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保育士の処遇改善手当って何?加算の種類を対象者、もらえる金額を解説

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「保育士の処遇改善手当って何?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。保育士の処遇改善手当とは、保育士の給与水準を向上させるために国が実施している処遇改善加算で支給される補助金のことです。 この記事では、処遇改善手当の3つの区分や支給対象者、支給方法を解説します。各自治体独自の処遇改善についても紹介するので、ぜひご一読ください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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保育士の処遇改善手当とは

こども家庭庁の「令和7年度以降の処遇改善等加算について(p.5)新規タブリンク」によると、保育士の処遇改善手当とは、2013年から国が実施している「処遇改善等加算」で支給される補助金のことです。この制度は、保育士の給与水準を向上させるための取り組みとして始まりました。保育園が国から補助金を受け取り、職員に給与として分配する仕組みです。

保育士の処遇改善手当とはの画像

これまでは処遇改善等加算I・II・IIIの3種類がありましたが、令和7年度からは「保育士処遇改善等加算」として一本化されました。この変更により、事務手続きが簡素化され、多くの保育施設が利用しやすくなっています。制度の目的は変わらず、保育士の賃金向上を通じて人材確保と質の強化を図ることです。

出典

こども家庭庁「子ども・子育て支援制度新規タブリンク」(2025年9月4日)

保育士の処遇改善等加算には3つの区分がある

保育士が処遇改善手当をもらうには、勤務先の園が保育士処遇改善等加算の要件を満たしている必要があります。この加算制度には3つの区分があり、それぞれ加算要件が異なっているのが特徴です。 保育士処遇改善等加算の画像

ここでは、3つの区分の加算要件と加算額を解説します。

【基礎分】区分1

区分1は、経験年数に応じた昇給を実現するために支給される加算です。加算を受けるには保育園がキャリアパス要件を構築することが求められます。たとえば、役職や業務内容に応じた給与体系を整備したり、スキルアップの計画を立てて研修や指導を行ったりするなどの取り組みが必要です。

加算額は「在籍児童数×区分1単価×加算率」で計算されます。常勤職員全体の平均経験年数により2〜12%の範囲で加算率が決まるので、保育士経験が長い職員が多く在籍している職場ほど加算が多くなる仕組みです。保育園は受け取った加算を自由に職員へ分配できますが、原則として勤続年数を基準とした職員の昇給に使うよう指定されています。

【賃金改善分】区分2

区分2は職員の賃金改善を目的とした加算です。加算率は平均経験年数により6%または7%を目安に、職員1人あたり月9,000円相当の改善を実現できる水準に調整されます。こども家庭庁の「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(p.2)新規タブリンク」によると、令和7年度に限り区分1のキャリアパス要件を満たしていない職場は、区分2からキャリアパス要件分の加算がマイナスされるので注意が必要です。

区分2の加算が確実に職員の賃金改善に使われるよう、「加算を除いた賃金が加算前の賃金を下回らないこと」「加算額以上の賃金改善を行うこと」などが要件として定められています。

【質の向上分】区分3

区分3は、職員の技能や経験の向上に応じた賃金の改善を実現するための加算です。保育業界全体で、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という新しい役職を設け、保育士が段階的にキャリアアップできるような制度を構築しています。

副主任保育士・専門リーダーには1人当たり月4万円、職務分野別リーダーには1人当たり月5,000円を加算し、役職に応じて給与を上げられるようにしているのが特徴です。加算の要件は、「役職者が在籍している」「区分2と同様に加算後の給与が下がらない状態を実現している」「役職などに応じた給与体系を周知している」などが挙げられます。

出典

こども家庭庁「子ども・子育て支援制度新規タブリンク」(2025年9月4日)

保育士の処遇改善手当の支給対象者

処遇改善手当はすべての保育士に支給されるわけではありません。ここでは、支給対象になる保育士を詳しく解説します。

対象となる保育施設

処遇改善手当の対象となるのは主に認可保育園に勤める保育士です。具体的には、以下のような施設で働く保育士が対象になります。

  • 認可保育園(公立、私立)

  • 小規模保育事業

  • 事業所内保育事業

  • 認定こども園

  • 幼稚園

上記の施設で働く保育士は、勤務先の施設が処遇改善加算の申請を行い、要件を満たしていれば手当を受け取れます。また、認可外ですが、企業主導型保育事業も支給対象です。

区分別の対象職員

保育士の処遇改善手当は、区分によって対象となる職員が異なります。区分1と区分2はすべての職員が対象となりますが、区分3を受給するには、保育士等キャリアアップ研修を受講して該当の役職に就く必要があります

区分 対象者
区分1 全職員
区分2 全職員
区分3
  • 副主任保育士
  • 専門リーダー
  • 職務分野別リーダー
  • 年度内に研修修了予定で、該当する役職の職務命令を受けている者

