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児童発達支援とは?仕事内容や施設の種類、保育士の役割を分かりやすく解説

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お絵描きを見守る保育士の画像

児童発達支援とは何か知りたい方もいるかもしれません。児童発達支援は、障害のある未就学児とその家族を支える重要な福祉サービスです。療育を通じて、子どもの発達を促し、日常生活や社会生活をスムーズに送れるようサポートします。この記事では、児童発達支援の目的や内容、対象となる子ども、施設の種類などを詳しく解説。施設で働く保育士の仕事内容やキャリアパスにも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

児童発達支援とは?

児童発達支援とは、障害のある未就学児の特性に応じて、発達を促し、日常生活や社会生活をスムーズに送れるよう支援する通所型の福祉サービスです。ここでは、児童発達支援の目的や内容、対象となる子どもについて分かりやすく解説します。

児童発達支援の目的

児童発達支援の目的は、こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン新規タブリンク」にあるように、「福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助」を通して、子どもの発達を総合的に促すことです。障がいがある子どもが日常生活に必要な基本動作を習得したり、小学校・幼稚園などで集団生活を送るための社会性を身につけたりできるように、子どもの課題に応じて個別に支援を実施します。

また、保護者が安心して家庭で子育てをできるよう、児童発達支援は保護者の相談役としても機能しています。子どもの持つ力を最大限に引き出し、将来的に円滑な社会生活を送れるようにサポートすることが、児童発達支援の役割です。

出典

こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン新規タブリンク」(2025年8月27日)

児童発達支援の内容

児童発達支援のサービスは、以下の4つに分けられます。

支援の種類 内容
本人支援
  • 子ども自身に対する直接的な支援する
  • 遊びや活動を通して、できることを増やす
  • 自信を育み、成長を促す
家族支援
  • 育児相談や保護者同士の交流機会を提供する
  • 保護者が安心して子育てできる環境を整える
移行支援
  • 保育園・幼稚園・小学校なへの移行準備をする
  • 新しい生活へのスムーズな移行をサポートする
地域支援・地域連携
  • 関係機関と協力し、地域で支援体制を作る
  • 子どもが地域の一員として豊かに生活できるようにする

これらの支援はそれぞれが独立しているわけではなく、子どもの成長や暮らしを支えるためのつながりがあります。

児童発達支援における本人支援の5つの領域

本人支援は、子どもの発達を促すための核となる部分です。子どもの発達は多岐にわたるため、以下の5つの領域に分けて考えられます。

領域 目的 保育士の役割(具体例)
健康

生活

健康の維持

生活習慣やリズムの形成

基本的生活スキルの獲得

食事や着替え、排泄の練習をサポート子どもの体調や小さな変化にいち早く気づき、適切に対応する
運動

感覚

姿勢や動作の基本技能の向上

感覚の特性への対応

身体を動かす遊びを通して、運動能力を育む

適切な補助具を使い、座る姿勢を安定させる

認知

行動

物事を適切に理解し、適切な行動をとれるようにする パズルや形合わせの遊びで、色や形の概念を教える

行動の理由を理解し、安心できる環境を整える

言語

コミュニケーション

言葉を理解して考えを伝える力、人と関わる力の獲得 指差しや身振り、絵カードを使って気持ちを伝えられるようサポート

子どもの発する小さなサインに耳を傾ける

人間関係

社会性

愛着形成、遊びを通じた社会性の発達 一対一の関わりで信頼関係を築き、「安心できる場所」になる

遊びを通じて、友達との関わり方やルールを学ぶ機会を作る

本人支援では、子どもの「できること」を増やすだけでなく、安心できる環境を整え、信頼関係を築くことも大切です。

対象者となる子ども

児童発達支援は、以下のような子どもたちが利用対象となります。

  • 発達の遅れや特性が気になる未就学児(言葉の発達がゆっくりな子どもや、人との関わりが苦手な子どもなど、発達に心配がある場合)

