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幼保特例制度とは?期限や申請方法、対象の保育士と幼稚園教諭を解説
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幼保特例制度とは、一定の条件を満たした幼稚園教諭または保育士が、もう一方の免許・資格を取得するのに必要な単位を軽減する仕組みです。では、幼保特例制度はどのように活用できるのでしょうか。 この記事では、幼保特例制度の期限や対象者、手続きの方法を解説します。保育士が幼保特例制度を活用するメリットや注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
幼保特例制度とは
幼保特例制度は、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を持つ保育教諭の育成を促進するための特例措置です。厚生労働省の「幼稚園教諭免許・保育士資格の更なる併有促進について (p.2)」によると、2015(平成27)年4月に「学校および児童福祉施設としての法的位置付けを持つ単一の施設」としての新たな「幼保連携型認定こども園」が創設されました。幼保連携型認定こども園の職員は、保育教諭として勤務するため、保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を所有している必要があります。しかし、保育現場で保育士資格と幼稚園教諭免許状の両方を所有している人は多くなく、もう一方の資格取得に時間と労力がかかる点が課題となりました。
幼保特例制度では、一定の基準を満たす保育士・幼稚園教諭を対象に、もう一方の免許や資格を取得するのに必要な単位数を軽減する措置が設けられています。幼保特例制度により、実務経験を積んだ保育現場の職員が短期間で必要な資格を取得しやすくなりました。
出典
厚生労働省「社会保障審議会 (児童部会)」(2025年5月14日)
幼保特例制度の期限
幼保特例制度は、期限のある制度です。文部科学省の「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」によると、幼保特例制度の期限は2030(令和12)年3月31日までとなっています。幼保特例制度の利用を検討する場合は、期限内に活用できるよう気をつけましょう。
出典
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(2025年5月14日)
幼保特例制度の対象者
幼保特例制度の対象者は、一定の基準を満たす保育士資格または幼稚園教諭免許状を所有する者です。全国保育士養成協議会の「特例制度について」によると、幼保特例制度の対象者に必要な一定の基準とは、以下の施設で「3年以上かつ4,320時間以上」の実務経験になります。
幼稚園
認定こども園
保育所
小規模保育事業
事業所内保育事業
公立の認可外保育施設
離島そのほかの地域において特例保育を実施する施設
幼稚園併設型認可外保育施設
認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書が交付された認可外保育施設
このように、幼保特例制度は、保育現場での実務経験が豊富な保育士や幼稚園教諭を対象にした制度です。
出典
全国保育士養成協議会「特例制度について」(2025年5月14日)
幼保特例制度の手続き方法と申請書類
幼保特例制度を利用するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは、幼保特例制度の手続き方法と申請書類を解説します。
保育士が幼稚園教諭免許状を取得する場合
保育士が幼保特例制度を利用して、幼稚園教諭免許状を取得する場合の手続きを紹介します。
大学で必要な単位を修得する
文部科学省の「認定こども園法改正に伴う幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例について」によると、大学などで幼稚園教諭免許状に必要な単位を修得する必要があります。幼保特例制度では、幼稚園教諭免許状の取得に必要とされる単位数が通常より軽減され、8単位の修得が求められるのが特徴です。幼保特例制度が対象の講座や科目を開設している大学は、文部科学省のサイトで確認できます。
出典
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(2025年5月14日)
幼保特例制度を利用して幼稚園教諭の資格を取得するのに必要な単位
文部科学省の「幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A」によると、保育士が幼保特例制度を利用して幼稚園教諭免許状の資格を取得する場合、以下の特例教科目を8単位修得する必要があります。
特例教科目 | 単位数 |
保育内容の指導法ならびに 教育の方法および技術 | 2単位 |
教職の意義および教員の役割・職務内容 | 2単位 |
教育に関する社会的、制度的または経営的事項 | 2単位 |
教育課程の意義および編成の方法 | 1単位 |
幼児理解の理論および方法 | 1単位 |
参照:文部科学省「幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A」
出典
文部科学省「幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A」(2025年5月15日)
必要書類を所轄の教育委員会に提出する
東京都教育委員会の「幼保特例制度の概要 (p.1)」によると、必要な単位を修得できたら、各都道府県の教育委員会に幼稚園教諭免許状の申請を行います。
東京都教育委員会の「教員免許状検定申請の手引き【附則第18項(幼保特例)用】 (p.5~)」では、申請書類の例として以下の書類が挙げられます。
教育職員免許状検定授与申請書
履歴書
取得済み免許状確認書
卒業証明書
保育士証の写し
学力に関する証明書
実務に関する証明書
人物に関する証明書
身体に関する証明書
戸籍関係書類
申請手数料
特例制度対象施設証明書(認可外保育施設での実務を使って申請する場合)
各教育委員会によって申請手続きや必要書類が異なる場合があるため、事前に該当する教育委員会のサイトや窓口で詳細を確認しましょう。
出典
東京都教育委員会「幼保特例制度の概要」(2025年5月14日)
東京都教育委員会「教員免許状検定申請の手引き」(2025年5月14日)
審査後に幼稚園教諭免許状が交付される
教育委員会が幼保特例制度の申請書類に基づき審査し、要件を満たしていると認められた場合は、幼稚園教諭免許状が交付されます。教育委員会の審査には一定の期間を要するため、余裕を持って申請手続きを進めることが大切です。
幼稚園教諭が保育士資格を取得する場合
幼稚園教諭が幼保特例制度を利用して、保育士資格を取得する場合の手続きを解説します。
指定保育士養成施設で必要な単位を修得する
