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障がい児保育とは?仕事内容や資格・働ける施設・大切なことを解説

「障がい児保育の具体的な内容や、現場での関わり方を知りたい」と考える保育士の方もいるのではないでしょうか。障がい児保育とは、障がいや発達特性のある子どもたちに対して支援を行う保育のことです。 この記事では、対象となる障害の種類や施設の特徴から、保育士の仕事内容、やりがい、大変な点までを体系的に解説します。日々の支援に悩む方はもちろん、将来のキャリアを広げたい方もぜひ参考にしてみてください。
この記事のまとめ
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障がい児保育とは発達や身体の障害に合わせて個別の支援を行うこと
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個別指導計画の作成や環境設定の工夫で子どもの育ちを支えるのが仕事
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障害への理解を深め、保護者や専門機関と密に連携することが大切
目次
障がい児保育とは?
障がい児保育とは、心身の発達に特性があり、個別の関わりや支援を必要とする子どもを対象とした保育です。こども家庭庁の「保育所等における障害のあるこどもの受入れについて」によると、保育所等での受け入れ数はこの10年で2倍近い約9万人に達しており、社会的ニーズは急速に高まっています(2024年12月現在)。
これまでの保育現場では、定型発達の子ども向けのプログラムに障がいのある子どもを導き入れる「統合保育」が一般的でした。しかし現在は、障害の有無で区別せず、一人ひとりの人権と主体性を尊重する「インクルーシブ保育」へと転換が進んでいます。すべての子どもがクラスの一員として共に育つ、新しい保育の形が求められているのです。
出典
こども家庭庁「保育」(2026年2月13日)
障がい児保育で関わる子どもの特徴
一般的な保育現場では、主に以下のような特性を持つ子どもたちを受け入れ、個々の発達に合わせたサポートを行っています。
| 発達障害 | 自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など |
| 知的障害 | 認知や言語などに関わる知的機能の発達に遅れがある状態 |
| 聴覚・視覚・言語障害 | 目や耳、言葉の不自由さがある状態 |
| 肢体不自由 | 病気やけがなどにより身体の動きに制限がある状態 |
| 医療的ケア | 経管栄養や吸引などの日常的な医療的ケアが必要な状態 |
| 病弱・虚弱 | 疾患や体調不良が続き、健康管理上の配慮を要する状態 |
障がい児保育の対象範囲には、国が定めた一律の基準がありません。福岡県の「障がい児保育等受入体制標準モデル2025年版(p1)」によると、最終的な判断や具体的な取扱いは各市町村によって異なるのが現状です。支援の対象となるかどうかは、「障がい者手帳の保持」「医師等の診断書や意見書の提出」「障害福祉サービスの利用実績」などを指標として、総合的に検討されます。
出典
福岡県「障がい児保育について」(2026年2月13日)
障がい児保育の施設の種類
障がい児保育を行う施設は、保育園や認定こども園といった「一般的な保育施設」と、療育を目的とした「専門的な支援施設」の主に2つに分かれます。
一般的な保育施設では、必要に応じて加配保育士が配置されます。加配保育士とは、障がいや発達特性のある子どもを支えるために追加で配置される保育士のことです。子どもが集団生活にスムーズに馴染めるよう、個別の援助や環境設定をメインに担当します。一方、専門施設には、児童発達支援センターや放課後等デイサービスといった通所型と、施設で生活を送る入所型があります。
近年では、一般的な保育施設に通いながら専門の療育施設にも通う併行通園というスタイルも定着しました。これにより、「集団で育まれる社会性」と「専門的な個別支援」という両方のメリットを活かした柔軟なサポートが可能になっています。
障がい児保育に携わる保育士の仕事内容
障がい児保育に携わる保育士は、食事・排泄の介助や生活習慣の指導といった日常的なケアに加え、個々の発達段階に応じた専門的な関わりを担います。クラス全体の活動と並行しながら、個別の指導計画の作成や合理的配慮を実践する点は、障がい児保育ならではの重要な役割です。以下で、具体的な内容を見ていきましょう。
個別の指導計画を作成・実施する
障がい児保育では、子どもの特性や保護者の願いを反映した個別の指導計画を作成します。個別指導計画には、具体的な目標と支援策をセットで明記します。たとえば、「登園後の準備を自分で行う」という目標には、「準備の手順をイラストで示す」「できたことを具体的に褒めて自信に繋げる」といったアプローチが考えられるでしょう。作成後も定期的に振り返りを行い、手立てが合わなくなった際は柔軟に見直すことが大切です。
なお、児童発達支援といった療育施設では、さらに専門性の高い個別支援計画が運用されます。児童発達支援管理責任者が中心となり、詳細な療育目標やプログラムを策定するのが特徴です。
