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保育士の有効求人倍率の数値はどれくらい?都道府県の違いや人手不足の現状
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「保育士の有効求人倍率はどれくらいか」と気になる方もいるのではないでしょうか。有効求人倍率とは、保育士求人の数に対して仕事を探している保育士の割合のことです。 この記事では、有効求人倍率の算出方法や保育士のデータを紹介。保育士の有効求人倍率が高い傾向にある理由や人手不足改善に向けた自治体の取り組みも解説します。
目次
保育士の有効求人倍率とは
保育士の有効求人倍率とは、保育士求人の数に対して、仕事を探している保育士がどのくらいいるのかを表す数字です。有効求人倍率によって、保育士が不足しているのか、足りているのかがわかります。
ここでは、有効求人倍率の算出方法を解説します。有効求人倍率を表現する際に使われる高い・低いの意味も紹介するので、参考にしてください。
有効求人倍率の算出方法
有効求人倍率は、厚生労働省がハローワークの求人数と求職者数をもとに算出しています。有効求人倍率の算出方法は、「求人数÷求職者数=有効求人倍率」です。有効求人倍率は、年度や職業、地域別などで算出されます。
ハローワーク以外の求人・求職者数は含まれていないため、あくまで参考にしてください。
有効求人倍率の高い・低いとは
有効求人倍率は、前年やほかの職種などと比較して高い・低いと表現されます。
たとえば、保育士求人の数が100件あり、仕事を探している保育士が100人いる場合は1倍となります。この1倍を基準とした場合は、以下のように有効求人倍率が高い・低いと表現されます。以下は、有効求人倍率の例です。
150件÷100人=1.5倍 有効求人倍率が高い
50件÷100人=0.5倍 有効求人倍率が低い
上記の例でいうと、「有効求人倍率が高い」と表現される場合は、求人数に対して仕事を探している保育士の数が不足している状態です。「有効求人倍率が低い」と表現される場合は、保育士が余っている状態を示します。
有効求人倍率が高い・低いなどと表現されているときは、何を比較対象としているかよく確認しましょう。
保育士の有効求人倍率のデータ【2025年】
ここでは、保育士の有効求人倍率のデータと推移を紹介します。都道府県別の有効求人倍率も、参考にしてください。
保育士の有効求人倍率と推移(全国)
こども家庭庁の「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」によると、2025年(令和7)年1月の保育士の有効求人倍率は3.78倍です。全職種との比較は、以下のとおりです。
職種 | 有効求人倍率 |
保育士(全国) | 3.78倍 |
全職種 | 1.34倍 |
参照:こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国」
全職種平均の1.34倍(対前年同月比で0.01ポイント下落)と比べると、保育士の有効求人倍率は引き続き高い水準で推移しています。
出典
こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国」(2025年5月23日)
【都道府県別】保育士の有効求人倍率
こども家庭庁の「保育士の有効求人倍率の推移(全国)p.2」によると、2025年(令和7年)1月の保育士の有効求人倍率で最も高いのは、栃木県の8.14倍です。都道府県別の保育士の有効求人倍率は、以下のとおりです。
都道府県 | 有効求人倍率 |
北海道 | 2.39 |
青森 | 1.79 |
岩手 | 2.02 |
宮城 | 3.31 |
秋田 | 1.88 |
山形 | 2.67 |
福島 | 2.79 |
茨城 | 6.46 |
栃木 | 8.14 |
群馬 | 2.38 |
埼玉 | 3.84 |
千葉 | 2.81 |
東京 | 4.81 |
神奈川 | 3.51 |
新潟 | 3.88 |
富山 | 3.60 |
石川 | 2.57 |
福井 | 5.09 |
山梨 | 3.06 |
長野 | 2.83 |
岐阜 | 2.73 |
静岡 | 6.67 |
愛知 | 4.26 |
三重 | 3.14 |
滋賀 | 5.37 |
京都 | 3.08 |
大阪 | 4.52 |
兵庫 | 3.34 |
奈良 | 5.33 |
和歌山 | 2.44 |
鳥取 | 4.53 |
島根 | 2.25 |
岡山 | 6.28 |
広島 | 6.44 |
山口 | 2.61 |
徳島 | 3.99 |
香川 | 4.77 |
愛媛 | 4.90 |
高知 | 1.90 |
福岡 | 3.57 |
佐賀 | 3.78 |
長崎 | 2.75 |
熊本 | 2.89 |
大分 | 3.37 |
宮崎 | 2.53 |
鹿児島 | 2.58 |
沖縄 | 3.32 |
参照:こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)p.2」
保育士の有効求人倍率が最も低いのは、青森県の1.79倍です。1倍を切っている都道府県はなく、全国的に保育士不足の様子がうかがえます。
出典
こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)」(2025年5月23日)
保育士の有効求人倍率が高めの傾向にある理由
共働きの増加や待機児童解消などを背景に、保育士の有効求人倍率は高い傾向にあります。
ここでは、保育士の有効求人倍率が高い傾向にある主な理由を解説します。
