最終更新日:
保育士の勤務時間は長い?理由は?平均的な労働時間や残業時間をもとに解説
- #保育士
- #悩み

保育士のなかには、「勤務時間が長い」と悩む方もいるかもしれません。保育士は人手不足で業務の負担が増えたり変形時間労働制が取り入れられたりして、勤務時間が長くなることもあるようです。 この記事では、保育士の平均勤務時間や休憩時間、残業時間の統計データから、勤務時間が長い傾向にあるのかを解説します。勤務時間が長いといわれる理由や改善策もまとめました。勤務時間を条件に求人探しをするコツも紹介します。
目次
保育士の勤務時間は長い?
保育士は、子どもたちの保育や事務作業、行事の準備など業務が多岐に渡るため、勤務時間が長いイメージを持つ方もいます。ここでは、保育士の平均勤務時間や休憩時間、残業時間について詳しく見ていきましょう。
保育士の平均勤務時間
一般的な企業のデータと比べると、保育士の勤務時間は長い傾向です。社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国保育協議会の「全国保育協議会会員の実態調査報告書2021(p.54)」によると、保育施設で働く正規職員の週当たりの実働時間は、「週40~50時間未満(61.3%)」が最も多い結果となっています。
一方で、厚生労働省の「令和6年就労条件総合調査の概況(p.5)」によると、保育業界以外の業界も含めた全企業の所定労働時間の平均は、1週間39時間23分、1日7時間47分です。保育士は、1日8時間を超えたり週6日勤務になったりすることがあるため、一般的な企業に比べ勤務時間が長くなっている可能性があります。
出典
社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国保育協議会「全国保育協議会会員の実態調査報告書2021」(2025年4月23日)
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」(2025年4月23日)
保育士の休憩時間
e-GOV法令検索の「労働基準法 第三十四条」によると、保育士を含め働く人には、6時間を超える勤務の場合は45分以上、8時間を超える勤務の場合は1時間以上の休憩時間が与えられます。保育士の休憩時間は、ほかの職員と交代で取ることになるようです。保育士は、子どもの状況や様子によっては、休憩時間中でもイレギュラーな対応が求められることもあります。イレギュラーな対応により休憩時間が短くなり、結果的に勤務時間が長くなることもあるようです。
出典
e-GOV法令検索「労働基準法」(2025年4月23日)
保育士の平均残業時間
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の超過実労働時間数は全職種の平均に比べて短いです。
職種(企業規模計10人以上) | 超過実労働時間数 |
保育士 | 3時間 |
全職種の平均 | 12時間 |
参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
保育士は、保護者のお迎えが遅くなったり子どものケガで病院に連れて行ったりすると、イレギュラーな対応が発生して残業になることがあります。また、人手不足で1人当たりの業務負担が増えると、残業時間が長くなることもあるようです。
残業時間を含めた労働時間がほかの職種と比べて長くなっている傾向はないですが、上記はあくまで平均的なデータであるため、職場の事情によって残業時間が変わることは理解しておきましょう。
出典
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年4月23日)
保育士の勤務時間が長いといわれる理由
保育士の勤務時間が長いといわれる背景には、保育園の運営形態や社会のニーズの変化、人材不足など、複数の要素が絡み合っています。ここでは、保育士の勤務時間が長いといわれる主な理由についてまとめました。
延長保育や夜間保育があるから
保育士の勤務時間が長いといわれる理由の1つに延長保育や夜間保育のサービスがあります。共働き家庭が増えて働き方が多様になった結果、通常の保育時間(たとえば午前7時から午後6時まで)以外に保育を必要とする家庭も出てきました。
実際に、午前6時から午後10時まで開園している保育園や24時間開園の保育園もあります。そうした園では、早朝や夜間のシフトを組まれる可能性もあり、保育士が働く時間の幅が広がっています。
人手が不足しているから
保育士の人手不足も、勤務時間が長くなる理由の1つです。人手不足の職場では1人あたりの仕事量が増えるので、業務を終えるのに時間がかかります。保育士の配置人数は国の基準で決まっているため、保育士が少なくても基準を守って配置しなければなりません。人手不足の中で急な欠勤者が出て代替要員が見つからない場合、残っている保育士が長時間勤務せざるを得ないこともあるでしょう。
帰宅後に持ち帰り仕事をしているから
保育士の勤務時間が長いといわれる理由の1つに、帰宅後の持ち帰り仕事があります。事務作業や行事の準備などが終わらず持ち帰り仕事をしている場合、見えない労働時間が保育士の実質的な勤務時間を長くしています。
昔からの風潮で、保育士の持ち帰り仕事は普通だと感じている保育士の方もいるようです。また、「製作の準備は家のほうが進めやすい」「明日までに間に合わせたい」と、持ち帰り仕事に抵抗なく対応している場合もあります。しかし、持ち帰り仕事をして勤務時間が長くなると、体調を崩したり労務管理の観点から問題が起きるケースもあるため注意が必要です。
変形労働時間制の職場もあるから
保育園では変形労働時間制を採用していることがあり、保育士の勤務時間が長いといわれる理由の1つになっています。e-GOV法令検索の「労働基準法 第三十二条」によると、基本的な勤務時間は、1日8時間(休憩を除く)、1週間40時間です。ただし、同法の「第三十二条の四
