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保育士が重大なミスを起こしてしまったら?失敗例や原因、対処法を解説
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「重大なミスをしてしまったらどうしよう…」という不安や、責任の重さに押しつぶされそうになっている保育士もいるのではないでしょうか。子どもの成長に深く関わる保育の仕事では、一度の不注意が大きな事故につながる可能性もあります。この記事では、保育現場で起こりやすい重大なミスの種類やその原因、抱えやすい悩みや対処法を解説します。日々の業務にぜひお役立てください。
目次
保育士が起こす可能性のある重大なミス
保育士の仕事では、複数の要因が重なり合うことで、保護者との信頼関係に支障をきたすような重大なミスが発生する場合があります。ここでは、特に注意しておきたい4つの事例を見ていきましょう。
目を離した隙に子どもがケガをした
保育の現場で注意が必要な重大なミスの1つが、子どもから目を離した隙に起きるケガです。たとえば、一瞬の油断で子どもが転倒して頭を打ったり、遊具から落ちたりする状況が考えられます。複数の子どもを同時に見守る場面では、全員に目を配るのが難しく、防げたはずの事故を見逃してしまう可能性もあるでしょう。
こども家庭庁の「『令和5年教育・保育施設等における事故報告集計』の公表について(9p)」によると、保育現場における死亡事故を除いた負傷などの発生件数は、年々増加傾向にあることが報告されています。
出典
こども家庭庁「教育・保育施設等における事故報告集計」(2025年6月20日)
アレルギー対応や投薬を誤った
食物アレルギーや薬の投与に関するミスは、子どもの命に関わる重大な事態を招く可能性があります。給食やおやつの時間帯は多くの子どもに対応するため、慌ただしくなりやすく、確認作業が疎かになりがちです。たとえば、アレルギーがある子どもに誤って通常食を提供したり、薬の与え忘れや量・時間を誤ってしまったりすることが考えられます。状況によっては、別の子どもの薬を間違えて渡すという事態もあるでしょう。
こうしたミスを防ぐためには、アレルギー情報の共有の徹底やアレルギー対応食の提供手順の見直し、投薬管理表の活用などの組織的な取り組みが必要です。
保護者への連絡を失念・後回しにした
保護者への連絡を怠ったり、後回しにしたりすることも重大なトラブルにつながる恐れがあります。たとえ軽い発熱やケガであっても、保護者があとから知ることになれば、「なぜもっと早く伝えてくれなかったのか」と不信感を抱かれる可能性があるでしょう。
忙しさを理由に連絡を怠ることは、保護者との信頼関係を損なう原因の1つです。個人の注意だけでなく、連絡事項を記録する仕組みの整備や伝え漏れを防ぐチェックリストの活用など、組織的な対策も重要になります。
機密事項の持ち出しや情報漏えいを行った
保育の現場では子どもや家庭に関する多くの個人情報を扱います。こうした情報が適切に管理されず、外部に漏れてしまうのも保育士の重大なミスの1つです。たとえば、クラス名簿の紛失やSNSでの写真投稿、ほかの保護者に関する情報を別の保護者に話してしまうなどの行為が該当します。
個人情報の取り扱いミスは、一度起きてしまうと取り返しがつかず、園全体の信頼を大きく損なう恐れもあります。そのため、機密情報の園外持ち出し禁止やSNS利用のルール策定、定期的な研修の実施など、組織的な対策が不可欠といえるでしょう。
保育士が重大なミスを起こす4つの原因
保育現場で重大なミスが起こる背景には、個人の意識だけでなく、職場の環境や組織の体制が複雑に絡み合っている場合も少なくありません。ここでは、主な4つの原因を解説するので、自身の状況を振り返るヒントにしてみてください。
1.仕事量が多く注意力が低下している
保育士の仕事は業務量が多く、仕事内容も保育計画の立案や環境整備、保護者対応、書類作成など多岐にわたります。行事の前や年度末・新年度といった繁忙期には、いつも以上に対応する業務が増えることから、集中力が分散しがちです。
このような状況が続くと、心身の疲労やストレスが蓄積され、次第に注意力が低下してしまいます。その結果、普段なら気づけるはずの危険や子どもの変化を見落として重大なミスにつながってしまう可能性があります。
2.人員配置に余裕がなく手薄になっている
人員に余裕がない保育園では、常に限られた体制で保育が行われるため、子ども一人ひとりの様子を丁寧に見守ることが難しくなります。特定の場面や子どもに意識が向いていると、ほかの場所への目配りが疎かになってしまうこともあるでしょう。
