最終更新日:
乳児保育とは?0~2歳児担当に必要なスキルや仕事内容、やりがいを解説

「乳児保育ってどんな役割があるんだろう?」と気になる方もいるかもしれません。0〜2歳の子どもは食事や排泄、睡眠など生活の基礎を一人で行うのが難しいため、保育士のサポートが必要になります。また、大人やほかの子どもとの関わりを通して五感や感情を育むことも大切です。この記事では、乳児保育の必要性や保育士の仕事内容、求められるスキルを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
乳児保育とは?
乳児保育とは、主に0〜2歳の子どもを対象に、生活面のサポートと心身の成長を支える保育です。「児童福祉法」によると「乳児=満1歳未満の子ども」と定義されていますが、一般的に保育園などの施設では0〜2歳児を「乳児クラス」、3〜5歳児を「幼児クラス」と分けています。
乳児期は、まだ自分で身の回りのことをスムーズに行うのは難しい年齢です。そのため、食事や排泄、睡眠といった基本的な生活習慣を丁寧に支え、安全に過ごせるように見守ることが乳児保育の中心になります。さらに、乳児期は心と体が大きく成長する時期でもあります。遊びやふれあいを通して、子どもの五感や精神的な成長を育むことも乳児保育の大切な役割の一つです。
出典
e-GOV法令検索「児童福祉法 第4条」(2025年9月12日)
保育園における乳児保育の必要性
保育園では、家庭と連携しながら日々の生活習慣や情緒の安定をサポートする役割を果たしています。ここでは、保育園における乳児保育の必要性についてまとめました。
年齢や発達に応じた成長を促す
保育園は、乳児の成長を年齢や発達に応じて支援する場です。保育園には乳児の発達に関する知識と経験を持つ保育士が在籍し、一人ひとりの段階に合わせた保育を行っています。
たとえば、はいはいや歩行を促す環境を整えたり、手先を使うおもちゃを用意したりすることで、子どもは新しいことに挑戦するきっかけを得られます。こうした関わりは、子どもの興味や可能性を広げ、心と体の発達を促すうえで重要なものです。乳児保育は、家庭ではなかなか得られない専門的なサポートを受けられることが大きな特徴といえるでしょう。
社会性を身につけ他者との繋がりを作る
乳児期の子どもにとって、保育園は社会性を育む場でもあります。保育園が保護者以外の人と関わる最初の機会となり、ほかの子どもや保育士との触れ合いを通じて「他者に関心を持つ」きっかけを得られるからです。さらに、集団生活の中ではルールを守ったり友達と気持ちを共有したりする習慣が自然と身につきます。乳児保育は、小さな年齢のころから社会性を育める貴重な環境といえるでしょう。
保護者の仕事と育児の両立を支える
乳児保育は、保護者が仕事と育児を両立するうえで欠かせない存在です。共働き家庭が増える現代では、日中に子どもを安心して預けられる場所があることで、保護者は安心して仕事に専念できます。
さらに、子育てには不安や悩みがつきものですが、日々子どもの成長を見守る保育士は、保護者にとって心強い相談相手にもなります。保育士と協力しながら子育てに向き合うことは保護者にとって支えとなり、子どもの成長にも繋がるでしょう。
乳児保育の仕事内容
乳児保育の仕事は多岐にわたりますが、ここでは主な仕事内容について解説します。乳児保育に興味のある方はチェックしてみてください。
食事のサポート
ミルクや離乳食の準備から、自分で食べようとする気持ちを育む援助まで、子どもの発達に合わせた食事のサポートを行います。食事の時間は、子どもとじっくり向き合い、信頼関係を築く大切な機会です。子ども一人ひとりの食欲や好みを把握し、健やかな成長を促すことが求められます。
排泄のケアやトレーニング
おむつ交換やトイレトレーニングのサポートも大切な仕事です。衛生面に気を配りながら、子どもが気持ちよく過ごせるよう、丁寧なケアが求められます。トイレトレーニングでは、子どもの年齢や発達段階に合わせて焦らずに見守り、自立心を育んでいくことが重要です。
午睡の見守り
午睡中の安全管理は、乳児保育で最も重要な業務の一つです。SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクを避けるため、子どもの体勢や呼吸の仕方、布団の位置などを定期的にチェックします。子どもたちが安心してぐっすり眠れるように、細心の注意を払って見守ることは、命を守るうえで欠かせない仕事です。
遊びを通した学び・成長機会の提供
遊びは、子どもの心と体を育む大切な活動です。保育士は、年齢や発達段階に合わせた遊びを計画し、子どもが五感を使い、好奇心を育めるような環境を整えます。外遊びや室内遊び、季節のイベントなどを通して豊かな感性や運動能力、社会性を育むことは、乳児保育の重要な役割といえるでしょう。
安全な環境づくり
