娠中の保育士は、上記のような業務を避けましょう。たとえば、脚立に上って壁面装飾をしたり、高い場所の備品を取ったりする行為は転倒リスクがあり、危険です。また、子どもを抱っこやおんぶすると、お腹に負荷がかかるので注意が必要になります。運動会の練習や走り回る遊びなどは無理をせず、ほかの保育士と協力体制を整えることが重要です。
妊娠中の保育士ができる業務
妊娠中の保育士が無理なく続けられる業務もあります。以下にまとめているので、参考にしましょう。
製作活動の準備
絵本の読み聞かせ
歌や手遊び
連絡帳の記入
園だよりの作成
座って行う活動は、比較的体への負担が少なく続けやすい業務です。ただし、長時間同じ姿勢でいると腰痛を引き起こす場合もあるので、定期的に姿勢を変えたり、ストレッチをしたりするといった工夫が必要になります。自分の体調と相談しながら、できる範囲で仕事に取り組みましょう。
保育士が妊娠した際の注意点
保育士の仕事は体力を使う場面が多く、子どもたちとの密接な関わりの中で感染症リスクもあるので、自分と胎児の健康を守るための配慮が必要です。ここでは、妊娠中の保育士が働く際に気をつけることを解説します。
体調管理に気をつける
妊娠中の保育士が体調管理に気をつけながら働くためには、自分の体調を第一に考え、周囲の理解と協力を得るのがポイントです。つわりで気分が悪いときや、お腹の張りが気になるときは、上司に相談してこまめな休憩をもらいましょう。
定期健診や急な体調不良で受診が必要な場合は、遠慮せずに休みを取り、母子の健康を優先して問題ありません。妊娠中の保育士は周囲に迷惑を掛けたくないと思いがちですが、無理をして具合が悪くなるより、母子の健康を優先して働く姿勢が大切です。
職場での感染症対策に注力する
感染症によっては、胎児に影響を与える可能性があるので、妊娠中の保育士は感染症対策をしっかり行うことが大切です。埼玉県庁の「「妊婦さん!気をつけて」妊娠中に気をつけたい感染症」によると、風しん・サイトメガロウイルス感染症・トキソプラズマ症などの感染症は胎児に影響が出る可能性があります。
感染症対策としては、こまめな手洗い・うがいやマスクの着用が有効です。妊娠中の保育士が子どもの唾液や排泄物に触れた場合は、すぐに手を洗いましょう。また、トキソプラズマは土から感染する場合があるので、園庭活動での土いじりには注意が必要です。抗体があれば感染しにくい感染症もあるので、抗体検査を受けて抗体の有無を調べておくと安心できるかもしれません。
出典
埼玉県庁「「妊婦さん!気をつけて」妊娠中に気をつけたい感染症」(2025年8月7日)
周囲の人への気遣いと配慮を心掛ける
妊娠中の保育士は、同僚に業務を代わってもらう場合もあるでしょう。周囲の人に助けてもらったときは、感謝の気持ちをしっかり伝え、自分にできることは積極的に取り組む姿勢を見せることが大切です。サポートしてくれる保育士への配慮を心掛けることで、チームワークを維持できます。お互いの理解と協力があれば、妊娠中も安心して働く環境を作れるでしょう。
妊娠中の保育士の業務の引き継ぎ
妊娠中の保育士が産休前にしっかりと引き継ぎをすることで、産休中も後任保育士が保育をスムーズに続けられます。ここでは、妊娠中の保育士が産休前に作成する引き継ぎ資料の内容と、後任保育士との打ち合わせ方法についてまとめました。
引き継ぎ資料に盛り込む内容
妊娠中の保育士が引き継ぎ資料を作成する際は、担当している子どもの情報や保護者とのやりとり、クラスで決めているルールなどを記録します。配慮が必要な子どもについては、関わり方も具体的に記しておくと役立つでしょう。保育に使う教材や備品の場所、事務作業の手順なども盛り込みます。自分が携わっている行事の準備や、運営方法が分かる資料を作成することも大切です。
