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指定保育士養成施設とは?学校の種類や学費の現状、通うメリットなどを解説
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「指定保育士養成施設とは、どのような場所なのか知りたい」という方もいるのではないでしょうか。指定保育士養成施設とは都道府県知事が指定した、保育に関して学べる学校です。指定保育士養成施設を卒業すると、保育士試験を受けずに保育士資格を取得できるのが特徴です。 この記事では、指定保育士養成施設の概要や種類を解説します。指定保育士養成施設の学習内容も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
指定保育士養成施設(保育士養成学校)とは
指定保育士養成施設(保育士養成学校)とは、保育士資格を取得するために必要な教育を行う施設として、都道府県知事が指定した学校のことです。指定保育士養成施設では、保育士として必要な知識や技術を体系的に学ぶカリキュラムが組まれています。指定保育士養成施設を卒業すると、国家試験を受けずに保育士資格を取得できるのが特徴です。
こども家庭庁の「保育士になるには」によると、指定保育士養成施設は2021(令和3)年4月1日時点で、全国で675ヶ所設置されています。
出典
こども家庭庁「保育士になるには」(2025年5月8日)
指定保育士養成施設における指定校と併修校の違い
指定保育士養成施設には、指定校と併修校があります。指定校と併修校の違いは以下のとおりです。
指定 | 取得できる免許・資格 | |
指定校 | 文部科学省と厚生労働省 | 幼稚園教諭二種免許状と保育士資格 |
併修校 | 厚生労働省 | 保育士資格 |
指定校は卒業後に幼稚園教諭二種免許状と保育士資格が取得できます。一方、併修校で取得できるのは保育士資格のみという点が大きな違いです。併修校で学んだ場合、幼稚園教諭二種免許状を取得するには、短期大学などの通信教育を受ける必要があります。
指定保育士養成施設は3種類ある
指定保育士養成施設は、4年制大学・短期大学・専門学校の3種類に分かれています。ここでは、それぞれの特徴をまとめました。
4年制大学の特徴
4年制大学は、学びの幅が広いのが特徴です。そのため、保育士としての専門性だけでなく、子どもや家庭に関する多角的な理解を深められます。また、通学する期間が4年間と長いため、じっくりと時間をかけて実習や実習に取り組むことができるのも特徴といえるでしょう。
短期大学の特徴
短期大学は2年間で保育士資格を取得できる効率の良さが魅力です。限られた期間で資格取得を目指すため、学習スケジュールは比較的タイトですが、保育士に必要な知識やスキルが凝縮されたカリキュラムが提供されます。
専門学校の特徴
専門学校は、入学のハードルが比較的低いのが特徴です。専門学校は、現場での実践を重視した授業が多く、卒業後に即戦力として活躍できる可能性が高まります。また、保育の基礎だけでなく音楽や英語を学べるなど、特色がある専門学校もあるようです。
【種類別】指定保育士養成施設の学費と通学期間
指定保育士養成施設は、種類によって通学期間や学費が異なります。指定保育士要請施設の通学機関と、参考までに私立4年制大学・短期大学・専門学校の初年度学生納付金を表にまとめました。
種類 | 通学期間 | 授業料 | 初年度学生納付金等(授業料、入学料、施設設備費、実験実習料等の総計) |
4年制大学 | 4年 | 959,205 | 1,477,339 |
短期大学 | 2年 | 729,069 | 1,271,988 |
専門学校 | 2年または3年 | 781,365 | 1,280,565 |
参照:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
表を参考にして初年度学生納付金等と授業料、通学期間をもとに計算すると、4年制大学は卒業までに400万円以上の学費が必要です。短期大学は250万円以上と4年制大学より150万円ほど学費を抑えられています。専門学校は、200万円以上と4年制大学や短期大学よりも学費を抑えられているのが特徴です。
指定保育士養成施設の種類ごとの違いを理解し、自身の目指すキャリアやライフスタイルに合った施設を選択することが大切でしょう。
出典
文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2025年5月9日)
