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一斉保育とは?自由保育との違いや子ども・保育士のメリットデメリット

保育士のなかには、「一斉保育とは?」と気になる方もいるかもしれません。一斉保育とは、ねらいや目標をもとに子どもたち全員が同じ活動をする保育方法です。 この記事では、一斉保育(設定保育)とは何かを解説します。一斉保育に関する子ども・保育士それぞれのメリット・デメリット、保育園や幼稚園で行われる具体例もまとめました。
目次
一斉保育(設定保育)とは
一斉保育(設定保育)とは、保育士が計画した活動を、同じ時間に子どもたち全員で行う保育方法です。活動内容や使用する教材などが保育士によってあらかじめ計画されており、クラス全体で同じ動きをします。季節の製作活動や歌、リズム遊び、運動会の練習など、特定のねらいに沿った活動を子どもたちが一緒に取り組むのが特徴です。
一斉保育は、小学校への就学準備として取り入れられることもあり、保育園や幼稚園などの年中・年長児のクラスを中心に行われます。集団行動に慣れることや、指示を聞いて行動する力を育むことも目的のひとつです。
一斉保育と自由保育の違い
一斉保育と対比される保育方法には、自由保育があります。一斉保育と自由保育の違いは、活動の選択方法や育まれる能力などです。一斉保育では、「今日は折り紙で花を作ります」といった提案を保育士が行い、クラス全員が同時に折り紙に取り組みます。集団で活動するため、協調性やマナーが身につきやすい点が特徴です。
一方、自由保育では、保育士が子どもたちの意志で遊びや活動内容を選択できるような環境を作ります。たとえば、外遊びなのか室内遊びなのか、室内遊びのなかでも運動なのか製作なのか、子どもの興味関心によって遊びや活動が選択できるようにするのが特徴です。自分の意志で活動内容を決めるため、自主性や想像力が育まれやすくなるでしょう。なお、それぞれの良い点を取り入れるために、午前中は一斉保育、午後は自由保育のように「混合保育」を行っている園もあります。
子どもにとっての一斉保育のメリット
一斉保育では、子どもたちが平等な経験をできたり、就学準備につながったりします。ここでは、子どもにとっての一斉保育のメリットを解説します。
さまざまな活動を平等に経験できる
一斉保育のメリットは、すべての子どもが平等に多様な経験ができることです。一斉保育では、製作や音楽、運動などバランスよく活動を提供するため、興味関心を問わず新たなことにチャレンジしやすい環境を作れます。活発な子が実は集中して絵を描くことも得意だったり、初めてダンスに挑戦して楽しさを知ったりと、子どもたちの可能性を広げられるかもしれません。一斉保育では、幅広い経験を経て子どもの総合的な発達を促せるでしょう。
苦手なことにも挑戦するきっかけになる
一斉保育はクラス全体で活動するため、普段は避けがちな苦手な活動にも自然と挑戦する機会が生まれます。たとえば、普段は製作活動を避ける子も、みんなで楽しく取り組む雰囲気のなかで挑戦してみれば、「意外と楽しい」「できた!」という発見や成功体験を得られるかもしれません。また、苦手なことができるようになれば、新しい分野への挑戦する意欲や自信につながりやすくなります。
小学校入学に向けて協調性や集団行動を学べる
一斉保育では、協調性や社会性を育めることから、小学校への準備として重要な役割を果たします。一斉保育によって集団での生活に慣れておくと、小学校生活をスムーズに始める基盤となるでしょう。一斉保育では、「順番を待つ」「話を聞く」「指示に従う」といった集団生活に必要なスキルを自然と身につけられます。また、同じ目標に向かって友達と協力する経験は、小学校入学後の生活で活かせるでしょう。
一斉保育の保育園で働く保育士のメリット
一斉保育は、指導しやすかったりトラブルを回避しやすかったりと、保育士にとってもメリットがある保育方法です。ここでは、一斉保育の保育園で働く保育士が得られるメリットを解説します。
活動のねらいが明確で指導しやすい
