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幼稚園教諭の勤務時間は?残業の実態や保育士との働き方の違いも解説
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幼稚園教諭の実際の勤務時間はどれくらい?と気になる方もいるのではないでしょうか。幼稚園教諭の勤務時間は8時から17時頃までの傾向にありますが、近年は預かり保育の推進の影響もあり働き方が多様化しています。 この記事では、幼稚園教諭の1日のスケジュールや残業時間といった勤務時間に関する情報をまとめました。保育士との違いや働き方改革に向けた取り組みも紹介するので、ぜひご一読ください。
目次
幼稚園教諭の勤務時間は?
この項では、幼稚園教諭の勤務時間や残業の実態について解説します。1日の流れを想像しながら、基本的な働き方について理解を深めましょう。
幼稚園教諭の1日の勤務時間
幼稚園教諭の勤務時間は、8時から17時頃までが一般的です。ただし、時間外保育を実施している場合や通園バスの担当者は、早めに出勤することもあるようです。
基本的には規則正しい生活を送りやすい傾向にありますが、入園式や誕生会、運動会などのイベントがある繁忙期は帰宅時間が遅くなる場合もあります。状況によっては、生活リズムが崩れることもあるでしょう。
幼稚園教諭の1日のスケジュール
幼稚園教諭の1日のスケジュール例は以下のとおりです。労働条件は園によって異なるため、あくまで参考としてご覧ください。また、早朝保育を実施している場合は、交代で早番勤務があるため出勤時間が変わることがあります。
8:00 |
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8:30 |
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10:00 |
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12:00 |
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13:00 |
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14:00 |
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15:00 |
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17:00 |
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園児を預かる時間は基本的に1日4時間で、一般的には9時〜14時頃です。休憩時間は子どもたちの降園後に取る傾向にあります。
幼稚園教諭の残業時間の実態
幼稚園教諭は、子どもたちが登園している時間は保育を行います。事務作業といった保育以外の業務を勤務時間内に終えるのは難しく、結果として残業や持ち帰り仕事が発生しやすくなっているようです。
また、公益財団法人広島県私立幼稚園連盟の「働き方改革に向けた調査研究報告書(p28)」によると、幼稚園の仕事は「ゴールが明確でない曖昧な世界」であり、業務に区切りをつけにくい傾向があると指摘されています。より良い教育を目指す担任ほど仕事は尽きず、結果として長時間労働につながってしまうようです。
こうした子どもたちの降園後に集中して行う大量の業務や、仕事の終わりが見えにくいという構造が幼稚園教諭の残業を増やす要因となっています。
出典
公益財団法人広島県私立幼稚園連盟「働き方改革に向けた調査研究報告書」(2025年4月18日)
幼稚園教諭の勤務時間と預かり保育
ここでは、幼稚園教諭の勤務時間と預かり保育の関係について解説します。近年では、預かり保育の推進によって幼稚園教諭の働き方にも変化が生じているようです。
預かり保育の実施状況
幼稚園の中には、通常の教育時間が終了したあとも在園児を引き続き保育する「預かり保育」を実施している所があります。文部科学省の「令和5年度幼児教育実態調査(p38~39)」によると、私立幼稚園と公立幼稚園(幼稚園型認定こども園を含む)における預かり保育の実施状況は以下のとおりです。
実施状況 | 私立幼稚園 | 公立幼稚園 |
預かり保育を実施している園の割合 | 97.1% | 77.4% |
平日の預かり保育を「週5日」実施している園の割合 | 93.3% | 88.9% |
土曜日の預かり保育を実施している園の割合 | 22.1% | 7.1% |
春・夏・冬季休業日に預かり保育を実施している園の割合 | 83.2% | 56.9% |
参照:文部科学省「令和5年度 幼児教育実態調査(p38~39)」
上記のデータから、公立幼稚園に比べて私立幼稚園のほうが預かり保育を積極的に実施している様子が伺えます。また、同調査では、私立幼稚園のほうが預かり保育の終了時刻を遅く設定している傾向も示されており、私立幼稚園と公立幼稚園で実施状況に差があることがわかるでしょう。
出典
文部科学省「令和5年度 幼児教育実態調査」(2025年4月18日)
預かり保育が幼稚園教諭に与える影響
幼稚園は制度上「学校」として位置づけられており、標準的な教育時間や休業期間が定められています。しかし実際の運営では、前述のように長時間の預かり保育を行う園も多く、制度との間にギャップが生じているのが実情です。
預かり保育の体制は園によって異なり、専任スタッフが対応する園もあれば、正規職員がシフト制で交代しながら対応している園もあります。幼稚園教諭にかかる負担の大きさは園ごとに差があるものの、預かり保育の拡充が業務量や残業の増加につながっている場合もあるようです。
出典
文部科学省「令和5年度 幼児教育実態調査」(2025年4月18日)
幼稚園教諭の休日・長期休暇
幼稚園教諭の休日は、土日祝日を基本とする週休2日制が一般的です。ただし、上記のように土曜日の預かり保育を行っている場合は出勤となることもあります。また、土曜日や日曜日に行事がある場合は、平日に代休を取ることもあるでしょう。
