最終更新日:
統合保育とは?インクルーシブ保育との違いや保育士が働くメリットを解説

「統合保育とは何か」と気になる方もいるのではないでしょうか。統合保育とは、健常な子どもと障がいのある子どもを同じ環境で保育することです。 この記事では、統合保育の意味やねらい、インクルーシブ保育との違いを解説。統合保育で働く保育士の役割や仕事内容、メリット・デメリットも紹介します。保育士で転職を検討している方は、統合保育に携われる職場についても参考にしてください。
目次
統合保育とは
統合保育とは、健常な子どもと障がいのある子どもを同じ環境で保育することです。ここでは、統合保育の意味やねらい、インクルーシブ保育との違いを解説します。
統合保育の意味
保育園のなかには、健常な子どもと障がいのある子どもを一緒に預かる統合保育を実施している施設があります。障がいのある子どもは、専用の支援を療育施設や発達支援施設などで受ける場合もありますが、統合保育を選択する保護者もいます。「社会性を身につけたい」「集団生活に慣れさせたい」という理由から、統合保育を選ぶ場合があるようです。
また、統合保育は健常な子どもにとっても学びや成長につながるでしょう。
統合保育のねらい
統合保育のねらいは、障がいの有無に関わらず同じ環境で保育を行い、違いを受け入れたり、助け合う気持ちを養ったりすることです。統合保育は、健常な子どもにとって幼いころから障がいへの理解を深められる機会になるでしょう。
一方、障がいのある子どもにとって統合保育は、社会性を身につけたり集団生活に慣れたりする機会となります。統合保育は、健常な子どもと障がいのある子どもが互いに学び、成長につながる可能性があります。
インクルーシブ保育と統合保育の違い
インクルーシブ保育と統合保育の主な違いは、保育方法や対象です。インクルーシブ保育では、障がいの有無だけでなく子どもの年齢や国籍などの違いに関わらず、すべての子どもを受け入れて保育します。
一般的な統合保育では、年齢によりクラスが分けられていたり、自治体に住民登録がないと通えなかったりと、インクルーシブ保育よりも保育の方法や対象が狭い傾向にあります。
一方、インクルーシブ保育では、異年齢保育を実施したり、障がいの有無や国籍に限らず子どもを受け入れたりする場合もあるようです。インクルーシブ保育ではさまざまな違いを受け入れたうえで、協調性や社会性などが養えるでしょう。
統合保育の現状と課題
統合保育を実施するためには、障がいの専門知識がある職員や加配保育士が必要だったり、施設の環境を整えなければいけなかったりするため、運営のハードルは高いようです。
また、医療的ケアが必要な子どもや重度の障がいがある子どもなどを保育する場合は、専門的な知識や環境が必要となるため、受け入れが難しい場合もあるでしょう。
そのため、統合保育を実施している保育施設は少なく、働きたくても求人探しは難しいのが現状です。また、統合保育で働くためには、障がい児保育の知識や経験が求められることもあります。
統合保育で働く保育士の主な4つの役割
統合保育で働く保育士の役割は、「障がいの有無に関わらず平等な経験を提供する」「子どもたちがともに学び助け合う環境を作る」などが挙げられます。ここでは、統合保育で働く保育士の主な役割を4つ紹介します。
1.障がいの有無に関わらず平等な経験を提供する
統合保育で働く保育士は、障がいの有無に関わらず子どもに平等な経験を提供する役割があります。たとえば、集団生活のなかで障がいのある子どもをサポートしたり、全員が楽しめるイベントを考えたりします。保育士はすべての子どもが成長し、安心して過ごせる保育環境を提供していくことが重要です。
2.子どもたちがともに学び助け合う環境を作る
統合保育では、子どもたちがともに学び助け合う環境を作るのも保育士の役割といえます。たとえば、保育士は健常な子どもに障がいへの理解を促す役割があります。また、障がいのある子どもには、社会生活に慣れるようにサポートする場合もあるでしょう。統合保育で違いを受け入れ理解しあえれば、子ども同士で助け合う機会が自然と生まれる可能性があります。
3.必要に応じて個別に支援する
一人ひとりの子どもに合わせて、適切かつ必要な支援を考えるのも保育士の役割です。統合保育といっても子どもによっては、個別に支援が必要な場合もあるでしょう。子どものなかには統合保育に上手く馴染めなかったり、障がいにより同じ活動ができなかったりすることもあります。そのため、保護者や職員、主治医などと相談しながら必要に応じて活動内容を変更して個別に対応する場合もあるでしょう。
4.保護者と緊密に連携する
前述したように、子どもにとって適切な支援を考えるためには、保護者との緊密な連携が重要です。保育士は、統合保育するなかでの成長や気づきを保護者に共有したり、送り迎えの際に家庭での様子を聞き取ったりします。
とくに、まだ発語がない乳児や上手く言葉にできない子どもなどの場合は、保護者と緊密にコミュニケーションを取り保育に活かすことが重要です。
