最終更新日:
保育士の残業時間の実態は?平均の数値や減らすためにできる工夫を解説
- #保育士
- #働き方

保育士のなかには「残業が多い」と感じている方もいるのではないでしょうか。保育士は、業務時間以外でも対応することが多く、残業がある職場が少なくないのが現状です。 この記事では、保育士の残業時間の実態や多いといわれる時期を解説します。保育士の残業が増える理由や減らすための工夫、少ない職場の特徴も紹介しますので、ぜひチェックしてください
目次
保育士の残業時間の実態
保育士の残業時間はどれくらいなのでしょうか。ここでは、保育士の残業時間の実態を解説します。
保育士の超過実労働時間数は平均3時間
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の超過実労働時間数は平均3時間です。保育士の超過実労働時間数が平均3時間と聞くと少なく感じるかもしれませんが、あくまで平均のため、実際には個人や保育士の職場の状況によって差があります。また、計上されていない持ち帰りの仕事やサービス残業が存在している可能性もあるでしょう。
出典
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年6月13日)
保育士が退職する理由の24.9%は労働時間が長いため
厚生労働省の「保育士の現状と主な取組 (p.24)」によると、保育士の退職理由の24.9%は「労働時間が長い」ことによるものです。このことから、長時間の労働が保育士の負担になっているのがわかります。保育士は子どもの保育を優先しなければいけないため、事務作業や行事の準備などが後回しになり、時間外労働が発生しやすいのが現状です。保育園のイベント前や繁忙期には、保育士の持ち帰り業務やサービス残業が増える傾向にあり、労働時間が長くなってしまうことも珍しくありません。
出典
厚生労働省「保育の現場・職業の魅力向上検討会」(2025年6月13日)
保育士の残業が多いといわれる時期
保育士の残業が多い時期は、行事が集中する季節と新年度前が挙げられます。ここでは、保育士の残業が多いといわれる時期を解説します。
行事が多い季節
保育士の残業が増えやすい時期とは、行事が集中する季節だといえます。運動会や発表会、お遊戯会など大きなイベントが続く傾向にある秋から冬にかけては、保育士が準備や練習に多くの時間を割く傾向にあります。行事の衣装や小道具の作成、子どもたちへの指導など通常の業務に加えて行事関連の仕事が増え、保育士の残業が発生しやすくなります。
ほかにも、保育士は保護者に向けて案内状の作成や連絡調整も並行して行う必要があります。保育園によっては、行事が終わるまで残業が多い状態が続く場合もあるでしょう。
新年度前など事務作業が多い時期
新年度を迎える前の時期も、保育士の残業が増えやすいタイミングです。新年度前は、年間計画や新入園児の受け入れ準備、指導計画の作成など細かい事務作業が発生します。ほかにも、保育室の環境設定や新しい教材の準備、入園式のプログラム作成なども保育士の重要な業務です。新年度がスムーズに始まるように保育士間での打ち合わせや引継ぎ作業を行う必要もあるでしょう。保育士は通常の業務以外にやるべきことが多く、残業を余儀なくされる場合が少なくないようです。
保育士の残業が増える理由
保育士の残業が増える理由として、人手不足により保育士1人当たりの業務の負担が大きい点、非効率な事務作業があることが挙げられます。ほかにも、園によっては残業が当たり前という職場の風潮も保育士の残業が増える要因の1つでしょう。ここでは、保育士の残業が増える理由を詳しく解説します。
保育士の人手が不足しているため
保育士の残業が増える要因の1つに、保育士の人手不足が挙げられます。十分な人員が確保できていない保育園では、保育士1人あたりの業務負担が増える傾向にあるのが現状です。人手不足の園の保育士は、日中は目が離せない保育業務が中心となり、書類作成や事務作業は勤務時間外に持ち越されるケースもあります。突発的に保育士が欠勤した場合は、ほかの職員がカバーしなければならず、結果的に長時間労働が常態化してしまう場合もあるでしょう。
手作業での事務作業があるため
保育士の仕事は保育以外にも、事務作業があります。手書きの書類作成や手作業での管理が一般的な保育園では、効率が悪く時間がかかる場合があるようです。保育士は連絡帳や児童の記録、保護者向けのお便り作成などの書類作成が日常的に発生します。デジタル化が進んでいる保育園もありますが、環境が整備されておらず改善できていないところも珍しくありません。こうした手作業での業務が保育士の残業を引き起こす原因の1つです。
残業するのが当たり前という雰囲気があるため
園によっては、「残業するのが当たり前」という職場の雰囲気が保育士の残業の一因になっている場合があります。上司や先輩が遅くまで働く姿を見ていると、自分だけ早く帰りにくいと感じる保育士もいるでしょう。こうした職場の雰囲気は、新人保育士にとってもプレッシャーとなり、残業する原因となる場合も。また、保育士の使命感や責任感から必要以上に頑張ってしまい、長時間労働につながるケースもあるようです。
保育士に残業代は支払われる?