また、急な欠勤や行事対応で一時的に人手が不足すると、危険の予測や対応が遅れやすくなり、ミスのリスクは一層高まります。
3.職場のサポート体制が不足している
重大なミスが起こりやすい職場では、情報共有が不十分であったり、チームワークがうまく機能していなかったりすることも少なくありません。コミュニケーションが不足していると、子どもの情報や注意点が共有されず、担任が不在の際にほかの保育士が誤った対応をしてしまう可能性が高まります。
また、研修の機会が限られていたり、「聞きにくい」「相談しづらい」といった雰囲気があったりする職場も、小さな疑問や不安が解消されず、大きなミスにつながる可能性があるでしょう。
4.新人でスキルや知識が十分でない
新人保育士や経験の浅い保育士は、まだ十分な知識やスキルが身についていないことから、重大なミスを起こしてしまう場合があります。子どもの発達段階や行動パターン、年齢ごとに起こりやすい事故や危険な場面を予測する力は、現場での経験を積む中で少しずつ育っていくものです。
また、複数の子どもを同時に見守る力や、予期せぬ状況に臨機応変に対応する力も、時間をかけて磨かれていきます。ミスは本来あってはならないものですが、保育士が成長していく過程では、ある程度避けられない側面もあるでしょう。
重大なミスを起こした保育士が抱えやすい悩み
保育士が重大なミスを起こした場合、「自分のせいで…」と強い責任を感じ、自分を責め続けてしまうことも少なくありません。ここでは、ミスのあとに保育士が抱きやすい悩みについて解説します。
保育士を続けるべきか分からない
重大なミスをしてしまった保育士は、「自分には保育士の資質がないのでは」「子どもを預かる資格が本当にあるのだろうか」と自分の適性に疑問を抱くことがあります。子どもの安全や健康に関わるミスをした場合、「もし取り返しのつかないことになっていたら」と不安になり、保育士を続けて良いのか悩むことも少なくありません。
こうした重大なミスは保護者からの信頼を損なう可能性もあるため、「このまま続けて事故を起こすくらいなら、いっそ辞めたほうが良いのでは」と、自分自身の存在価値まで否定してしまうこともあるでしょう。
自己嫌悪に陥って自信が持てない
重大なミスをした保育士の中には、強い自己嫌悪に苦しむ人も少なくありません。「なぜもっと注意できなかったのか」「自分の不注意で子どもを危険にさらしてしまった」といった思いが頭から離れず、日々の保育の場面でも自信を失ってしまいがちです。
こうした状態では判断や対応に迷いが生じ、保育実践全体の質に悪影響を与える可能性もあります。ミスを恐れて萎縮し、かえってまたミスを招いてしまうという悪循環に陥る場合もあるでしょう。
上司や同僚と顔を合わせるのが怖い
保育士が重大なミスをすると、「周りは自分のことをどう見ているのだろう」と不安になり、職場で人と接すること自体が怖くなる場合があります。上司や園長の指導が厳しいと、強いプレッシャーを感じて必要な報告さえためらってしまうこともあるでしょう。
気持ちが追い詰められていると、些細な表情や言葉にも過敏に反応してしまうものです。実際には周囲がそれほど責めていなくても、つい顔色を伺いながら働くようになってしまうかもしれません。
保育士が重大なミスを起こした際の対処法
ここでは、保育士が信頼を取り戻し、同じミスを繰り返さないための対処法を紹介します。重大なミスが起きると、どうしても問題から目を背けたくなるものです。しかし、そうしたときこそ誠実に向き合い、真摯な対応を心掛けることが大切です。
速やかに職場へ報告し謝罪する
保育士が重大なミスに気づいたときは、自分一人で判断せず、すぐに職場へ報告することが重要です。子どものケガや体調の変化、アレルギー対応のミスなど、子どもの安全や健康に関わる問題は、一刻も早く上司や主任に伝え適切な対応を取る必要があります。報告を遅らせたり事実を隠したりすると、状況がさらに悪化するだけでなく、保育園全体の信頼を損なう恐れもあるでしょう。
報告する際は、「いつ、どこで、何が、どのように起きたのか」といった基本情報を簡潔にまとめ、現在の状況や取った対応を正確に伝えましょう。保護者への謝罪が必要な場合は、園の方針に沿って行動しつつ、誠意を持って対応する姿勢が信頼回復につながります。
ミスの原因を分析して改善する
ミスへの対応が一段落したら、自分を責め過ぎず、なぜそのミスが起きたのかを冷静に分析することが大切です。「不注意だった」「確認が甘かった」といった表面的な理由だけで終わらせず、業務の多忙さやマニュアルの不備、知識・スキル不足など、さまざまな角度から原因を掘り下げて考えましょう。
