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保育士の配置基準を解説!施設形態による違いや自治体独自の例、計算方法も
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保育士の配置基準が気になる方もいるのではないでしょうか。保育園やこども園などの保育施設では、子どもの定員に対して最低限必要な保育士の数が決まっています。 この記事では、施設別や自治体における保育士の配置基準を解説。保育士の配置人数を計算する方法や新制度についても紹介します。保育士が配置基準に対しておかしいと思うときの対処法も、ぜひ参考にしてください。
目次
保育士の配置基準とは
保育園やこども園などの保育施設では、子どもの定員に対して最低限必要な保育士の人数が定められています。保育の配置基準が定められている理由は、子どもの安全や保育の質を確保するためです。
保育士の配置基準は、法律や自治体によって施設の種類や子どもの年齢別に定められています。最低限の配置基準は法律で定められているため、保育施設を運営するうえで必ず守らなければいけません。
【施設別】保育士の配置基準
ここでは、各省庁や法律によって定められている保育士の配置基準を紹介します。保育施設の種類別に紹介するので、参考にしてください。
認可保育園の保育士配置基準
認可保育園の年齢ごとに定められた保育士配置基準は、以下のとおりです。
年齢 | 保育士1人当たりの子どもの数 |
0歳児 | 3人 |
1歳児 | 6人 |
2歳児 | 6人 |
3歳児 | 15人 |
4歳児 | 25人 |
5歳児 | 25人 |
参照:e-GOV法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条2項」
上記以外にも、保育園全体で保育士を常時2人以上配置することも定められています。あくまで最低限の配置基準であるため、状況に合わせてプラスで保育士や保育補助を配置する認可保育園もあるでしょう。
出典
e-GOV法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条2項」(2025年5月29日)
認可外保育園の保育士配置基準
認可外保育園における保育士の配置基準は、前述した認可保育園と同じです。文部科学省の「認可外保育施設指導監督基準 (p.2)」 によると、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条2項以上を満たす必要がある」と示されています。
出典
「認可外保育施設指導監督基準」(2025年5月29日)
幼保連携型認定こども園の保育士配置基準
幼保連携型認定こども園における保育士の配置基準は以下のとおりで、認可保育園と同じ人数になっています。
年齢 | 保育士1人当たりの子どもの数 |
0歳児 | 3人 |
1歳児 | 6人 |
2歳児 | 6人 |
3歳児 | 15人 |
4歳児 | 25人 |
5歳児 | 25人 |
引用:e-GOV法令検索「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準 第5条3項」
なお、幼保連携型の認定こども園では、保育士資格に併せて幼稚園教諭免許状を有する保育教諭の配置が必要です。ただし、文部科学省の「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」によると、2029(令和11)年度までは、幼稚園教諭免許状または保育士資格のいずれかを有していれば、保育教諭として働けます。
出典
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(2025年5月29日)
小規模保育園の保育士配置基準
小規模保育園は、A型・B型・C型という3種類に分けられ、それぞれ保育士の配置基準が示されています。小規模保育園と保育園の違いは、子どもの定員です。小規模保育園は子どもの定員が6〜19名以下、認可保育園は20名以上と決められています。
小規模保育園A型の保育士配置基準
こども家庭庁の「地域型保育事業の認可基準について (p.6)」によると、小規模保育園A型では前述した認可保育園の保育士配置基準に+1名とされています。たとえば、以下のような子どもの定員が19名の小規模保育園A型では、最低基準を満たすために保育士が6人必要です。
年齢 | 子どもの定員 | 保育士の人数 |
0歳児 | 3人 | 1人 |
1歳児 | 8人 | 2人 |
2歳児 | 8人 | 2人 |
合計 | 19人 | 6人(5人+1人) |
参照:こども家庭庁「地域型保育事業の認可基準について (p.6)」
なお、小規模保育園のA型は、保育園の分園が認可される場合の基準となるようです。
出典
こども家庭庁「地域型保育事業の認可基準について」(2025年5月29日)
小規模保育園B型の保育士配置基準
小規模保育園B型における保育士の配置基準も、前述した認可保育園の保育士配置基準に+1名です。小規模保育園のB型は、さまざまな事業形態からの移行が円滑に行われるようにA型とC型の中間として認可基準が設けられています。
小規模保育園A型とB型の違いは、配置基準に対する保育士資格の有無です。こども家庭庁の「地域型保育事業の認可基準について」によると、小規模保育園B型は1/2以上が保育士とされています。
