最終更新日:
院内保育所とは?一般の保育園との違いや保育士が働くメリットも解説
- #保育士
- #働く場所

保育士のなかには、院内保育所について気になる方もいるのではないでしょうか。院内保育所とは病院内や近隣に設置され、主に医療従事者の子どもを預かる認可外の保育施設です。 この記事では、保育士として院内保育所で働く際の特徴や通常の保育園との違いについても解説。院内保育所のメリットやデメリット、向いている人の特徴についても紹介するので、「自分のライフスタイルに合った保育所を探したい」「転職を検討している」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
院内保育所とは
院内保育所とは、病院内や近隣に設置され、主に医療従事者が子どもを預かる保育施設です。ただし、地域の子どもを受け入れているところもあります。児童福祉法に基づき国が定めた設置基準の認定を受けていない認可外保育園に分類されます。医療機関は24時間体制で運営されており、医師や看護師などのスタッフは不規則な勤務が多いため、早朝や夜間などにも対応できる院内保育所は重要な役割を果たしています。
院内保育所は職場から近い傾向にあるため、送迎の負担が軽減されるだけでなく、子どもが体調を崩した際にすぐに対応が受けられる点もメリットです。待機児童問題の解決や出産・育児後の職場復帰を支える存在でもあり、医療従事者の離職を防ぐ役割も果たしています。
院内保育所と一般の保育園との違い
院内保育所は、医療従事者の子どもを預かる保育施設であるため、一般の保育園とは異なる運営体制が特徴です。ここでは、院内保育所と一般の保育園との違いについて詳しく解説します。
規模や子どもの人数
院内保育所は、一般の保育園と比べて規模が小さく、受け入れる子どもの人数も限られる傾向にあります。これは、院内保育所は主に医療従事者の子どもを対象としているのが、その理由です。小規模な病院に併設されている保育所では、少人数の子どもに対して保育を行うケースもあるようです。
また、院内保育園は保護者の勤務シフトによって登園する子どもの数が変動するため、柔軟な対応が求められるのも特徴の1つといえるでしょう。
対象となる園児
院内保育所は、主に病院で働く医師や看護師などの職員の子どもを対象としています。地域の子どもを受け入れている園もあるようですが、利用するのは病院関係者が多い傾向にあります。院内保育所の存在により、医療従事者は職場に近い場所に安心して子どもを預けることができ、急な勤務変更や長時間の労働にも対応しやすいといえるでしょう。
職員配置
院内保育所では、医療従事者の不規則な勤務形態に対応する必要があるため、職員の配置も通常の保育園とは異なります。24時間体制で運営されることが多く、夜間や早朝に対応できるよう、保育士は一般的にシフト制で勤務します。
院内保育所の職員配置は認可外保育園の基準に従います。2024年度より配置基準が改正され、0歳児は保育士1人につき3人、1~2歳児は6人、3歳児は15人、4歳j児以上は25人を受け持ちます。11時間を超える時間帯については、現に保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上配置するのが義務づけられています。
出典
こども家庭庁「令和7年度保育関連予算案関連資料」(2025年7月18日)
文部科学省「認可外保育施設指導監督基準」(2025年7月18日)
保育時間
院内保育所では、医療従事者のシフトに合わせて柔軟な保育時間を提供しているため、一般の保育園に比べて開園時間が長く設定されているのが特徴です。早朝から夜間まで、さらには24時間体制で保育を行う施設も多く、保育士はそれに応じたシフト制で勤務しています。これにより、保護者が急な夜勤や早朝出勤の際も安心して子どもを預けることができ、医療現場を支える大きな役割を果たしているといえるでしょう。
施設の立地と周囲の環境