子育て環境が変化し保育の需要が高まっているから
保育士の有効求人倍率が高い理由には、共働きの増加や核家族化など、子育て環境の変化が挙げられます。共働き世帯の増加により保育園や認定こども園などの利用者が増え、保育士の需要は高まっているでしょう。
また、核家族化により、身近に子どもを預けられる祖父母や親戚がいない家庭が増えているため、プライベートな事情でベビーシッターや一時保育を利用するケースもあります。
こども家庭庁の「こども誰でも通園制度について」によると、就労の有無に関わらず保育施設を利用できる制度も実施されており、子育て支援の強化においても保育士の需要は高まっているといえます。
出典
こども家庭庁「こども誰でも通園制度について」(2025年5月23日)
待機児童解消により新たな保育園が開設されているから
保育士の有効求人倍率の高さには、新たな保育園の開設も影響しているでしょう。待機児童を解消するために保育施設が新設されており、保育士の需要増加につながっています。
こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)p.2p.3」によると、以下のとおり保育施設の数は増加している傾向にあります。
年 | 保育所(ヵ所) | 幼保連携型認定こども園(ヵ所) | 幼稚園型認定こども園(ヵ所) | 特定地域型保育事業(ヵ所) | 合計(ヵ所) | 待機児童数(人) |
令和2年 | 23,759 | 5,702 | 1,280 | 6,911 | 37,652 | 12,439 |
令和3年 | 23,896 | 6,089 | 1,339 | 7,342 | 38,666 | 5,634 |
令和4年 | 23,899 | 6,475 | 1,396 | 7,474 | 39,244 | 2,944 |
令和5年 | 23,806 | 6,794 | 1,477 | 7,512 | 39,589 | 2,680 |
令和6年 | 23,561 | 7,126 | 1,602 | 7,516 | 39,805 | 2,567 |
参照:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)p.2p.3」
幼保連携型認定こども園や幼稚園型認定こども園などの保育施設が増加しており、保育園以外の施設でも保育士の需要は高まっているでしょう。
出典
こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)p.2p.3」(2025年5月23日)
離職者によって人手不足の職場もあるから
保育園では、一般的な企業のように一時的に業務量や人手を減らすことはできません。保育園で離職者が出ると、子どもの定員が減らない限り必ず求人を出す必要があるため、有効求人倍率の高さに影響するでしょう。
子どもの定員に対して必要な保育士の数は決まっているため、離職者が出ると必ず新たな人を採用する必要があります。
保育士は女性が多いため、産休や育休により一時的に人手不足が発生する場合もあるようです。また、保育士の仕事は体力が必要であるため、年齢を重ねると体力低下によりやむを得ず退職するケースも。離職者の穴埋めはもちろん、保育士の負担軽減を目的に求人を出している保育施設もあるため、有効求人倍率の高さにつながっていると考えられます。
保育士の人手不足改善に向けた自治体の取り組み
自治体では、保育士の人手不足を改善するために資格取得制度の改正や補助金の支給などが実施されているようです。ここでは、保育士不足改善に向けた自治体の取り組みを紹介します。条件を満たすと、手当やキャリアアップ支援などが受けられる場合もあるため、参考にしてください。
保育士資格に関する制度の改正
自治体によっては、保育士資格取得を推進するために「地域限定保育士制度」が実施されています。地域限定保育士制度を利用すると、「地域限定保育士(正式名称:国家戦略特別区域限定保育士)」の資格を取得できます。
こども家庭庁「保育士資格等にかかる制度改正について (p.4)」によると、都道府県で年1回開催される保育士試験に加えて、自治体によっては地域限定保育士試験が実施されています。試験内容や難易度は保育士試験と同じですが、地域によっては講習を受ければ実技試験が免除される場合もあるようです。地域限定保育士資格の取得後3年間は、合格した自治体でしか働けません。ただし、地域限定保育士資格を取得して実務経験を積めば、4年後以降は全国で働くことも可能です。
保育士試験に限らず地域限定保育士試験のチャンスがあれば、保育士不足解消の可能性が高まるでしょう。
出典
こども家庭庁「保育士資格等にかかる制度改正について」(2025年5月23日)
給与の改善
認可保育園で働く職員には、保育士不足解消の取り組みとして処遇改善加算が実施されており、国から補助金が支給され給与へ上乗せされます。給与が上がると、仕事へのモチベーションが保ちやすくなり、保育士として働く意欲につながるでしょう。
こども家庭庁の「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について (p.4p,5)」によると、処遇改善加算は、勤続年数に応じて月額最大4万円が支給されます。また、賃金の継続的な引上げとして、月額9,000円の補助金も支給されます。
処遇改善加算で支給された補助金により、どの程度給与アップするかは職場によって異なるようです。ただし、処遇改善加算で支給された補助金は、職員の賃金改善に使わなければいけないため、給与アップが期待できる可能性が高いでしょう。
出典
こども家庭庁「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」(2025年5月23日)
