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乳児院で働くには?資格や保育士向けに必要なスキルを解説
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「乳児院で働くには?」と気になる方もいるでしょう。乳児院で働くためには、看護師や保育士など、どのような職種で働くか検討する必要があります。 この記事では、乳児院で働いている人の職種や必要な資格を解説。保育士として乳児院で働く際の役割や仕事内容、必要なスキルも紹介します。向いている人の特徴も参考に、乳児院で勤務するかどうかを検討してみましょう。
目次
乳児院とは
こども家庭庁の「社会的養護の施設等について」によると、乳児院とは、保護者の病気や経済的な理由などによって養育を受けられない乳幼児を保護し、生活全般のサポートをする施設です。乳児院は、児童福祉法に基づいて設置・運営されています。原則として短期的な養育を目指しますが、状況に応じて長期化することもあるようです。
乳児院では、乳幼児の養育だけでなく、保護者支援や退所後のケアなどの役割も担っています。乳児院は、乳幼児の健全な成長と発達を支援し、将来的な家庭復帰や新たな家庭環境への移行を目指す施設です。
出典
こども家庭庁「社会的養護の施設等について」(2025年5月20日)
乳児院で働くには?
乳児院で働くには、「どのような職種やポジションで働きたいか」を検討します。厚生労働省の「最低基準等及び措置費における職員配置基準について(p.1)」によると、乳児院に配置される主な職種は以下のとおりです。
医師
看護師
保育士
児童指導員
栄養士
施設長
事務員
乳児院で働く職種によって、必要な資格や学歴は異なります。また、求人によっても問われる経験やスキルなどが違うため、募集要項の詳細をよく確認したうえで応募しましょう。
出典
厚生労働省の「最低基準等及び措置費における職員配置基準について」(2025年5月21日)
乳児院で働く際に必要な資格
乳児院では、受け入れる子どもの定員によって、看護師や保育士などの人数も決まるため、転職時に資格の有無が問われる可能性があります。国家資格が必要な資格は、医師や看護師、保育士、栄養士などです。また、e-GOV法令検索の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第二十一条」によると、乳児院において以下のような職種に就くためには「任用資格」が必要になります。
職員 | 任用資格 |
家庭支援専門相談員 | 社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を有する者・乳児院において乳幼児の養育に5年以上従事した者など |
心理療法担当職員 | 大学で心理学を専修する学科、もしくはこれに相当する課程を修めて卒業した者であって、個人および集団心理療法の技術を有する者 |
施設長 | 「医師で小児保健に関して学識経験を有する者」「社会福祉士の資格を有する者」「乳児院の職員として3年以上勤務した者」のいずれかに該当し、厚生労働省指定の乳児院の運営に関し必要な知識を習得させるための研修を受けた者 |
参照:e-GOV法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第二十一条」
なお、e-GOV法令検索の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第二十一条」によると、一定の条件を満たすと看護師の代わりとして保育士資格者を配置することも可能です。看護師が不足している乳児院では、保育士資格者の採用を検討する場合もあるかもしれません。
出典
e-GOV法令検索の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(2025年5月21日)
乳児院で働く保育士の役割と仕事内容
乳児院で働く保育士の主な役割は、乳幼児の養育と発達支援です。乳児院で働く保育士は、以下のような仕事内容を担当します。
