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レッジョ・エミリア・アプローチとは?特徴や取り入れるメリットを解説

保育士と一緒に絵の具で製作をしている園児達の様子

「レッジョ・エミリア・アプローチってどんな教育法?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。レッジョ・エミリア・アプローチは、子どもたちの創造性と好奇心を大切にし、アートを通じた表現活動を重視するのが特徴です。 この記事では、レッジョ・エミリア・アプローチの教育理念や特徴を解説します。レッジョ・エミリア・アプローチを取り入れる保育園で働くメリット・デメリットも紹介するので、ぜひご一読ください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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レッジョ・エミリア・アプローチとは

レッジョ・エミリア・アプローチとは、子どもたちが自分の興味や好奇心を膨らませて自由に造形・表現活動することをサポートする、アートを起点とした教育法です。この教育法は、北イタリアの「レッジョ・エミリア市」で生まれました。第二次世界大戦後、子どもに教育を受けさせるために市民が立ち上がり、一つの学校を作ったのが始まりとされています。

レッジョ・エミリア・アプローチにおいて重要な価値観は、「創造性」と「共同性」です。創始者の1人による詩「100の言葉」に、その価値観は色濃く表れています。「100の言葉」は、子どもにはさまざまな表現方法があるのに、大人が価値観を押し付けると子どもの可能性を奪ってしまうという意味が込められているのが特徴です。

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもの本来の可能性を育み、伸ばしていくために、自由な発想で創造・探求できる環境を整えます。子どもを権利を持った一人の市民として尊重し、地域全体で成長を支えることを大切にしているのです。子どもの個性や価値観を信じて伸ばす教育が、レッジョ・エミリア・アプローチの真髄といえるでしょう。

レッジョ・エミリア・アプローチの教育理念

レッジョ・エミリア・アプローチの教育理念は、社会性や子どもの権利を重視し、時間を区切らない活動スタイルを基本としています。「社会性」については、4〜5人の小グループで活動するのが特徴です。子どもたちが意見を交換しながら、お互いを尊重する心を育みます。

また、レッジョ・エミリア・アプローチは、決まった時間割やカリキュラムがありません。子どもたちのペースを大切にし、興味があるテーマに長期的に取り組むことで、創造力や探究心、集中力を養います。

「子どもの権利」では、一人ひとりの特性を尊重する姿勢を大切にしています。子どもが主体的に活動できる環境づくりを重視し、子どもの成長を多角的にサポートするというものです。こういった理念を基に、レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたち一人ひとりが持つ無限の可能性を最大限に引き出して豊かな成長を促していきます。

レッジョ・エミリア・アプローチと一般的な教育法の違い

レッジョ・エミリア・アプローチと一般的な教育法の主な違いは、子どもとの関わり方と時間の使い方にあります。レッジョ・エミリア・アプローチにおいて、子どもは自ら学び、探求する主体的な存在です。一般的な教育法では、子どもは教師から知識を与えられる受け身の存在とされる傾向にあります。

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたちの興味や好奇心から生まれたテーマを長期的なプロジェクトとして深く探究しますが、一般的な教育法は決められた時間割と教科に沿って進めるのが基本です。また、教師の役割も異なります。レッジョ・エミリア・アプローチは、子どもに寄り添い、学びをサポートするのが教師の役割です。これに対し、一般的な教育法では、教師は主に知識を伝える指導者としての役割を担っているといえるでしょう。

レッジョ・エミリア・アプローチの特徴

レッジョ・エミリア・アプローチは、子どもが持つ創造性や探求心を育むために、独自の活動や環境整備を行っています。ここでは、レッジョ・エミリア・アプローチの特徴をまとめました。

プロジェクト活動を行う

レッジョ・エミリア・アプローチのプロジェクト活動は、1つのテーマについて数日から数か月かけて深く探究する学びの形です。子どもたちは4〜5人の小グループに分かれて話し合い、自分たち自身で活動内容を決めます。

保育者の役割は、子どもが興味を持つ環境を整えることです。たとえば、季節の植物を保育室に置いたり、興味を引く素材を用意したりして、子どもの好奇心を刺激します。子どもが「なぜ?」と思うきっかけを与え、対話しながら保育者自身も一緒に学ぶ姿勢が大切です。

保育者は話し合いに参加しますが、子どもに答えを教えたり、方向性を指示したりはしません。プロジェクト活動を通して、子どもたちは協調性や自立性、問題解決能力を自然と身につけ、創造的な思考力を育んでいきます。

アトリエリスタとペタゴジスタを配置する

レッジョ・エミリア・アプローチを導入している保育園には、通常の保育士に加えて「アトリエリスタ」と「ペタゴジスタ」という専門職の職員がいます。アトリエリスタは造形美術の専門家で、子どもたちの創作活動をサポートする役割です。絵の具や粘土、自然素材などさまざまな表現材料を用意し、子どもたちが自由に探求・表現できる環境づくりを担当します。

