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職務分野別リーダーとは?役割や研修内容、保育士から目指すメリットを解説
- #保育士

「職務分野別リーダーとは何か」と気になっている方もいるのではないでしょうか。職務分野別リーダーとは、保育士の処遇改善などを目指すために新しく設けられた役職です。 この記事では、職務分野別リーダーの役割や要件、研修内容を解説。保育士が職務分野別リーダーになるメリット・デメリットも紹介します。「キャリアアップしたい」「役職を目指したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
職務分野別リーダーとは
職務分野別リーダーは2017年「処遇改善等加算Ⅱ」により導入された役職です。職務分野別リーダーは担当する分野において、ほかの職員に指導したり相談窓口になったりします。
職務分野別リーダーになれば、役職手当により処遇改善につながる場合もあります。職務分野別リーダーは、若手や中堅がキャリアアップを目指す第一歩になるでしょう。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
職務分野別リーダーの役職が設けられた理由
職務分野別リーダーは保育士処遇を段階的に改善し、キャリアパスを明確にするために設置されました。ここでは、保育士に職務分野別リーダーの役職が設けられた理由を3つ紹介します。
保育士の処遇を段階的に改善するため
職務分野別リーダーが設けられた理由の1つには、保育士の処遇改善があります。職務分野別リーダーが設置される前までは、保育園では園長や主任しかなく、若手や中堅の保育士を対象とした役職がありませんでした。そのため、若手や中堅の保育士がキャリアップを目指しにくいという状況だったのです。また、役割が明確ではないため業務が管理職に偏る傾向があり、それが課題となっていました。
そこで、2017年に厚生労働省によって「処遇改善等加算Ⅱ」が導入され、新たな役職である「職務分野別リーダー」「専門リーダー」「副主任保育士」の3つが創設されたのです。
キャリアパスを明確にして保育士の離職を防止するため
職務分野別リーダーには、保育士の離職を防止する目的もあります。前述したように、職務分野別リーダーがあることで保育士の処遇改善につながり、結果として離職を防止する場合も。また、園長や主任保育士以外にも役職があると、若手や中堅のキャリアパスが明確になります。それによって仕事へのモチベーションが維持しやすく、長く働き続けられる可能性が高まります。
保育士の専門性を高め保育の質を向上させるため
職務分野別リーダーは、保育士の処遇改善や離職防止だけでなく、保育の質を向上する目的もあります。保育士が職務分野別リーダーになるためには、キャリアアップ研修を受け知識やスキルを習得する必要があります。その後、職務分野別リーダーとして勤務し、キャリアアップ研修で身につけた知識やスキルをもとに、ほかの職員にアドバイスしたり保護者から相談を受けたりするため、保育の質向上にもつながるでしょう。
職務分野別リーダーの主な役割
職務分野別リーダーの主な役割は、担当する分野に関してアドバイスをしたり、相談を受けたりすることです。役割や担当業務は職場によっても異なりますが、たとえば以下のようなことを任される可能性があるでしょう。
担当分野に関してアドバイスや提案
担当分野の相談窓口
担当分野の研修を行う
新卒や後輩の保育士などに担当分野の指導
職務分野別リーダーは、キャリアアップ研修で習得した知識やスキルを活かし、職場で相談役を引き受けたり研修を実施したりします。また、保育士にアドバイスや提案、指導を行うことで、園全体における保育の質を向上できるでしょう。
職務分野別リーダーに就くための要件
厚生労働省の「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ (p.1)」によると、職務分野別リーダーになるためには、以下の条件を満たす必要があります。
保育士の経験年数が概ね3年以上
担当する職務分野(1つ以上)のキャリアアップ研修を修了している
修了した研修分野の職務分野別リーダーとして園から発令を受ける
職務分野別リーダーになるためには、保育士として概ね3年以上経験を積んだ後、キャリアアップ研修を受講します。受講が完了した後、修了した研修分野の職務分野別リーダーとして園から正式に発令を受ける必要があります。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
職務分野別リーダーの研修内容
職務分野別リーダーになるためのキャリアアップ研修では、受講する分野の知識を深めたり実践的なスキルを身につけたりします。都道府県または都道府県知事が指定した研修機関で研修を受講し、レポートを提出する必要があるでしょう。
なお、職務分野別リーダーになるためのキャリアアップ研修では、以下の6つの分野があります。
乳児保育
幼児教育
障害児保育
食育・アレルギー
保健衛生・安全対策
保護者支援・子育て支援
研修時間は、1分野15時間以上と定められています。以下では、厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」をもとに分野別のねらいや受講内容を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
乳児保育
乳児保育では、主に0〜3歳向けの保育を学びます。乳幼児保育の理解を深め、個々の子どもの発達に応じた保育を行う力を養うことを目指します。研修を受講すると、ほかの保育士に乳幼児保育に関するアドバイスや指導ができるような、実践的な知識も身につけられるでしょう。
幼児教育
幼児教育では、主に3歳以上を対象とした知識やスキルを学べます。幼児教育に関する理解が深まり、アドバイスや指導するスキルを身につけるのを目的としています。幼児教育では意義や保育内容以外にも、小学校入学に向けた生活指導や必要な支援についても学べるのが特徴といえます。
障害児保育
保育園によっては、障害児保育を実施していることもあるでしょう。障害児保育では障害への理解を深め、子どもに応じた環境や援助に関する知識を身につけます。家庭および関係機関との連携についても学びます。
