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シュタイナー教育とは?特徴やメリット・デメリット、保育士の注意点を解説

保育士のなかには「シュタイナー教育とはどのような教育法なのか」と気になっている方もいるのではないでしょうか。シュタイナー教育とは、子どもの発達段階ごとの成長を尊重し、感性や創造性を大切に育む独自の教育法です。 この記事では、シュタイナー教育の特徴や一般的な教育との違いを解説します。シュタイナー教育のメリット・デメリットや、避けるべきことも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
シュタイナー教育とは
シュタイナー教育はオーストリア(現クロアチア)で生まれ、ドイツを中心に活動した哲学者ルドルフ・シュタイナーによって20世紀初頭に提唱された教育法です。ここでは、シュタイナー教育の歴史と特徴を解説します。
シュタイナー教育の歴史
シュタイナー教育の起源は、1919年にドイツのシュトゥットガルトで設立された「自由ヴァドルフ学校(シュタイナー学校)」に遡ります。この学校では一般的な教育とは異なる独自のカリキュラムが組まれ、詰め込み型ではなく、子どもの内面の成長を重視する教育が実践されました。現在では、シュタイナー教育が世界中に広がり、日本にもシュタイナー学校やシュタイナー教育を採用する保育施設が存在しています。
シュタイナー教育の特徴
シュタイナー教育に特有な点は、子どもの発達に応じた学びを提供することです。この教育法では以下のような方針がとられています。
発達段階に応じた教育
教科書を使わない学び
芸術と実践を重視
評価や競争を避ける
自然とのつながりを推奨
シュタイナー教育は単なる学力の向上を目指すのではなく、子どもたちが自分らしく成長し、想像力や感性を育むことを目指します。
シュタイナー教育と一般的な教育の違い
シュタイナー教育では、7年を1つの周期として分けて教育するなどの特徴があります。ここでは、一般的な教育法との違いを解説します。
7年周期の発達段階
シュタイナー教育は、子どもの発達は7年を1つのサイクルと捉え、それぞれの発達に応じた教育を行います。
発達段階 | 教育内容 |
0~7歳 | 子どもが身体的に発達する重要な時期とされ、遊びを通じて自然に学ぶことが重視される。 |
8~14歳 | 情緒が豊かに育つ時期であり、芸術を通じて想像力や共感力を養う。この時期の学びは、子どもの感性に働きかけることを重視する。 |
15~21歳 | 筋道を立てて考える力が発達し、自分の考えを深める時期に入る。自分の意見をアウトプットする力を伸ばす。 |
7年周期の発達段階では身体・感情・思考の順に発達を促し、子どもの成長を支える指針とされています。
子どもの気質を分類
シュタイナー教育では、子どもの一人ひとりの個性を重んじます。子どもの気質を4つのタイプに分類し、保育者がそれぞれの特徴に応じた関わり方をするのが特徴です。
気質 | 特徴 |
胆汁質 | 活発でエネルギッシュ。目標に向かって突き進むが、衝動的な行動をとることもある。リーダーシップを発揮しやすい。 |
多血質 | 明るく社交的。好奇心旺盛で新しいことに興味を持ちやすいが、飽きっぽい一面もある。環境の変化に適応しやすい。 |
粘液質 | 落ち着いていてマイペース。環境の変化には弱い。穏やかで協調性がある。 |
憂鬱質 | 思慮深く慎重。物事を深く考え、計画的に行動する。不安を抱えやすい一面がある。 |
シュタイナー教育では、子どもの気質の特性を理解して適切な関わり方をすることで、子どもが自分らしく成長できるよう支援します。
同一担任制
シュタイナー教育では、同一担任制が採用されています。これは一般的な学年ごとのクラス編成とは異なり、異年齢の子どもたちが同じクラスで過ごし、卒園または卒業するまでクラス替えや担任の交代を行わない制度です。
同一担任制の目的は、長期間にわたって安定した人間関係を築き、保育者と子どもが深い信頼関係を結ぶことにあります。担任は子どもの成長過程を一貫して見守ることで、一人ひとりの個性や発達を的確に理解し、それに応じた教育を行うのを目指します。
同一担任制は、子どもたちに安心感を与えられるよう一貫した環境を提供する仕組みになっているといえるでしょう。
授業の内容
シュタイナー教育には、エポック授業、オイリュトミー、フォルメンなど独自の授業があります。ここでは、シュタイナー教育独自のカリキュラムを解説します。
エポック授業
エポック授業とは、特定の教科を2~4週間にわたって集中的に学ぶ授業形式です。エポック授業では、毎朝1つの科目を1時間45分程度学びます。授業では教科書を使用せず、学習をノートに記録し、子ども自身が教材を作ることで主体的に学ぶ力を養います。
オイリュトミー
オイリュトミー(ギリシャ語で美しい調和のリズムという意味)とは、シュタイナー教育独自の芸術的な運動活動です。音楽や言葉に合わせて身体を動かし、リズム感や表現力を育みます。この活動は、心と体の調和を図ることが目的です。
フォルメン
フォルメンとは、線や図形を描くことで、空間認識や想像力を育てる活動です。シンプルな形から複雑な模様へと発展させながら、集中力や感覚の鋭敏さを養います。
