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保育士が目指せる専門リーダーとは?役割や目指すために必要な条件を解説
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専門リーダーについて知りたいという方もいるのではないでしょうか。専門リーダーは、高い専門性に基づいて現場の保育士に指導や助言、サポートを行う重要な役割を担います。専門リーダーになるためには、一定の経験年数や研修を受講することが求められます。 この記事では、専門リーダーの役割や具体的な仕事内容、目指すための条件について詳しく解説します。将来のキャリア形成を考える際の参考にしてください。
目次
保育士が目指せる専門リーダーとは
専門リーダーは、2017年に導入された「処遇改善等加算Ⅱ」によって誕生した新たな役職で、保育士のキャリアアップと処遇改善を目的としています。専門リーダーが設置された背景には、中堅保育士のキャリアアップが限られているという課題がありました。「処遇改善等加算Ⅱ」が導入される以前は、保育園では園長と主任保育士以外の役職がなく、その下は一般の保育士のみが存在し、中堅は将来のキャリアパスを描きにくい状況でした。
また、保育士には役職が少ないために給与水準が低い傾向にありました。そこで、保育士がキャリアアップする仕組みを作り、処遇を改善するのを目的としてこの制度が導入されたのです。
出典
厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」(2025年9月4日)
保育士が専門リーダーとして担う役割
専門リーダーは現場で実務に携わりながら、高い専門性に基づいてほかの保育士に指導や助言、サポートを行い、保育の質を高める重要な存在です。ここでは、専門リーダーと同時に新設された職務分野別リーダーや副主任保育士のほか、一般保育士との違いをそれぞれ解説します。
一般の保育士との違い
一般の保育士と専門リーダーの違いは、クラスを担当する以外にも専門家としての役割を担っているという点にあります。
一般の保育士は、クラスの担任や副担任として主に1つのクラスを担当します。一方、専門リーダーはクラスを担当するだけでなく、特定の分野において専門家としてほかの保育士に指導や助言を行い、保育の質を向上させる役割を担います。
職務分野別リーダーとの違い
職務分野別リーダーと専門リーダーは、研修を受けるのに求められる保育士の経験年数と期待される役割が違います。
職務分野別リーダーの研修を受けるには、保育士の経験が概ね3年以上必要であり、専門リーダーは7年以上求められます。
専門リーダーになるには、職務分野別リーダーを経験している必要があります。また、4つ以上の専門分野を修了しなくてはいけません。つまり、専門リーダーは次のステップであり、特定の分野において高い専門性を発揮し、現場のリーダーとして支えるという役割を期待されているといえるでしょう。
副主任保育士との違い
副主任保育士は管理職の一部としてライン職に分類され、専門リーダーはスタッフ職というのが主な違いです。
副主任保育士は園全体の管理業務や組織運営のサポートなどを行います。
一方、専門リーダーは保育現場で実務をしながら、特定の分野における高い専門性を活かして課題の解決や若手職員の育成などを行います。現場での保育活動と指導・サポートを両立させる点が特徴です。
保育士から専門リーダーになるための必要条件とは?
専門リーダーとして働くためには、一定の実務経験年数を満たしたうえで「保育士等キャリアアップ研修」を修了する必要があります。ここでは保育士から専門リーダーになるための必要条件について、詳しく解説します。
7年以上の保育士経験
専門リーダーとして働くためには、保育士として概ね7年以上の実務経験が必要です。この条件は、保育の現場での経験を十分に積み、専門的なスキルや知識を身につけるために設けられています。新人保育士から専門リーダーを目指す場合、まずは概ね3年以上の実務経験を積み、その後、職務分野別リーダーの研修を終了するのが一般的です。
4つ以上の研修分野を修了
保育士が専門リーダーに昇進するためには、全8分野のうち、4つ以上を修了する必要があります。この研修は、保育士の専門性をさらに高めるために設けられており、各分野での研修時間は最低15時間が求められ、受講後にはレポートの提出も必要です。
以下では、8分野の研修内容と主に習得できるスキルを表にまとめてみました。
分野 | 研修内容 | 習得スキル |
乳児保育 | 乳児期における成長や発達に合わせた適切な対応方法や、指導計画の立案 | 主に0歳から3歳未満の子どもに適した保育技術を身につける |
