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石井式教育法とは?漢字教育のやり方や保育園・幼稚園で実践するメリット

保育士や幼稚園教諭のなかには、石井式教育法に興味がある方もいるのではないでしょうか。石井式教育法とは、漢字教育に力を入れている幼児教育です。 この記事では、石井式教育法とは何か、特徴や保育園・幼稚園での実践方法、メリットを紹介します。石井式教育法に興味がある方は、幼児教育に携わる方法や、転職する際のエージェントの使い方も参考にしてみてください。
目次
石井式教育法とは
石井式教育法とは、50年にわたる教育実践から生まれた「漢字教育」に力を入れている幼児期の言語の学習方法です。石井式教育法の目的は、子どもの「言葉の獲得期」を大切にし、漢字を使った活動を通じて語彙力を増やすこととされています。幼児期から漢字を読めるようにするだけでなく、思考力や集中力も養えるものです。石井式教育法は、幼児教室だけでなく、幼稚園や保育園、認定こども園などの遊びや活動に取り入れられていることもあります。
石井式教育法の特徴
石井式教育法は、幼児期から漢字教育を始めたり、ゲーム形式で楽しく言葉を覚えたりすることが特徴です。ここでは、石井式教育法の主な特徴についてまとめました。
幼児期から漢字教育を始める
石井式教育法の特徴は、ひらがなを読み書きする延長ではなく、幼児に最初から漢字教育することが特徴です。幼児期の子どもは、文字の形を絵のように捉え視覚的に記憶する能力があるため、漢字が表す意味と読みを同時に習得できます。たとえば、「木」という漢字を見せられると、子どもはその形から実際の木を連想しやすく、意味と結びつけて覚えることが可能です。
また、石井式教育法では、漢字かな交じりの絵本を使って、日本語の読解力や思考力、語彙力を育む取り組みも実践されています。
絵本やゲームなどで楽しく自然に言葉を覚える
石井式教育法では、子どもが楽しみながら自然に言葉を覚えられるように、絵本やゲームを活用します。漢字だけを学ぶのではなく、物語性のある絵本や古典作品などを通して、言葉の豊かさや美しさに触れることが特徴です。
たとえば、昔話の絵本に出てくる「森」「川」「山」などの漢字カードを用意し、読み聞かせのあとにカードを見せることで、子どもはストーリーと結びつけて言葉を覚えられます。また、カルタであれば、遊びながら漢字に親しめる環境を作れるため、子どもの学習意欲も高まりやすくなるでしょう。
保育園や幼稚園での石井式教育法の実践方法
保育園や幼稚園では、漢字のフラッシュカードをしたり、俳句を声に出して読んだりして、石井式教育法の漢字教育が実践されています。ここでは、保育園や幼稚園での石井式教育法の実践方法をまとめました。
漢字のフラッシュカードをする
保育園や幼稚園では、フラッシュカードを使った石井式教育法の漢字教育が実践されていることがあります。フラッシュカードとは、片面に漢字、もう片面に読み方やその漢字を使った言葉などが書かれており、写真のように記憶する教材です。カードは1枚あたり3〜5秒程度の短い時間で次々と見せていきます。最初は5〜10枚程度から始め、子どもたちの反応を見ながら徐々に増やしていくことがポイントです。無理に覚えさせるのではなく、「集中して見る習慣」をつけることが大切になるでしょう。
漢字のカードでゲームをする
石井式教育法では、子どもたちが楽しく漢字に親しめるカードゲームでの学習方法もあります。たとえば、「犬」「象」「馬」などの漢字を覚えて、小さな動物順に並べて、読み上げてもらうゲームです。また、漢字が書かれたカードでは、「山のつく言葉は?」と出題し、「富士山」「山登り」などのカードを取り合うゲームもできます。遊びのなかで繰り返し漢字に触れると、自然と知識が身についていくでしょう。
俳句や和歌集などを声に出して読む
幼稚園では、黒板に俳句や和歌集などを貼り付け、漢字を見ながら声に出して読む練習する方法も取り入れていることもあります。俳句や和歌集などの内容は、子どもたちにとって理解が難しいこともありますが、繰り返し声に出すうちに言葉が浸透していくようです。
たとえば、「古池や 蛙飛び込む 水の音」という有名な俳句なら、実際に池や蛙の絵を見せながら読むと、子どもたちは情景を想像しやすくなります。最初は保育士や幼稚園教諭がお手本として読み、少しずつ子どもたちも一緒に声に出してみるようにすると、自然と言葉のリズムや美しさを感じ取れるでしょう。