原因が明らかになったら、具体的な改善策を考え行動に移します。「作業手順を見直して確認の工程を増やす」「情報共有の仕組みを整える」「チェックリストを作成する」などのように、自分にできる対策を1つずつ実践していきましょう。
保育園全体の課題として対策を話し合う
保育士の重大なミスには、個人の努力だけでは防ぎきれない組織全体の課題が背景にあることがあります。ミスを個人の問題として片付けるのではなく、園全体での課題として受け止め、「どうすれば同じようなミスを防げるか」を話し合うことも重要です。
また、日々の業務に油断や過信がないかを改めて確認し、園のルールや国のガイドラインがきちんと守られているかも見直しましょう。職員一人ひとりが当事者意識を持ち、互いに協力し合える体制を築くことが、結果としてミスの少ない安全な保育環境につながります。
体調が優れない場合は休養を取る
睡眠不足や体調不良、精神的なストレスがミスの原因に感じる場合は、思い切って休養を取ることも大切です。心身の疲れが溜まると、注意力が落ちたり判断ミスが起きやすくなったりする可能性があります。保育の仕事は常に細心の注意を払う必要があるため、体調が悪いまま無理を続けると、さらなるミスや事故につながるリスクも高まるでしょう。
「休むと周りに迷惑がかかる」と感じるかもしれませんが、無理をして重大なミスを起こしたほうが、結果的に職場への影響は大きくなってしまいます。精神的に追い詰められて「仕事を辞めたい」と感じている場合も、体調が回復すれば考えが変わるかもしれません。
ミスが起きにくい職場へ転職する
すべての対策を試みても改善が見られない場合や、職場そのものに根本的な問題があると感じるときは、転職も有効な選択肢です。「人手不足が慢性化している」「ミスを個人の責任にする風潮がある」といった環境では、どれだけ努力してもミスを繰り返してしまう可能性があります。
転職を検討する際は、現在の課題を整理し、同じ問題が起きにくい職場を選びましょう。面接では、適切な人員配置がされているか、研修制度が整っているか、日々の情報共有がスムーズに行われているかなどをチェックすることが大切です。ミスを責めるのではなく、チーム全体で学びに変えようとする職場であれば、自分の力を発揮しやすいでしょう。
保育士の重大なミスに関してよくある質問
ここでは、保育士の重大なミスに関してよくある質問を紹介します。
ベテラン保育士も失敗することはありますか?
経験豊富なベテラン保育士も、失敗やミスをすることはあります。ベテラン保育士の強みは、ミスそのものがないことではなく、ミスを未然に防ぐ予測力や万が一のときに素早く対応できる力、そしてミスから学び次に活かそうとする姿勢です。経験年数にかかわらず、常により良い保育を目指して学び続けることが大切といえるでしょう。
保育士が職場に嘘をついてしまった場合、挽回する方法はありますか?
信頼回復には時間がかかるため、日々の誠実な行動を積み重ねることが大切です。言い訳をせずに自分の弱さや判断の誤りを素直に認め、謝罪しましょう。そのうえで、情報共有を徹底したり、業務の透明性を高めたりするなど、改善に向けた具体的な行動を示します。状況に応じて周囲にアドバイスを求めるのも良いかもしれません。
保育士の失敗エピソードにはどのようなものがありますか?
保育士が「やらかした」と感じる代表的な失敗談としては、「保護者への伝言をうっかり忘れてしまった」「子どもの持ち物を入れ忘れた」などが挙げられます。また、「アレルギーのある子どもに違う食事を提供しそうになった」「園外活動で人数確認を怠った」といった重大なミスにつながりかねない経験をすることもあります。
まとめ
保育士が起こしうる重大なミスには、子どものケガやアレルギー対応・投薬の間違い、保護者への連絡漏れなどがあります。重大なミスをした際は、速やかな報告と誠実な対応が重要です。失敗を恥じるのではなく、保育の質を向上させるための経験と捉え、改善策を実行していきましょう。ただし、「ミスをしないように」「怒られないように」といったことばかりに意識が向いてしまったり、仕事量が自分の限界を超えて本来の力を発揮できなくなっていたりする場合は、転職を選択肢に入れることをおすすめします。
保育業界に特化した転職支援サービスのレバウェル保育士では、ご希望の条件をもとにサポート体制が整った職場をご紹介します。運営方針や職場の雰囲気など内部事情を丁寧にリサーチしているため、一人で求人を探すよりも安心して転職活動を進められますよ。重大なミスがきっかけで退職を考えることは決して甘えではないので、今後の働き方についてキャリアアドバイザーと一緒に考えてみませんか?
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。