ペタゴジスタはレッジョの教育理論を現場で実践するためのコンサルタントです。カリキュラムへのアドバイスや保育士向けの研修会を開催し、保育の質を高める役割を果たします。

アトリエリスタやペタゴジスタの存在により、子どもたちの創造性と学びがより豊かに広がり、保育士自身の専門性も向上していくのです。

活動の場としてピアッツァとアトリエを用意する

レッジョ・エミリア・アプローチでは、園の空間づくりも特徴的です。園の中心には「ピアッツァ」と呼ばれるオープンスペースが設けられ、子どもたちの交流や活動の中心となります。

創作活動の場として「アトリエ」という専用の部屋も用意されています。アトリエには葉っぱや石といった自然物、画材、リサイクル素材などさまざまな材料が用意されているようです。子どもたちはアトリエにある素材を自由に組み合わせて、自分のアイデアを形にできます。

ドキュメンテーションで活動を振り返る

レッジョ・エミリア・アプローチでは、「ドキュメンテーション」という活動記録をします。ドキュメンテーションは、子どもたちの活動をメモや写真、動画などで記録する作業です。各クラスに配置された保育者のうち1人が記録係を担当し、子どもたちの対話や発見、創作過程を残していきます。

記録した内容は園内のみんなが見える場所に掲示され、子どもたち自身が自分の活動を振り返ったり、保護者が子どもの学びを理解したりするための材料となります

ドキュメンテーションを通じて、子どもの学びの過程が可視化され、保育の質が高まり、子ども・保育者・保護者の間で学びが共有されていくのです。

レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園で働くメリット

レッジョ・エミリア・アプローチを取り入れている保育園で働くメリットは、子どもの主体性を大切にできたり、創造性を伸ばせたりすることです。ここでは、レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園で働くメリットを解説します。

子どもの主体性や自立心を大切にできる

レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園では、子どもたちの好奇心や関心をそのまま活動につなげるので、子どもの「自分でやりたい」という気持ちを大切にできます。保育者はただ答えを教えるのではなく、子どもたちに「どうしたらいいと思う?」「なぜそう考えたの?」と問いかけ、自分で考える力を引き出すことが重要です。こうした関わりの中で、子どもたちは自分で判断し、行動する力を身につけていきます。

保育者自身も、子どもの発見や成長に日々立ち会え、やりがいを感じられるでしょう。子どもたちが自分で課題を乗り超える瞬間を見られることは、保育者にとってうれしい経験になります

子どもたちの創造性を伸ばせる

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたちがアトリエでさまざまな素材や道具を使って活動する過程で、創造性を育めます。決まったお手本はなく、子どもたちは保育者やほかの子どもとの対話や協同作業を通して、自分のイメージを具体的に形にしていくのが特徴です。

保育者としても、子どもたちの想像力豊かな発想に触れることで、自分自身の創造性が刺激されます。子どもたちと共に新しい発見をする喜びを味わえるのは、レッジョ・エミリア・アプローチのメリットといえるでしょう。

協調性や社会性を育てられる

レッジョ・エミリア・アプローチでは、グループでのプロジェクト活動を通して、子どもたちの協調性や社会性を育てられます。自分の考えを伝えたり、友だちの意見を聞いたりする経験を繰り返す中で、コミュニケーション能力が自然と高まるでしょう。

保育者は、子ども同士の関わりを見守りながら、必要に応じてサポートします。友だちとうまく話し合いができなかった子どもが自分の意見を主張したり、相手の考えを尊重できるようになったりした姿を見ると、保育者としてのやりがいを実感できるはずです。

レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園で働くデメリット

レッジョ・エミリア・アプローチを保育園で実践するには、独自の理念に基づいた保育環境を整えるための労力が必要になります。ここでは、レッジョ・エミリア・アプローチを保育園を取り入れる保育園で働くデメリットを見ていきましょう。

保育環境を整えるのに手間と時間がかかる

レッジョ・エミリア・アプローチを取り入れる保育園は、子どもたちの探究活動を促すための環境づくりに時間と労力がかかります。保育者は子どもたちが自由に素材や道具を選べるように、多種多様な材料をアトリエに集め、整理・準備が必要です。

また、プロジェクトの進捗に合わせて、園内の掲示物も更新しなければなりません。掲示物は単なる装飾ではなく、子どもの活動の記録として、学びの過程を可視化するのに必要な作業になります。

専門スタッフとの連携が難しい

レッジョ・エミリア・アプローチを実践するうえで、保育者は、アトリエリスタやペタゴジスタといった専門職と協力する必要があります。保育者やアトリエリスタ、ペタゴジスタは、子どもたちの探求と表現活動を豊かにするために、互いの専門性を理解して協力し合うことが大切です。