合理的配慮と環境設定を工夫する
障がい児保育の合理的配慮とは、一人ひとりの特性や困りごとに合わせて、園生活の仕組みや環境を柔軟に調整することです。
具体的な工夫としては、見通しを立てることが難しい子に対して、絵カードで視覚的な情報を補ったり、活動が切り替わる前に個別に声を掛けたりして、本人の不安や戸惑いを減らすことが挙げられます。感覚過敏がある場合には、音や光の刺激を和らげたり、安心して落ち着ける静かなスペースを確保したりといった環境構成も有効でしょう。
障がい児保育を行うのに必要な資格
障がい児保育の仕事に就くにあたって、必ず取得しなければならない資格はありません。基本的には保育士資格があれば働くことができ、求人の中には資格を問わないものもあります。ただし、障がいのある子どもたちと日々向き合うためには、発達の特徴や特性を理解し、それぞれに合った関わり方を学ぶことが大切です。スキルアップを目的として、児童発達支援士や臨床発達心理士、発達障害児支援士などの民間資格の取得を視野に入れるのも1つの方法です。
また、児童発達支援センターや放課後等デイサービスといった療育分野での勤務を希望する場合は、児童指導員任用資格の取得を検討するのも手でしょう。面接時のアピールに繋がったり、現場での活躍の幅が広がったりする可能性があります。
障がい児保育に携わる保育士の給料・平均年収
障がい児保育に携わる保育士の給与は、勤務先の種類や地域により多少の差はありますが、一般の保育士とほぼ同水準です。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 表番号1」によると、保育士全体の平均年収は約407万円となっています。
| きまって支給する現金給与額(①) | 年間賞与その他特別給与額(②) | 想定年収(①×12+②) | |
| 保育士 | 27万7,200円 | 74万1,700円 | 406万8,100円 |
参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 表番号1」
加配保育士として勤務する場合も、基本給は通常の保育士と大きく変わりません。雇用形態は正社員だけでなく、パートや派遣社員としての募集も多く見られます。
なお、療育施設などで働く児童指導員の平均年収は、職業情報提供サイト(job tag)の「児童指導員」によると約441万円で、施設の種類によっては保育士よりやや高い水準となる傾向があります。
出典
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年2月13日)
職業情報提供サイト(job tag)「児童指導員」(2026年2月13日)
障がい児保育の仕事のやりがい・大変なこと
障がい児保育のやりがいは、継続的な支援を通じて子どもの成長を間近で感じられることです。言葉や表情が豊かになったり、友だちとの関わりが増えたりする姿を見守れることは、保育士としての喜びであり、社会的意義を実感する瞬間でもあります。
一方で、支援に決まった正解がない点は、この仕事の難しさです。一人ひとりの特性に合わせた関わりは試行錯誤の連続で、「今の対応で本当に合っているのかな?」と迷う場面も少なくありません。また、慢性的な保育士不足により、理想的な人員配置や支援体制を整えにくいといった業界全体の課題も存在します。
障がい児保育に携わる保育士に向いている人
障がい児保育に向いているのは、子どもの行動や反応を丁寧に観察し、その背景にある「言葉にならない思い」を汲み取ろうとする人です。叫ぶ・暴れるといった激しい感情表現に直面しても、原因を探り「どうすれば安心できるか」を冷静に考える姿勢が求められます。
支援の現場では、できないことに着目するのではなく、できることを広げていく前向きな視点が欠かせません。成長の歩みがゆっくりであっても、小さな変化を喜び、子どもの可能性を信じて根気強く関われる人は、障がい児保育の現場で活躍しやすいでしょう。
障がい児保育に携わるときに大切なこと
ここでは、障がい児保育に携わる際に意識しておきたいポイントを紹介します。障がい児保育に関心のある保育士の方や注意点を知りたい方は、今後の参考にしてみてください。
障害の知識を身に付けて理解を深める
障がい児保育では、各障害の特性を正しく理解することが不可欠です。根拠を持って関わることで、走り回ったりパニックで泣き叫んだりといった反応も、その子なりのメッセージとして受け止められるようになります。一般的な保育園では、医師の診断がない「気になる子(グレーゾーン)」への対応も重要です。発達特性を把握していれば、日々の保育の中で変化に気づいた際にも柔軟に支援できます。
障がい児保育を勉強するには、関連書籍を読むほか、研修やセミナーに参加するのが有効です。保育士等キャリアアップ研修にも障がい児保育の分野が取り入れられています。
出典
こども家庭庁「保育」(2026年2月13日)
一人ひとりに応じた支援を心掛ける