  • 障害者手帳や療育手帳を持っている未就学児

  • 医師から発達支援の必要性を指摘された未就学児

このように、児童発達支援は一人ひとりの特性や状況に合わせて提供することが可能です。自治体の判断によっては、障害者手帳がなくてもサービスを利用できる場合があります。

1日のスケジュール例

児童発達支援では、通所した子どもたちが安心して過ごせるように、1日の流れがある程度決まっています。以下は、午前から午後にかけて利用する場合の一例です。

11時 来所

健康状態の確認

水分補給やトイレ

11時15分 スケジュール確認、朝の会、出席確認
11時30分 集団療育や自由遊びなど
12時 昼食
13時 個別療育
13時15分 着替えや片付け

帰りの会

13時30分 お迎え

児童発達支援では遊びや学びの時間だけでなく、あいさつや片付けといった日常生活の流れも大切にしています。また、平日と休日で利用時間が異なる場合もあり、休日の方が長時間利用できるケースもあります

児童発達支援と療育の違いとは?

児童発達支援は、国が定めた障害のある子ども向けの福祉サービスの名称であり、療育はそのサービスの中で行われる「専門的な支援内容」を指します

たとえば、保育園でお歌や遊びを通して「保育」を行うように、児童発達支援施設で専門的な視点から「療育」を行うと考えると分かりやすいでしょう。療育の目的は、子ども一人ひとりの特性に応じた支援を通して、社会的な自立を目指すことです。児童発達支援に携わる保育士は、療育に努めながら日々子どもたちと向き合い、成長をサポートする大切な役割を担っています。

児童発達支援と放課後等デイサービスの違いとは?

児童発達支援と放課後等デイサービスの大きな違いは、子どもたちの対象年齢です。児童発達支援は、小学校に入る前の未就学児を対象としており、着替え・食事・片付けなどの基本的な生活習慣や、体の動かし方を身につける練習を中心に行います。

放課後等デイサービスは、小学生から18歳(場合によっては20歳)までの子どもが対象です。学校生活で必要となる友達との関わり方や、自己管理能力を育てる支援を提供します。そのほか、学習のサポートや将来の仕事につながる力を養う取り組みがあるのも特徴です。

児童発達支援施設の種類

児童発達支援施設は、「児童発達支援事業所」と「児童発達支援センター」の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴についてまとめました。

児童発達支援事業所

児童発達支援事業所は、地域に設置されている「身近な療育の場」です。子ども本人やその家族への支援を主な役割としており、通所による支援が中心となります。保育士は、子どもたちの発達を促す療育や日常生活のサポートを行います。施設数が多く、自宅から通いやすい場所を選びやすい点も特徴です。

児童発達支援センター

児童発達支援センターは地域全体を支える「中核的な療育支援施設」です。事業所が行う支援に加えて、地域の保育園や幼稚園への訪問支援、子育てに関する相談支援、巡回支援など、幅広い地域連携も担っています。そのため、より多くの専門職(医師・理学療法士・言語聴覚士など)が関わり、専門性の高い支援を提供しているのが特徴です。

出典

厚生労働省「児童発達支援センター等の現状等新規タブリンク」(2025年8月27日)

児童発達支援施設で働く保育士の仕事と役割

児童発達支援施設で働く保育士は、子どもへの直接支援や保護者との連携、運営のサポートなどの仕事を行います。以下では、児童発達支援施設で活躍する保育士に任される業務をまとめました。

業務の種類 具体的な内容
療育活動・支援
  • 個別支援計画に基づく遊び・運動・学習の支援
  • 生活習慣(食事・排泄・着替えなど)のサポート
日々の保育業務
  • 登園・降園の補助
  • 着替えや食事の介助
  • 子どもの安全管理
記録・書類作成
  • 発達の様子を観察し記録
  • 支援記録や個別支援計画の作成
保護者対応
  • 面談や連絡帳を通じた情報共有
  • 子育てや発達に関する相談対応
行事・イベント
  • 季節行事やイベントの企画・準備・実施
送迎業務
  • 車での送迎や付き添い
  • 安全な通所をサポート(事業所による)
多職種・地域との連携
  • 児童指導員・作業療法士・言語聴覚士などとの協働
  • 園・学校・医療機関との連携
事業所運営に関わる仕事
  • 清掃や環境整備
  • 教材・装飾の作成
  • 見学対応や研修参加
  • ミーティングへの出席