」によると、変形時間労働制を取り入れている職場では、1ヶ月または1年単位で労働時間を平均週40時間に調整すれば、1日8時間、1週間40時間を超えても問題ありません。
保育園では、行事の多い時期や新年度の準備期間などに忙しくなるため、変形労働時間制を採用している場合があります。1ヶ月や1年以内で超過分は調整されますが、特定の時期に長時間労働が集中する可能性があります。
出典
e-GOV法令検索「労働基準法」(2025年4月23日)
保育士の長時間勤務に対する改善策
保育士の長時間勤務に対しては、効率化や負担軽減のための取り組みが行われています。ここでは、保育士の長時間勤務を改善するための主な対策について解説するので、参考にしてみてください。
ICTシステム導入による業務の効率化
保育現場では保育士の長時間勤務に対する改善策として、ICTシステム導入による業務の効率化が行われています。ICTシステムとは、インターネットや通信ネットワークなどを活用して、情報やコミュニケーションを円滑に進めるためのシステムや技術のことです。たとえば、保育現場では以下のような、ICTシステム導入による業務の効率化が行われています。
保育記録や連絡帳のデジタル化により、手書きの時間が大幅に削減される
タブレットやスマートフォンを使って、子どもたちの様子を写真や動画で記録し、保護者への共有がスムーズになる
勤怠管理システムの導入により、シフト作成や勤務時間の管理が効率化される
園児の登降園管理アプリにより、事務作業の負担が軽減される
ICTツールの導入は、業務の効率化だけではなく、子どもたちと直接関わる時間を増やせるメリットもあります。新しいシステムの導入には慣れが必要なため、段階的な導入や適切な研修が重要です。
フリー保育士や保育補助の雇用
フリー保育士や保育補助を雇用すると、保育士の負担が減って長時間勤務の改善につながります。フリー保育士とは、特定のクラスを担当せず、必要に応じてさまざまな場面でサポートする役割を担う職種です。たとえば、急な欠勤者が出たときに代わりに現場で対応したり、忙しい時間帯や行事の準備で保育士を手伝ったりして、柔軟な対応が可能です。経験豊富な方をフリー保育士として配置することで、若手保育士への指導や支援も行いやすくなります。結果として職場全体の業務効率が上がり、保育の質の向上にもつながります。
また、保育補助として、保育士資格を持たない人材を雇用することで、清掃や食事の準備、簡単な事務作業など、保育士のサポートを担当してもらうことが可能です。これにより、保育士は本来の保育業務に集中でき、残業時間の削減につながることもあります。
過去の製作物の有効活用
過去の製作物を有効活用することは、保育士の業務負担を軽減する1つの方法です。保育現場では、季節の行事や日々の活動に関連した壁面装飾や教材、お便りなどを作成する機会があります。これらの製作には多くの時間と労力が掛かりますが、過去に作成したものを再利用したり、アレンジしたりすることで大幅な時間短縮が可能です。
たとえば、前年度の行事の装飾を写真で記録しておき、翌年に参考にするとスムーズに作成できます。また、定期的に発行するお便りのテンプレートを作成しておけば、毎回一から作る手間を省くことも可能です。最初の仕組みづくりやひな形作成は大変かもしれませんが、長い目で見ると長時間勤務の改善につながる可能性があります。
勤務時間を条件に保育士求人を探すコツ
ここでは、勤務時間の条件を重視して保育士の求人を探すためのコツを紹介します。保育士向けの求人サイトの活用方法や、転職エージェントの利用メリットなど、効果的な求人探しの方法を解説するので、参考にしてみてください。
保育士向けの求人サイトで情報収集する
保育士が勤務時間を条件に求人を探すなら、一般的な求人サイトよりも保育士向けの求人サイトがおすすめです。保育士向けの専門的な求人サイトは、一般的な求人サイトよりも詳細な勤務条件が掲載されていたり、勤務時間や勤務形態で絞り込み検索ができたりします。
保育士向けの求人サイト「レバウェル保育士」では、「残業ほぼなし」「時短勤務相談可」「18時まで退社可」など、勤務時間で希望条件になりやすい点を絞って検索することも可能です。実際に働いている保育士への取材情報が掲載されている求人もあり、勤務時間や残業の状況などを知れる可能性もあります。情報が新しいか・正しいかに注意しながら、複数のサイトを比較して最新の情報を収集するのがコツです。
保育士向けの転職エージェントに相談する
保育士向けの転職エージェントでは、勤務時間の希望条件を伝えるとアドバイザーが条件を満たす求人を探してくれる点がメリットです。「残業が少ない職場」「規則正しい勤務時間の職場」「短時間勤務可能な職場」など、具体的な希望を伝えることで、それに合った求人を探してくれます。
保育士向けの転職エージェントは保育現場の実情に詳しいため、各保育園の実際の勤務状況や残業の有無などの情報を提供してくれるところもあります。面接対策や履歴書の添削など、就職活動全般のサポートも受けられるため、より効率的に自分に合った職場を見つけられます。
長時間勤務に悩んでいる方や、より良い労働環境を求めている保育士の方は、保育業界専門の転職支援サービス「レバウェル保育士」へご相談ください。「長時間勤務の少ない職場」や「効率的な業務体制を整えている保育園」などの希望条件に合わせて、経験豊富なアドバイザーがあなたにあった求人をご紹介します。働きやすい環境で保育士としてのキャリアを続けたい方は、ぜひレバウェル保育士にご相談ください。
保育士の勤務時間に関するよくある質問
ここでは、保育士の勤務時間に関してよく寄せられる質問について解説します。転職するうえで勤務時間を重視する方は、参考にしてみてください。
勤務時間が長いことによる保育士への影響は?