ここでは、残業代の規定と支払われない場合について解説します。どのような条件でなら保育士の残業代は支払われるのかをチェックしてみましょう。
残業代の法律上の規定
労働基準法では、法定労働時間を超える労働者に対して、必ず残業代を支払う義務があります。
残業代が支払われる条件 | 割増率 |
法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が1ヶ月45時間、1年360時間等を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき | 50%以上 |
参照:東京労働局「しっかりマスター割増賃金編 (p.2)」
東京労働局の「しっかりマスター割増賃金編 (p.2)」によると、法定労働時間の1日8時間、週40時間を超えると労働者に割増賃金が支払われます。残業代の割増率は、上記のように時間外労働の時間によって異なります。
出典
東京労働局「パンフレット」(2025年6月13日)
残業代が支払われない場合
保育士に残業代が支払われない場合、労働時間が正しく管理されていない可能性があるでしょう。勤務時間外の行事準備や書類作成などの業務が「勤務時間外の自主的な活動」として扱われ、サービス残業や仕事の持ち帰りが常態化している場合があります。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン (p.11)」によると、上司からの指示がある残業は労働時間に該当し、労働者に残業代を支払うのが義務とされています。また、業務量が過剰で上司からの指示がなくても必要不可欠とみなされる「黙示的指示」に基づく残業も労働時間に該当します。
未払いの残業代がある保育士は、支払いを請求できる可能性があるため、労働基準監督署や弁護士に相談するのも1つの手です。
出典
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2025年6月13日)
保育士の残業を減らす3つの工夫
日々忙しく、残業を減らしたいと考えている保育士もいるのではないでしょうか。ここでは、保育士の残業を減らす4つの工夫を紹介します。
1.業務の優先順位を明確にする
保育士が残業を減らすには、業務の優先順位を明確にするのが重要です。保育士の仕事には、緊急性が高い業務と後回しにできるものがあります。たとえば、子どもの安全に関わることや保護者への連絡は最優先です。しかし、園内の装飾や資料整理は急を要さない場合があるでしょう。朝や前日のうちに保育士のタスクをリスト化し、重要度や期限を考慮して順位をつけるのがおすすめです。限られた時間でできる範囲を見極め、効率よく業務を進めると、保育士の残業を減らせる可能性が高まります。
2.保育士で協力してタスクを分担する
1人ですべての業務を抱え込むのではなく、保育士でタスクを分担すると残業を減らせるでしょう。行事準備や資料作成は、得意であったり手が空いている保育士に分担すれば、作業効率が上がります。日常業務でも掃除や書類整理など仕事を役割分担すると、1人の保育士に負担が偏らず、短時間で終わる可能性があります。
保育士の残業を減らすには、業務の進捗状況を共有し、助け合える環境を作るのも大切です。保育士間のコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を築くと協力しやすい雰囲気が生まれ、保育士の残業時間が改善される可能性が高まるでしょう。
3.事務作業を効率化する
事務作業を効率化すると、保育士の残業を減らせる可能性があります。保育士の事務作業を効率化するには、園全体の仕組み作りが重要です。保育士の事務作業が手書きの保育園では、ICTツールや専用アプリを導入すると、入力や情報共有が簡単になります。
ほかにも、定型文やテンプレートを活用すると、保育士の書類作成の手間を省けるのでおすすめです。事務作業を効率化すると、保育士がほかの業務に集中して残業する時間を削減できる可能性が高まります。
残業が少ない保育園に転職する選択肢もある
現在勤めている保育園で残業が常態化している場合、思い切って残業の少ない園へ転職するのも選択肢の1つです。現在では、働き方の改善に力を入れている保育園もあり、業務効率化や労働環境改善に取り組む職場を選ぶと、残業時間を減らせる可能性があります。