そのため、保育士資格がない方も配置基準の対象となるでしょう。なお、無資格の場合は指定された研修を受けた後に配置されます。
出典
こども家庭庁「地域型保育事業の認可基準について」(2025年5月29日)
小規模保育園C型の職員配置基準
小規模保育園C型は、家庭的保育に近い形態で運営されている施設です。小規模保育園C型では、「自治体が行う研修を修了した保育士」または「自治体が保育士と同等以上の知識と経験を有すると認める者」の家庭的保育者が配置されます。
こども家庭庁の「地域型保育事業の認可基準について (p.6)」によると、小規模保育園C型における職員の配置基準は、家庭的保育者1人に対して0〜5歳児は3人です。家庭的保育者+補助者がいる場合は、2人に対して0〜5歳児は5人です。
出典
こども家庭庁「地域型保育事業の認可基準について」(2025年5月29日)
家庭的保育事業の職員配置基準
家庭的保育事業における職員の配置基準は、以下のとおりです。
職員の配置 | 子どもの人数 |
家庭的保育者1人 | 3人以下 |
家庭的保育者1人+補助者 | 5人以下 |
参照:e-GOV法令検索「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 第二十三条」
家庭的保育事業とは、乳児または幼児を家庭的保育者の居宅やそのほかの場所において、家庭的保育者により保育を行うことです。なお、家庭的保育者は、区市町村の認定を受ける必要があります。
出典
e-GOV法令検索「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 第二十三条」(2025年5月29日)
事業内保育事業の保育士配置基準
事業内保育事業における保育士の配置基準は、以下のとおりです。
子どもの定員 | 保育士の配置基準 |
19名以下 | 認可保育園の配置基準+1 |
20名以上 | 認可保育園の配置基準と同様 |
参照:厚生労働省「4.認可基準の具体的な各項目について (p.5)」
事業内保育事業とは、企業主導型保育園や企業内保育園などを指します。基本的には、従業員の子どもが保育対象となり、企業内や近隣施設で運営されています。
出典
厚生労働省「4.認可基準の具体的な各項目について」(2025年5月29日)
居宅訪問型保育事業の職員配置基準
厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」によると、居宅訪問型保育事業とは、保育を必要とする乳幼児の居宅において家庭的保育者による保育を行う事業です。障害や病気により集団保育ができない、保育園が閉鎖されたなどの理由で市町村長に認められた子どもを保育します。
居宅訪問型保育事業における職員の配置基準は、保育者1人につき乳幼児1人です。対象者は、原則として3歳未満の保育を必要とする乳幼児です。職員の資格は、必要な研修を修了し、保育士または保育士と同等以上の知識および経験を有すると市町村長が認める者(家庭的保育者)とされています。
出典
厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」(2025年5月29日)
保育士の配置基準は時間帯により緩和される
早朝や夕方など子どもが少ない時間帯や、延長保育の間は、保育士の配置基準が一部緩和される場合があります。厚生労働省の「保育士の現状と主な取組 (p.31)」によると、保育士配置に係る特例は以下のとおりです。
1.保育士最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数となる時間帯においては、保育士2名のうち1名は子育て支援員研修を修了した者に代替可能とする
2.保育士と近接する職種である幼稚園教諭や小学校教諭、養護教諭を、保育士に代えて活用可能とする
3.保育所などを8時間を超えて開所している場合、認可の際に最低基準上必要となる保育士数を上回って必要となる保育士数について、子育て支援員研修を修了した者などに代替可能とする
なお、2と3の特例適用に当たっては、保育士を2/3以上配置する必要があります。
出典
厚生労働省「保育士の現状と主な取組」(2025年5月29日)
自治体独自の保育士の配置基準
前述した法律や各省庁の基準を前提に、自治体独自のより厳しい配置基準を定めている場合があります。以下は、認可保育園を対象とした自治体が独自に設けた保育士配置基準の一例です。
保育士1人あたりの子どもの定員 | 0歳児 | 1歳児 | 2歳児 | 3歳児 | 4歳児 | 5歳児 |
法律の規定 | 3人 | 6人 | 6人 | 15人 | 25人 | 25人 |
神奈川県横浜市 | 3人 | 4人 | 5人 | 15人 | 24人 | 24人 |
京都府京都市 | 3人 | 5人 | 6人 | 15人 | 20人 | 25人 |
埼玉県富士見市 | 3人 | 4人 | 6人 | 13人 | 18人 | 25人 |
参照:e-GOV法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条2項」、神奈川県横浜市「横浜市民間保育所設置認可・確認等要綱 (p.4)
」、京都府京都市「手厚い保育士配置!