一斉保育では、活動ごとにねらいや計画を立てるため、子どもたちへ指導しやすいメリットがあります。たとえば、「はさみの使い方に慣れる」といった明確な目標があると、「上手く切れなくても、正しく安全に使えるようになればOK」のように指導のポイントを絞りやすくなるでしょう。また、活動のねらいは指導の基準にもなるので、達成できそうか、できなそうか観察すれば、フォローが必要な子どもも見つけやすくなります。
子どもたち同士のトラブルを予測・回避しやすい
一斉保育では、保育士が活動内容や使用する教材をあらかじめ決めていることから、子ども同士のトラブルを予測・回避しやすいメリットがあります。「人気のおもちゃの取り合いが起きそう」「この活動では待ち時間が長くなりそう」といった場面を想定すれば、事前の対策がしやすいかもしれません。また、一斉保育では全員が同じ場所で活動するため、トラブルの芽を早期に発見しやすくなるのもポイントです。
子どもの発達段階の違いを把握しやすい
同じ活動を全員で行う一斉保育では、一人ひとりの発達段階や個性の違いが見えやすくなります。たとえば、製作活動では、細かい作業が得意な子、色の組み合わせが独創的な子、集中力が長続きする子など、それぞれの特性が明確に現れるでしょう。子どもたちの特性を把握すれば、一人ひとりに合わせた声かけやサポートができるようになります。また、クラス全体の発達の傾向は、次の活動計画のヒントになるかもしれません。
一斉保育のデメリット
一斉保育する際は、自由保育に比べて主体性が育みにくかったり、個性を伸ばしにくかったりすることにデメリットを感じるかもしれません。ここでは、一斉保育のデメリットを解説します。
主体性や自主性を育みにくい
活動内容が保育士によって決められている一斉保育では、子ども自身が「何をしたいか」を考え、選択する機会が限られます。そのため、自分で考えて行動する主体性や、自ら興味を持って取り組む自主性が育ちにくい可能性も考えられるでしょう。一斉保育のなかで主体性や自主性を育むためには、当番を決めたりお手伝いをお願いしたり、子どもが自ら動く場面を意識的に設ける必要があります。
個性を伸ばしにくい
一斉保育では、子どもたち一人ひとりの興味や関心、得意分野に合わせた活動が難しくなります。全員一律の活動では、それぞれの個性や強みを十分に伸ばしきれないと感じるかもしれません。また、発達の速度も子どもによって異なるため、活動のペースが合わない子が出てくることも課題です。得意な子には発展的な内容にしたり、不得意な子には基本から教えたりと、一斉保育のなかでも個性に合わせた対応が必要になることもあるでしょう。
一斉保育で行われる遊びの例
一斉保育では、運動や製作、リズム遊びなどが行われます。ここでは、一斉保育で行われる遊びの例をまとめました。
かけっこや体操などの運動遊び
一斉保育では、子どもたちの体力や運動能力の向上を目的とした活動が行われます。たとえば、かけっこや障害物競走、ボールを使った遊び、リトミックなどです。「しっぽ取りゲーム」「椅子取りゲーム」といった集団遊びからは、ルールを守ることや、勝敗に対する心の育ちを促せます。雨の日は「新聞紙遊び」や「風船バレー」など、室内の限られたスペースのなかでクラス全体で実施できる運動遊びを計画する必要があるでしょう。
季節や行事に合わせた製作
春には桜や菜の花の製作、夏には水遊びの思い出や花火の絵など、年間行事に合わせた製作活動も一斉保育の定番です。季節や行事に合わせた製作では、子どもたちが四季の変化を感じるとともに、はさみ・のり・絵の具などの道具の使い方も少しずつ習得していきます。完成した作品が園内に飾られ保護者や職員たちに披露されると、子どもたちの自己肯定感も高まりやすくなるでしょう。
ピアノの伴奏や音楽に合わせたリズム遊び
一斉保育では、音楽に関する活動としてピアノや楽器を使ったリズム遊びが行われます。保育士のピアノ伴奏に合わせて歌ったりリズム遊びをしたりすると、情緒面の発達を促すとともに、友達と一緒に表現する楽しさを味わえるでしょう。運動会・発表会といった目標に向かって、合奏や合唱、ダンスなどの練習をすれば、クラスの友達といっしょに達成感を味わう体験になります。
保育園や幼稚園で行われている一斉保育の具体例
保育園や幼稚園では、保育理念や方針などをもとに一斉保育が行われています。ここでは、保育園や幼稚園で行われている一斉保育の具体例を紹介するので、参考にしてみてください。
