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公務員保育士の年収はどのくらい?条件別の給料や私立・公立の違いも解説
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公務員保育士を目指すかどうか迷っている方の中には、公務員保育士の給料や年収に関心を持っている方もいるのではないでしょうか。「私立保育園と待遇はどう違う?」「年齢によって給料はどう変わる?」など、さまざまな疑問が浮かんでいるかもしれません。 この記事では、公務員保育士の年収やボーナスをはじめ、経験年数や地域といった条件別の給与事情について詳しく解説します。公立と私立保育園の給料の違いや、公務員保育士のメリット・デメリットも紹介するので、今後のキャリア選択の参考にしてくださいね。
目次
公務員保育士の平均年収
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>(p11)」をもとにレバウェル保育士が算出したところ、公務員保育士の平均年収は439万円程度となりました。主任保育士や施設長といった職種を含めると、さらに水準は上がります。
1人当たり給与月額(賞与込み) | 想定平均年収 | |
常勤保育士(公立) | 36万5,542円 | 438万6,504円 |
公務員保育士は、地方自治体の公務員に該当するため、給料体系は各自治体の基準に基づいて決まります。年齢や経験年数によっても年収は異なるため、あくまで参考程度にご覧ください。
※平均年収は1人当たり給与月額(賞与込み)×12ヶ月で算出
出典
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」(2025年3月18日参照)
公務員保育士のボーナス
地方公務員のボーナスは、国家公務員のボーナス額を参考にして決められます。人事院「令和6年人事院勧告・報告の概要」によると、国家公務員のボーナスは年間で4.60ヶ月分です。最終的な金額は自治体ごとに異なりますが、公務員保育士も安定したボーナスが見込めるでしょう。
なお、総務省「令和5年地方公務員給与の実態 第2統計表[附帯調査関係]諸手当関係 第13表(p372)」によると、一般行政職(全地方公共団体)の期末・勤勉手当の平均額は155万4,900円です。公務員保育士に特化したデータではないため、実際の支給額には差がある可能性がありますが、一つの目安にしてみてください。
出典
人事院「令和6年人事院勧告・報告の概要」(2025年3月18日参照)
総務省「令和5年地方公務員給与の実態 第2統計表[附帯調査関係]諸手当関係 第13表」(2025年3月18日参照)
条件別に見る公務員保育士の給料
ここでは、公務員保育士の給料に関して、「年齢別」「経験年数別」「雇用形態別」「役職別」「地域別」の5つの観点から深掘りします。
年齢別の推移
総務省「令和5年地方公務員給与実態調査結果の状況 第3表の2 団体区分別、男女別、職種別、学歴別、年齢別職員数及び平均給料月額(市・男女計・一般行政職)」によると、地方公務員の給料は年齢が上がるにつれて増加します。そのため、公務員保育士の給料も年齢とともに上昇する傾向があるでしょう。以下は、保育士を含む一般行政職として働く公務員の年齢別平均給料月額(学歴計)です。
年齢 | 平均給料月額 |
18歳・19歳 | 15万8,619円 |
20歳~23歳 | 18万5,452円 |
24歳~27歳 | 20万8,961円 |
28歳~31歳 | 23万5,693円 |
32歳~35歳 | 26万3,232円 |
36歳~39歳 | 29万3,044円 |
40歳~43歳 | 33万750円 |
44歳~47歳 | 36万635円 |
48歳~51歳 | 38万1,211円 |
52歳~55歳 | 39万7,636円 |
56歳~59歳 | 41万1,570円 |
60歳~63歳 | 26万3,727円 |
64歳~67歳 | 26万3,110円 |
68歳以上 | 27万5,433円 |
具体的には、30代で月給が30万円台に近づき、40代になると40万円台に近づくようです。さらに、50代になると最も高い月給が見込めます。保育士に限ったデータではないためあくまでも目安ですが、公務員保育士の年収は年功序列制度に基づいて増えていくといえるでしょう。
出典
総務省「令和5年地方公務員給与実態調査結果の状況」(2025年3月18日参照)
経験年数別の推移
総務省「令和5年地方公務員給与実態調査結果の状況 第2表の1団体区分別、男女別、職種別、学歴別、経験年数別職員数及び平均給料月額(市・男女計・一般行政職)」によると、地方公務員の給料は、勤続年数が長くなるほど高くなる傾向があります。
経験年数 | 平均給料月額 |
1年未満 | 18万4,711円 |
1年以上2年未満 | 18万9,944円 |
2年以上3年未満 | 19万6,204円 |
3年以上5年未満 | 20万7,095円 |
5年以上7年未満 | 22万2,344円 |
7年以上10年未満 | 24万1,596円 |
10年以上15年未満 | 27万1,969円 |
15年以上20年未満 | 31万5,819円 |
