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保育カウンセラーとは?役割や養成講座の概要、資格取得のメリットを解説
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「保育現場での問題解決力を高めたい」「心理的なサポートのスキルを身につけたい」と考える保育士の中には、保育カウンセラーの資格に関心がある方もいるのではないでしょうか。保育カウンセラーは、カウンセリングの理論と技術を活用し、保育の質の向上を図る存在です。 この記事では、保育カウンセラーの役割や仕事内容、資格を取得するメリットを解説します。養成講座の内容や取得方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
保育カウンセラーとは
保育カウンセラーとは、カウンセリングの基本的な理論と技法を習得した保育の専門家のことです。この資格は、公益社団法人全国私立保育連盟が認定しており、保育士だけでなく保育施設に関わる職員や育児相談者も取得できます。
保育カウンセラーの資格認定制度は、1993年に育児カウンセラー養成講座が開講されたことに始まり、資格認定が制度化されたのは2010年からです。これまでに認定を受けた人数は600名以上とされています。
保育カウンセラーの役割
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー資格認定制度」によると、保育カウンセラーの役割について、以下のように示されています。
引用テキスト
その役割は、カウンセリングの理論と技術を活かし、保育の質の向上を図るとともに、子どもにかかわるすべての人たちが円滑な関係を築けるよう援助することです。
引用:公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー資格認定制度」
このように、保育カウンセラーはカウンセリングの知識とスキルを活かして保育の現場をより良くする役割を担っています。また、家庭や地域の中で、子どもや保護者が安心して暮らしていけるよう支援することも重要な役目です。
保育カウンセラーの仕事内容
保育カウンセラーの基本となる仕事は、あくまでも「保育」です。その上で、カウンセリングの理論や技術を活かしながら、子育て家庭の良き援助者として、子どもや保護者が安心できる保育環境や人間関係を築いていきます。
また、保育カウンセラーの仕事の特徴は、子どもや保護者だけでなく、職員同士の関係にも目を向けている点です。職員一人ひとりの自己成長やメンタルケアをサポートすることで、職場内の信頼関係が深まり、保育所全体の安定した運営へとつながっていきます。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー資格認定制度」(2025年4月18日)
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
保育カウンセラーが求められる背景
近年、子育てを取り巻く家庭環境は大きく変化しており、保護者が直面する問題も多様化・深刻化しています。公益社団法人全国私立保育連盟の「保育カウンセラー養成講座」によると、「核家族化」「一人育児」「家庭の貧困」「近隣関係の希薄化」など、現代の家庭が抱えるさまざまな困難が挙げられており、育児負担の増加が伺えるでしょう。
こうした背景を踏まえ、保育者には子どもや保護者を取り巻く社会状況を的確に捉え、寄り添い支援する力が今まで以上に求められています。保護者支援は保育園が果たすべき重要な役割のため、保育カウンセラーに寄せられる期待も高まっているのです。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
保育カウンセラーの資格の取得方法
保育カウンセラーの資格を取得するには、保育カウンセラー養成講座のステップⅢを修了する必要があります。その後、所定の申請書と2つの認定レポートを郵送し、資格認定審査会での審査を経て、認定証が発行される流れです。
認定レポートは、課題図書を読んだ上で今後の実践内容をまとめる形式となっており、1本あたりの文字数は2,400字以上3,200字以内と定められています。
なお、資格の認定期間は5年間です。認定期間内に単位を取得し更新手続きを行う必要があるため、継続的な学びが求められることをあらかじめ理解しておきましょう。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー資格認定制度」(2025年4月18日)
保育カウンセラーの養成講座の概要
保育カウンセラー養成講座のステップⅢを受講するには、ステップⅠとⅡを順に修了する必要があります。下記では、公益社団法人全国私立保育連盟の「保育カウンセラー養成講座」を参考に、講座内容と受講条件をまとめました。
講座内容
保育カウンセラー養成講座は、ステップごとに目的が設定されており、段階的に学びを深める構成になっています。2025年度の場合、ステップⅠは3日間、ステップⅡとⅢはそれぞれ5日間の日程で行われるようです。講座内容も充実しており、体験学習やカウンセリングの専門家による講義が取り入れられています。
ステップ | 講座の目的 |
ステップⅠ |
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ステップⅡ |
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ステップⅢ |
