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地域限定保育士試験とは?保育士との違いや受験資格、実施自治体を紹介

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保育士資格取得を目指すとき、地域限定保育士試験の受験を検討する方もいるでしょう。地域限定保育士試験とは、自治体が独自に実施している保育士試験です。 この記事では、地域限定保育士試験の受験資格や試験内容、実施されている自治体を解説。地域限定保育士試験の受験から就職までの流れも紹介します。地域限定保育士試験のメリットやデメリット、注意点も参考にしてみてください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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地域限定保育士試験とは

地域限定保育士試験とは、保育士の人手不足解消や人材確保を目的に実施されている自治体独自の保育士試験です。自治体によっては、年2回開催されている保育士試験に加えて、地域限定保育士試験を実施しています。地域保育士試験と保育士試験は、それぞれ筆記や実技の免除制度が利用できるため、合わせて受験すると保育士資格取得のチャンスが増えるでしょう。

地域限定保育士とは

地域限定保育士とは、地域限定保育士試験により保育士資格を取得した方のことです。厚生労働省の「1.地域限定保育士試験の概要(p.1)新規タブリンク」によると、地域限定保育士試験の合格者は、地域限定保育士として登録後3年間は受験した自治体のみで保育士として働ける資格が付与されます。

地域限定保育士の登録から3年を経過すれば、全国で保育士として働くことが可能です。なお、地域限定保育士の正式名称は、「国家戦略特別区域限定保育士」となっています。

出典

厚生労働省「地域限定保育士試験の実施について新規タブリンク」(2025年4月4日)

地域限定保育士試験と保育士試験の違い

地域限定保育士試験と保育士試験は、資格取得時の試験内容や働ける地域に違いがあります。詳細は、以下のとおりです。

地域限定保育士試験 保育士試験
試験内容 保育士試験同様の筆記試験を実施・実技試験は自治体によっては免除され実技講習になる 筆記試験と実技試験を実施
働ける地域 地域限定保育士登録後3年間は、働ける地域が合格した自治体のみに限られる・地域限定保育士の登録から3年を経過すれば、全国で働ける 保育士登録後は、 全国どこでも働ける

地域限定保育士試験は、実技試験の免除により資格が取得しやすいこともあるようです。地域限定保育士は登録後3年間、働ける場所が限定されるため就職する地域も見据えて受験する必要があるでしょう。

地域限定保育士試験の概要

ここでは、地域限定保育士試験の受験資格や試験内容を解説します。難易度と合格率も参考にしてみてください。

受験資格

地域限定保育士試験の受験資格は、保育士試験と同じです。以下のいずれかの受験資格を満たす必要があります。

  • 大学・短大・専門学校のいずれかを卒業

  • 高校卒業後、児童福祉施設で実務経験2年以上かつ総勤務時間数2,880時間以上従事

  • 中学卒業後、児童福祉施設で実務経験5年以上かつ総勤務時間数7,200時間以上従事

条件を満たす児童福祉施設や勤務経験の詳細については、一般社団法人全国保育士養成協議会の「受験資格新規タブリンク」で確認してみましょう。

出典

一般社団法人全国保育士養成協議会「受験資格新規タブリンク」(2025年4月4日)

試験内容

地域限定保育士試験の内容は自治体によって決められていますが、筆記試験の出題範囲や内容は保育士試験同等とされています。実技講習の内容は、自治体によって異なるため注意が必要です。こども家庭庁の「地域限定保育士試験に関する各自治体の見解の要点新規タブリンク」によると、自治体別の地域限定保育士試験の実施内容は、以下のようになっています。

自治体 筆記試験 実技講習
神奈川県 出題範囲、試験時間、配点、合格基準などは保育士試験と同様 実技講習会を実施・保育実践見学実習を含めて計5日間の日程を受講
大阪府 後期の保育士試験と同日程、同問題 実技講習会を実施・平日だけではなく土日のみや短期間で受講できる複数のコースを設定
沖縄県 後期の保育士試験と同日程、同問題 講習の修了認定を実施