報奨金・奨励金の支給
自治体によっては、報奨金や奨励金が支給される制度もあります。報奨金や奨励金など一時的に支給されるものであっても、保育士として働く意欲につながるでしょう。
たとえば、東京都江戸川区の「保育士の仕事と暮らしを力強くサポートします!」によると、勤続5年に達した翌年度に10万円の報奨金が支給される制度があります。
また、神奈川県横浜市の「横浜市潜在保育士等への就労奨励金交付事業」では、かながわ保育士・保育所支援センターを通じて横浜市内の私立保育・教育施設に就職すると、5万円の奨励金が支給されます。
報奨金や奨励金の有無や支給条件は、自治体のホームページなどで確認しましょう。
出典
東京都江戸川区「保育士の仕事と暮らしを力強くサポートします!」(2025年4月17日)
神奈川県横浜市「横浜市潜在保育士等への就労奨励金交付事業」(2025年4月17日)
家賃補助・住宅手当の制度
自治体によっては、家賃補助や住宅手当によって保育士の待遇を改善し、人手不足解消に取り組んでいます。家賃補助が支給されると日常的な生活費の負担を減らせるため、魅力に感じる保育士の方もいるでしょう。
自治体からの家賃補助には、「保育士宿舎借り上げ支援事業」があります。首相官邸の「保育士宿舎借り上げ支援事業 (p.1)」によると、1人当たり最大月額8万2,000円支給される制度です。ただし、支給条件や支給額は自治体や職場によって異なります。支給対象となるかどうかは、職場や転職先に確認してみましょう。
出典
首相官邸「保育士宿舎借り上げ支援事業」(2025年5月23日)
研修によるキャリアアップの支援
保育士として長く働き続けてもらうために、キャリアアップの支援も実施されています。キャリアアップにより役職に就くと、一般的には給与や賞与が上がるため、保育士の経歴を高める意欲につながるでしょう。
厚生労働省の「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」によると、自治体では経験年数おおむね3年以上の保育士向けにキャリアアップ研修が実施されています。研修を受講し、職場で職務分野別リーダーや専門リーダー、副主任保育士になると、処遇改善の手当が支給される制度です。キャリアアップの条件や必要なスキルが明確になるため、保育士としてのキャリアプランを立てやすくなるでしょう。
出典
厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」(2025年5月23日)
有効求人倍率に捉われない!自分に合う保育士求人の探し方
ここでは、転職を検討している方に向けて、自分に合う保育士求人を探す方法を解説します。以下を参考に慎重に検討しましょう。
転職の軸や希望条件を明確にする
自分に合った保育士求人を探すためには、転職の軸や希望条件を明確にしましょう。転職の軸とは、求人を選ぶ際に最も重視する条件や優先順位です。有効求人倍率が高く選べる求人が多いと、目移りして転職の軸や希望条件がブレる可能性があるためです。勤務地や給与、仕事内容、職場環境などの希望条件に優先順位を付け転職の軸を決めます。
転職する理由から希望条件を決め、求人を探すと目指す働き方を叶えやすくなるでしょう。
職場環境や業務内容をよく確認する
転職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、求人情報や転職を希望する園のホームページなどで職場環境や業務内容をよく確認しましょう。求人情報には、入職後の担当業務や役割が記載されていることがあります。保育園や自治体のホームページなどで子どもの定員や職員の数をチェックしてみましょう。
また、可能であれば園見学を行い、雰囲気や保育環境を確認しておくとミスマッチを防ぎやすくなります。
保育業界専門の転職エージェントに相談する
「自分に合う職場はどんなところだろう」と迷ったり、転職活動に不安があったりする方は、保育業界専門の転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。保育業界専門の転職エージェントでは、求人選びや選考対策についてプロからアドバイスをもらえます。転職エージェントでは、希望条件をもとに求人を紹介してもらえるでしょう。多くの保育士求人から自分に合った職場を見つけるのが大変な場合は、1人で悩まずプロの意見を参考してみるのがコツです。
「転職して自分に合った求人を探したい」という方は、保育業界専門の転職支援サービス「レバウェル保育士」にご相談ください。「レバウェル保育士」では、地域に特化したプロのアドバイザーがあなたに合った求人をご紹介します。取材訪問を行っているため、職場の雰囲気など現場のリアルな情報がわかります。求人選びや選考対策など転職活動で迷ったら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
保育士の有効求人倍率とは、保育士求人の数に対して、仕事を探している保育士の割合を表す数字です。有効求人倍率によって、保育士が不足しているのか、足りているのかがわかります。保育士の有効求人倍率が高い理由は、共働きの増加や核家族化など、子育て環境の変化が挙げられます。近年では待機児童を解消するために保育園が新設され、保育士の需要が増加しています。
有効求人倍率が高いと求人数が多く、自分に合った求人探しが難しくなる場合もあります。転職の軸を決めたり、保育業界専門の転職エージェントに相談したりして、自分に合った職場探しを目指しましょう。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。