こども家庭庁の「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」によると、幼保特例制度では、指定保育士養成施設で最大8単位の特例教科目の履修が必要です。通学の場合は、20日間程度で履修できます。特例教科目を履修できる指定保育士養成施設は、こども家庭庁のサイトで確認することが可能です。
出典
こども家庭庁「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」(2025年5月14日)
幼保特例制度を利用して保育士資格を取得するのに必要な単位
こども家庭庁の「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」によると、幼保特例制度を利用して保育士資格を取得する場合、以下の特例教科目を8単位修得する必要があります。
特例教科目 | 単位数 |
福祉と養護 | 2単位 |
子ども家庭支援論 | 2単位 |
保健と食と栄養 | 2単位 |
乳児保育 | 2単位 |
参照:こども家庭庁「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」
出典
こども家庭庁「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」(2025年5月15日)
必要書類を準備し受験免除申請を行う
必要な単位を修得後、全国保育士養成協議会に保育士試験の受験免除申請を行います。全国保育士養成協議会の「幼稚園教諭免許状所有者の免除について」によると、受験免除申請には、以下の書類が必要です。
実務証明書
幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書
幼稚園教諭免許状
保育士試験の免除申請をする際は、全国保育士養成協議会のサイトで詳細を確認してから手続きを行いましょう。
出典
全国保育士養成協議会「幼稚園教諭免許状所有者の免除について」(2025年5月15日)
保育士登録の申請を行う
保育士として働くためには、保育士登録が必要です。全国保育士養成協議会「保育士の登録について」によると、一般社団法人全国保育士養成協議会の「登録事務処理センター」で保育士試験合格通知書を使用して、保育士登録の手続きをします。保育士登録には一定の期間がかかるため、余裕を持って手続きを進めましょう。
出典
全国保育士養成協議会「保育士の登録について」(2025年5月15日)
保育士が幼保特例制度を活用するメリット
保育士が幼保特例制度を利用して幼稚園教諭免許状を取得すると、キャリアの幅が広がるという魅力があります。ここでは、保育士が幼保特例制度を活用するメリットをまとめました。
キャリアの幅が広がる
保育士が幼保特例制度を活用して幼稚園教諭免許状を取得すると、保育所だけでなく、幼稚園や認定こども園など多様な教育・保育施設で勤務できるのがメリットといえます。また、保育士の転職の選択肢が増え、キャリアアップのチャンスも広がるでしょう。保育士が幼児教育と保育の両方の視点を持てると、子どもの成長を総合的にサポートできる保育教諭としての評価も高まる可能性があります。
認定こども園での需要が高まる
近年、認定こども園の需要は高まっています。こども家庭庁の「認定こども園に関する状況について (p.2)」によると、認定こども園の数は以下のとおりです。
年度 | 認定こども園の数 |
2019(平成31・令和元)年 | 7,208 |
2020(令和2)年 | 8,016 |
2021(令和3)年 | 8,585 |
2022(令和4)年 | 9,220 |
2023(令和5)年 | 9,822 |
2024(令和6)年 | 10,483 |
参照:こども家庭庁「認定こども園に関する状況について」
認定こども園の数は、2019(平成31・令和元)年では7,208、2024(令和6)年では10,483と5年間で3,275も増えています。認定こども園の増加に伴い、保育教諭のニーズが高まっているといえるでしょう。
出典
こども家庭庁「認定こども園に関する状況について」(2025年5月15日)
幼保特例制度の注意点
幼保特例制度を活用する際は、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。ここでは、幼保特例制度の注意点を解説します。
幼保特例制度は、期限が設けられた措置です。全国保育士養成協議会の「特例制度について」によると、幼保特例制度の受験申請期間は、2029(令和11)年までに実務経験と単位修得を終えていることを条件として、2030(令和12)の試験までを期限としています。
文部科学省の「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」によると、幼保特例制度を利用して幼稚園教諭免許状を取得する場合は、2029(令和11)年度末までに幼稚園教諭免許状の授与を受ける必要があります。幼保特例制度を活用してどちらの免許・資格を取得する場合も、計画的に学習や経験を積み、余裕を持って申請手続きを進めることが大切でしょう。幼保特例制度の期限は変更する場合もあるため、常に最新の情報を確認しておくのがおすすめです。
出典
全国保育士養成協議会「特例制度について」(2025年5月15日)
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(2025年4月17日)
幼保特例制度に関してよくある質問
幼保特例制度に関してよくある質問に、Q&A形式でお答えします。
通信制の大学で幼保特例制度に必要な単位を修得できる?
幼保特例制度に必要な単位は、通信制の大学で修得できます。ただし、特例教科目を開設している通信制の大学に限るため、注意が必要です。こども家庭庁または文部科学省のサイトで特例教科目を開設する通信制大学を調べてから、選択してください。
幼保特例制度の新特例とは
新特例とは、令和5年度から開始した幼保2年特例のことです。こども家庭庁の「保育士資格取得の特例の概要 (p.2)」によると、幼保2年特例とは幼保特例制度の一環で、特定の条件を満たすことで必要な単位数がさらに軽減される措置です。
要件 | 修得が必要な単位数 | |
幼保特例制度 |
| 8単位 |
幼保2年特例 |
| 6単位 |
参照:こども家庭庁「保育士資格取得の特例の概要」
幼保2年特例により、保育教諭の経験を積んだ保育士や幼稚園教諭がもう一方の免許・資格の取得をより効率的に目指せるようになりました。
出典
こども家庭庁「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」(2025年5月15日)
まとめ
幼保特例制度は保育士や幼稚園教諭に対し、幼稚園教諭免許状・保育士資格の取得を促進する制度です。保育士が幼保特例制度を活用すると、子どもの成長を総合的に支える保育教諭としてのスキルが磨かれ、キャリアの選択肢が広がるメリットがあります。幼保特例制度を利用する際は、期限内に必要な手続きを完了できるよう計画的に行動しましょう。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
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