20年以上25年未満 | 35万5,931円 |
25年以上30年未満 | 38万851円 |
30年以上35年未満 | 39万6,659円 |
35年以上 | 37万139円 |
公務員保育士も一般的な地方公務員と同様に、職務経験に基づいた評価が行われるため、経験年数が増えることで安定した昇給が期待できます。そのため、公務員保育士が高収入を得るには、長期的なキャリアを見据えることが大切といえるでしょう。
出典
総務省「令和5年地方公務員給与実態調査結果の状況」(2025年3月18日参照)
雇用形態別の比較
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>(p11)」によると、公立の保育所に勤務する公務員保育士の給与月額は、常勤と非常勤で約18万円の差があります。
雇用形態 | 給与月額(賞与込み) |
常勤 | 36万5,542円 |
非常勤 | 19万521円 |
上記の金額には一部賞与が含まれています。非常勤の場合、月の勤務時間によって収入額が変わるため、あくまで目安にはなりますが、雇用形態を選ぶ際の参考にしてみてください。
出典
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」(2025年3月18日参照)
役職別の比較
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>(p11)」によると、公務員保育士(常勤)の給料は、昇給や役職手当の影響で役職が上がるほど高くなる傾向があります。
職種 | 給与月額(賞与込み) | 平均勤続年数 |
施設長 | 64万3,192円 | 30.1年 |
主任保育士 | 56万4,357円 | 23.9年 |
保育士 | 36万5,542円 | 10.6年 |
特に、保育士から主任保育士に昇進すると、給与月額は約20万円も増加しています。さらに、園長に昇進すれば、より高い年収が期待できるでしょう。
なお、主任保育士に昇進する年齢は、平均勤続年数を基にすると40代以降になると考えられます。
出典
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」(2025年3月18日参照)
自治体の地域別の比較(初任給)
公務員保育士の年収は、一般的に都市部のほうが高い傾向にあります。以下の表では、近年の募集案内(短大卒程度)を市・区・町ごとに一部抜粋してまとめました。
初任給月額 | |
東京都渋谷区 | 約20万8,920円~26万9,640円 |
兵庫県宝塚市 | 21万3,325円 |
福岡県筑前町 | 18万1,800円程度 |
実際は上記の金額に諸手当や経歴加算が加わるため、単純比較はできませんが、自治体ごとに差があることは見て取れるでしょう。公務員保育士が高収入を目指すには、どの地域で働くかも重要なポイントといえます。
出典
渋谷区「募集案内」(2025年3月18日参照)
宝塚市「令和7年度採用 宝塚市職員募集要項」(2025年3月18日参照)
筑前町「令和6年度(第1回)筑前町職員募集のお知らせ」(2025年3月18日参照)
公立と私立保育園の給料の違い
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>(p11)」によると、公立と私立では、公立の常勤保育士のほうが月給が高いことが示されています。
給与月額(賞与込み) | 平均勤続年数 | |
公立 | 36万5,542円 | 10.6年 |
私立 | 34万8,119円 | 11.2年 |
前述のとおり、公務員保育士の給与は、キャリアが進むにつれて私立保育所の保育士との差が大きくなる傾向があります。施設長や主任保育士といった役職に就けば、私立保育所で働くよりも生涯年収が多くなるでしょう。ただし、私立保育園で早く役職に就いた場合は、公務員保育士の収入を上回ることもあります。
出典
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」(2025年3月18日参照)
公務員保育士のメリット・デメリット
ここでは、収入以外の面も含めて、公務員保育士のメリットとデメリットをまとめました。公務員保育士を目指すかどうか迷っている方は、以下の内容を比較して考えてみてください。
公務員保育士のメリット
公務員保育士の主なメリットは以下のとおりです。
ボーナスや退職金が手厚い
福利厚生が充実している
育休を3年間取得できる
土日祝日は基本的に休み
勤務時間が一定で残業が少ない
社会的信頼性が高い
公務員保育士は、自治体の規定に基づいて勤務するため、私立保育園に比べて残業の頻度や残業時間が比較的少ないとされています。また、公務員保育士は給料や待遇が安定しているため、手厚いボーナスや退職金を得たい人にも向いているといえるでしょう。
公務員保育士のデメリット
公務員保育士の主なデメリットは以下のとおりです。
2~4年のペースで異動がある
保育園以外の施設に配属される可能性がある
副業の規制が厳しい
昇進や昇給のスピードが緩やか
採用予定数が少ない