子どもの安全を守るために保育室の整理整頓やおもちゃの消毒、危険物の管理を徹底します。園庭や公園では、正しく遊具を使えているか、道に飛び出さないか注意深く観察することも保育士の仕事です。常に危険を予測し、安全な環境を保つことで、子どもたちがのびのびと安心して過ごせる場を提供できます。
事務作業と保護者対応
連絡帳の記入や園だよりの作成といった事務作業も大切な仕事です。毎日の連絡帳には、食事量や排泄・睡眠のタイミング、遊んだ内容など子どもの様子を具体的に書き、保護者とのコミュニケーションを円滑にすることが求められます。園だよりでは行事のお知らせや園からの連絡事項を記載します。これらによって保護者ともスムーズに連携でき、信頼関係を築けます。
乳児保育の1日のスケジュール例
乳児保育では、子どもの生活リズムや発達に合わせたきめ細やかな保育が行われます。登園から降園までの1日の流れの例を見てみましょう。
時間帯 | 一日の流れ |
登園・順次受け入れ | 健康観察や家庭での様子を聞き取り、安心して過ごせるように準備 |
午前 | ミルクや離乳食を個別に対応。遊びやふれあい、必要に応じて午前の睡眠 |
昼前後 | 給食(離乳食)やおむつ交換。食べられる食材や量は一人ひとりに合わせる |
午後 | 午睡(お昼寝)。眠い子が安心して眠れるように環境を整える |
目覚め後 | ミルクやおやつをとり、自由遊びや触れ合い遊びを楽しむ |
夕方 | おむつを交換し、保護者へ一日の様子を伝えながら順次降園 |
乳児保育の1日は、食事・睡眠・遊び・排泄などを子どもの様子に合わせて行うことが基本です。幼児クラスの場合、行事前の準備や練習など集団生活を意識した活動も多くなりますが、乳児保育は、生活リズムや発達の違いに応じて柔軟に対応します。
乳児クラスを担当する保育士に必要なスキル
乳児クラスを受け持つ保育士には、子どもの発達段階に合わせた専門的な知識と、日々の関わりに必要な細やかな配慮が求められます。ここでは、乳児保育を担う保育士に必要とされるスキルについて見ていきましょう。
月齢や発達段階に応じた保育内容の計画スキル
乳児保育士には、一人ひとりの発達段階に応じた保育内容を計画する力が求められます。乳児は生まれた月によって発達の差が大きく、できることとできないことに差があります。家庭とも適切に連携をとりながら、子どもの発達を丁寧に見極め、興味を持てるような遊びや活動を取り入れることが必要です。
高い観察力と危険予知能力
乳児を担当する保育士には、子どもの小さな変化を見逃さない観察力と危険を予測する力が欠かせません。乳児は言葉で自分の気持ちや体調を上手く伝えられないため、泣き方や表情、動きなどのサインから状態を読み取る必要があるからです。
さらに、SIDS(乳幼児突然死症候群)や誤飲といった重大な事故を防ぐためには、常に周囲の環境に注意を払い、先回りしてリスクを避けることが求められます。乳児は予想外の行動をとることもあり、観察力と危険予知能力は特に必要となるスキルです。
子どもに対する愛情
乳児保育では、子どもたちに愛情をもって接する姿勢が大切です。子どもはまだ自分の気持ちを十分に表現できないため、保育士がその行動や感情をありのまま受け止め、理解しようとすることが重要です。安心できる関わりの中で子どもは自分を自由に表現し、信頼関係を築いていきます。温かく寄り添う保育士の愛情は、子どもの心の成長を支える土台になります。
保護者とのコミュニケ―ション能力
乳児保育士には、保護者と信頼関係を築くためのコミュニケーション力も必要です。子どもの1日の様子を正確に伝えることや、家庭での様子を詳しく聞き取ることは、子どもの健やかな成長を支えるうえで欠かせません。保育士と保護者が円滑に連携することで、子どもは家庭と園の両方で安心して過ごせます。
乳児保育を担当する魅力とやりがい
乳児保育を担当することで子どもの成長を間近で見守り、日々の小さな変化に立ち会えます。ここでは、乳児保育に携わる保育士ならではのやりがいや喜びについてまとめました。
日々の成長を間近で感じられる
乳児保育の魅力のひとつは、子どもの日々の成長を間近で感じられることです。乳児期は心身の発達が著しく、「初めてつかまり立ちをした」「名前を呼ぶと笑ってくれた」など、成長の瞬間が次々と訪れます。保育士は、子どもたちの成長を一つひとつ見守り、達成感や喜びを一緒に感じられるだけでなく、その喜びを保護者と共有できることも大きなやりがいです。子どもの成長に立ち会えることは、乳児保育ならではの魅力といえるでしょう。
個々に合わせた保育を工夫できる
乳児保育では、一人ひとりに合わせた保育を工夫できる点も魅力です。乳児は月齢や発達の差が大きいため、それぞれに合った遊びやおもちゃや環境を準備する必要があります。個々に沿った保育環境を考えられるのは、乳児保育ならではの楽しみでもあるでしょう。また、自身が実践した保育で子どもが楽しそうに遊ぶ姿を見ることは、保育士にとっても喜びとなります。
子どもと深い信頼関係を築ける