幼児教育 | 幼児の発達段階を考慮した教育内容や、小学校への移行支援 | 主に3歳以上を対象とし、幼児教育における年齢別の教育計画とその実践に関する知識 |
障害児保育 | 障害に関する理解、子どもへの適切な支援方法 | 障がいのある子どもに対する専門的な保育と知識 |
食育・アレルギー対応 | 食育を取り入れた保育方法や、アレルギー対応の実践方法 | 栄養や食事に関する知識、アレルギー対応 |
保健衛生・安全対策 | 保育施設内での安全管理、感染症予防や事故防止のための対策ガイドライン | 保育環境における健康管理や安全対策 |
保護者支援・子育て支援 | 親子関係を支援するための方法や、地域での子育て支援活動 | 保護者への適切なアドバイスや支援 |
マネジメント | マネジメントの理解、保育者の育成、職場環境の改善方法 | 保育の質を向上させるためのリーダーシップや管理職としての能力 |
保育実践 | 遊びや子どもとの関わり方、保育環境の整備 | 保育現場で役立つ実践的な保育方法と環境を構築する能力 |
参照:厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ (p.3)」
これらの研修は実践的な内容であり、専門リーダーとして働くうえで役立つでしょう。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月4日)
専門リーダーになるステップ
保育士が専門リーダーになるには研修を終了し、段階的に手続きを進める必要があります。ここでは、専門リーダーになるためのステップを順を追って解説します。
1.キャリアアップ研修制度の対象かどうかを確認する
専門リーダーの役職は、処遇改善加算の対象施設でのみ導入されているため、勤務先がキャリアアップ研修制度の対象となっているか確認しましょう。転職を検討している場合は、事前に園長や主任保育士に相談し、自分の施設でこの制度が導入されているか、今後のキャリアパスがどう進むかを把握しておくとスムーズに準備が整います。
2.要件を満たす研修を受講し、レポートを提出
専門リーダーになるには、研修を受講する必要があります。勤務先を通じて、または個人で研修機関から申し込みます。勤務先保育園8つの研修分野から4つ以上を選び、受講します。受講後、学んだことを記載し、レポートを提出する必要があります。
研修の内容やスケジュールは地域や実施機関によって異なるため、事前に確認して計画を立てましょう。
3.保育士等キャリアアップ研修修了証が交付される
専門リーダーとして必要な研修を修了すると、「保育士等キャリアアップ研修修了証」を受け取ることができます。この修了証には有効期限が設定されておらず、全国の都道府県で通用するため、将来のキャリアにも役立つ可能性があります。
修了証の取得後は、保育の現場で得た経験と研修で学んだ専門知識を活かして、さらなるスキルアップやキャリアアップを目指せるでしょう。
4.職場で専門リーダーの発令を受ける
修了証を勤務先に提出して保育施設で正式に発令を受けると、専門リーダーとして勤務できます。「保育士等キャリアアップ研修修了証」が交付されただけでは、専門リーダーの役職に就くことはできないので注意しましょう。勤務先に報告し、忘れずに手続きを行ってください。
専門リーダーに役職手当は付く?
専門リーダーには最大で月額4万円の役職手当が付きます。ただし、支給額は園の事情に応じて保育施設が決定するため、差が生じる場合があります。
専門リーダーの役職手当は自治体から保育施設に支払われ、その後、該当する保育士に給与として支給されます。専門リーダーの役職手当を受け取れる対象人数は、園長と主任保育士を除いた保育士数の概ね3分の1とされています。ただし、園長以外の管理職である主任保育士などに対しては、園の事情により役職手当が調整される場合もあるようです。
対象者のうち、役職手当が全額支給されるのは1名以上と定められています。全額支給ではないほかの専門リーダーには、月額5,000円以上4万円未満の範囲で支給額が設定されます。支給額は園の事情により保育施設ごとに異なるため、実際に受け取る額には差が生じる場合もあります。
たとえば、園長と主任保育士を除く職員が30名いる場合、対象者は10名となります。そのうち1名以上が全額支給を受け、そのほかの対象者は施設の判断で支給額が決まります。支給額の詳細は勤務先に確認しましょう。
出典
こども家庭庁「技能・経験に応じた追加的な処遇改善(処遇改善等加算Ⅱ)に関するFAQ(よくある質問)」(2025年9月5日)
保育士が専門リーダーになるメリット
専門リーダーとして働く場合、以下のようなさまざまなメリットがあります。
収入アップのチャンスがある
高度な専門知識を習得できる
園全体の保育の質を上げるのに貢献できる