神奈川県「令和6年度保育実技講習会について新規タブリンク」によると、実技講習会では、音楽・造形・言語表現の演習や保育実践見学実習などを受講します。開催期間は5日程度となっているため、保育士試験の実技に比べると時間が掛かるでしょう。

出典

こども家庭庁「保育士資格等に関する専門委員会(第2回)新規タブリンク」(2025年4月4日)
神奈川県「令和6年度保育実技講習会について新規タブリンク」(2025年4月4日)

難易度と合格率

地域限定保育士の筆記試験の難易度は、一般的な保育士試験と違いがありません。実技試験の代わりに実施される実技講習はテストではないため、基本的に全日程の演習や実習を受講すれば修了となります。

こども家庭庁の「地域限定保育士試験に関する各自治体の見解の要点新規タブリンク」によると、令和4年度の地域限定保育士試験の合格率は、以下のとおりです。

自治体 合格率
大阪府 約36.6%
沖縄県 約31.5%

地域限定保育士試験の合格率は、3割程度です。筆記試験は保育士試験同様の難易度になるため、しっかりと試験対策する必要があります。

出典

こども家庭庁「保育士資格等に関する専門委員会(第2回)新規タブリンク」(2025年4月4日)

地域限定保育士試験はどこで実施されている?

地域限定保育士試験の実施実績があるのは、5つの自治体です。登録事務処理センター「国家戦略特別区域限定(地域限定)保育士登録申請新規タブリンク」によると、過去に地域限定保育士試験が実施された都道府県は、以下のとおりです。

  • 宮城県仙台市

  • 千葉県

  • 神奈川県

  • 大阪府

  • 沖縄県

なお、宮城県仙台市においては、現在実施されていません。ほかの自治体も年度により実施の有無が変わる可能性があるため、都道府県のWebサイトで確認してみましょう。

出典

登録事務処理センター「国家戦略特別区域限定(地域限定)保育士登録申請新規タブリンク」(2025年4月4日)
仙台特区「女性活躍 仙台市の取り組み新規タブリンク」(2025年4月4日)
千葉県「保育士登録制度について新規タブリンク」(2025年4月4日)
神奈川県「令和7年神奈川県保育士試験新規タブリンク」(2025年4月4日)
大阪府「令和6年度 大阪府地域限定保育士試験の実施について新規タブリンク」(2025年4月4日)
沖縄県「沖縄県地域限定保育士試験について新規タブリンク」(2025年4月4日)

地域限定保育士試験受験から就職までの流れ

ここでは、登録事務処理センター「地域限定保育士の制度新規タブリンク」と神奈川県「令和7年神奈川県保育士試験新規タブリンク」の例をもとに、地域限定保育士試験の受験から就職までの流れを解説します。細かい流れは自治体により異なるため、一例として参考にしてみてください。

1.受験の申し込みをする

地域限定保育士試験を受験するときは、自治体の案内に従って申し込みます。神奈川県における地域限定保育士試験の申し込み概要は、以下のとおりです。

試験日程(筆記試験) 2025年8月9日(土)、10日(日)
試験日程(実技講習会) 2025年年10月から11月(この期間に5日間程度)
受験申請期間 2025年4月4日(金)から2025年5月7日(水)
試験手数料 12,700円
申込み方法 郵送または電子申請システム

参照:神奈川県「令和7年神奈川県保育士試験新規タブリンク

郵送で申し込みする場合は、受験申請の手引きを取り寄せる必要があります。郵送、電子申請のいずれも期限に余裕をもって申し込みしましょう

出典

神奈川県「令和7年神奈川県保育士試験新規タブリンク」(2025年4月7日)