表の内容はあくまでも例のため、実際の業務内容は施設によって異なります。日々の保育に加え、記録の作成や多職種との協働を行い、現場を支えていく姿勢が重要です。児童発達支援施設で働く保育士を目指す際は、具体的な業務内容を理解し、幅広く対応できる心構えをしておきましょう。

児童発達支援施設で働く魅力

児童発達支援施設で働くことは、子どもの成長を間近で見守れるのが魅力です。たとえば、最初はできなかったことが少しずつできるようになるという成功体験を積み重ねるたびに、子どもたちが自信をつけ、達成感を味わう瞬間に立ち会えるのは大きなやりがいにつながります。また、一般的な保育施設に比べて利用定員が少ないため、一人ひとりの子どもとじっくり向き合い、その子の特性やペースに合わせた手厚いサポートができるのもポイントです。

児童発達支援施設で働く保育士のキャリアパス

児童発達支援施設で働くことは、保育士として専門性を高めながらキャリアを築くチャンスです。将来的には、児童発達支援管理責任者(児発管)として、支援全体をまとめるマネジメント職へ進む道もあります。保育士として児童発達支援や認可保育所などで合計5年以上直接支援の実務経験を積めば、児発管になるための研修の受講要件を満たすことが可能です。職場によっては、資格取得支援や各種研修制度が整っているため、幅広いスキルを身につけながら活躍してけるでしょう。

児童発達支援に関するよくある質問

ここでは、児童発達支援に関する質問にお答えします。

児童発達支援と保育園は何が違うの?

児童発達支援と保育園の大きな違いは、目的と対象者です。保育園は、主に保護者が働いている間に子どもを預かることが目的で、健常児を含む幅広い子どもたちが対象となります。
一方、児童発達支援は、発達に課題のある子どもを対象に、専門的な療育を通して自立を支援する福祉サービスです。児童発達支援では、一人ひとりの発達課題に合わせた個別支援計画に基づき、より専門的な関わりが求められます。

児童発達支援施設で働くにはどんな資格や経験が必要?

児童発達支援をするうえで特別な資格や経験は必要とされませんが、保育士資格もしくは児童指導員任用資格があると、業務に取り組みやすくなります。保育園で働いた経験があれば、集団保育のスキルや子どもの発達に関する知識を浮かすことが可能です。施設によっては理学療法士や言語聴覚士などの専門職と連携して働く機会があるため、コミュニケーション能力や観察力もあると強みになります。

まとめ

児童発達支援は、障害のある未就学児を対象にした通所型の福祉サービスです。子どもの特性に合わせて発達を促し、家庭や地域と連携しながら日常生活や社会生活に必要な力を育てていきます。

施設には、身近に利用できる「児童発達支援事業所」と、地域の中核的な役割を担う「児童発達支援センター」があります。保育士は、子どもの発達支援や保護者への相談対応、多職種との協力など幅広い役割を担い、将来的には児童発達支援管理責任者としてキャリアアップすることも可能です。

「子どもに寄り添う仕事をしたい」「保育の経験を新しい分野で活かしたい」と考えている方は、保育士専門の転職エージェントであるレバウェル保育士にご相談ください。レバウェル保育士では、これまでの保育経験やキャリアの希望を丁寧に伺い、児童発達支援事業所やセンターを含め、あなたに合った職場をご紹介します。専門性を活かしながら子どもの成長を支える環境を、一緒に見つけていきましょう。無料で利用ができるので、少しでも興味がある方はお気軽にご相談ください。

執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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