統合保育ならではの保育士の仕事内容
統合保育では、障がいのある子どもを保育するため一般的な保育園とは異なる業務を任される場合も。以下は、統合保育ならではの保育士の仕事内容です。
障がいのある子どもへの医療的なケアやリハビリ、食事の介助
子どもが精神的に安定できる環境づくりや配慮
療育機関や医療機関などとの連携
子どもの障がいによっては、医療的なケアやリハビリを含めて保育する場合もあるようです。子どもにとって適切な支援をするために、子どもが通っている療育機関や医療機関などと連携する場合もあるでしょう。
保育士が統合保育で身につけられる知識やスキル
保育士が統合保育に携わると、障がいへの知識やコミュニケーションスキルが身につく可能性があります。ここでは、保育士が統合保育で身につけられる可能性がある知識やスキルを紹介します。
障がいの知識や対応・配慮のスキル
統合保育では、障がいの知識や対応・配慮などのスキルを身につけられるでしょう。一口に障がいといっても、必要な対応や配慮は子どもによって違います。本や研修会などで知識を身につけることも重要ですが、実務経験から得る学びは大きいでしょう。
保護者や関係機関との連携・コミュニケーションスキル
統合保育では、保護者や療育機関、医療機関などと連携することがあるため、コミュニケーションスキルが身につく可能性があります。連絡帳のやり取りや定期的な面談など、保護者とコミュニケーションを取る場面は多いでしょう。また、保護者からの相談にのったり、一緒に解決策を考えたりすることもあります。
療育機関や医療機関との連携においては、保育士以外の職種に携わる人とコミュニケーションを取る場面も。立場の違う人と連携することにより、コミュニケーションスキルを磨ける可能性があるでしょう。
統合保育で働く保育士のメリット
統合保育で働く保育士のメリットは、障がいの知識や対応スキルを身につけ専門性を高められることといえます。障がいのある子どもを保育したり自ら勉強したりして専門的な知識、スキルを身につけられるでしょう。
また、転職する際に統合保育の経験があれば、求人の選択肢が広がる場合があります。たとえば、療育施設や発達支援施設など、障がいのある子どもに関わる仕事に転職できる可能性もあるでしょう。
統合保育で働く保育士のデメリット
統合保育では、体力や精神面で負担を感じる方もいるようです。子どもの障がいによっては走り回ったり落ち着きがなかったりして、安全を守るために体力が必要な場面もあるでしょう。対応の難しさから、精神面で負担を感じる場合もあるようです。
また、統合保育では障がいの知識やスキルを自ら身につけるという大変さもあります。プライベートの時間を使って専門書を読んだり研修会に参加したりして、スキルを身につける必要があるでしょう。
統合保育に携われる職場
統合保育に携われる求人は、数が限られているため、保育士向けの就職・転職エージェントを利用して探すのがおすすめです。なお、一般的な保育園で障がい児保育をしている場合は、統合保育と同じような経験を積める可能性があるため、探してみるのも1つの方法といえます。
また、加配保育士の求人を探してみると、統合保育や障がい児保育を実施している職場に出会える可能性があります。求人探しが上手くいかないときは、就職・転職エージェントなどのプロに相談してみましょう。
保育業界専門の転職支援サービス「レバウェル保育士」では、地域に特化したプロのアドバイザーがあなたに合った求人をご紹介します。書類の作成や事業所とのやりとりはアドバイザーが代行するため、仕事と転職活動の両立がしやすいのも魅力です。サービスはすべて無料で利用できるため、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
統合保育とは、健常な子どもと障がいのある子どもを同じ環境で保育することを指します。統合保育のねらいは、障がいの有無による違いを受け入れたり、助け合う気持ちを養ったりすることです。
統合保育で働く保育士は「障がいの有無に関わらず平等な経験を提供する」「子どもたちがともに学び助け合う環境を作る」などの役割を担います。統合保育ならではの仕事内容は、保育士として障がいのある子どもの医療的なケアやリハビリを行う、療育機関との連携などが挙げられます。
保育士として統合保育に携わると、障がいの知識や対応スキルなどが身につけられるでしょう。また、保護者や療育機関などとの連携が求められ、コミュニケーションスキルを磨ける可能性があります。一方で、子どもの障がいによっては対応が難しく、体力面や精神面で大変に感じる方もいるようです。
統合保育の求人は少なく、希望に合った職場探しが難しいこともあります。統合保育の求人探しが難しい場合は、障がい児保育を実施している保育園を探したり、就職・転職エージェントに相談したりするのがおすすめです。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。