生活全般のサポート:授乳や食事・排泄・入浴の介助、睡眠の見守り
発達支援:年齢や発達段階に応じた遊びや活動の提供、運動機能の発達支援
健康管理:日々の健康観察、看護師や医師との連携による医療的ケアの補助
心理的ケア:愛着形成を促進する温かい関わり、心理士と連携した情緒的支援
記録と観察:日々の生活記録の作成、発達の経過観察と記録
家族・退所支援:面会時の家族との交流支援、保護者への養育指導や相談対応
ほかの職員や外部との連携:看護師や心理士、児童相談所などへの情報共有
乳児院で働く保育士は、以上のような業務を通じて、子どもたちの健やかな成長と発達を支援し、将来的な家庭生活への円滑な移行を目指します。また、子どもたちにとっても愛着対象となりやすいことから、安心と安全の基盤を提供する役割も担っているでしょう。
乳児院で働く保育士に必要なスキル
乳児院で働く保育士は、基本的な保育スキル以外にも、保護者の代わりとなって養育するスキルや親子関係のケアをサポートする姿勢が求められる傾向にあります。そのため、保育園で基本的な保育経験を積んでから、乳児院で働く保育士としてステップアップするとスムーズかもしれません。
ここでは、乳児院で働く保育士に必要なスキルを紹介します。
乳児保育のスキル
乳児院では、主に0〜2歳児を保育するスキルが必要になります。子ども一人ひとりに合わせて遊びを変えたり、どこまで食事や着替えを手伝うかを考えたりして、成長や発達を促すのも保育士の仕事です。乳児を保育する際は、表情や動きからの心理状態を読み取り、コミュニケーションの取り方や関わり方を考えなければいけません。日々観察し、状況や成長に応じて保育内容を考えるスキルも求められます。
子どもを養育するスキル
乳児院で働く保育士は、保護者の代わりになって子どもを育てる「養育スキル」も求められます。養育とは、衣食住の教育や監督などをして、子どもを健全に育てることです。精神的なケアや人格形成をサポートすることも含まれます。
乳児院では、保育士が子どもに対して他者との関わり方を教えたり、生活における基本的なルールを教育したりするのが特徴です。また、温かい関わり方や心に傷を抱えた子どもに手厚いケアをするなど、愛着形成に関するスキルも必要になります。
障害児保育のスキル
乳児院で働く保育士は、障がいのある子どもの生活をサポートしたり、支援内容を考えたりするスキルが求められる場合もあるようです。乳児院によっては、知的障害や肢体不自由など障がいのある子どもを受け入れています。足が不自由な子どもに対して生活しやすい環境を整えたり、発達状況に合わせてコミュニケーションの取り方を変えたりと、障害児保育ではより手厚いケアやサポートが必要です。
生活全般のサポートスキル
乳児院で働く保育士は、掃除や洗濯、就寝後の見守りなど、生活全般のサポートスキルが必要です。入浴の介助や生活環境の整備など、一般的な保育園で働く場合より幅広いサポートスキルが求められます。
清潔で安全な環境を維持するためには、家事業務で生活環境を整えたり、子どもの体調を管理したりしなければなりません。夜勤で働く場合は、子どもの寝かしつけや夜泣き対応などのスキルも求められます。
保護者支援のスキル
乳児院で働く保育士は、保護者とコミュニケーションを取ったり相談にのったりするスキルも求められます。乳児院では、一時的に子どもを受け入れ、保護者の支援も同時に行いながら家庭へ戻れるようにサポートする場合もあるからです。
保護者支援に関して保育士は、相談員や児童相談所など、ほかの職員の方と連携して対応します。子どもについてヒアリングしたり乳児院での様子を伝えたり、適切な支援をするためには、保護者と丁寧にコミュニケーションをとることが大切です。
親子関係のケアやサポートスキル
乳児院で働く保育士は、親子の間に入ってケアやサポートするスキルも必要です。乳児院では、保護者と子どもに対し面会交流支援が実施されます。保育士は、親子が触れ合う様子を見守ったり、子どもとのコミュニケーションの取り方についてアドバイスしたりすることもあるでしょう。