乳児クラスの保育では、子どもと深い信頼関係を築けることも大きなやりがいです。クラスの人数が比較的少ないため、子ども一人ひとりとじっくり向き合う時間を持てます。その中で、困ったときに助けを求めてくれたり、人見知りの子が自分にだけ笑顔を見せてくれたりする瞬間は、信頼が育まれた証といえるでしょう。
保護者と二人三脚で育児を支える
乳児保育は、保護者と一緒に子育てを支えられる点でも意義があります。初めての育児では、不安や戸惑いを抱える保護者が少なくありません。そのような中で、保育士が相談に乗ったり、安心して子どもを預けられるようサポートしたりすることは、保護者にとって大きな支えになります。保護者と二人三脚で子どもの成長を支えられることは、保育士にとって貴重な経験といえるでしょう。
保育士が乳児保育に携わる方法
乳児保育に携わる方法には、いくつかの選択肢があります。ここでは、保育士がどのような形で乳児保育に携われるのかまとめました。
保育園で乳児クラスを希望する
乳児保育に携わりたいなら、認可保育園で乳児クラスを希望する方法があります。認可保育園では0歳から5歳児までを預かることが多いため、就職や転職の際に「乳児クラスを希望する」と伝えてみましょう。新卒保育士の場合は、複数担任制の乳児クラスに配属されることが多く、希望がとおりやすい傾向にあります。乳児保育の基礎をじっくり学びたい方や、チームで保育を進めたい方にとっておすすめです。
乳児専門の保育施設で働く
乳児保育の専門性をさらに高めたい場合は、乳児だけを預かる以下のような施設で働くことも選択肢の1つです。
小規模保育園:0~2歳児を少人数で預かる施設で、一人ひとりに寄り添った保育が可能
乳児院:家庭で暮らせない1歳未満の子どもが入所する児童福祉施設
託児所:一時的に子どもを預かる施設で、対象年齢は施設によって異なる
これらの施設はそれぞれに特色があるため、実際に見学をして施設の雰囲気や保育方針を確認しておくと安心でしょう。
ベビーシッターとして働く
家庭での子どもの見守りや育児サポートを行うベビーシッターとして働く方法もあります。マッチングサービスや派遣サイトを通じて、保育に携わりたい年齢や希望の時間帯を選んで働けるのが特徴です。家庭と直接契約を結ぶ場合も多いため、柔軟な働き方がしやすい点も魅力の1つでしょう。子どもと一対一でじっくり関わりたい方や、自分のペースで仕事をしたい方におすすめです。
乳児保育に関するよくある質問
ここでは、乳児保育に関するよくある質問にお答えします。ぜひ参考にしてみてください。
乳児保育士に必要な資格はありますか?
乳児保育士として働くには、保育士資格が必要ですが、乳児クラスを担当するために特別な資格を新たに取得する必要はありません。保育士資格は0歳児から就学前の子どもまで、幅広い年齢の保育をカバーしています。乳児保育でスキルアップしたい方は、ベビーシッターや絵本専門士などの資格を取得すると転職の幅が広がるかもしれません。
乳児保育と幼児保育の違いは何ですか?
乳児保育と幼児保育の大きな違いとして、保育の目的と人員配置が挙げられます。乳児保育では、食事や睡眠といった基本的な生活習慣の援助が中心で、命を守る「養護」の役割が強いのが特徴です。そのため、保育士一人あたりの子どもの数が少なく設定されています。
一方、幼児保育は集団生活を通して社会性を育む「教育」の側面が強く、乳児保育よりも保育士が担当する子どもの数が多いのが特徴です。
乳児保育で大切な3つの視点とは何ですか?
乳児保育で大切な3つの視点は、「健やかにのびのびと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」です。健やかに育つためには、健康で安全に行動できる環境を整えることが欠かせません。気持ちの通じ合いでは、保育士が愛情を持って接し、子どもが「大切にされている」と感じられる関係づくりが大切です。また、感性を育てるためには、子どもの好奇心を尊重することは、自立心にも繋がります。
まとめ
乳児保育は、0~2歳の子どもの生活面のサポートと心身の成長を支える大切な仕事です。食事や排泄、睡眠といった基本的な生活習慣を丁寧に支えながら、遊びやふれあいを通して子どもの五感や感情を育みます。
保育園での乳児保育は、専門的な発達支援や社会性を育む場として、また保護者の仕事と育児の両立を支える役割も果たしています。子どもの成長を間近で感じられ、保護者とともに子育てを支えられることが、乳児保育の大きなやりがいといえるでしょう。
「乳児保育に携わって専門性を高めたい」「乳児保育に興味があってキャリアの幅を広げたい」という方は、ぜひレバウェル保育士ご相談ください。保育業界に特化した転職エージェントのレバウェル保育士では、専任アドバイザーが一人ひとりのキャリアプランを丁寧にサポートします。乳児保育に力を入れている園や、働きやすい勤務環境が整った職場など、あなたの希望に合った求人を紹介可能です。無料でご利用いただけるので、少しでも興味がある方はお気軽にご相談ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。