引き継ぎ資料は、後任保育士がスムーズに業務を引き継げるよう、担当業務ごとにリスト化して作成するのがおすすめです。知りたい情報がどこにあるか一目で分かるよう、丁寧な資料作りを心掛けましょう。
後任保育士との打ち合わせ
妊娠中の保育士は、引き継ぎ資料を作成後、後任となる保育士との打ち合わせの時間を確保しましょう。打ち合わせは資料の説明だけでなく、実際の業務の様子を見てもらったり、一緒に作業したりする機会を設けることが大切です。
文字だけでは伝わりにくい仕事は、実践を通して後任保育士に共有します。疑問点があれば質問してもらい、後任保育士に不安な点を残さないようにしましょう。後任保育士には、業務を引き継いでくれる感謝の気持ちも伝えておくのがおすすめです。
保育士の妊娠に関してよくある質問
ここでは、保育士に妊娠によくある質問にお答えします。
園長に妊娠報告する際の例文を教えて
園長に妊娠を報告する際は、簡潔かつ必要な情報を伝えることが大切です。園長への妊娠報告の例文は以下のとおりです。
先日病院で検査をしたところ、妊娠していることが分かりました。現在妊娠○週目で、出産予定日は○月○日です。今後の働き方や産休の時期についてご相談させていただきたいのですが、お時間をいただけますでしょうか。
妊娠報告は、落ち着いて話せる時間を確保しましょう。退職なのか復帰なのかを決めておき、復帰の場合は産休・育休期間など、質問されそうなことは事前に考えておくとスムーズに話を進められます。
妊娠中の保育士も担任を受け持つ?
妊娠中の保育士が担任を受け持つかどうかは、体調や園の方針、妊娠時期によって異なります。園の規模や人員状況も影響するので、不安な場合は園長や主任保育士に相談しましょう。担任を続ける場合も、重い荷物の持ち運びや激しい運動など、負担の大きい業務はほかの先生と分担することが重要です。
妊娠中の保育士が控えた方が良い業務が気になる方は、本記事の「妊娠中の保育士の働き方」をご覧ください。
保育士は妊娠したらいつまで働く?
厚生労働省の「働きながらお母さんになるあなたへ(p.7)」によると、妊娠中の労働者は出産予定日の6週間(双子以上の場合は14週間)前まで働くことが可能です。しかし、実際にいつまで働けるのかは個人の体調や状況によって異なります。体調が安定している場合は産休直前まで働く保育士もいますが、つわりがひどい場合や体調が悪い場合は、早めに休業する場合もあります。
出典
厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」(2025年8月7日)
園長から育休は取れないと言われました…
育児休業は法律で保障された権利であり、原則として要件を満たす労働者は取得できます。園長から「育休は取れない」と言われた場合は、育児・介護休業法の内容を確認し、自分が育休の対象者に当てはまるのか確認しましょう。
保育園側に人手不足や代替保育士の確保が難しいといった理由があったとしても、育休を拒否する正当な理由にはなりません。園長に「育児・介護休業法では育休を取得する権利が保障されていると理解していますが、何か特別な事情があるのでしょうか」と尋ね、冷静に対応することが大切です。
まとめ
保育士が妊娠した際は、できるだけ早めに園長へ報告し、保育職場での働き方を調整をすることが大切です。妊娠中は体調の変化に合わせて、重いものを持つ作業や長時間の立ち仕事は避け、座ってできる製作準備や絵本の読み聞かせといった業務を中心に行うことをおすすめします。
妊娠中は体調の変化に合わせて無理のない働き方を心掛け、感染症対策を行いましょう。体力的に負担の大きい業務は避け、座って行える業務に集中するなどの工夫が大切になります。産休前には、後任保育士への丁寧な引き継ぎを行い、子どもたちや保護者への影響を最小限に抑える配慮も大切です。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。