障がい児保育では、同じ診断名であっても、特性の現れ方が子どもによって千差万別であることを理解しなければなりません。たとえば、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されていても、感覚の感じ方やコミュニケーションの方法、好きなことや苦手なことはそれぞれ違います。障害そのものに注目するのではなく、その子の成長に目を向け、小さな成功体験を積み重ねながら自信を育む支援を行うことが重要です。
保護者との情報共有や連携を大切にする
障がい児保育では、子どもへの支援と並行して、保護者の心に寄り添うことも重要です。保護者の中には、将来への不安や周囲との比較に悩み、「自分の育て方が原因ではないか」と自責の念を抱えていたりする方も少なくありません。
そのため、日頃からこまめにコミュニケーションを図り、本音を打ち明けられる信頼関係を築くことが大切です。園で見せる小さな成長や取り組んでいる支援の工夫を具体的に共有し、保護者が前向きに子育てに向き合えるよう温かくサポートしましょう。
クラスの枠を超えて園全体で話し合う
障がい児保育を効果的に行うには、担任だけでなく、園全体で子どもを支える意識が大切です。現場では、これまでの経験が通用せず、「どう関わればいいのか」と一人で悩みを抱え込んでしまう保育士も少なくありません。障がいのある子どもへの支援は担任一人で背負うものではなく、全職員が共通の理解を持って関わるべき事柄です。
定期的に話し合いの場を持ち、支援方針を共有し合うことで、園内のどこにいても子どもが安心して活動できる環境が整います。外遊びや行事の場面であっても、全職員が一貫した対応を心掛けることで、子どもも保育士もより安心して過ごせるようになるでしょう。
専門機関と連携する
障がい児保育では、園内の体制整備と並行して、外部の専門機関とも積極的に連携しましょう。児童発達支援センターや児童発達支援事業所、医療機関などから専門的なアドバイスを受けることで、支援のヒントが見つかりやすくなります。
こうした外部との関わりは、保育士自身のスキルアップに直結する貴重な機会です。医学や心理学といった専門的な知見を取り入れれば、子どもへの理解が深まり、保育の引き出しも増えるでしょう。また、保護者が専門機関への相談を検討する際も、日頃から築いたネットワークが確かな安心に繋がります。
障がい児保育の求人探し・転職のコツ
障がい児保育の分野へ転職する際は、自分が働きたい施設のタイプを明確にすることから始めましょう。一般的な保育園で加配保育士としての関わりを希望するのか、あるいは児童発達支援センターといった専門施設で療育に携わりたいのかによって、職場環境や求められる役割が異なるからです。
求人探しでは、一般的な求人サイトだけでなく、保育士専門の転職エージェントの活用もおすすめです。専門のキャリアアドバイザーから障がい児保育特有の選考対策や、条件交渉のサポートを受けられるメリットがあります。また、見学の機会があれば、ぜひ現場に足を運んでみてください。実際の支援の様子や職員同士のチームワークなどを確かめることで、入職後のミスマッチを防げる可能性が高まります。
障がい児保育に関してよくある質問
ここでは、障がい児保育についてよくある質問を紹介します。
障がい児保育のキャリアアップ研修は保育士なら誰でも受けられますか?
保育士等キャリアアップ研修の専門分野別研修(障がい児保育)は、将来的にリーダーとしての役割を目指す方であれば、どなたでも受講の対象となります。研修では、障害の特性に応じた具体的な支援方法や環境設定の工夫など、現場ですぐに活かせる知識を体系的に学ぶことが可能です。オンラインで受講できるeラーニング形式も普及しているので、自分のペースで進められるのが魅力といえるでしょう。
出典
こども家庭庁「保育」(2026年2月13日)
障がい児保育の加配基準を教えてください
加配保育士の配置基準は自治体ごとに異なりますが、こども家庭庁の「保育所等における障害のあるこどもの受入れについて」によると、「概ね子ども2名に対して保育士1名」の配置が標準的な目安とされています。こうした体制を財政面から支える仕組みが、国の「障害児保育加算」です。政府が加配に必要な経費を負担することで、園がより手厚い人員配置を行えるようバックアップしています。
出典
こども家庭庁「保育」(2026年2月13日)
まとめ
障がい児保育とは、発達障害や知的障害といった特性を持つ子どもたち一人ひとりに寄り添い、その子に合ったサポートを提供する保育のことです。一般的な保育園では、クラス全体の活動を支えつつ、個別の指導計画を作成したり、本人の不安を和らげる合理的配慮を実践したりすることが求められます。幅広い知識を身に付け、保護者や専門機関と手を取り合いながら、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
障がい児保育に関心がある方は、転職エージェントのレバウェル保育士にご相談ください。レバウェル保育士では、希望条件に合う求人の紹介はもちろん、加配保育士の人数や園の受け入れ体制といった求人票だけでは分からない内部事情を丁寧にお伝えします。インクルーシブ保育か専門的な療育か、あなたの適性に合わせたキャリアをプロの視点でご提案します。サービスはすべて無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。