2.筆記試験や実技講習を受ける

地域限定保育士試験の受験申し込み後は、筆記試験、実技講習の順で受けます。受験申請後に送付された受験票を、忘れずに持っていきましょう。神奈川県の「受験申請の手引き(p.1)新規タブリンク」によると、合格までの流れは以下のとおりです。

  • 筆記試験を全科目合格(または全科目免除)→保育実技講習修了→合格通知書が送付

  • 筆記試験を1科目以上合格→一部科目合格通知書が送付

  • 筆記試験を全科目合格(または全科目免除)→幼稚園教諭免許状所有者などで保育実技講習会が免除の方は合格通知書が送付

  • 筆記試験の合格科目なし→送付物なし

幼稚園教諭免許所有者のなかでも、対象施設(幼稚園、認定こども園など)で3年以上かつ4,320時間以上、児童の保護に従事した実務経験がある方は、保育実技講習会が免除されます。筆記試験や実技講習に関する細かい規定に関しては、自治体の情報を確認しましょう。

出典

神奈川県の「受験申請の手引き新規タブリンク」(2025年4月7日)

3.合格した自治体で地域限定保育士登録をする

地域限定保育士試験の合格後は、試験合格地の都道府県または政令都市で保育士登録をしましょう。地域限定保育士の登録後は、国家戦略特別区域限定保育士登録証(地域限定保育士証)が交付されます。地域限定保育士として働く際は、地域限定保育士証が必要になるため就職活動と同時進行で登録手続きを進めましょう。

4.合格した自治体の地域で就職活動をする

地域限定保育士試験の合格後は、合格した都道府県で就職活動をします。地域限定保育士登録から3年間は合格した地域以外で働けないため、求人選びには注意が必要です。仕事探しをする際は、該当地域にある医療機関を調べるのはもちろん、保育士向けの求人サイトや転職エージェントを利用する方法も挙げられます。

出典

登録事務処理センター「地域限定保育士の制度新規タブリンク」(2025年4月4日)
神奈川県「令和7年神奈川県保育士試験新規タブリンク」(2025年4月4日)

地域限定保育士試験のメリット

ここでは、地域限定保育士試験のメリットを2つ紹介します。保育士資格取得を目指している方は、参考にしてみてください。

資格取得のチャンスが増える

保育士試験の科目合格制度を活用すれば、1年間で「地域限定保育士試験1回」と「通常の保育士試験2回」の受験が可能です。試験対策で知識が豊富なうちに次の日程を確認できるため、受験の機会を増やしやすいでしょう。保育士試験で合格した筆記科目は、地域限定保育士試験で免除されます。また、たとえ保育士試験の実技試験が不合格となったとしても、地域限定保育士保育士試験の実技講習を修了すれば資格取得が可能です。

実技試験が免除されることがある

地域限定保育士試験では、実技試験の代わりに実技講習の修了によって資格が取得できる点もメリットです。実技試験が不合格となった方や、実技が苦手な方は、地域限定保育士試験の実技講習のほうが通過しやすい場合もあるでしょう。

地域限定保育士保育士試験における実技講習はテスト形式ではないため、指定された演習や実習をすべて受講し修了すれば資格取得となります。実技講習の開催は5日間程度で実技試験に比べ時間は掛りますが、保育士として働くための実践的な知識やスキルを学べるでしょう。

登録後3年経過すると全国で保育士になれる

地域保育士資格に登録後は、受験した自治体で1度も働かなくても、3年経過すれば保育士として全国で活躍できるようになります。将来的に対象地域以外で勤務したいと考えている場合も、引っ越しを伴う転職がしやすいでしょう。なお、全国で働けるようになるのは登録後であり、「地域限定保育士試験に合格してから3年経過後」ではないので注意が必要です。

地域限定保育士試験のデメリット

ここでは、地域限定保育士試験のデメリットを紹介します。実施されている自治体が限られていたり、働ける地域が制限されたりする点は、デメリットになることもあるでしょう。