将来のキャリアアップにつながる
専門リーダーになるメリットを学ぶと、役職へ前向きに取り組むきっかけとなるでしょう。それぞれ詳しく解説していきます。
収入アップのチャンスがある
前述しましたが、専門リーダーになると、収入が増えるチャンスがあります。専門リーダーは処遇改善等加算区分3の仕組みにより、最大で月額4万円が加算されます。この加算額を役職や職務に応じて施設が配分するため、給与アップする可能性があるといえます。また、受講修了見込でも分配される場合があります。
手当の金額や割合は、施設の判断により異なるため、全額支給されるケースもあれば、一部のみ支給される場合もあります。同じ専門リーダーでも、施設によって支給額に差が出る場合があります。この制度を活用して収入アップを目指すためには、施設内での配分方法を勤務先に確認しておくことが大切です。
出典
こども家庭庁「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(2025年9月4日)
「技能・経験に応じた追加的な処遇改善(処遇改善等加算Ⅱ)に関するFAQ(よくある質問)」(2025年9月4日)
高度な専門知識を習得できる
専門リーダーになると得られるメリットの1つは、高度な専門知識を習得できることです。専門リーダーは、キャリアアップ研修を通じて、乳児保育や幼児教育、障害児保育など、実践的な知識を体系的に学べます。専門性が高まると、自信にもつながります。また、ほかの職員や保護者からの信頼を得るきっかけにもなるでしょう。
保育士や保育の質を向上するのに貢献できる
専門リーダーは、園の保育士や保育の質を向上するのに重要な役割を担います。たとえば、専門的な知識を活かしてほかの保育士の成長をサポートしたり、職員と一緒にクラスや園全体の課題を解決したり、職場の雰囲気を良くするのも専門リーダーの役割といえるでしょう。
専門リーダーの取り組みにより、園全体の保育の質が向上し、ほかの保育士がやりがいを持って働けるようになる可能性があります。専門リーダーの働きによって、園全体にプラスの影響を与えられることがあるのも、魅力の1つです。
将来のキャリアアップにつながる
専門リーダーは、主に中堅保育士のキャリアアップにつながる可能性があります。専門リーダーは園長や主任など管理職の一歩手前に位置し、「保育士として専門性スキルを高めたい」「将来的には管理職に挑戦したい」と考える方にとって、専門リーダーとしての実績は大きな武器になるでしょう。
専門リーダーを目指す保育士によくある質問
ここでは、専門リーダーに関するよくある質問に回答します。ぜひ参考にしてください。
専門リーダーに向いている保育士の特徴はある?
専門リーダーに向いている保育士の特徴には、いくつかの重要なスキルや資質があります。
状況把握力 :複雑な問題や人間関係を冷静に整理し、客観的に把握できる
見通しを持てる力:自分やほかの保育士の進行状況を把握し、計画的にサポートできる
モチベーションを高める力:チームの士気を上げ、悩みを共有しながら支える
共感力:保育士一人ひとりの立場に寄り添い、理解を示す
危機管理能力:トラブル時に冷静に対応し、安全を最優先で守る力
これらの特徴を身につけると、専門リーダーとして保育の質を向上できるでしょう。
リーダーに向いていないと感じる場合はどうすれば良い?
もし「リーダーに向いていない」と感じる場合、まずはコミュニケーションを意識しましょう。リーダー職に求められるのは、周囲の保育士と円滑に連携し、的確な指示を出す力です。しかし、その過程で人間関係がぎくしゃくしてしまうこともあるかもしれません。そのためコミュニケーションを大切にし、相手の立場を理解するように努めると、リーダーに必要な素質を養える可能性があります。
専門リーダーに必要なマネジメント能力とは?
専門リーダーは専門的な知識やスキルを活かして若手保育士を指導し、個々の能力を引き出すことが求められます。ほかにも、チーム全体のモチベーションを維持し、士気を高めるためのサポートも欠かせません。専門リーダーのマネジメント能力が発揮されると、園全体が効率的に運営され、チームワークが発揮できるでしょう。
まとめ
専門リーダーは、高い専門性に基づいて現場の保育士に指導や助言、サポートを行う重要な役割を担います。専門リーダーになるためには一定の経験年数が必要であり、研修を受けなくてはいけません。
専門リーダーは処遇改善等加算区分3の仕組みにより、最大で月額4万円が加算される可能性があり、収入アップが期待できるのがメリットです。ほかにも、専門性を高めて園の保育士や保育の質を向上するサポートができる、将来のキャリアアップにつながる可能性があるのも魅力です。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。