年齢別の興味関心に合わせた活動
保育園や幼稚園では、年齢別の敏感期に合った一斉保育が実施されていることがあります。敏感期とは、子どもが特定のことに強い興味を持ち、その能力を獲得しようとする感受性の高まる時期のことです。たとえば、0〜1歳児クラスは感触を楽しむ粘土、2〜3歳児クラスは指先を使ったシール貼り、4〜5歳児クラスは季節を表現する絵など、年齢別の興味関心や発達段階に合わせた一斉保育を計画します。保育園によっては、外部から講師を招き、専門的な知識を持った方に年齢に合った指導を依頼する場合もあるようです。
就学に向けた集団での活動
保育園によっては、乳児期は一人ひとりとじっくり向き合う担当制保育、幼児期は就学に向けた一斉保育のように、年齢によって保育方法を分けているところもあります。幼児クラスの一斉保育では小学校入学を見据え、当番活動やクラス全体での話し合い活動が行われることもあるようです。また、一斉保育のなかで、ひらがなへの興味を育む活動や英語教室など、教育的な活動も取り入れている場合もあるでしょう。
クラスの状況に合わせた活動
一斉保育のねらいや活動内容は、クラス担任が子どもたちの状況に合わせて考えることもあります。たとえば、友達関係のトラブルが増えてきたクラスでは、「協力する楽しさ」を感じられる集団ゲームを多く取り入れたり、言葉でのコミュニケーションが苦手な子が多いクラスでは、ごっこ遊びや劇遊びを通して表現力を育んだりします。一斉保育によりクラスがまとまれば、子どもたちの協調性や社会性がより育まれやすくなるでしょう。
保育士が押さえておきたい一斉保育のポイント
保育士が一斉保育をする際は、目的を明確にしたり状況に合わせて臨機応変に対応したりすることが大切です。ここでは、保育士が押さえておきたい一斉保育のポイントを紹介します。
目標や目的を明確にしたうえで保育計画を立てる
一斉保育では、「なぜこの活動を行うのか」という目的やねらいを明確にすることがポイントです。単に「毎年この時期はこの製作をする」という慣習ではなく、「色の混色を楽しむ」「友達と協力する経験をする」など、子どもたちの発達段階や興味関心に合わせた明確な目標を設定します。活動の計画を立てる際は、準備物や時間配分、環境設定、声かけのポイントなども具体的に考えておくとスムーズな進行につながるかもしれません。活動後は、「子どもたちはどう反応したか」「ねらいは達成できたか」を評価し、次の計画に活かしましょう。
活動中の子どもの行動を予測して環境を整える
一斉保育で子どもたちに同じ行動をしてもらうためには、活動中に困りそうなことや危険・トラブルの種など予測し、適切な環境を整えることが大切です。たとえば、製作活動では「のりづけの場所を間違えそう」といった状況を想定し、分かりやすく説明する方法を考えます。子どもたちの考える力を伸ばす際は、正解を示すよりも試行錯誤する環境や土台を整えてあげるのがポイントです。
子どもたちの様子よく観察して臨機応変に対応する
一斉保育では、子どもたちの様子をよく観察し、臨機応変に対応する柔軟さが求められます。予定していた活動に子どもたちが興味を示さない場合は、無理に予定通り進めるのではなく、そのときの子どもたちの関心に合わせて内容を修正したり、別の活動に切り替えたりする判断も必要です。反対に、予想以上に活動に熱中している場合は、計画していた時間を延長することも検討しましょう。一斉保育が計画通りに行かなかったときは、次の活動計画に反映させることで、子ども主体の一斉保育が実現できます。
一斉保育に向いている保育士の特徴
計画的な人やリーダーシップがある人は、一斉保育を実施している保育園で働くことに向いているかもしれません。ここでは、一斉保育に向いている保育士の特徴を紹介します。
計画的に物事を進められる人
一斉保育は活動のねらい設定や教材準備、時間配分などが大切なため、計画的に物事を進められる人が向いている可能性があります。具体的には、週案や月案を綿密に立て、必要な教材を事前に準備し、活動の展開を時間内におさめるなど、段取り良く保育を進められる人です。ただし、計画通りに進めることにこだわりすぎると、子どもたちの自発性や興味関心を見逃してしまう可能性もあるため、計画と柔軟性のバランスが問われるでしょう。