たとえば、プロジェクト活動では、保育者が子どもの興味を捉えて、アトリエリスタが表現方法を提案します。ペタゴジスタは、保育者に活動の助言をするのが特徴です。専門知識を持ったスタッフ同士で協力し合うには、密なコミュニケーションが求められ、連携することに難しさを感じるかもしれません。

一般的な保育と異なる部分がある

レッジョ・エミリア・アプローチは、一般的な保育とは考え方や実践方法が異なります。そのため、レッジョ・エミリア・アプローチはアートを中心とした保育であることや、保育者が「教える」のではなく「共に探究する」立場であることなど、従来の保育観との違いを理解しなければいけません

保育者は、子どもたちが主体的に活動できるよう、適切な距離感でのサポートが求められます。手や口を出し過ぎずに見守る姿勢と、必要なときにはサポートする判断力のバランスを取るのに苦労する場合もあるようです。

また、ペタゴジスタの助言を参考にしながら、0から専門性を学んでいかなければならないこともあります。レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園で働く場合は、これまでの経験や知識だけでは対応できない場面もあり、常に学び続ける姿勢が求められるでしょう。

保育士がレッジョ・エミリア・アプローチを実践する際のポイント

レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育者には、子どもたちの学びを見守り、導く姿勢が求められます。ここでは、保育士がレッジョ・エミリア・アプローチを円滑に進めるためのポイントをまとめました。

子どもを見守る姿勢を持つ

レッジョ・エミリア・アプローチを実践するうえで大切なのは、子どもを信頼して見守る姿勢です。子どもが「やってみたい」と思うことに対して、すぐに手伝うのではなく、安全に配慮しながら挑戦する機会を与えましょう

子どもたちのアイデアを尊重し、すぐに答えを示さず、自分で考える余裕を与えることで、主体性が育まれていきます。失敗も学びの一部と考え、うまくいかなかったときこそ、保育士が「どうしてだろう?」「次はどうしたら良いかな?」と子どもに問い掛けることで、自分で考える力を養うことが可能です。

子どもの好奇心を刺激する環境を整える

保育士がレッジョ・エミリア・アプローチを実践する際は、子どもたちの好奇心を刺激し、探究心を育む環境づくりを心掛けましょう。活動内容をいくつか用意しておき、子どもたちが選べるようにすると、自主性を尊重できます

自然物や日常品を取り入れた素材コーナーを設けたり、季節の変化を感じられる植物を置いたりすることで、子どもたちの感性が豊かになるでしょう。子どもが気になったことをすぐに調べられるよう、図鑑や資料を手の届く場所に配置するのも効果的です。

レッジョ・エミリア・アプローチに関してよくある質問

ここでは、レッジョ・エミリア・アプローチに関してよくある質問にお答えします。

レッジョ・エミリア・アプローチを実践するために必要な資格は?

レッジョ・エミリア・アプローチを実践するために、特別な資格は必要ありません。通常の保育士や幼稚園教諭の資格があれば、レッジョ・エミリア・アプローチを実践する保育園で働けます。大切なのは、レッジョ・エミリア・アプローチの理念を理解して、保育を実践することです。

アトリエリスタについても厳密な資格要件はありませんが、美術大学を卒業した人や、外部の工作セミナーに参加して専門知識を身につけた保育士が担当する傾向にあります。

レッジョ・エミリア・アプローチとモンテッソーリ教育の違いは?

レッジョ・エミリア・アプローチとモンテッソーリ教育は、どちらも子どもの主体性を重視する点では共通していますが、アプローチ方法に違いがあります。モンテッソーリ教育は、発達段階に沿ってあらかじめ用意された教具を使い、子どもが一人で集中して取り組む個別活動が中心です。一方、レッジョ・アプローチは、教具やプログラムに決まりはなく、グループでの協同作業を重視しています。

まとめ

レッジョ・エミリア・アプローチは、子どもの創造性と主体性を尊重する教育法です。北イタリアで生まれたこの教育法は、子どもを100の言葉を持つ能力豊かな存在として捉え、その可能性を信じることを基本としています。

レッジョ・エミリア・アプローチでは、小グループでのプロジェクト活動を通して協調性を育むのが特徴です。保育環境にも独自性があり、ピアッツァやアトリエといった特別な空間を設け、子どもたちの学びを促進します。

レッジョ・エミリア・アプローチを実践している保育園で働くと、子どもたちの創造性や自立心が育まれる姿を間近で見られるのが魅力になります。保育者として子どもとともに学び、成長する姿勢を持てば、レッジョ・エミリア・アプローチの真髄に触れられるかもしれません。

レッジョ・エミリア・アプローチのような独自の保育理念を持っている職場で働きたいと思っている方は、ぜひ「レバウェル保育士」にご相談ください。「レバウェル保育士」では、キャリアアドバイザーがあなたの希望に合う教育法を実践している園の求人情報を紹介します。保育方針や保育内容についても、詳しく確認できるので、ぜひ気軽にご登録ください。

執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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