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地域限定保育士とは?試験の概要や目指すメリット・デメリットも解説

  • #保育士
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地域限定保育士について知りたい方もいるのではないでしょうか。地域限定保育士とは、特定の地域でのみ働ける保育士資格で、3年後には全国で勤務できます。通常の保育士資格と比べて受験しやすい点もあり、上手に活用すれば資格取得のチャンスを広げられるでしょう。 この記事では、地域限定保育士と通常の保育士資格との違い、試験の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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地域限定保育士とは?

地域限定保育士とは、特定の地域における待機児童問題の解消や保育士不足を補うために設けられた制度で、国家戦略特別区域(いわゆる国家戦略特区)の一部地域で実施されています。この制度では、通常の保育士試験とは異なり、年に2回実施される試験の合格者に対して、登録から3年間は特定の区域内のみで保育士として働くことが認められます。3年間の勤務後は、全国どこでも通常の保育士と同様に働けます。

また、近年の法改正により、試験の公正性・適正性を確保した上で、株式会社などの法人を指定試験機関として活用できるようになり、試験実施の拡充も進められています。地域限定保育士の資格取得は、特定地域での保育士不足を解消するだけでなく、将来的に全国での就職を目指す方にとってもキャリアの選択肢を広げる手段の1つとなるでしょう。

出典

厚生労働省「地域限定保育士について新規タブリンク」(2025年5月29日)

地域限定保育士と通常の保育士の違い

ここでは、地域限定保育士と通常の保育士の違いについて紹介します。以下は違いについて表にまとめたものです。

地域限定保育士 通常の保育士
試験内容 筆記・実技試験(実技試験に関する免除制度あり) 筆記・実技試験
受験資格 通常の保育士試験と同じ 大学・短大卒業者や児童福祉施設での経験が条件
勤務地 資格取得後3年間は合格した自治体でのみ勤務可能 全国で勤務可能
仕事内容 通常の保育士と同じ 一般的な保育業務

参照:厚生労働省「地域限定保育士について新規タブリンク

地域限定保育士と通常の保育士の大きな違いは、最初の3年間は試験に合格した地域でしか働けない点にあります。4年目以降は、通常の保育士と同じように全国どこでも働くことが可能です。実施できる保育業務の範囲や給与・待遇は、通常の保育士と変わりませんが、一部の自治体では指定の実技講習を受けると実技試験が免除されることがあります。

また、地域限定保育士試験は実施自治体が限られ、毎年必ず行われるわけではないため、受験を考えている方は各自治体の情報を確認しておくと安心です。3年間の勤務地制限はあるものの、その後は全国で働けるため、該当する地域での就職を考えている方にとって有力な選択肢となるでしょう。

出典

厚生労働省「地域限定保育士について新規タブリンク」(2025年5月29日)
一般社団法人 全国保育士養成協議会「保育士試験とは新規タブリンク」(2025年5月29日)

地域限定保育士の試験概要

地域限定保育士試験(国家戦略特別区域限定保育士試験)は、通常の保育士試験とほぼ同じ内容で実施され、勤務地が一定期間制限される点が特徴です。

ここでは、地域限定保育士試験の受験にあたって押さえておきたい試験概要を表を交えて紹介します。

項目 詳細
受験資格
  • 大学や短大、専門学校卒業
  • 高校卒業後、2年以上の児童福祉施設勤務(2,880時間以上)
  • 中学卒業後、5年以上の児童福祉施設勤務(7,200時間以上)
試験内容
  • 筆記試験(9科目)
  • 実技試験(実技講習会の受講で免除される場合あり)
合格基準 全科目の6割以上
合格率

(大阪府の例)

  • 令和元年:約40%
  • 令和2年:約24%
  • 令和3年:約26%
  • 令和4年:約37%
試験実施自治体 年によって異なる
試験情報 各自治体のホームページで詳細を確認

参照:こども家庭庁「地域限定保育士試験に関する各自治体の見解の要点新規タブリンク」、一般社団法人全国保育士養成協議会「筆記試験について新規タブリンク

地域限定保育士試験の受験資格は通常の保育士試験と同じで、全国どこでも受験可能です。学歴や実務経験による要件を満たせば受験できます。筆記試験の科目や範囲は通常の保育士試験と同じで、すべての科目で6割以上の正解が必要です。一部の自治体では、指定の実技講習を受講することで実技試験が免除される場合があるため、事前にチェックしておくと安心です。また、地域限定保育士試験は実施自治体が限られ、毎年必ず行われるわけではありません。受験を希望する場合は、最新の実施状況を各自治体のホームページで確認しましょう。