シュタイナー教育で避けるべきこと
シュタイナー教育では、早期教育やテレビの視聴、絵本の読み聞かせなどは避けるべきとされています。ここでは、シュタイナー教育で避けるべきことを解説します。
早期の知的教育
シュタイナー教育では、子どもの幼少期に感覚を育てるのを重視しています。知的な学びを先取りしてしまうと、子どもの発達において重要な身体的な体験や想像力などが欠けてしまう可能性があると考えられているためです。シュタイナー教育では、子どもが心身ともに調和のとれた成長ができるよう、適切なタイミングで教育を提供することに注力しているのが特徴といえるでしょう。
テレビを見たりゲームで遊ぶこと
シュタイナー教育では、デジタル化した視覚的な刺激に依存し過ぎることは避けるべきとされています。テレビやゲームは、視覚と聴覚に情報を提供し、子どもの想像力や創造性を制限する可能性があると考えられているようです。
シュタイナー教育は、子どもが五感を使って学びを深めていくことを尊重しています。子どもは自然のなかで実際に触れたり、匂いを嗅いだりすることで、豊かな感覚の発達が促されるというのがシュタイナー教育の方針とされています。
絵本の読み聞かせ
シュタイナー教育では、絵本を見せて読み聞かせると、子どもの想像力を制限してしまう可能性があると考えられています。シュタイナー教育では、ストーリーを伝えることに重点を置き、子どもに絵を見せることなく言葉だけで情景を思い描かせるのがポイントです。このアプローチは、子どもの思考力を育み、より深い理解力と感受性を育てるために有効とされています。
シュタイナー教育における3つのメリット
シュタイナー教育には、子どもの想像力や自主性、社会性や協調性を育めるなどのメリットがあります。ここでは、この教育法の3つのメリットを紹介します。
1.子どもの創造性や自主性を育める
シュタイナー教育では、子どもの創造性や知性を偏りなく伸ばすことが重要視されているため、自ら考え、表現する力を育めるでしょう。
シュタイナー教育の学びの過程では、単なる知識の暗記ではなく、体験学習を通して理解を深めるのを大切にしています。授業のなかで芸術や音楽が積極的に取り入れられており、子どもはそれらの活動を通じて創造的な思考力や問題解決力を養えるのが魅力の1つです。
2.異年齢クラスでの学びがある
シュタイナー教育では、異なった年齢の子どもたちが一緒に学ぶ環境が整備されているため、社会性や協調性を自然と身につけられるのが魅力です。年齢の異なる子どもたちが同じクラスで過ごすと、年長の子は年下の子を助けてリーダーシップを学べるでしょう。また、年下の子は年上の子の姿を見て、学びを深められる可能性があります。
年齢混合のクラスでは、競争ではなく協力を重視した学びが重視されます。そのため、シュタイナー教育を実施している学びの場では、子どもたちが一律に学習するのではなく、自分のペースで成長できる可能性が高まるでしょう。
3.自然と触れ合う機会が豊富にある
シュタイナー教育では、屋外での活動を積極的に取り入れており、子どもが自然と触れ合う機会が豊富にあるのもメリットといえます。シュタイナー教育を受ける子どもたちは森を散策したり、畑で野菜を育てたりすることで、五感を使いながら自然の営みを学びます。こうした経験は、子どもたちの感受性を豊かにし、自然の大切さや環境に対する意識を育むきっかけになるでしょう。
また、自然のなかで自由に遊ぶと、心身においてバランスのとれた成長を促す可能性も。シュタイナー教育における自然との触れ合いは、子どもが自ら発見し、学ぶための大切な機会といえそうです。
シュタイナー教育における3つのデメリット
シュタイナー教育には、独自の教育方針ゆえの課題も存在します。ここでは、シュタイナー教育における3つのデメリットを解説します。
1.一般的な学校教育との違いが大きい
シュタイナー教育は、独自のカリキュラムや学びの方法を採用しているため、一般的な学校教育との違いが大きい点はデメリットといえるでしょう。たとえば、文字の読み書きや計算といった知的教育を早期に行わないようにしていることや、テストや成績評価がないという点がシュタイナー教育の特徴です。シュタイナー教育を受けた子どもが途中で一般的な学校に転校した場合、授業の進度や学習スタイルの変化に戸惑う可能性があります。
また、保護者が子どもの学習進度を把握しにくいという側面もあるようです。一般的な学校では、テストや成績の通知表を通じて保護者が子どもの学力を確認できます。しかし、シュタイナー教育では子どもの成長を総合的に捉えるため、数値的な評価が行われません。そのため、保護者が子どもの学習の成果を実感しにくい点はデメリットといえます。
2.教育方針が家庭と合わない場合がある
シュタイナー教育は、独自の教育理念に基づいているため、家庭の考え方や価値観と合わない場合があります。たとえば、シュタイナー教育は電子メディアを避けるという方針がありますが、家族全員がその方針に従うのは難しいこともあるでしょう。
ほかにも、保護者が早期教育を希望している場合、教育方針とのギャップが生じる可能性があります。
3.シュタイナー教育を取り入れている施設が限られている