なお、乳児院における親子関係のケアやサポートは、里親に対して実施されることもあります。親子関係の構築に向けて、保育士が里親に子どもの性格や発達に関して情報共有したり、養育方法についてアドバイスしたりすることもあるかもしれません。
さまざまな職種の方との連携スキル
乳児院で働く際には、看護師や相談員、児童相談所の職員など、さまざまな職種や立場の方と連携するスキルが必要です。乳児院において保育士は、子どもとの関わりが深くなりやすいポジションであるため、ほかの職種の方から情報共有や意見を求められることもあります。
さまざまな職種や立場の方と上手く連携するためには、それぞれの役割を理解し尊重することが重要です。保育士は、子どもの小さな変化について報告したり、分かりやすい記録を作成したりして、連携がスムーズいくような対応が求められます。
乳児院で働く保育士に向いている人の特徴
乳児院で働く保育士は、保育園で働く場合と違ったスキルや強みが必要になることもあります。ここでは、乳児院で働く保育士に向いている人の主な特徴を解説します。
忍耐強く子どもと向き合える人
忍耐強く子どもと向き合い、長期的な目線でサポートや支援ができる人は、乳児院で働く保育士に向いている可能性があります。子どもによっては、乳児院に慣れるまで時間が掛ったり、なかなか心を開いてくれないこともあるからです。
乳児院で働く保育士は、子どもを泣き止むまで抱っこして安心させたり、ご飯を食べてくれるまで寄り添ったりするなど、忍耐力が必要な場面もあります。乳児院で保育士として働く際は、思うような結果が出なくても諦めず、粘り強く取り組み続ける姿勢が必要です。
責任感が強い人
乳児院で働く保育士は24時間体制で子どもの命を預かるため、強い責任感が求められます。子どもの安全管理をするためには、仕事内容や役割、施設のルールなどに理解を深め、真摯に向き合うことが大切です。
乳児院で働く保育士は、日勤や夜勤など日によって勤務時間が異なるため、自分の健康管理を徹底し、仕事のパフォーマンスや保育の質を低下させない責任感も必要になります。強い責任感は、子どもや保護者、ほかの職員との信頼関係構築にもつながるでしょう。
体力に自信がある人
乳児院で働く保育士は、子どもを長時間抱っこしたり夜勤で働いたりするため体力が必要です。安全を守るためには、走り回る子どもを追いかけたり、おんぶしながらほかの作業をしたりすることもあります。
乳児院で働く保育士はシフト制のため、勤務時間や休日が不規則になると、肉体的にも精神的にも負担を感じるかもしれません。不規則な生活のなかでも、リフレッシュしたり運動したりして、健康を維持できる人は乳児院で働く保育士に向いているでしょう。
チームで働くのが得意な人
乳児院では、幅広い職種や立場の方と上手く連携しながら働くのが得意な人に向いている可能性があります。チームの一員として保育士の役割を理解し、ほかの職員と協力して業務を進めなければいけません。
乳児院で働く際は、丁寧な情報共有を心掛けたり相手の話をよく聞いたり、ほかの職員と円滑なコミュニケーションを取ることが重要です。また、状況に応じて、リーダーシップを発揮したり、他者のリードに従ったりできる柔軟性も求められます。
臨機応変な対応ができる人
柔軟な考え方や状況に応じた行動ができるなど、臨機応変な対応が得意な人は乳児院で働く保育士に向いている場合があります。乳児院で働く保育士の仕事内容は、生活全般のサポートや養育、保護者支援など多岐にわたるため、臨機応変な対応でスムーズに進めていくことが大事です。
乳児院で働く保育士は24時間体制で子どもを支援するため、急な体調の変化や病気など予期せぬ事態への対応が必要なこともあります。そのため、状況に応じて迅速な対応ができる人も、乳児院で働く保育士に向いている可能性があるでしょう。
冷静な対応ができる人
乳児院で働く保育士には、感情的にならずに冷静さを保てる人も向いている傾向にあります。乳児院では、虐待を受けていたり保護者が病気になったりと、さまざまな家庭環境の子どもを受け入れるため、感情移入し過ぎると働くのが辛くなるかもしれません。