加えて、幼稚園には夏休み・冬休み・春休みといった長期休暇も設けられています。この期間中は「通常保育」がないため、幼稚園教諭の中には有給休暇によってまとまった休みを取る人もいるようです。
なお、文部科学省の「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック(p17)」によると、幼稚園教諭として長く働くために必要な支援について最も多く挙げられているのは、「有給休暇等の取得のしやすさ(66.6%)」となっています。
出典
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「幼稚園教員」(2025年4月18日)
文部科学省「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック」(2025年4月18日)
幼稚園教諭と保育士の勤務時間の違い
幼稚園教諭と保育士の実働時間はどちらも8時間が基本です。ただし、勤務形態や休日の取り方には以下のような違いがあります。
保育士 | |
勤務時間 | 7時~19時のシフト勤務が一般的(早番・中番・遅番) |
休日 | 日曜日・祝日・年末年始のみが一般的(週休2日制や認可外保育施設の場合は例外となる場合もある) |
保育園では、子どもの降園時間が保護者のお迎えに左右されるため、幼稚園よりも子どもと関わる時間が長くなる傾向にあります。そのため、保育士の勤務はシフト制が採用されており、勤務時間が不規則なのが特徴です。また、幼稚園のような長期休暇はなく、年間を通して開園日が多い点も違いといえます。
幼稚園教諭の勤務時間を巡る課題
「幼稚園教諭の残業時間の実態」で示したとおり、幼稚園教諭の勤務時間には課題があるのが現状です。公益財団法人広島県私立幼稚園連盟の「働き方改革に向けた調査研究報告書(p47)」によると、幼稚園教諭は日誌・教育課程の提出や写真撮影、会計業務など保育以外の業務に多くの時間を割いていることが明らかになっています。
また、文部科学省の「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック(p44)」では、養成校の教員から以下の声も挙がっています。
子どもと接する時間以外の業務で忙殺されている例がある
長時間労働が常態化している例がある
先輩が帰るまで後輩は帰れないといった風土が残っている園もある
就労環境は園によって異なるため、すべての幼稚園に当てはまるわけではありません。しかし、勤務体制の厳しさから離職を選ぶ幼稚園教諭がいるのも実情です。
出典
公益財団法人広島県私立幼稚園連盟「働き方改革に向けた調査研究報告書」(2025年4月18日)
文部科学省「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック」(2025年4月24日)
幼稚園教諭の働き方改革に関する取組事例
全国の幼稚園では、こうした労働環境の課題を真摯に受け止め、改善に向けてさまざまな取り組みが進められています。以下は、文部科学省の「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック(p45)」で紹介されている働き方改革の実践例です。
ICTの活用による教員の負担軽減
教員参加型の働き方改革委員会の開催
社労士を活用した就業規則セミナーの実施
ICT活用をテーマにした労務管理研修の実施
園の運営方針の転換(ゆとりのある人員計画)
教員参加型の働き方改革に向けた実践研究の実施
今日、幼稚園の運営方針や働き方は多様化が進んでいます。幼稚園教諭の求人を探すときは、内部事情をよく確認し、自分に合った職場を選ぶことが大切です。文部科学省の「幼稚園・認定こども園における勤務改善事例集」にも多くの改善事例が掲載されているので、興味のある方は確認してみてください。
出典
文部科学省「幼稚園の人材確保・活躍に向けたガイドブック」(2025年4月24日)
幼稚園教諭の勤務時間に関してよくある質問
ここでは、幼稚園教諭の勤務時間に関してよくある質問を紹介します。
幼稚園の勤務時間は保育士に比べて長いですか?
勤務時間の長さは、それほど違いがありません。幼稚園教諭と保育士がフルタイムで働く場合、どちらも基本的な実働時間は1日8時間となっています。幼稚園教諭は決まった時間帯で勤務する傾向にありますが、保育士は保護者の送迎時間にあわせた対応が求められるため、シフト制で勤務時間が不規則なのが一般的です。
労働基準法違反が疑われる幼稚園にはどのような特徴がありますか?
労働基準法違反が疑われる幼稚園の特徴としては、「休憩時間が確保されていない」「サービス残業が常態化している」「人員不足によって休暇が取れない」などが考えられます。一方で、労働環境の改善に積極的に取り組み、働き方改革を進めている幼稚園もあるため、職場を選ぶ際は内部事情をしっかりと確認することが大切です。
出典
厚生労働省「労働基準法に関するQ&A」(2025年4月24日)
幼稚園教諭の仕事は休憩なしって本当ですか?
幼稚園教諭にかかわらず、労働時間に応じて休憩時間を与えることは法律で義務付けられています。「休憩が全くない」という状況は法律に違反しており、原則としてあり得ません。ただし、幼稚園教諭の仕事の性質上、園の労働環境や繁忙期によっては十分な休憩を取るのが難しい場合もあるようです。
出典
厚生労働省「労働基準法に関するQ&A」(2025年4月24日)
幼稚園教諭の忙しい時期はいつですか?
入園式がある4月や運動会がある9月の1〜2ヶ月前は、複数の業務を同時にこなす必要があるため繁忙期となります。また、幼稚園では年間を通して幅広いイベントが実施されるため、忙しい状態が続きやすいことを念頭に置いておきましょう。
まとめ
幼稚園教諭の勤務時間は8時から17時頃までの傾向にありますが、預かり保育を実施している園や繁忙期には勤務時間が変わることもあります。また、幼稚園教諭の仕事は業務量が多く、仕事の終わりが見えづらいため、残業や持ち帰りの仕事が発生しがちです。働き方改革が進む中で園ごとの労働環境も多様化しているため、就職や転職を考える際は複数の園を比較し、自分に合った職場を選びましょう。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。