出典

こども家庭庁「地域限定保育士試験に関する各自治体の見解の要点新規タブリンク」(2025年5月29日)
一般社団法人全国保育士養成協議会「筆記試験について新規タブリンク」(2025年5月29日)

地域限定保育士試験の科目免除について

地域限定保育士試験で合格した科目は、通常の保育士試験と同様に3年間の免除が適用されます。そのため、免除期間内であれば、地域限定試験で合格した科目は全国の保育士試験でも免除され、逆に通常の保育士試験で合格した科目も地域限定保育士試験で免除されます。また、地域限定保育士試験で合格した科目は、次回以降の試験においても引き続き免除可能です。

出典

厚生労働省「地域限定保育士試験の概要新規タブリンク」(2025年5月29日)

基本的な免除ルールは共通

地域限定試験と通常の保育士試験では、免除の仕組みに違いはなく、どちらの試験であっても合格した科目は3年間有効です。そのため、一部の科目のみ合格した場合でも、免除期間内であればほかの試験で引き続き有効活用できます。受験資格やそのほかの免除に関する制度も同様の取り扱いとなるため、試験をまたぐ際は最新の情報を確認すると安心です。

両方受験した場合に適用される資格

地域限定保育士試験と一般の保育士試験の両方を受験し、科目免除を活用しながら合格した場合、最終的に「合格」となった試験の資格が適用されます。なお、実技試験が免除される幼稚園教諭免許所有者は、筆記試験で全科目に合格した方の資格が適用され、それ以外の受験者は実技試験に合格した試験の資格となります。

以下は、一般保育士資格になる場合の一例です。

1.地域限定試験で筆記試験に合格
2.翌年、一般試験で実技試験に合格
→「一般保育士資格」取得(勤務地制限なし)

以下は、地域限定保育士資格になる場合の一例です。

1.一般試験で筆記試験に合格(実技は不合格)
2.翌年、地域限定試験で実技講習を受けて合格
→「地域限定保育士資格」取得(3年間勤務地制限あり)

試験合格後に地域限定保育士として働く方法

地域限定保育士試験に合格しただけでは、すぐに保育士として働くことはできません。社会福祉法人日本保育協会の「都道府県知事委託 保育士登録機関 登録事務処理センター新規タブリンク」によると、業務に就くためには、まず登録手続き を行い、「地域限定保育士証(国家戦略特別区域限定保育士登録証)」を取得する必要があります。登録手続きの流れは以下のとおりです。

1.登録申請:合格した都道府県または政令市の知事に対し、登録手続きを行う
2.地域限定保育士証の交付:登録が完了すると、地域限定保育士証が交付される
3.業務開始:証明書を受け取った後、地域限定保育士として勤務可能

登録が完了し、地域限定保育士証を取得すると、正式に地域限定保育士として働けます。登録要件や手続きは自治体ごとに異なるため、詳細は合格地の自治体ホームページで確認しましょう。

出典

社会福祉法人日本保育協会「都道府県知事委託 保育士登録機関 登録事務処理センター新規タブリンク」(2025年5月29日)

地域限定保育士を目指すメリット

地域限定保育士試験は、効率的に保育士資格を取得したい方にとって、魅力的な選択肢の1つです。ここでは、地域限定保育士を目指すメリットについて詳しく解説します。

受験機会が増える

地域限定保育士試験は、一般保育士試験とは異なる日程で実施されることが多く、年に2回開催する自治体もあります。そのため、一般保育士試験と合わせると年間に複数回受験でき、合格のチャンスが増えるメリットがあります。また、筆記試験の合格科目が翌年の試験で引き継がれるため、計画的に試験に挑戦しやすい点も魅力です。

実技試験が免除される場合がある

自治体によっては、「保育実技講習」を受講・修了すると、実技試験が免除される制度を設けています。これにより、実技が苦手な方でも、筆記試験の勉強に専念しながら保育士資格の取得を目指せる点がメリットです。また、幼稚園教諭免許を持っている場合は、通常の保育士試験と同様に実技試験が免除されるため、負担を軽減できます。

合格した科目は翌年の保育士試験でも免除される

地域限定保育士試験で合格した科目は、翌年の一般保育士試験で受験が免除されるため、残りの科目に集中できます。逆に、先に一般保育士試験で合格した科目も、地域限定保育士試験では免除の対象です。この仕組みを活用すれば、一度に全科目をクリアする必要がなく、自分のペースで計画的に合格を目指せます。試験ごとに戦略的に受験科目を選べるため、働きながら資格取得を目指す方や、じっくり知識を定着させたい方にとって大きなメリットとなるでしょう。