子どもや保護者の支援においては、感情に流されずサポートしたり、論理的に解決策を考えたりすることが重要です。また、子どもの支援や親子関係のケアなどで問題やトラブルに直面した際にも、冷静な対応、判断が求められます。
乳児院の保育士求人を探す方法
乳児院の保育士求人は、一般的な保育園の求人に比べて少なく、探すのが難しいこともあるようです。ここでは、乳児院の保育士求人を探す方法について紹介するので、参考にしてみてください。
乳児院のWebサイトで採用情報を確認する
気になる乳児院があれば、Webサイトにアクセスして「採用情報」や「求人情報」のページを探してみましょう。乳児院の数は保育園に比べ少ないため、働きたい地域が決まっている場合は、「東京都 乳児院」「渋谷区 乳児院」などと検索するのも手です。
乳児院のWebサイトでは、求人情報だけでなく、施設の理念や特徴、日々の活動内容なども確認できます。なお、乳児院のリストや施設情報は、都道府県や市区町村のWebサイトで公開されていることもあるため、確認してみましょう。
保育士向けの求人サイトで探す
保育士専門の求人サイトでは、乳児院を含むさまざまな保育関連の求人を効率的に探せます。「乳児院」や「社会的養護」などのキーワードで絞り込み検索が可能な場合もあるようです。保育士向けの求人情報が一箇所に集約されているため、複数の乳児院を比較検討できる可能性もあります。気になる求人があれば、乳児院のWebサイトも確認して積極的に情報収集しましょう。
保育士向けの転職エージェントに相談する
乳児院の求人は、保育士向けの転職エージェントで紹介してもらえる可能性があります。乳児院の求人は見つけにくいこともあるため、保育士向けの転職エージェントに相談するのがおすすめです。転職エージェントでは、働く環境や職員の雰囲気など、求人について詳しい情報を教えてもらえることもあります。
乳児院で働くことに興味があるものの、具体的な情報や手順が分からずに悩んでいる方は、レバウェル保育士にご相談ください。レバウェル保育士は、保育業界専門の転職支援サービスです。保育士のキャリア相談や求人紹介、選考対策など、転職活動をプロがサポートします。サービスはすべて無料で利用できるため、お気軽にお問い合わせください。
乳児院で働く際に関するよくある質問
ここでは、乳児院で働く際によくある質問について回答します。乳児院で働く際に必要な資格や学歴についてまとめました。
乳児院は資格なしで働ける?
保育補助や事務職員、調理員などの職種であれば、無資格の方も乳児院で働けるようです。乳児院では、医師や看護師、保育士、栄養士、心理士などの資格を持つ方が、中心的な役割を担います。必要な資格は働くポジションによって異なるため、求人情報をよく確認しましょう。乳児院における職種については、この記事の「乳児院で働くには?」で詳しく解説しています。
乳児院で働くには大学卒業の学歴が必要?
乳児院で働く際、必ずしも大学卒業の学歴は必要ありません。保育士資格や看護師資格は専門学校でも取得可能なため、学歴に関わらず働ける可能性があります。なお、心理療法担当職員や心理士など、働くポジションによっては大学で専修した学科が問われることもあるため、どのような職種で働きたいか検討したうえで、必要な学歴や資格を確認しましょう。
まとめ
乳児院で働くには、どのような職種で働きたいか検討する必要があります。乳児院における主な職種は、医師や看護師、保育士、児童指導員などです。乳児院で保育士として働く場合は、生活全般のサポートや発達支援、保護者支援などを担当します。乳児院で働く保育士は、乳児保育のスキルに加えて、親子関係のケアやほかの職員との連携するスキルなどが必要です。
忍耐強く子どもと向き合える人や責任感が強い人は、乳児院で働く保育士に向いている可能性があります。乳児院では、子どもの安全管理や支援においては、臨機応変な対応や冷静な判断ができる能力も必要になるようです。乳児院は保育園に比べ少ないため、求人探しが難しい場合は、レバウェル保育士にご相談ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。