指定保育士養成施設の学習内容
指定保育士養成施設では、保育の基礎から実践力を養う科目まで幅広い内容を学びます。また、保育実習を通じて、現場での実践力を身につけることが可能です。ここでは、指定保育士養成施設の学習内容を解説します。
指定保育士養成施設の必修科目とは
指定保育士養成施設では、保育士として必要な知識と技能を習得するため、必修科目が設定されています。全国保育士協議会の「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について[改正後全文](p.17)」より、指定保育士養成施設の必修科目を大きく分けると、以下のとおりです。
保育の本質・目的に関する科目
保育の対象の理解に関する科目
保育の内容・方法に関する科目
保育実習
総合演習
各科目の履修を通じて、子どもや家庭に関する福祉や支援方法など、幅広い知識を深めることが可能です。また、指定保育士養成施設には、上記の科目以外にも選択必修科目があります。指定保育士養成施設での学習を通じて、保育士が保育現場で求められる専門的な対応力や支援力を身につけられるでしょう。
出典
全国保育士協議会「保育士養成研究所・第三者評価について 資料」(2025年5月8日)
指定保育士養成施設の保育実習とは
指定保育士養成施設における保育実習は、学生が保育現場での実践力を養うための重要なカリキュラムです。実習は、主に「保育実習I」「保育実習II」「保育実習III」に分類され、それぞれ実習の目的や日数が異なります。
全国保育士協議会の「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について[改正後全文](p.13)」によると、各保育実習の日数は以下のとおりです。
種別 | 実習日数 |
保育実習I | 20日 |
保育実習II | 10日 |
保育実習III | 10日 |
参照:全国保育士協議会「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について[改正後全文](p.13)」
また、全国保育士協議会の「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について[改正後全文](p.44)」によると、「保育実習I」では保育所や児童福祉施設などでの実習を通じて、子どもとの関わり方や保育士の業務内容などに関して理解を深めます。
「保育実習II」は保育所で行われ、保育士の業務内容について、具体的な実践に結びつけて理解することなどが目的です。
「保育実習III」は、実習における自身の課題を理解することなどを目的に取り組みます。学生が保育実習を通じて、保育の理論と実践を結びつけ、保育現場での対応力や問題解決力を高めることが期待されます。
出典
全国保育士協議会「保育士養成研究所・第三者評価について 資料」(2025年5月9日)
指定保育士養成施設に通う3つのメリット
指定保育士養成施設にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、指定保育士養成施設に通う3つのメリットを紹介します。
1.保育の基礎から実践スキルまで体系的に学べる
指定保育士養成施設では、保育士として必要な知識やスキルを体系的に学べます。子どもの成長や発達に関する理論や保育計画の立案方法など、指定保育士養成施設では保育の基礎から応用までを段階的に学習することが可能です。ほかにも、保育に関連する社会福祉の知識も学べるため、実際の保育現場での対応力が高められます。また、指定保育士養成施設は、座学と実習のバランスがとれたカリキュラムで効率的に保育スキルを身につけられるのもメリットでしょう。
2.実習で保育現場の経験を積める
指定保育士養成施設に通うと、保育実習を通じて保育現場の経験を積めるのが特徴です。保育所や児童福祉施設で行う実習では、実際に子どもと関わりながら、学んだ知識を実践に結びつける機会が得られます。保育活動の計画や実施、子どもの観察、職員との連携など保育現場で必要なスキルを直接体験することが可能です。保育実習での経験により、保育士としての実践力を高められるのは、指定保育士養成施設に通う魅力の1つでしょう。また、保育実習を通じて自分の適性や課題を見つけられ、卒業後のキャリア形成にも役立つ可能性があります。
3.卒業と同じタイミングで保育士資格が取得できる