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参照:公益社団法人全国私立保育連盟「令和7年度保育カウンセラー養成講座開講案内(p2)」
受講を検討する際は、講座会場までの交通費や宿泊環境について事前に確認しておくと安心です。ステップⅡとⅢでは、受講生同士の交流を目的に3〜4名の相部屋で宿泊する形式がとられているため、その点も念頭に置いておきましょう。
また、保育カウンセラー養成講座はステップⅢで終了ではなく、「ステップアップ講座」や「管理者のための公開講座」といったさらなる学びの機会も用意されています。関心のある方はチェックしてみてください。
受講条件
保育カウンセラー養成講座に年齢制限はありませんが、受講には以下の条件を満たす必要があります。条件をクリアしていれば、施設に所属していない方も受講可能です。
ステップⅠ |
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ステップⅡ |
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ステップⅢ |
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参照:公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座FAQよくあるご質問」
なお、講座はステップⅠ・Ⅱ・Ⅲを順番に修了する形式となっているため、同じ年度内に複数のステップを受講することはできません。公益社団法人全国私立保育園連盟の「保育カウンセラー養成講座」によると、受講者の多くは30代以上であり、園内で中心的な役割を担っている人が多いとされています。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
保育カウンセラーの資格を取得するメリット
ここでは、保育カウンセラーの資格を取得することで得られるメリットについて紹介します。取得を迷っている方は、以下の内容を参考にしながら今後の働き方をイメージしてみてください。
保育現場での対応力や問題解決能力が向上する
保育カウンセラーの資格を取得すると、保育に役立つカウンセリングマインドが養われ、現場での対応力や問題解決能力の向上が期待できます。
公益社団法人全国私立保育連盟の「令和6年度受講生からのメッセージ」によると、保育カウンセラー養成講座の受講生からは以下の声が寄せられているようです。
保育者としての基本に立ち返ることができる
職場でのコミュニケーションに役立つ
カウンセリングの奥深さを知れる
また、公益社団法人全国私立保育園連盟の「保育カウンセラー養成講座」によると、保育カウンセラー養成講座の総合評価として、施設長の8割以上が「職員や施設に変化があった」と回答しており、研修内容が実践に結び付いていることが分かります。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
共通の志を持つ保育者と互いに学び合える
保育カウンセラー養成講座を受講すると、子育て支援や保護者対応のスキルが向上し保育の質が高まるだけでなく、新たなネットワークが広がることで、仕事への活力やモチベーションの向上も期待できます。同じ志を持つ保育者との情報交換の場として、貴重な時間を過ごせるでしょう。
保育カウンセラーに関して保育士からよくある質問
ここでは、保育カウンセラーに関して保育士からよくある質問を紹介します。
保育カウンセラーはカウンセリングの国家資格ですか?
保育カウンセラーは、公益社団法人全国私立保育園連盟の認定資格であり、国家資格ではありません。カウンセリングに関する国家資格には「公認心理師」があり、保健医療・福祉・教育などの分野で心理の専門職として活躍するための資格です。一方、保育カウンセラーは保育や福祉、教育に携わる人が、保育現場で役立つカウンセリングの知識や技術を学ぶための資格となります。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
厚生労働省「公認心理師」(2025年4月18日)
保育カウンセラーは文部科学省の制度ですか?
保育カウンセラーは、文部科学省の制度ではなく、公益社団法人全国私立保育園連盟の認定資格です。文部科学省が全国の小・中・高等学校に配置している「スクールカウンセラー」とは役割や目的が異なります。なお、文部科学省の「スクールカウンセラーについて」によると、スクールカウンセラーの8割以上を臨床心理士が担っているようです。
出典
公益社団法人全国私立保育連盟「保育カウンセラー養成講座」(2025年4月18日)
文部科学省「スクールカウンセラーについて」(2025年4月18日)
保育カウンセラーの資格は通信で取得できますか?
保育カウンセラーの資格は通信での取得ができません。資格を取得するためには、保育カウンセラー養成講座のステップⅠ・Ⅱ・Ⅲを修了した上で、所定の申請書と2つの認定レポートを郵送し、資格認定審査会の審査を受ける必要があります。詳細は、この記事の「保育カウンセラーの資格の取得方法」の部分をご覧ください。
まとめ
保育カウンセラーとは、保育とカウンセリングの専門知識を備えた保育の専門家のことです。公益社団法人全国私立保育連盟が認定する資格で、これまでに600名以上が認定を受けています。保育カウンセラーの主な役割は、カウンセリングの理論や技術を活かして、子どもや保護者が安心できる保育環境や人間関係を築いていくことです。資格取得を検討している方は、講座の概要や日程を確認し、自分に合った受講タイミングを見つけましょう。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。