ことわざや和歌のカルタをする
ことわざや和歌のカルタを取り入れる活動も、石井式教育法の一環として取り入れられていることがあります。「猿も木から落ちる」「石の上にも三年」など、短いことわざを使ったカルタなら、意味を説明しながら楽しめるでしょう。絵札には、ことわざの内容を表す絵も書いてあると、理解しやすくなります。ことわざや和歌などのカルタは、日本の伝統的な言葉の知恵に触れる機会にもなるでしょう。
保育園や幼稚園で石井式教育法を取り入れるメリット
石井式教育法を実践すると、子どもたちが読書を好きになったり、小学校入学に向けた学習の土台づくりができたりするメリットがあります。ここでは、保育園や幼稚園で石井式教育法を取り入れるメリットをまとめました。
言葉の獲得期を活かした幼児教育が実践できる
石井式教育法を保育園や幼稚園の活動に取り入れるメリットは、子どもの言葉の獲得期を最大限に活かした教育ができる点です。幼児期は言葉の吸収力が高い時期とされているため、この時期にさまざまな漢字に触れると、豊かな語彙力を育めます。また、漢字は意味を持つ形であるため、子どもたちの興味を引きやすいことが特徴です。漢字を含め多様な言葉に触れる機会は、コミュニケーション能力の基礎を築くことにもつながるでしょう。
読書好きな子に育ちやすくなる
石井式教育法を取り入れると、幼児期から本や文章に触れる機会が多くなるため、読書好きな子に育ちやすくなるメリットがあります。漢字に親しむことで、文字への抵抗感が少なくなり、絵本や児童書への興味が広がるかもしれません。漢字や文章が読めるようになると、絵だけでなく物語の内容も楽しめるようになるでしょう。また、絵本コーナーを充実させ、漢字教育と読書活動を連携させることで、相乗効果が期待できるかもしれません。
集中力が身につきほかの活動でも能力を活かせる
石井式教育法では集中力や注意力も養えるため、身についた能力は日常的な生活のなかでも活かせるでしょう。たとえば、フラッシュカードを見る、ゲームのルールを理解する、和歌を聞いて覚えるといった石井式教育法の活動に取り組んでいると、子どもの集中力も育める可能性があります。集中力は、製作活動で細かい作業に取り組んだり行事の練習をしたりする場面など、ほかの保育活動でも発揮され、プラスの影響を与えるはずです。
小学校入学に向けた就学準備になる
石井式教育法は、小学校入学に向けた準備としても役立ちます。漢字や文章に親しむ活動は、小学校での国語学習の基礎となり、学習へのスムーズな移行を助けるでしょう。また、国語の理解力は、算数や理科など、ほかの科目の吸収力を伸ばしていくかもしれません。
小学校の授業では、教科書を読む、ノートを取る、説明を聞くといった活動が増えます。幼児期から文字に親しんでいると、これらの活動に対する抵抗感が少なくなり、学習内容に集中しやすくなるでしょう。幼児期に培った「学ぶ楽しさ」は、小学校以降の学習意欲にもつながっていきます。
保育士が興味のある幼児教育に携わる方法
保育士が幼児教育に携わりたい方は、興味のある分野の知識を身につけたり、幼稚園や認定こども園などへの転職を検討したりしましょう。ここでは、保育士が仕事をするうえで興味のある幼児教育に携わる方法を紹介します。
興味のある幼児教育の知識を身につける
幼児教育には、さまざまな種類があるため、どのジャンルに携わりたいか決めて、基礎的な知識を身につけましょう。幼児教育の知識や指導の方法を学ぶためには、書籍を読んだりオンライン講座・セミナーなどに参加したりします。実践者によるオンラインセミナーや勉強会に参加すれば、具体的な指導のやり方や教材の使い方を学べるでしょう。
また、同じ関心を持つ保育士とのネットワークを作ることも、情報収集や意見交換の場として役立ちます。知識を深めることで、自分の保育にどう取り入れられるかのイメージが明確になるでしょう。
保育に取り入れられないか上司に相談する
知識や指導のスキルを身につけたら、現在の勤務先で幼児教育の要素を取り入れられないか、上司に相談してみましょう。園の教育方針に活かせる部分を中心に、具体的なメリットや実践方法を提案すれば、受け入れてもらえるかもしれません。相談する際は、「すべてを変える」のではなく、「既存の保育に少しずつ取り入れる」という姿勢が大切です。