リーダーシップがある人
一斉保育を取り入れている保育園では、クラス全体をまとめられるリーダーシップのある人に向いている傾向があります。子どもたちをまとめるためには、興味を引きつけ、わかりやすい言葉で説明し、活動の流れをスムーズに組み立てる力が必要です。また、子どもたちが「先生と一緒だから頑張れる」と感じられる存在になることで、一斉保育の質が向上します。保育士自身が活動を楽しむ姿勢も、子どもたちの意欲を引き出すリーダーシップとして役立つでしょう。
子どもたちと達成感や一体感を味わいたい人
クラス全体で同じ目標に向かって取り組み、達成感や一体感を味わいたい人は、一斉保育に向いているかもしれません。一斉保育では、目標を達成できたり苦手なことができるようになったりする場面があり、子どもたちと一緒に成長や感動を味わえます。みんなで協力して作り上げた壁面製作や、運動会の演技が成功したときの喜びなど、クラス全体での成功体験を大切にする人は、一斉保育の魅力を存分に引き出せるでしょう。
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一斉保育に関するよくある質問
ここでは、一斉保育に関するよくある質問にQ&A形式で答えます。一斉保育の保育園で働くか検討している保育士の方は、参考にしてみてください。
一斉保育は古い?
一斉保育は保育園や幼稚園で取り入れられている一般的な保育方法として古く感じる場合もあるかもしれませんが、決して時代遅れというわけではありません。子どもたちの主体性や個性を大事にする新たな流れとして自由保育を取り入れている保育園であっても、社会性や協調性を身につけるために一斉保育の時間を設けている場合があります。一斉保育と自由保育はどちらが優れているわけではなく、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、目標やねらいに合わせて実施することが大切です。
一斉保育の保育園で働いて後悔することは?
子どもたちを厳しく管理・指導する一斉保育の園に入職した場合は、後悔する可能性があります。一斉保育をしている保育園のなかには、食事中のマナーや集団行動のルールなどに関して、厳しく指導しているところもあるかもしれません。ただし「一斉保育=自由がない」ではないので、一斉保育が一概に悪いと決めつけるのは避けましょう。
園選びの際は、一斉保育・自由保育の2軸で決めるのではなく、園の理念や具体的な保育内容、職員の雰囲気などから総合的に検討することが大切です。面接や園見学のときに現場の雰囲気を確認すると、入職した後悔を防ぎやすくなるでしょう。
一斉保育と自由保育の保育園はどちらが働きやすい?
一斉保育と自由保育の園、どちらが働きやすいかは保育士の性格や保育観によって異なります。一斉保育の園は、目標やねらいが明確なため、計画性のある人やリーダーシップを発揮できる人は働きやすいかもしれません。一方、臨機応変な対応が得意な人や子どもの主体性を伸ばしたい人は、自由保育の園のほうが向いている可能性があります。一斉保育の園に興味がある方は、この記事の「一斉保育に向いている保育士の特徴」も参考にしてみてください。
まとめ
一斉保育とは、保育士が計画した活動をクラス全員で行う保育方法です。すべての子どもが平等に多様な活動を経験できるほか、集団行動やルールを学べる点が特徴となっています。小学校入学に向けた準備としても効果的で、年中・年長児のクラスで一斉保育を取り入れている場合もあるでしょう。
一斉保育は、保育士にとっても活動のねらいが明確で指導しやすく、トラブルの予測や対応がしやすいメリットがあります。ただし、子どもの主体性や個性を十分に伸ばしにくい面もあるため、自由保育と組み合わせて実施する園もあるようです。
一斉保育をする際は、子どもの発達段階に合わせた明確な目標設定や、臨機応変な対応力が求められます。計画性とリーダーシップを持ちながらも、子どもたちの様子を見ながら柔軟に活動を調整していくことが大切です。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。