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児童指導員の資格の取り方は?任用要件や必要書類、主な勤務先を解説
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「児童指導員の資格ってどうすれば取れるんだろう?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。児童指導員は任用資格なので、特別な試験を受ける必要はありません。代わりに、定められた学歴や実務経験などの条件を満たすことで取得が可能です。この記事では、児童指導員の資格取得に必要な要件や申請方法について解説します。児童指導員の資格を活かして働ける施設も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
児童指導員とは
児童指導員とは、児童福祉施設や福祉サービスなどで発達支援や生活支援を行い、健やかな成長と自立を促す専門職です。施設形態(通所型・入所型)によって支援の方法や関わり方は異なりますが、子どもの成長を支えるという根本的な役割は共通しています。
児童指導員には、子ども一人ひとりと真摯に向き合い、信頼関係を築く姿勢が欠かせません。児童指導員が働く現場では、子どもへの愛情はもちろん、柔軟な対応力や根気強さ、コミュニケーション能力などのスキルが重視される傾向にあります。
出典
職業情報提供サイト(jobtag)「児童指導員」(2025年8月28日)
児童指導員になるには
ここでは、児童指導員になるために必要な資格について解説します。具体的な取り方や要件を見る前に、全体像を把握しておきましょう。
任用資格の取得条件を満たす
児童指導員になるには任用資格が必要です。国家資格のように資格試験を受ける必要はなく、e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第四十三条」によって定められている条件(学歴や実務経験等)を満たせば取得できます。
また、「いますぐ現場で働きたい」という場合は、無資格からスタートすることも可能です。正式に児童指導員として働くには任用資格が必須ですが、「指導員」としてであれば、児童指導員の補助的な業務を担当できます。現場で経験を積みながら任用資格の取得を目指す人もいるので、未経験・無資格で応募できる求人を探すのも手といえるでしょう。
出典
e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(2025年8月28日)
児童指導員として勤務する
児童指導員として働くためには、任用資格の取得条件を満たしたうえで、就職を希望する施設の採用試験に合格する必要があります。自治体等の施設で勤務を希望する場合は公務員試験、民間施設の場合は各施設が実施する採用試験を受けることになります。
就職先は、ハローワークや自治体のWebサイト、求人サイト、転職エージェントなどを通じて探すのが一般的です。なお、児童指導員の任用資格は、事業所に在籍している間のみ有効です。国家資格とは異なり、任用されて初めて効力を発揮する点に注意しましょう。
出典
職業情報提供サイト(jobtag)「児童指導員」(2025年8月28日)
児童指導員の任用資格の取り方
職業情報提供サイト(jobtag)「児童指導員」によると、児童指導員の任用資格を取得するには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
児童指導員の任用資格を得る条件 | |
1 | 4年制大学や通信制大学などで社会福祉学・心理学・教育学・社会学を専修する学部・学科を卒業すること |
2 | 社会福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格を取得していること |
3 | 高校もしくは中等教育学校を卒業し、2年以上児童福祉事業に従事すること |
4 | 3年以上児童福祉事業に従事し、厚生労働大臣または都道府県知事から認定されること |
5 | 幼稚園教諭・小中学校・高等学校の教員免許を所有しており、厚生労働大臣または都道府県知事から認定されること |
参照:職業情報提供サイト(jobtag)「児童指導員」
学歴や職歴によって、児童指導員の任用資格の取り方はさまざまです。以下に詳細をまとめたので、自身の状況に合ったルートを確認してみましょう。
出典
職業情報提供サイト(jobtag)「児童指導員」(2025年8月28日)
大学・大学院を卒業するルート
大学または大学院で、特定の分野を専門的に学び卒業すると、児童指導員の任用資格を得られます(※短期大学は対象外です)。認められている学問分野は以下の4つです。