日本でシュタイナー教育を実践している保育園や幼稚園、学校はまだ限られています。都市部では見つけられる場合もありますが、地方ではほとんど選択肢がないことも珍しくありません。そのため、シュタイナー教育を学びたい、実践したいと思っている保育士は、勤務先の選択肢が限られてしまうことがあります。シュタイナー教育に関心を持つ保育士であっても、実際にその環境で働く機会を得るのが難しいという点が課題の1つです。
保育士がシュタイナー教育を採用している園で働く際の注意点
保育士がシュタイナー教育を取り入れている園で働く場合、一般的な保育とは異なる考え方や実践が求められます。また、教育方針にこだわりがある保護者への理解も重要です。ここでは、保育士がシュタイナー教育を採用している園で働く際の注意点を解説します。
シュタイナー教育独自の活動に適応する必要がある
シュタイナー教育を取り入れている園では、独自の活動や日課が設定されています。そのため、保育士はシュタイナー教育の理念を深く理解し、保育を実践することが求められるでしょう。保育士自身がシュタイナー教育独自の活動を楽しみ、それを子どもたちに伝えられるようになる必要があります。
シュタイナー教育では、子どもの発達段階に応じて柔軟に関わることが求められるため、画一的な指導方法に慣れている保育士は戸惑うことがあるかもしれません。シュタイナー教育は子どもへの言葉がけや環境づくりにも独自の考え方があります。そのため、保育士の価値観にも影響を与えるケースがある点には、留意する必要があるでしょう。
保護者との信頼関係を丁寧に築く
シュタイナー教育を選ぶ保護者はその教育理念に共感し、価値観を大切にしている方もいます。そのため、保育士は保護者との信頼関係を丁寧に築く必要があるでしょう。たとえば、園での活動や保育士の子どもへの接し方に関して、保護者に細かく確認されることがあります。食事や生活習慣においても、自然素材を重視するなどのこだわりを持つ家庭もあり、園と家庭での方針をすり合わせる場面があるかもしれません。
保育士は保護者の意向を尊重しながらも、子どもたちの成長にとって最善の関わりができるよう、丁寧に説明したり、相談にのる必要があるでしょう。
シュタイナー教育に関してよくある質問
ここでは、シュタイナー教育に関してよくある質問に、Q&A形式で回答します。
シュタイナー教育は特定の宗教に基づいた教育法ですか?
シュタイナー教育は、特定の宗教に基づいた教育法ではありません。そのため、シュタイナー教育を実践するにあたって、特定の宗教を信仰することは求められません。シュタイナー教育を取り入れている園や学校では、宗教的な教義を教えることはなく、子ども一人ひとりの個性や内面的な成長を大切にすることが重視されています。
シュタイナー教育を採用している園に向いている保育士は?
シュタイナー教育を採用している園には、子どもの成長を温かく見守り、自由な発想や創造性を大切にできる保育士が向いています。シュタイナー教育では、ゆったりとした生活の流れのなかで子ども自身が学びを深めていくことを重視するため、保育士には焦らずに成長を見守る姿勢が求められるでしょう。
シュタイナー教育独自の活動に興味があり、自分も実践しながら学んでいける保育士も、シュタイナー教育を採用している園で働くのに適しています。シュタイナー教育を取り入れている園で働くには、園の理念を深く理解して保育を進めていく姿勢が大切です。
シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の違いは?
シュタイナー教育とモンテッソーリ教育は、どちらとも子どもの自主性を重んじる教育法ですが、そのアプローチには違いがあります。
モンテッソーリ教育は、「子どもには自ら成長する力がある」という考えに基づき、子ども自身が自由に選び取って活動できる環境を整えるのが特徴です。そして、一人ひとりの発達段階に合わせた教材を用いて、子どもたちの学びを丁寧にサポートします。
シュタイナー教育は、子どもの創造性や想像力を育むことを重視し、芸術や自然との触れ合いを通じてゆったりと成長を促していくのが特徴です。
また、モンテッソーリ教育は子どもに早くから自立を促すのに対し、シュタイナー教育は子どもの年齢に応じた発達段階を大切にします。このように、2つの教育法には子どもの育つ環境や学びの進め方に違いがあるため、それぞれの特徴を理解することが大切です。
まとめ
シュタイナー教育は、ルドルフ・シュタイナーの思想をもとに生まれた独自の教育法です。この教育法では、子どもの成長を7年周期で捉え、想像力や感受性を大切に育みます。子どもの気質に応じて関わり、同一担任制のもとで安定した環境を提供するのが特徴です。シュタイナー教育は芸術活動や体験的な学びを取り入れ、知識を詰め込むのではなく、子ども自身が内面から成長できるよう支えることが大切とされています。
一方で、一般的な学校教育とは異なる点も多く、教育方針が家庭と合わない場合や実践できる施設が限られている点が課題です。シュタイナー教育に携わる保育士は、独自の理念や実践方法を理解し、保護者とも丁寧に連携をとることが求められます。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
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