保育士が転職する際には、求人情報で具体的な残業時間を確認しましょう。求人情報に残業時間の記載がない場合は、面接時に必ず確認してください。
保育士の残業が少ない職場の特徴
保育士の残業が少ない職場の特徴として、体制が整備され、労働時間が徹底的に管理されている点が挙げられます。また、行事の規模が小さく頻度も少ない保育園は残業が少ない傾向にあるでしょう。ここでは、保育士の残業が少ない職場の特徴を解説します。
職場の体制が整備されている
保育士の残業が少ない保育園の特徴として、職場の体制が整備されている点が挙げられます。業務マニュアルがしっかりと整備されている保育園では、新人や中途採用の保育士もスムーズに業務に馴染みやすいでしょう。マニュアルに基づいて業務を進めると、業務のスピードがアップする傾向にあります。また、保育補助や事務職員が配置されている保育園では、保育士が保育業務に専念できるでしょう。働きやすい体制が整備された職場は、保育士の負担が軽減するため、残業が少ない傾向にあります。
労働時間の管理が徹底されている
保育士の残業が少ない職場では、労働時間の管理が徹底されている場合が多いでしょう。管理がきちんとされている園では、保育士の勤務時間や休憩がしっかり守られている傾向にあります。タイムカードなどで正確に保育士の労働時間を記録し、保育士に適切な残業代を支払う仕組みが整っていると、サービス残業や持ち帰り仕事が発生しにくい場合が多いといえます。残業が少ない職場に転職したいという保育士は、労働時間を管理する体制が整備されている園を選ぶようにしましょう。
行事の規模が小さく頻度も少ない
行事の規模が小さく、頻度が少ない保育園では、保育士の残業は多くない傾向にあります。また、行事の規模が大きい保育園では、準備やリハーサルに時間を要し、保育士の負担が大きい傾向にあります。
一方、行事が小規模で頻度が少ない保育園は、保育士が余裕を持って準備を進められるため残業が少ないようです。当てはまるのは、小規模園が多い傾向にあります。残業が少ない園を探したい方は、行事の規模や頻度をチェックするのも1つの手だといえます。
保育士の残業に関してよくある質問
保育士の残業に関してよくある質問に、Q&A形式で回答します。
保育士は何時まで残業する?
保育士が何時まで残業するかは、その日のシフトや園の運営状況、時期などによって異なります。保育士の残業は平均3時間といわれています。ただし、あくまで平均であり、繁忙期はそれ以上に長く残業している場合も少なくありません。詳しくは「保育士の超過実労働時間数は平均3時間」をご覧ください。
保育士は残業代を請求できる?
保育士も一般の労働者と同様に、労働基準法によって残業代を請求する権利があります。未払いの残業代がある場合は、残業の記録を残し、弁護士や労働基準監督署に相談しましょう。保育士が残業代を請求する際は、残業をした記録や給料に関する証拠を揃えておくのが大切です。保育士も正当な労働の対価を受け取る権利があるのを理解し、不当な扱いを受けた際は適切な対応を行いましょう。
保育士は定時で帰れない?
業務が多いために定時で帰れない保育士も珍しくありません。保育士が定時に帰れるかどうかは、個人の能力だけでなく、職場の環境や体制によるところも大きいといえます。人手が足りていたり、業務の効率化を進めていたりする保育園では、保育士が定時退勤できる可能性も十分あるでしょう。残業が少ない職場を探している保育士は、本記事の「保育士の残業が少ない職場の特徴」を参考にしてください。
まとめ
保育士の残業は職場の体制によって左右されますが、業務の順位付けや効率化、保育士間でタスクを分担するなど、職場全体で工夫すると減らせる場合もあるでしょう。しかし、残業が常態化している職場では、保育士の労働時間が長い場合も少なくありません。保育士が残業をしても残業代を支払われない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談するのも1つの手です。
また、残業が少ない職場に転職するのも1つの解決策でしょう。
「残業が少ない保育園に転職したい」という保育士には、「レバウェル保育士」がおすすめです。「レバウェル保育士」は専任のアドバイザーがあなたの条件に合った求人をご紹介します。サービスはすべて無料で利用可能です。今すぐに転職するつもりがなくても、転職に興味がある方はお気軽にご登録ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。