地域限定保育士として勤務しなくても3年後は全国で働ける

地域限定保育士として登録後、3年が経過すると全国で働ける保育士資格へと自動的に切り替わります。3年間は合格した地域での勤務が前提とされていますが、必ずしもその期間内に保育士として働く必要はありません。

そのため、資格を取得した後すぐに就職せず、ライフプランに合わせて3年後から全国での就職を目指すことも可能です。今後のキャリアの選択肢を広げながら、柔軟に保育士資格を活かせる点は大きな魅力といえるでしょう。

地域限定保育士を目指すデメリット

地域限定保育士試験にはいくつかのメリットがありますが、一方で注意すべき点も存在します。ここでは、地域限定保育士を目指す際に知っておきたいデメリットについて解説します。

勤務地が限定されているため希望の職場に出会えない可能性もある

地域限定保育士資格を取得しても、登録後3年間は試験を実施した自治体内でしか働くことができません。そのため、希望する地域や施設での就職が難しくなる可能性もあります。すぐに特定のエリアで保育士として活躍したい場合は、勤務地の選択肢が限られる点を考慮し、受験を検討しましょう。

試験の実施地域や時期を把握しにくい

地域限定保育士試験は、各自治体の判断によって実施の有無や試験日程が決まるため、毎年必ず開催されるとは限りません。また、詳細なスケジュールが公表されるまで見通しが立ちにくく、受験計画を立てにくい難点もあります。実施地域や試験時期を正確に把握するには、自治体や全国保育士養成協議会の公式サイトをこまめにチェックし、最新情報を確認してください。

年によって実施地域が異なるので受験や転職が難しい場合もある

地域限定保育士試験は、毎年同じ自治体で実施されるとは限らず、年によって試験を開催する地域が変わる可能性があります。そのため、希望する地域で受験できるとは限らず、近隣で試験が行われない場合は遠方まで足を運ばなくてはならない場合もあるでしょう。また、合格後も指定地域で勤務することが求められるため、慎重に検討する必要があります。

地域限定保育士についてよくある質問

ここでは、地域限定保育士についてよくある質問にお答えします。ぜひ参考にしてください。

通常の保育士試験で合格済みの科目は地域限定試験でも免除される?

通常の保育士試験で合格した科目は、地域限定保育士試験でも免除されます。逆に、地域限定保育士試験で合格した科目も、次回以降の通常の保育士試験で免除されるため、2つの試験を活用しながら効率的に資格を修得できるでしょう。

地域限定試験が実施されていない地域に住んでいても受験可能?

地域限定保育士試験は、実施地域に住んでいなくても受験可能です。住民票の有無に関係なく申し込めるため、ほかの地域に住んでいる方でも受験資格を満たしていれば挑戦できます。ただし、合格後に地域限定保育士として働く場合は、その試験を実施した自治体内での勤務が必要となる点に注意しましょう。

地域限定試験の全科目に合格した場合、翌年の通常保育士試験で免除科目はある?

地域限定保育士試験で合格した科目は、翌年の通常の保育士試験でも免除されます。ただし、地域限定保育士試験の全科目に合格した場合、すでに資格を取得したとみなされるため、通常の保育士試験での免除制度は適用されません。そのため、翌年に通常の保育士試験を受ける場合でも、再び全科目の受験が必要となります。

まとめ

地域限定保育士試験は、保育士不足を解消するために作られた制度です。通常の保育士試験と試験内容はほとんど同じですが、合格後の3年間は特定の地域でしか働けない点が大きな違いといえるでしょう。

また、地域によっては実技試験のほか、一般の保育士試験で合格した科目が免除される制度があるため、工夫すれば資格取得のチャンスを広げられるのがメリットです。しかし一方では、試験が毎年必ず実施されるわけではないのがデメリットといえます。どの地域で行われるかも決まっていないため、事前にしっかり確認しましょう。

保育士を目指すうえで、資格を取ることは大切な第一歩ですが、その後の就職活動も重要なステップです。地域限定保育士試験を上手に活用すれば、資格取得のチャンスが広がり、自分に合った働き方を見つけることができるでしょう。とはいえ、一人で転職活動を進めるのは、不安や悩みがつきもの。そのようなときは、転職エージェントを活用するのも1つの方法です。

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執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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