指定保育士養成施設では、卒業と同時に保育士資格を取得できるメリットがあります。国家試験である保育士試験を受ける必要がないため、効率よく保育士資格を得られるのが特徴です。指定保育士養成施設は卒業までに保育の知識や技術を学べるので、保育士資格を取得後すぐに働けるスキルが身につきます。指定保育士養成施設に通うことは、保育士資格を確実に取得したい人にとって魅力的な方法でしょう。
指定保育士養成施設に通う3つのデメリット
指定保育士養成施設に進学する場合、学費の負担があり、学習期間が決まっているため、保育士資格の取得までに時間がかかるというデメリットがあります。ほかにも、保育以外に進路を変更するのが難しいという懸念点もあるようです。ここでは、指定保育士養成施設に通う3つのデメリットを解説します。
1.学費の負担がある
指定保育士養成施設は、比較的学費が抑えられている専門学校でも、卒業までにおよそ200万円以上の学費が必要です。このように、指定保育士養成施設に通うと、高額な学費を支払わなければいけないというデメリットがあります。指定保育士養成施設に通うことを検討する際は、学費の負担が大きいことを理解し、経済的な計画を立てることが重要です。
2.学習期間が決まっている
指定保育士養成施設では、施設の種類に応じて学習期間が固定されています。4年制大学では4年間、短期大学や専門学校は2〜3年間の在学が必要です。早期に保育士資格を取得して就職したい場合などは、固定された学習期間が制約となる可能性があるでしょう。
3.進路変更が難しい
指定保育士養成施設では、保育士資格の取得を目的とした専門的なカリキュラムが組まれています。そのため、在学中にほかの分野への興味がわいても、進路変更をするのが難しい傾向にあります。指定保育士養成施設に進学する前に、自身の適性や興味を十分に考慮して、後悔しない決断をしましょう。
指定保育士養成施設に関してよくある質問
指定保育士養成施設に関してよくある質問に、Q&A形式でお答えします。
指定保育士養成施設に、通信制コースや夜間コースはある?
指定保育士養成施設の中には、通信制コースや夜間コースを設置している学校もあります。通信制コースは、教材などでの在宅学習やスクーリング、保育実習などを併用するのが一般的です。夜間コースでは、主に平日の夜に授業が行われます。夜間コースも保育実習は、昼に行われるので注意が必要です。どちらのコースも、働きながら学びやすいというメリットがあります。ただし、施設によってコースの設置状況や内容が異なるため、事前に確認しましょう。
指定保育士養成施設の一覧はどこで確認できる?
指定保育士養成施設の一覧は、こども家庭庁の「保育 指定保育士養成施設一覧(R6.4.1現在)」で確認できます。情報は更新される可能性があるため、常に最新の情報を確認しましょう。
出典
こども家庭庁「保育」(2025年5月9日)
指定保育士養成施設以外で保育士を目指せるルートはある?
指定保育士養成学校以外の学校を卒業している場合も、保育士試験に合格すれば保育士資格を取得できます。厚生労働省の「保育士になるには?」によると、保育士試験の受験資格として「短期大学卒業程度」が設定されています。最終学歴が高等学校卒業の場合は、「児童福祉施設で実務経験2年以上かつ総勤務時間数2,880時間以上従事した者」などの条件を満たせば、保育士試験の受験資格を得られます。保育士試験は独学で勉強することもできます。独学は費用や学習期間を柔軟に設定できるのが魅力でしょう。
出典
厚生労働省「保育士になるには?」(2025年5月9日)
保育士養成学校の選択に迷う場合はどうしたら良い?
保育士養成学校選びに迷った際は、学費・カリキュラム内容・通学方法・通学期間などが自分の生活スタイルや目標に合った条件を比較することが大切です。保育士養成学校のオープンキャンパスや学校説明会に参加して、施設の雰囲気や教員との相性を確認するのも1つの手といえます。ほかにも、卒業生の進路や口コミ情報を調べると、学校の実績を把握しやすいでしょう。学費や通学期間も知りたい方は、本記事の「【種類別】指定保育士養成施設の学費と通学期間」をご確認ください。
まとめ
指定保育士養成施設は、保育士に必要な知識やスキルを学べ、卒業と同時に保育士資格が取得できる学校です。指定保育士養成施設は4年制大学・短期大学・専門学校の3種類に分かれており、学費や通学期間、カリキュラム内容が異なります。指定保育士養成施設には、学費の負担や固定された学習期間など検討すべきこともありますが、保育実習で現場経験を積めるというメリットもあるでしょう。保育士資格を取得した後は、自分の希望や条件に合う職場を見つけることが大切です。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。