たとえば、「5歳児クラスの活動で漢字のカルタ遊びを取り入れたい」のように、具体的かつ実現可能な提案を心掛けましょう。また、子どもたちが得られるメリットや保護者からの反応予測なども伝えると、園としての判断材料になります。新たな遊びを取り入れる際は、子どもたちの負担にならないように試験的に実施し、実際に行っている様子や反応を見て次の活動に活かしましょう。
幼稚園や認定こども園への転職を検討する
現在の職場で幼児教育に携わるのが難しい場合は、興味のある方針や活動を取り入れている園への転職も選択肢の1つです。保育園で働いている方は、幼稚園や認定こども園に転職したほうが、幼児教室を重視する保育現場に関われる可能性があります。転職を検討する際は、教育方針や保育内容をしっかりと確認するのがポイントです。可能であれば園見学をすると、幼児教育の活動内容や子どもたちの様子を見られるかもしれません。
なお、文部科学省の「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」によると、保育士は特例制度を利用することで、取得単位数を軽減して幼稚園教諭免許状を取得できます。保育士資格のみの方が幼稚園や認定こども園で正社員を志望するのであれば、まずは幼稚園教諭免許状の取得を検討しましょう。
出典
文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」(2025年9月25日)
教育方針を重視するなら保育専門の転職エージェントで情報収集しよう
園の教育方針や幼児教育の内容などを重視して転職する場合は、保育専門の転職エージェントで情報収集するのがおすすめです。一般的な求人サイトには載っていない園の方針や具体的な保育内容など、詳しい情報が得られます。「石井式教育法を実践している園で働きたい」「漢字教育に力を入れている園を探している」など、具体的な希望を伝えることで、条件に合った園を探してもらえるでしょう。
幼児教育の方針を重視して転職先を探したい方は、レバウェル保育士にご相談ください。レバウェル保育士では、取材訪問を通じて保育園や幼稚園の方針や活動内容、雰囲気など、リアルな現場の情報を収集しています。求人紹介だけでなく、選考対策や条件交渉なども専任のアドバイザーが幅広くサポートいたします。サービスはすべて無料なので、お気軽にご利用ください。
石井式教育法に関するよくある質問
ここでは、石井式教育法に関するよくある質問に答えます。石井式教育法のメリットやデメリットについて、参考にしてみてください。
石井式漢字教育が批判される理由は?
石井式教育法自体に問題があり批判されるというよりは、「英才教育」や「早期教育」として懸念されることはあるようです。たとえば、早期教育によって遊びの時間が減ったり保護者から期待されたりすると、子どもはストレスを感じるかもしれません。ただし、乳幼児向けの教育は、遊びの要素を取り入れながら楽しく学ぶことも可能です。強制ではなく、子どもが「もっと知りたい」と思える環境づくりを心掛けることで、批判的な見方も変わってくるでしょう。
石井式漢字教育を幼稚園で実践するメリットは?
幼稚園で石井式の漢字教育を実践するメリットは、語彙力や表現力の向上、読書習慣の形成などが挙げられます。カルタやカードゲームなど、遊びのなかで漢字教育を取り入れ、楽しみながら能力を育めるでしょう。また、石井式の漢字教育は、集中力の育成や学習の習慣を身につけることにも役立ち、小学校入学に向けた準備になります。石井式の漢字教育を実践する際は、子どもたちが楽しく取り組める遊びや活動から試験的に初めてみましょう。
まとめ
石井式教育法は、幼児期から漢字教育を取り入れ、子どもが楽しみながら言葉を学べる教育方法です。漢字のフラッシュカードやカルタ、読み聞かせなどを通じて、自然に語彙力を育てていきます。保育園や幼稚園によっては、漢字のカードゲームや絵本の読み聞かせなど、日々の遊びや活動のなかで、石井式教育法が実践されていることもあるようです。
石井式教育法は、集中力や思考力が育つほか、言葉への興味が広がり、読書好きな子に育ちやすいというメリットもあります。また、漢字が読めるようになったり読書の習慣が付いたりすることは、小学校入学への準備としても役立つでしょう。幼児教育に携わりたい方は、保育専門の転職エージェントを利用すれば、自分に合った方針や活動をしている保育園や幼稚園に出会えるかもしれません。レバウェル保育士では、保育士や幼稚園教諭向けに、転職相談や求人紹介をしているため、お気軽にご利用ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。