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保育と教育の違いとは?定義・目的・共通点や幼保一元化の動きを解説

「保育と教育って、何が違うの?」と疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。「保育園は保育、幼稚園は教育」というイメージがあるかもしれませんが、実は両者には重なる部分もあり、はっきりと線引きできるものではありません。この記事では、保育と教育の基本的な違いはもちろん、保育園・幼稚園の役割や、幼保一元化の流れについても解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
保育と教育(幼児教育)の違いとは?
「保育」と「教育」は、一見別のものに思えますが、明確な境界線があるわけではなく、どちらも子どもの成長にとって欠かせない役割を担っています。ここでは、幼児期における保育と教育の違いについて、定義や目的の観点から解説します。
定義の違い
幼児期における「教育」とは、子どもの年齢や成長段階に合わせて、大人が意識的に関わりながら、教え育てることを指します。一方、「保育」には、教育的な関わりに加えて、子どもの命や健康を守る「養護」の側面が強く含まれています。
たとえば家庭での保育を例に取ると、「ご飯を食べさせる」「安心して眠れるように身の回りを清潔にする」といった行動は養護にあたります。「絵本の読み聞かせをする」「遊びを通して言葉やルールを学ばせる」といった行動は、教育的な関わりです。
また、「幼児教育」とは、保育園や幼稚園だけでなく、家庭や地域社会など、あらゆる生活の中で行われる教育的な関わり全体を指します。つまり、どこで育つかに関係なく、子どもが学び、成長するすべての機会は幼児教育といえるのです。
出典
厚生労働省「『養護』と『教育』の一体的提供について」(2025年9月1日)
社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国保育士会「養護と教育が一体となった保育の言語化」(2025年9月1日)
文部科学省「第2節 幼児教育の意義及び役割」(2025年9月1日)
目的の違い
保育の主な目的は、子どもが心身ともに健康に安心して成長できる環境を整えることです。食事や睡眠などの基本的な生活習慣を支え、生命を守りながら、情緒の安定を図ることがねらいといえます。
一方、教育の主な目的は、社会で必要とされる知識や技能、態度を育てることにあります。子どもが自分で考え判断し、行動できるようにするために、大人が意識的に関わって指導を行うのが教育です。
出典
厚生労働省「『養護』と『教育』の一体的提供について」(2025年9月1日)
保育園と幼稚園の違いとは?
保育園と幼稚園は、どちらも子どもの成長を支える施設ですが、それぞれ異なる役割を持っています。ここでは、保育園と幼稚園に焦点を当て、保育と教育の違いを解説します。
制度や環境の違い
保育園と幼稚園の大きな違いは、保育園は養護(保育)、幼稚園は教育に重点を置いている点です。保育園は、保護者の就労などの理由で家庭での保育が難しい場合に、乳幼児を預かる児童福祉施設として設けられています。そのため、食事や睡眠といった生活全般のサポートを重視し、子どもが安心して過ごせる生活の場としての役割が強いのが特徴です。
幼稚園は、文部科学省の管轄下にある教育機関です。社会性や自立心を育むことを目的に、年齢や発達に応じた教育活動に力を入れています。そのため、幼稚園は「学びの場」としての側面が色濃く表れています。
ただし、保育と教育はどちらも子どもの成長に欠かせない要素であり、「保育園は保育」「幼稚園は教育」と完全に分けて考えることはできません。保育と教育は、まさに車の両輪のように、一体となって子どもの育ちを支えています。
出典
全国保育協議会「『保育園』を知って下さい」(2025年9月1日)
社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国保育士会「養護と教育が一体となった保育の言語化」(2025年9月1日)
保育士と幼稚園教諭の違い
保育園と幼稚園では、それぞれ異なる専門職が子どもたちに関わっています。保育園で働くのは、国家資格を持つ保育士です。保育士は、主に0歳から就学前の子どもを対象に、健康管理や生活習慣のサポートなど、日々の生活を支える役割を担っています。
幼稚園では、教員免許を持つ幼稚園教諭が働いており、主に3歳以上の子どもを対象に、教育要領に基づく計画的な指導を行うのが特徴です。このように、保育士は子どもが安心して過ごせる環境づくり(養護)を重視し、幼稚園教諭は子どもの発達に応じた学び(教育)を支えることに力を入れています。
出典
職業情報提供サイト(job tag)「保育士」「幼稚園教員
」(2025年9月1日)
文部科学省「第2節幼児教育の意義及び役割」(2025年9月1日)
子どもの成長を育む保育と教育の共通点
保育園と幼稚園は、運営の基準(保育所保育指針・幼稚園教育要領)こそ異なりますが、小学校教育へのスムーズな接続を目指し、共通の考え方を持っています。文部科学省の「幼稚園教育要領と保育所保育指針の関係」によると、以下の3点は両者に共通する基本的な視点です。
1.子どもと保育者との信頼関係を基盤とする
2.子どもの主体的な活動を大切にし、適切な環境の構成を行う
3.子ども一人ひとりの特性と発達の課題に即した指導を行う
特に、保育園の3歳以上の子どもに対する教育的な取り組みは、幼稚園教育要領の基準と矛盾しないように規定されています。保育士として働く場合であっても、幼稚園教諭と同様に小学校教育への接続を強く意識し、教育的な視点から子どもの成長を支えることが求められるのです。
出典
文部科学省「幼稚園教育要領と保育所保育指針の関係」(2025年9月1日)
保育と教育(幼児教育)の違いは今後どう変わる?