」、埼玉県富士見市「第二期富士見市 子ども・子育て支援事業計画書 (p.35)
」
神奈川県横浜市は、1歳児と2歳児、4歳児、5歳児において、保育士1人あたりの定員を減らしています。また、京都府京都市は1歳児と4歳児、埼玉県富士見市では、1歳児と3歳児、4歳児で保育士1人あたりの定員を減らしていることがわかります。
自治体が独自の保育士配置基準を設けているかどうかは、ホームページで確認してみましょう。
出典
e-GOV法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第33条2項」(2025年5月29日)
神奈川県横浜市「横浜市民間保育所設置認可・確認等要綱」(2025年5月29日)
京都府京都市「手厚い保育士配置!」(2025年5月29日)
埼玉県富士見市「第二期富士見市 子ども・子育て支援事業計画書」(2025年5月29日)
基準をもとに保育士の配置人数を計算する方法
保育士の配置は、保育園が設けている子どもの定員を基準に決めることになるでしょう。
ここでは、法律や自治体などの基準をもとに保育士の配置人数を計算する方法を解説します。
1.年齢ごと・各クラスの定員を確認する
保育園では保育室の広さや数などにより、年齢ごとに各クラスの定員が決まっています。子どもがフルで集まるか集まらないかに関わらず、定員を決めて保育士が配置されます。
2.定員を配置基準で割る
子どもの定員が決まったら、法律や自治体の基準をもとに定員を配置基準で割ります。たとえば、0歳児の定員が9人の場合、必要な保育士の数は3人です。そのほかのクラスも計算して、保育園全体で何人必要か計算します。
なお、定員を配置基準で割ったときに端数が出る場合の計算方法は、自治体ごとによって異なるため該当する規定を確認してください。
3.実際に配置されている保育士数と比較する
必要な保育士の数が決まったら、雇用形態や勤務時間の規定をもとに保育士が配置されます。最低基準に対しては、子どもを長時間にわたって保育できる常勤保育士を配置するのが原則です。
ただし、厚生労働省の「短時間保育士及び常勤保育士の取扱いについて (p.3)」によると、以下の条件を満たす場合は、「保育士の配置基準の一部に、短時間勤務の保育士を充てても差し支えない」とされています。
入所児童に対する保育の質の確保が図られる
常勤の保育士が各組・各グループに1名以上(乳児を含む各組・各グループであって当該組・グループに係る最低基準上の保育士定数が2名以上の場合は、1名以上ではなく2名以上)配置されていること
常勤の保育士に代えて短時間勤務の保育士を充てる場合の勤務時間数が、常勤の保育士を充てる場合の勤務時間数を上回ること
なお、短時間勤務の保育士とは、「1日6時間未満または月20日未満勤務する保育士をいい、各施設・各事業所の就業規則で定めた勤務時間を下回る者のうち、1日6時間以上かつ月20日以上勤務する保育士を含む」とされています。
保育士の配置基準に対する雇用形態や勤務時間の規定は、自治体によって異なる場合があるため、詳細をよく確認したうえで決めましょう。
出典
厚生労働省「短時間保育士及び常勤保育士の取扱いについて」(2025年5月29日)
保育士の配置基準見直しによる新制度は?