児童発達支援施設や医療型児童発達支援施設などで働く場合にも、障害児保育の知識・スキルが役立つでしょう。
食育・アレルギー
食育では、適切に食育計画作成や活用ができる力を養います。また、アレルギーへの理解も深め、適切にアレルギー対応できる知識・スキルを身につけるのを目指します。
保育園で実施する食育のイベントのほか、給食やおやつなどでアレルギー対応する際に、学んだ知識・スキルを活かせるでしょう。
保健衛生・安全対策
保健衛生・安全対策では、保健計画の作成や適切な安全対策ができる力を養うのを目的としています。保健衛生・安全対策を受講すると、園児の健康管理や安全対策について助言やアドバイスができるようになるでしょう。
保護者支援・子育て支援
保護者支援・子育て支援では、保護者に適切な支援や助言ができるように知識・スキルを身につけます。保護者支援・子育て支援の研修を受講すると、保護者や地域の人々、ほかの保育士などから相談を受け、助言や指導できる実践的なスキルが身につくでしょう。
保育士が職務分野別リーダーになる4つのメリット
職務分野別リーダーになると収入がアップし、研修で学んだ知識を実務で活かせる可能性があります**。
**ここでは、保育士が職務分野別リーダーになるメリットを4つ紹介します。職務分野別リーダーになるか迷っている方は、以下のメリットを参考にしてください。
1.加算・手当によって給与アップの可能性がある
前述しましたが、職務分野別リーダーには月額最大5,000円が支給されるため、給与がアップする可能性があるのはメリットといえます。ただし、支払額は園の事情によって異なります。職務分野別リーダーに興味がある方は、事前にどれくらい役職手当が配分されるか、参考までに勤務先に確認しておくのがおすすめです。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
2.研修で学んだ知識を仕事で活かせる
職務分野別リーダーになるメリットは、キャリアアップ研修で学んだ知識・スキルを実務で活かせることです。より専門性を高め、できることが増えたり、自分自身の成長を感じられたりする場合もあるでしょう。スキルを高めて業務がスムーズにいくと、仕事へのモチベーションアップにもつながる可能性があります。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
3.キャリアアップの第一歩となる
職務分野別リーダーは、キャリアアップへの第一歩になる点がメリットといえます。職務分野別リーダーの次には、専門リーダーや副主任保育士などの役職があります。専門リーダーや副主任保育士になるには、職務分野別リーダーを経験することが必須とされています。
また、職務分野別リーダーとして経験を積み評価されれば、次のステップに進める場合もあるでしょう。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
4.転職や復職時にアピールできる
職務分野別リーダーの経験は、転職や復職時にアピールできるのもメリットです。職務分野別リーダーになるためのキャリアアップ研修を終えると、自治体から修了証が交付されます。修了証は、全国で有効とされています。
そのため、キャリアアップを目指して転職する際や、保育士の仕事にブランクがあり復職する際などに、知識やスキルの客観的な証明として修了証が使える点はメリットといえます。また、職務分野別リーダーとして働いた経験をもとに、自己PRもできるでしょう。
保育士が職務分野別リーダーになるデメリット
ここでは、保育士が職務分野別リーダーになるデメリットを2つ紹介します。職場によっては、処遇改善の加算が微々たるものであったり、業務の負担が増えたりするデメリットがある場合もあります。
処遇改善の加算が満額支給されないこともある
職務分野別リーダーの役職手当は月額最大5,000円とされていますが、必ずしも満額支払われるわけではありません。園の事情によっても加算額は異なるでしょう。
職務分野別リーダーになると、どの程度給与がアップするのかを上司に確認するのがおすすめです。
業務の負担が増える可能性がある
職務分野別リーダーになると、研修した分野の相談に乗ったり、後輩の指導を任されたりするなど、業務負担が増える場合があります。通常の保育士の仕事にプラスして職務分野別リーダーの業務を任されると、残業が増える可能性も。
そのため、職務分野別リーダーとして働くためには、自分の業務を管理し、ほかの職員の相談に乗ったり指導したりする余裕が必要かもしれません。
職務分野別リーダーと専門リーダーの違いは?
職務分野別リーダーと専門リーダーの違いは、研修を受けるのに求められる経験年数や処遇改善加算の額などが違います。それぞれの違いは、以下のとおりです。
職務分野別リーダー | 専門リーダー | |
保育士の経験年数 | 概ね3年以上 | 概ね7年以上 |
担当する職務分野の数 | 1つ以上 | 4つ以上 |
処遇改善加算 | 月額最大5,000円 | 月額最大4万円 |
参照:厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ (p.1)」
専門リーダーになるためには、職務分野別リーダーを経験する必要があります。専門リーダーのほうが、より専門的な知識や幅広い経験が求められるでしょう。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年9月5日)
まとめ
職務分野別リーダーは、保育士の処遇改善などを目的として2017年に設けられた新しい役職です。職務分野別リーダーになるには、概ね3年以上の保育士経験と研修を受ける必要があります。
職務分野別リーダーになるメリットは、給与アップが期待できることです。ほかにも、専門リーダーや副主任保育士などを目指しやすくなるのもメリットといえるでしょう。
一方、園の事情によっては、職務分野別リーダーになっても給与があまり変わらないというケースもあります。また、業務負担が増える可能性があるのもデメリットといえるかもしれません。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。