実施されている自治体が限られている

地域限定保育士試験は実施自治体が限られているため、住んでいる場所や働きたい地域で受験できないこともあります。地域限定保育士試験がない場合、保育士資格取得のチャンスは年2回です。保育士試験のように毎年開催されるわけでもないため、年度により実施の有無を確認する必要があるでしょう。

地域限定保育士登録後3年間は働ける地域が限られる

地域限定保育士は登録後3年間、働ける地域が限られる点がデメリットといえるかもしれません。たとえば、家庭の事情やパートナーの転勤など、急に他県への引っ越しが必要になった場合、地域限定保育士としては働けないこともあります。地域限定保育士試験を受験する際は、プライベートの事情や資格取得後の働き方も考慮しながら検討しましょう。

地域限定保育士試験の注意点

ここでは、地域保育士試験の注意点を2つ紹介します。保育士試験と合わせて地域限定保育士試験を受験する場合は、免除科目や最終的な資格について注意しましょう。

保育士試験の免除科目に関する注意点

地域限定保育士試験に合格した場合、過去の合格科目はすべて免除対象外となる点には注意が必要です。たとえば、地域限定保育士試験で筆記科目にすべて合格した場合、最終的に保育士資格取得を目指すのであれば、翌年の保育士試験で実技試験に合格する必要があります。地域限定保育士保育士試験で筆記・実技ともに合格すると、保育士試験は初受験扱いとなるため注意しましょう。

地域限定と保育士試験の両方を受験した場合の注意点

地域限定保育士試験と保育士試験を両方受験する場合、最終的に合格したほうの資格になります。両方受験した場合の資格の例は、以下のとおりです。

  • 地域限定保育士試験で筆記科目にすべて合格→翌年の保育士試験で実技試験に合格:保育士

  • 地域限定保育士試験で一部の筆記科目に合格→保育士試験で残りの筆記科目と実技に合格:保育士

  • 保育士試験で筆記科目すべてに合格・実技は不合格→地域限定保育士試験の実技講習を修了:地域限定保育士

  • 保育士試験で一部の筆記科目に合格→地域限定保育士試験で残りの筆記科目に合格・実技講習を修了:地域限定保育士

地域限定保育士試験と保育士試験は筆記科目の免除制度を利用して両方受験する場合もあるため、最終的にどちらの資格を取得したいか考えておきましょう。

地域限定保育試験に関するよくある質問

ここでは、地域限定保育士試験に関するよくある質問にQ&A形式で答えます。

東京で地域限定保育士試験は受けられますか?

東京都では地域限定保育士試験の開催はなく、保育士試験のみです。なお、地域限定保育士試験は現住所以外の都道府県でも受験できます。通勤可能な近隣の都道府県や働きたい地域で開催されている場合は、地域限定保育士試験の受験も検討してみましょう。
地域限定保育士試験が実施されている都道府県は、この記事の「地域限定保育士試験はどこで実施されている?」で確認してみてください。

地域限定保育士試験の実技講習とは?

地域限定保育士試験では保育士試験における実技試験の代わりに、実技講習が実施されています。実技講習では、演習や実習を受講し保育士として働くうえで必要な実践的な知識やスキルが学べるようです。実技講習はテスト形式ではないため、すべての演習や実習を受講し修了すると合格となります。

まとめ

地域限定保育士試験とは、自治体独自で実施している保育士試験を指します。地域限定保育士とは、地域限定保育士試験により保育士資格を取得した方のことです。地域限定保育士は、登録後3年間、合格した都道府県に就業先が限られます。地域限定保育士登録後3年経過すると、保育士と同じく全国で働くことが可能です。

地域限定保育士試験が実施されているのは、千葉県や神奈川県、大阪府、沖縄県などです。年度により実施の有無が変わる可能性があるため、自治体のWebサイトで確認してみましょう。地域限定保育士の登録後3年間は働ける地域が限られるものの、3年経過すれば全国で働けるようになります。

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執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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