社会福祉学
心理学
教育学
社会学
これから進学を考えている方は、希望する大学や大学院が児童指導員任用資格の対象になっているかどうかを、事前に確認しておきましょう。大学のWebサイトやパンフレットには、取得できる資格が基本的に明記されています。詳細や不明な点については、各大学へ直接問い合わせるのが確実です。
児童福祉事業で実務経験を積むルート
児童福祉事業に一定期間従事している場合も、児童指導員の任用資格を得ることが可能です。必要な年数は学歴によって異なり、高卒以上などの要件を満たしている場合は2年以上、満たしていない場合は3年以上の経験が求められます。
山口県の「児童指導員の資格要件(p1)」によると、児童福祉事業には、乳児院・児童養護施設・障害児入所施設・保育所などが含まれます。自身の勤務先が該当するかどうかは、自治体などに直接確認するのが確実です。なお、実務経験として認められるには、1年あたり180日以上の勤務が必要です(従事日数は複数年にわたって合算もできます)。
出典
山口県「児童指導員の資格要件」(2025年8月28日)
岐阜県「指定障害福祉サービス事業所等運営に係る注意点等について(全事業者対象集団指導)」(2025年8月28日)
社会福祉士・精神保健福祉士を持っている人の場合
社会福祉士または精神保健福祉士の国家資格を持っている人も、児童指導員の任用資格を取得できます。資格を保有していれば、学歴や実務経験を別途満たす必要はありません。
社会福祉士とは、生活に困難を抱える人々に対して、相談援助を通じて課題の解決を支援する専門職を指します。精神保健福祉士も相談援助を主な業務としていますが、精神的な障がいや心の病を抱える人への支援に特化している点が特徴です。
厚生労働省の発表によると、2025年の国家試験の合格率は、社会福祉士が56.3%、精神保健福祉士が70.7%となっており、どちらも一定の知識とスキルが求められる資格であることが分かります。
出典
厚生労働省「社会福祉士・介護福祉士等」(2025年8月28日)
厚生労働省「第27回精神保健福祉士国家試験合格結果を公表します」(2025年8月28日)
教員免許を持っている人の場合
幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校または中等教育学校のいずれかの教員免許を持っている場合も、児童指導員の任用資格を得られます。「教員免許は持っているものの教育現場で働くことは考えていない」「教員から別の職種に転職したい」と考えている方にとって、児童指導員は選択肢の1つになるでしょう。
なお、以前は幼稚園教諭の免許を持っていても資格要件には該当しませんでしたが、人材の幅を広げる目的で制度が見直され、2019年4月から対象に加えられました。
出典
内閣府「地方分権改革・提案募集方式 取組・成果事例集(令和2年2月)」(2025年8月28日)
児童指導員任用資格の申請に必要な証明書と手続き
児童指導員の任用資格を取得するには、自分がどの資格要件を満たしているかに応じて必要な証明書類を用意し、提出する必要があります。たとえば、大学で対象分野を修了している場合は「卒業証書のコピー」、実務経験による場合は「実務経験証明書」、国家資格を保有している場合は「資格証のコピー」などが求められます。
実務経験証明書は、現在または過去に勤務していた事業所が発行するもので、従事した日数や業務内容、事業所名などが記載されます。発行に時間がかかることもあるため、早めに依頼しておくと安心です。自治体によっては、証明書の様式が決まっている場合があるので、あらかじめ自治体のWebサイトで最新の情報を確認しておきましょう。
児童指導員の資格を活かせる施設
児童指導員の資格は、児童福祉施設や福祉サービスの場で活かせます。ここでは、代表的な3つの施設について紹介するので、どのような現場で自分の力を発揮できるのか、イメージしながら読み進めてみてください。
児童養護施設
児童養護施設とは、家庭での養育が難しい子どもたちが共同で生活する施設です。児童指導員は、基本的な生活習慣の指導や学習のサポートなどを通じて、子どもたちが安心して過ごせるよう日々の生活を支えます。
児童養護施設で暮らす子どもの中には、虐待を受けたり、不安定な家庭環境で育ったりして心に深い傷を抱えている場合も少なくありません。そうした子どもたちに寄り添い、信頼関係を築きながら少しずつ心を開いてもらうことも、児童指導員の大切な役割です。困難を伴う場面もありますが、子どもたちの笑顔や成長がやりがいにつながるでしょう。
出典
社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国児童養護施設協議会「児童養護施設とは」(2025年8月28日)
児童発達支援センター