ここまで、保育園と幼稚園の違いについて見てきました。しかし今、この2つの施設のあり方を変える「幼保一元化」という動きが進められています。保育士と幼稚園教諭の役割や、保育と教育の区別は今後どうなっていくのか、詳しく見ていきましょう。
幼保一元化は加速していくと考えられる
近年、共働き家庭の増加や育児に対するニーズの多様化、そして「幼児教育の質を高めるべき」という考えから、保育園と幼稚園を一体化する幼保一元化の動きが進んでいます。
この動きの中心となっているのが、教育と保育を一体的に行う「認定こども園」です。認定こども園は、幼稚園と保育園、それぞれの良さを取り入れた施設として、国の施策のもと整備が進められています。それに伴い、認定こども園で働く保育教諭の確保も進んでおり、従来は別々であった幼稚園教諭と保育士の連携が密になっています。
今後さらに幼保一元化が進めば、「幼稚園=教育」「保育園=養護(保育)」というこれまでの役割の違いも、少しずつ変化していくかもしれません。
出典
こども家庭庁「認定こども園概要」(2025年9月1日)
文部科学省「幼保一体化の検討経緯について」(2025年9月1日)
認定こども園の整備・運営には課題もある
認定こども園は、保育園と幼稚園の両方の良さを併せ持つ新しい形の施設として注目されていますが、整備や運営にはいくつかの課題も生じているのが現状です。
前述のとおり、これまで保育園は福祉施設、幼稚園は教育施設として、異なる目的や制度のもとで発展してきました。認定こども園への移行にあたっては、保護者のニーズが異なり混乱が生じたり、保育者の勤務が長時間化したりといった問題も指摘されています。両方の仕組みをすぐに1つにすることは簡単ではありません。
保護者の期待に応え、信頼関係を築いていくためには、職員同士の連携を強め、情報を共有する体制づくりがますます重要になるでしょう。
出典
一般社団法人日本保育学会「幼保一体化の課題と展望ー認定こども園全国調査のまとめー」(2025年9月1日)
保育と教育の違いに関してよくある質問
ここでは、保育と教育の違いに関してよくある質問を紹介します。
保育・養育・教育の違いは何ですか?
一言でいうと、「養育とは子どもを養い育てること」「教育とは知識や技能を育むこと」「保育とは養護と教育を一緒に行うこと」です。子どもの健やかな成長を支え、将来にわたって生きていくための土台を築くには、教育的側面と養護的側面の両方が欠かせません。詳しくは、この記事の「保育と教育(幼児教育)の違いとは?」をご覧ください。
保育者と教育者の役割はどのように違いますか?
保育者(保育士)の役割は、子どもの命を守り、心の安定を育む「養護」が中心です。食事や睡眠などの生活全般をサポートし、遊びを通して子どもの成長を促します。教育者(幼稚園教諭)の役割は、幼稚園教育要領に基づいた「教育」が中心です。子どもたちが小学校にスムーズに進学できるように、必要な知識や技能、考える力を育みます。
保育における養護と教育の違いは何ですか?
保育における養護とは、子どもが安全で健康的に成長するための環境を整えることです。食事・睡眠・排泄などの生理的欲求を満たし、清潔で安全な環境を整え、信頼関係を築くことで情緒の安定を図ります。一方、教育とは社会で生きていくために必要な知識や技能、思考力などを育てることです。子どもの主体的な活動や学びには養護的な要素も欠かせません。
保育で実践されている教育活動の具体例を教えてください
保育園では、日常生活や遊びを通して教育活動が行われています。全国保育士会の「養護と教育が一体となった保育とは」では、「靴と靴下を脱ぎ、靴下を靴の中にしまう」「砂場で砂を入れたコップを逆さにして型を作る」といった例が教育的な要素として紹介されています。保育現場では、日常のあらゆる瞬間で養護的・教育的な場面が共存しているのです。
出典
社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国保育士会「養護と教育が一体となった保育とは」(2025年9月1日)
まとめ
保育は、子どもが安心して成長できるように支える養護的な側面(生活支援)を重視し、教育は、意図的な関わりを通して学びや思考を育むことに重点を置いています。「保育園=保育」「幼稚園=教育」というイメージは根強いですが、実際にはどちらの施設にも養護と教育の両方の機能があり、明確な線引きはできません。また、近年では幼保一元化が進み、保育園と幼稚園の役割も統合されつつあります。今後は、保育と教育を切り離すのではなく、子どもを総合的に支援する視点がより重要になっていくでしょう。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
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