区分3の対象となるのは、副主任保育士や専門リーダー、職務分野別リーダーなどの役職に就いている職員になります。また、年度内に研修修了予定で、該当する役職の職務命令を受けている者も対象です。賃金改善後のバランスを踏まえ、必要に応じて園長以外の管理職も対象に含まれる場合があります。

パートや派遣の取り扱い

パート勤務や派遣として働いている保育士も、一定の要件を満たしていれば処遇改善手当の対象となります。処遇改善手当は、保育士の経験年数や仕事内容に応じて判断されるのが一般的です。支給される金額は、雇用形態や各保育園の規定によって異なります。詳しい条件について知りたい場合は、勤務先に確認しましょう。

保育士以外の職種の取り扱い

保育士以外の職員も処遇改善手当の支給を受けられます。こども家庭庁の「処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)(第3版)(p.1)新規タブリンク」によると、要件を満たしていれば事務職員・調理員・栄養士・スクールバスの運転手といった、保育施設で働くすべての職種の方が支給対象です。

保育施設全体の質を向上させるには、保育士だけでなく、保育を支える職種のスタッフも重要です。そのため、処遇改善の対象は幅広い職種に及んでいます。

転職した場合の取り扱い

こども家庭庁の「処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)(第3版)(p.8)新規タブリンク」によると、転職した人も加算の対象に含まれるので、転職先が処遇改善等加算を申請していれば処遇改善手当をもらえる可能性が高いです。保育士としての経験年数の平均で加算率を計算するので、これまでの保育士としての経験も含めて転職先の園に報告する必要があります。転職の際には、在職証明書を用意し、正確な経験年数を新しい職場に伝えることが大切です。

出典

こども家庭庁「子ども・子育て支援制度新規タブリンク」(2025年9月4日)

処遇改善手当をもらえない保育士

保育士の中には、処遇改善手当を支給されない人もいます。以下の条件が当てはまる保育士は処遇改善手当の支給対象外です。

  • 認可保育園・企業主導型保育事業以外の施設で働いている

  • 勤務先の保育園が処遇改善等加算の要件を満たしていない

  • 勤務先の保育園が処遇改善等加算の申請をしていない

  • 産休・育休中である

処遇改善手当がもらえない施設に勤務している保育士は、対象となる施設への転職を検討するのも選択肢です。処遇改善手当が支給される施設に転職すれば、収入アップにつながる可能性があります。レバウェル保育士は、認可保育園や認定こども園など、処遇改善手当が支給される職場を紹介することが可能です。転職を検討している方は、下記ボタンからご相談ください。

保育士がもらえる処遇改善手当の金額

処遇改善手当の目安として、区分2は常勤一人あたり9,000円、区分3は副主任保育士・専門リーダーに4万円、職務分野別リーダーに5,000円の支給が設定されています。しかし、実際はこのとおりに支給されない場合もあるようです。

処遇改善加算の補助金を職員にどのような割合で分配するかは、各保育園が自由に決めることが可能です。そのため、若手の改善率を高めることでベテランの給与改善幅が小さくなってしまったり、時短パートの処遇を改善することで正社員の保育士の取り分が少なくなったりする可能性もあります。各園では業務内容や役職に応じて給与規定が決められているので、不安な人はどのような基準で手当が決まっているか確認しておくのがおすすめです。

保育士の処遇改善手当の支給日・支給方法

保育士の処遇改善手当の支給方法は、保育園によって異なります。月々の給料に上乗せして支払う園もあれば、賞与でまとめて支払う園もあるようです。給与明細には「処遇改善手当」「キャリア手当」などの名称で記載されているのが一般的ですが、記載名に決まりはありません。

処遇改善手当の支給方法は区分によっても異なります。区分別の支給方法は、以下のとおりです。

区分 支給方法
区分1 定期昇給など
区分2 基本給や月々の手当、賞与、一時金など
区分3 基本給や役職手当・職務手当などにより改善

区分2と区分3の手当は合計額のうち、半分以上は毎月の手当や基本給で支給しなければならないというルールがあります。処遇改善手当の詳しい支給日や支給方法については、勤務先の保育園の担当者に確認しましょう。

出典

こども家庭庁「子ども・子育て支援制度新規タブリンク」(2025年9月4日)

各自治体による保育士の処遇改善手当

国の処遇改善加算に加えて、独自の処遇改善を実施している自治体もあります。ここでいくつかの例を見ていきましょう。

東京都江戸川区

東京都江戸川区では、区独自の補助1万円相当と東京都キャリアアップ補助4万円相当を合わせて、月額最大5万円相当を保育士の給料に加算しています。また、常勤の保育士を対象に、勤続5年に達した翌年度に10万円の報奨金を支給する制度も設けているようです。

江戸川区は、独自の取り組みにより、保育士の定着率向上と人材確保を目指しています。国の処遇改善加算に加えて、自治体独自の支援策を実施し、保育士の働きやすい環境づくりに力を入れているといえるでしょう。