保育士は子どもたちと常に関わり体を動かす仕事なので、勤務時間が長いと身体的な負担が大きくなります。また、常に子どもたちの様子に気を配りながら多くの業務をこなす必要があるため、長時間勤務は精神的な疲労につながりやすいです。
長時間勤務により保育士の疲労が溜まると、保育の質が低下する恐れもあります。また、勤務時間が長いと、育児や介護などのプライベートと仕事の両立が難しくなるため、離職につながるケースもあるようです。
保育士と幼稚園教諭の勤務時間の違いは?
保育士も幼稚園教諭も、一般的には1日8時間といった勤務時間で働くことになります。しかし、保育園と幼稚園は開園時間の長さが違うため、勤務する時間帯には違いが出ます。保育士は早番・中番・遅番と開園時間を3つに分けて、シフト制で勤務します。一方で、幼稚園教諭は午前8時から午後5時ごろと出勤・退勤時間が固定されているのが一般的です。ただし、預かり保育をしている幼稚園は開園時間が長くなるので、シフト制で勤務時間が決まることもあります。
公立保育士と私立保育士の勤務時間はどちらが長い?
公立保育士に比べ、私立保育士のほうが勤務時間が長い傾向です。社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国保育協議会の「全国保育協議会会員の実態調査報告書2021(p.54)」によると、保育施設における公設公営で働く正規職員の週当たりの実働時間は、「週30~40時間未満(50%)」が一番多いです。一方、公設民営と民設民営は「40時間〜50時間未満」と回答している事業所の割合が最も多くなっています。
公務員保育士の場合、拘束時間は8時間45分、労働時間は7時間45分と設定されている自治体もあります。一般的な1日8時間勤務より短く設定されていることが、公立保育士の勤務時間の短さに影響しているようです。
出典
社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国保育協議会「全国保育協議会会員の実態調査報告書2021」(2025年4月24日)
パート保育士の勤務時間は?
パート保育士の勤務時間は、職場との契約によって決まります。1日4〜6時間程度と正社員保育士に比べて短い場合もあれば、フルタイムに近い勤務時間で働く方もいます。保育園では、朝の忙しい時間帯だけ勤務する「朝パート」や、夕方の延長保育時間帯に勤務する「夕方パート」などがあります。パート保育士として勤務時間を決める際は、保育園の方針や自身のライフスタイルとのバランスを考慮することが大切です。
まとめ
保育士は、1日8時間を超えたり週6日勤務になったりすることがあるため、一般的な企業に比べ勤務時間が長くなっている傾向があります。残業時間は平均に比べ短い傾向ですが、保育士は人手不足で業務負担が多かったり、イレギュラー対応が必要になったりして勤務時間が長くなることもあるようです。
保育士の勤務時間が長いといわれる理由には、慢性的な人手不足や持ち帰り仕事、変形時間労働制などが挙げられます。また、開園時間そのものが長いことも影響しているようです。
保育士の長時間勤務に対して、ICTシステムの導入やフリー保育士の雇用などで改善が進められています。業務効率化や一人ひとりの負担軽減が勤務時間短縮のカギとなっています。保育士が勤務時間を条件に求人を探す場合は、保育士向けの求人サイトや転職エージェントを利用して、職場環境や働き方などの詳細な情報収集をすると良いでしょう。保育士向けの転職エージェントに相談しながら求人を探したい方は、レバウェル保育士までご相談ください。利用料金は無料です。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。