保育士の配置基準は、2024年度に保育士1人あたりの4歳児と5歳児の定員が30名から25名に減らされました。保育現場の声や保育士不足の問題などを背景に、配置基準は見直しされているようです。
なお、内閣府の「こども未来戦略 (p.19)」によると、2025年度以降、1歳児について保育士1人に対して現状6人から5人への改善を進めるとされています。
出典
内閣府「こども未来戦略」(2025年5月29日)
「保育士の配置基準がおかしい」と思うときの対処法
保育士のなかには、日々忙しいために負担が大きく、現状の配置基準に対して「おかしいのでは」と思う方もいるかもしれません。ここでは、保育士の配置基準から負担を感じている人に向けて、対処法を4つ紹介します。
園長や主任保育士など上司に相談する
現状の配置基準を満たしていても、業務であきらかに人手が足りていない場合は、園長や主任保育士などの上司に相談しましょう。現場の保育士の意見により、保育補助を採用したり配置変更をしたり対策してくれるケースもあるようです。人員補充や配置変更は対応が難しい場合もありますが、困ったときは1人で抱え込まずに相談し、対処法を検討してもらうのがおすすめです。
業務の進め方や職員の連携体制を見直す
業務の進め方や職員の連携体制を見直すのも1つの手です。たとえば、業務をリスト化して優先順位を決めて対応すれば、効率よく業務を進められるケースもあるでしょう。また、声掛けや報連相など、保育士同士のコミュニケーションが上手く取れていれば連携体制の強化につながります。業務を上手く進めている保育士から学んだり、アドバイスをもらったりするのも良いでしょう。
配置基準がより厳しい自治体で転職先を探す
1人で担当する子どもの人数が多いと感じ悩んでいる場合は、配置基準がより厳しく設定されている自治体で転職先を探すのも対処法の1つです。業務負担や保育の質向上のため、保育士1人あたりの子どもの定員を法律で定める基準より減らしている自治体もあります。
自治体独自の基準は、公式ホームページなどで公開されていることもあるため、確認してみましょう。
保育業界専門の転職エージェントに相談する
保育士の配置基準に関して悩み転職する場合は、保育業界専門の転職エージェントに相談してみましょう。保育業界専門の転職エージェントであれば、求人を出している保育園の詳細な情報を把握している場合もあります。
保育士で転職を検討している方は、保育業界専門の転職支援サービス「レバウェル保育士」へご相談ください。サービスは無料で利用可能です。「レバウェル保育士」では、求人を掲載している施設に対して、取材訪問を実施しているため、保育方針や職場の雰囲気、働いている人の声がわかるので安心です。ぜひお気軽にご登録ください。
保育士の配置基準に関する質問
ここでは、保育士の配置基準に関する質問にQ&A形式で答えます。
2025年の厚生労働省が定める保育士の配置基準は?
認可保育園における保育士1人あたりの子どもの人数は、0歳児が3人、1・2歳児が6人、3歳児が15人、4・5歳児が25人です。認可外保育園も認可保育園と同じ基準が適用されます。施設別の保育士の配置基準について、詳しくはこの記事の「【施設別】保育士の配置基準」を参考にしてください。
保育士の配置基準の見直しはいつから?
保育士の配置基準は、2024年度に制度発足後初めて見直しが行われ、保育士1人あたりの4歳児と5歳児の定員が30名から25名に減らされました。なお、内閣府の「こども未来戦略 (p.21)」によると、2025年度以降、1歳児について保育士1人に対して現状6人から5人への改善を進めるとされています。
出典
内閣府「こども未来戦略」(2025年5月28日)
まとめ
保育園の配置基準とは、「子どもの定員に対して最低限必要な保育士の人数」です。保育士の配置基準は、子どもの安全や保育の質を確保するために、施設の種類や年齢別に法律や自治体によって定められています。
認可保育園における保育士1人あたりの子どもの人数は、0歳児が3人、1・2歳児が6人、3歳児が15人、4・5歳児が25人です。早朝や夕方など子どもが少ない時間帯や延長保育の間は、保育士の配置基準が一部緩和される場合もあるでしょう。
また、法律を前提としてより厳しい保育士の配置基準を設けている自治体もあります。保育士の配置基準は、2024年度に見直しが行われ、2025年度以降も改善が予定されています。担当する子どもの定員が多く負担を感じている場合は、業務の進め方を見直したり、より基準が厳しい自治体への転職を検討したりする対処法があります。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。