児童発達支援センターとは、主に未就学の障がいのある子どもを対象とした通所施設です。専門的な療育支援を通じて、日常生活に必要な動作の習得や集団生活への適応を促し、社会性を育む手助けをします。
児童発達支援センターは地域の支援機関の中核として、家族支援はもちろん関係機関との連携を積極的に行い、地域全体で子どもを支える体制を整備しているのが特徴です。児童指導員は、子ども一人ひとりの発達段階や特性に応じたきめ細やかな支援を提供します。
出典
こども家庭庁「地域における児童発達支援センター等を中核とした障害児支援体制整備の手引き 概要①」(2025年8月28日)
障害児入所施設
障害児入所施設とは、主に18歳未満の障がいのある子どもが生活を送りながら成長していくための施設です。障害児入所施設では、日常生活の指導はもちろん、将来の自立に必要な知識や技能を身につけるための支援を行います。児童指導員の役割は、安心できる環境を提供し、家族に代わって子どもの養育の中心を担うことです。発達段階や家族の状況を常に考慮しながら支援を行うとともに、家庭復帰の可能性についても検討します。
出典
厚生労働省「障害児入所施設運営指針」(2025年8月28日)
児童指導員と保育士の資格・仕事内容の違い
児童指導員と保育士は、子どもと密接に関わる仕事という共通点がありますが、資格や仕事内容に違いがあります。まず、資格の場合、児童指導員が特定の要件を満たすことで得られる任用資格であるのに対し、保育士は国が定めた試験に合格するか、指定された養成施設を卒業する必要がある国家資格です。
次に、対象とする子どもの年齢や仕事内容も異なります。児童指導員は、主に0〜18歳までの幅広い年齢の子どもを対象に、児童福祉施設や福祉サービスなどで自立に向けた育成・指導を行います。一方、保育士は主に未就学児を対象とし、保育施設で保育業務全般に従事するのが一般的です。どちらの資格を目指すにしても、自身のキャリアプランや適した働き方を考慮し、慎重に検討することが大切でしょう。
児童指導員の資格や取り方に関してよくある質問
ここでは、児童指導員の資格や取り方に関してよくある質問を紹介します。
高卒に多い児童指導員任用資格の取り方は何ですか?
高卒の方が児童指導員の任用資格を取得する方法として一般的なのは、児童福祉事業で実務経験を積むルートです。高等学校を卒業している場合、2年以上児童福祉事業に従事すれば取得条件を満たせます。未経験・無資格で応募できる求人を探すことで、「指導員」として必要な知識やスキルを学びながら経験を積むことが可能です。詳しくは、この記事の「児童指導員の任用資格の取り方」をご覧ください。
保育士におすすめの児童指導員の資格の取り方を教えてください
保育士が児童指導員の資格を取る場合、これまでの実務経験を活かすのが一般的です。児童指導員は任用資格であり、児童福祉事業での勤務経験が取得条件の1つとなっています。保育所での勤務経験も通常これに該当するため、保育士として2年または3年以上の実務経験があれば、資格取得の条件を満たせます。必要な実務経験の年数は学歴によって異なるので、この記事の「児童福祉事業で実務経験を積むルート」で詳細をご確認ください。
児童指導員の資格証明書を取得する方法を教えてください
児童指導員は任用資格であり、特別な資格証明書は発行されません。そのため、児童指導員として働く際は、任用資格の要件を満たすことを証明できる書類の提出が必要です。大学で対象分野を修了している場合は卒業証書のコピー、実務経験者であれば勤務先発行の実務経験証明書、そのほか資格を保有している場合は、資格証のコピーなどが該当します。詳しくは、この記事の「児童指導員任用資格の申請に必要な証明書と手続き」をご覧ください。
児童指導員の資格は実務経験が2年あれば取れますか?
児童指導員の任用資格は、高卒以上などの要件を満たしている場合は2年以上、それ以外の場合は3年以上の実務経験があれば取得可能です。ただし、この実務経験は「児童福祉事業」での勤務に限られ、従事日数などの細かな規定があります。資格取得の際は、実務経験を証明する書類も必要になるため、事前に詳細を確認しておくことが大切です。
まとめ
児童指導員の資格の取り方には、「大学・大学院で特定の分野を専門的に学ぶ」「児童福祉事業で実務経験を積む」「社会福祉士や教員免許といった既存の資格・免許を活かす」など、さまざまなルートがあります。児童指導員は特定の要件を満たすことで得られる任用資格のため、特別な資格証明書は発行されません。自身の状況にあわせて必要な証明書類を提出し、勤務することで資格を取得できます。証明書の発行には時間がかかる場合もあるので、余裕を持って準備を進めましょう。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。