千葉県船橋市

千葉県船橋市では、市内の私立保育園等で働く保育士に月額4万5,100円、賞与9万7,560円を上乗せして支給する独自の制度を実施しています。保育士への手厚い支援により、市内の保育施設での人材確保を図っているのが特徴です。

船橋市の支援は保育士の処遇改善に積極的に取り組んでいる自治体の1つです。自治体の独自支援は、保育士にとって勤務地を選ぶ際の重要な判断材料となっています。

出典

船橋市役所「船橋市新規タブリンク」(2025年9月4日)

大阪府大阪市

大阪府大阪市では市内民間保育施設で勤務する保育士に対して、「1〜7年目」「10年目」「15年目」「20年目」「25年目」といった節目に一時金を交付しています。交付額は常勤保育士に20万円、短時間勤務保育士に10万円です。

こういった制度は、保育士のキャリアに応じた評価と長く働き続けるためのインセンティブとなるでしょう。勤続年数を重ねるごとに節目の報奨があることで、長期的なキャリア形成を支援する取り組みとなっています。

出典

大阪市役所「大阪市内で保育士として働く方を支援します新規タブリンク」(2025年9月4日)

岡山県岡山市

岡山県岡山市では、指定の施設に勤務する保育士に月額約6,000円の賃金を上乗せする支援を行っています。また、住居面での支援として、園が用意した宿舎に最長3年間無料で入居できる制度も提供しているようです。

こうした経済的なサポートは、新人保育士の定着率向上や人材不足解消に役立つでしょう。

出典

岡山市役所「岡山市で保育士になりませんか?新規タブリンク」(2025年9月4日)

保育士の処遇改善手当に関してよくある質問

ここでは、保育士の処遇改善手当に関してよくある質問にお答えします。

パートの保育士の処遇改善手当はいくら?

パート保育士の処遇改善手当の金額は、勤務先の保育園の規定によって異なります。月額3,000円~1万円支給される場合や、時給が100円アップする職場もあるようです。詳しい金額や計算方法は各保育施設によって異なるので、勤務先に確認することをおすすめします。

パートの保育士の処遇改善手当に関して詳しく知りたい方は、「パート保育士の処遇改善手当はいくら?支給条件や対象者を解説」をご確認ください。

保育士の処遇改善手当は保育園から年度末に支給される?

保育士の処遇改善手当の支給タイミングは、保育園によって異なります。毎月の給与に上乗せして支給する園もあれば、賞与時や年度末にまとめて支給する園もあります。国の制度では、区分2と区分3の手当の合計額のうち、半分以上は毎月の給与で支給するよう定められていますが、残りの部分は園の裁量で支給方法を決めることが可能です。

保育士の処遇改善手当はいつまでもらえる?

処遇改善手当は、基本的に国の政策として継続している限り支給されます。現時点では終了時期は定められていませんが、制度の内容や支給金額は年度ごとに見直される可能性があります。現状としては、保育士として働き続け、勤務先の保育園が処遇改善加算の申請を継続している限り手当を受け取ることが可能です。

保育士の処遇改善等加算I・II・IIIが一本化した理由は?

保育士の処遇改善加算は処遇改善等加算I・II・IIIの3種類がありましたが、制度の難しさと手続きの複雑さがハードルになって、要件を満たしていても申請しない保育園が出てきました。そのため、事務手続きの負担を軽減し、多くの園が申請しやすい状態にするために制度が一本化されました。

現在は「保育士処遇改善等加算」として3つの区分を設けて運用されています。この変更により、申請手続きが簡素化され、より多くの保育施設が制度を活用できるようになることが期待されています。

まとめ

保育士の処遇改善手当は、保育士の賃金向上を目的とした国の制度です。令和7年度からは処遇改善等加算が一本化され、「基礎分(区分1)」「賃金改善分(区分2)」「質の向上分(区分3)」の3つの区分で構成されています。

処遇改善手当は常勤保育士だけでなく、パート勤務や保育士以外の職種も条件を満たせば支給対象となるのが特徴です。支給金額や方法は各保育園によって異なりますが、区分2では常勤一人あたり月9,000円、区分3では役職に応じて月5,000円~4万円の処遇改善が目安となっています。

また、各自治体も独自の処遇改善策を実施しており、勤務地によって追加の手当が受けられる可能性もあります。保育士として働く際は、勤務先が処遇改善加算を申請しているか、どのような支給方法を採用しているかなどを確認しておくことが大切です。

処遇改善手当が支給される施設に転職したい方は、レバウェル保育士にご相談ください。レバウェル保育士では、キャリアアドバイザーが、あなたの状況に応じてより良い待遇の求人情報を紹介します。園ごとの給与体系や手当の支給方法についても確認できるので、ぜひ気軽にご登録ください。

執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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