公務員保育士は、公立保育園だけでなく、発達支援センターや乳児院といったほかの施設に異動することがあります。私立保育園も法人内で異動する可能性はありますが、公務員保育士のように定期的に異動が発生することは少ないです。
そのため、「1つの園に長く勤務したい」「園の特色を活かした保育を行いたい」といった方は、私立保育園のほうが向いているかもしれません。
公務員保育士の今後の動向
現在、公立保育園は民営化が進んでおり、その数は減少傾向にあります。そのため、公務員保育士として働き始めても、自治体の財政次第では勤務先が民営化される可能性もゼロではありません。その結果、別の公立保育園や児童養護施設などへの異動を求められることもあるでしょう。
また、採用に関しても、公費削減によって会計年度任用職員の採用が増えており、正規職員の枠は狭き門になっているのが現状です。
公立と私立のどちらで働くか迷っている場合は、将来的に民営化される可能性も考慮して働き方を検討すると良いでしょう。国の処遇改善によって私立保育園の待遇も向上傾向にあるため、総合的に判断することをおすすめします。
出典
総務省「会計年度任用職員の施行状況等に関する調査結果について」(2025年3月18日参照)
公務員保育士になる方法
公務員保育士になるには、保育士資格の取得に加え、公務員試験の合格が必要です。公務員試験では、筆記試験や面接、小論文などが実施され、合格すると採用候補者名簿に登録されます。年齢の基準は自治体によって異なりますが、一般的には30歳が目安といえるでしょう。
以下では、公務員試験の内容について、さらに詳しく解説します。
公務員試験の募集時期
公務員試験の募集時期は自治体によって異なりますが、一般的には夏と秋に実施されます。ただし、人員に不足が出た際には、不定期に募集が行われることもあるようです。また、募集要項によっては、複数の自治体への応募が可能な場合もあります。
公務員保育士の募集は毎年必ずある訳ではないため、見逃さないようにこまめに情報を確認しましょう。
公務員試験の合格者数と倍率
公務員試験は競争が激しく、公務員保育士になるための難易度は高いといえます。以下の表に、いくつかの自治体の採用試験結果を抜粋しました。
受験者数 | 合格者数 | 競争倍率 | 参考資料 | |
東京都渋谷区 | 44人 | 35人 | 1.26倍 | 保育士採用案内 渋谷区役所 |
兵庫県宝塚市 | 19人 | 7人 | 2.71倍 | 過去の採用試験実施結果 |
福岡県久留米市 | 8人 | 4人程度(※採用予定) | 2.0倍 | 過去の職員採用試験受験状況 |
上記のとおり、公務員試験の応募人数や倍率は自治体ごとに異なります。また、試験に合格しても施設から採用通知を受け取らなければ、公務員保育士として働くことはできません。採用は成績上位者から行われるため、場合によっては採用待ちの状態になることもあります。採用の有効期限を過ぎると無効となるため注意が必要です。
公務員試験で必要なスキル
公務員試験では、一般的に高卒程度の学力と保育士としての適性が求められます。また、自治体によっては、一定の経験年数や幼稚園教諭の免許が必要な場合もあります。試験対策には、1年程度の準備期間を見ておくと安心です。中には、3次試験まで行われる自治体もあるため、余裕を持って準備を進めるようにしましょう。
公務員保育士の年収に関してよくある質問
ここでは、公務員保育士の年収に関してよくある質問を紹介します。
公務員保育士の年収は20代でも高いですか?
公務員保育士の年収は年齢とともに増加するため、一年目や20代のうちは、期待よりも低いと感じるかもしれません。しかし、長期間勤めれば、昇給や昇進によって安定した給与の増加が見込めます。年齢ごとの給料の違いは、この記事の「年齢別の推移」をご覧ください。
公務員保育士の給料と手取りはいくらですか?
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>(p11)」によると、公立の保育所に勤務する公務員保育士の給与月額は、36万5,542円です。この金額には一部賞与が含まれているため、実際に受け取る月給はこの金額よりも少ないです。また、手取りは一般的に総支給額の75〜85%といわれています。
出典
こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報>」(2025年3月18日参照)
公務員保育士の採用がなくなるって本当ですか?
公務員保育士の採用が完全になくなることは、現段階では考えにくいでしょう。ただし、民営化の影響で公立保育園の数が減少しているのは事実です。公費削減によって会計年度任用職員の採用も増えているため、正規職員の枠をめぐる競争は引き続き激しい状況が続くでしょう。
まとめ
公務員保育士は、安定した給与体系や手厚いボーナス、充実した福利厚生が整っているため、収入面での不安が少なく安心して働ける点が魅力です。平均年収は、勤務地や年齢、経験年数によって異なりますが、439万円程度と考えられます。主任保育士や施設長といった役職に就くと、より高い年収が期待できるでしょう。公務員保育士を目指す際は、収入面だけではなく、デメリットも十分に考慮して、総合的に判断することが大切です。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。