院内保育所は病院の敷地内や近隣に設置されている傾向にあるため、一般の保育園とは立地環境が大きく異なります。一般的な保育園は、住宅地など地域の子どもたちの通いやすさを重視した場所にあります。一方、院内保育所は主に病院で働く医師や看護師など医療従事者の子どもを預かることを目的としています。そのため、病院に近い環境に設置されていることがほとんどです。緊急時でもすぐに保護者と連絡を取れる利点があり、医療従事者が安心して勤務できる環境づくりに貢献しています。
夜間保育への対応の有無
院内保育所では、医師や看護師など夜勤のある医療従事者のニーズに応えるため、多くの施設で夜間保育が実施されています。一般の保育園では夜間保育がない場合が多く、これも院内保育所の特徴といえるでしょう。
院内保育所で働く保育士の1日のスケジュール例
院内保育所の1日は、施設や病院の体制によって異なる場合がありますが、ここでは一般的なスケジュールの一例を紹介します。主に医療従事者の子どもを預かるため、夜間や早朝保育が含まれることも多く、通常の保育所とは異なる部分も。院内保育所で保育士として働くことを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
時刻 | 業務内容 |
午前7時30分 | 開園・子どもたちの登園準備 |
午前8時 | 登園の受け入れ対応・自由遊び |
午前9時 | 朝の会・おやつの準備 |
午前10時 | 散歩・自由保育・制作など |
午前11時 | 昼食準備・食事介助 |
正午 | お昼寝・連絡帳記入など |
午後2時30分 | 起床・着替えの介助・布団片付けなど |
午後3時 | おやつ |
午後3時30分 | 自由遊び・制作など |
午後4時30分 | 帰りの会・順次降園・お迎え |
午後6時30分 | 夕食の準備・夕食 |
午後7時30分 | 入浴・着替えの介助・歯磨き・園内清掃など |
午後8時 | 寝かしつけ・夜間見守り・夜間保育開始 |
午前7時 | 起床・朝食・歯磨き |
このように、院内保育所は病院の24時間体制に対応して運営されており、夕食や夜間保育、就寝準備など、一般の保育所にはない業務が含まれるのが特徴です。通常の朝の会や給食、お昼寝といったスケジュールのほか、医療従事者のシフトに合わせて子どもの登園・降園時間が変動するケースもあるため、柔軟な対応が求められる可能性があります。
院内保育所で働く6つのメリット
院内保育所での勤務を考えている保育士は、応募前にメリット・デメリットをしっかりと把握しておきましょう。ここでは、院内保育所ならではのメリットと魅力について、代表的なポイントを6つ紹介します。
1.保護者と連絡が取りやすい
保護者がすぐ近くで働いているため、子どもの体調不良など予期せぬ事態が起きた場合でも、迅速に対応しやすいでしょう。一般の保育所と比較すると、保護者へ連絡が取りやすく、緊急時にもスムーズな連携が可能です。このような環境は、保護者にとっても保育士にとっても安心感につながる大きなメリットといえます。
2.小規模・少人数の落ち着いた環境で保育できる
院内保育所では、受け入れ対象が医療従事者の子どもがほとんどであるため、一般的に少人数で運営され、施設自体も小規模なケースが多いといえます。そのため、保育士は1人ひとりの子どもとじっくり向き合う時間を確保しやすく、落ち着いた環境の中で保育を行うことができます。こうした環境は、子どもとの信頼関係を深めるだけでなく、保護者からの信頼にもつながり、保育士としてのやりがいを感じられる点が大きな魅力です。
3.医療従事者が近くにいる安心感がある
保育士にとって最も気を配るべきことは、子どもたちの健康管理です。院内保育所は病院内や近隣にある場合が多いため、子どもに体調不良やケガなどのトラブルがあった際にも、迅速に医師や看護師と連携できる安心感があります。医療従事者が近くにいると、万が一の場合にもすぐに対応してもらえます。そのため保護者だけでなく保育士にも心強い環境が整っているといえるでしょう。
4.残業や持ち帰り業務が少なめ
院内保育所では、シフト制が採用されている場合が多いため、勤務時間がしっかりと区切られている傾向にあります。そのため残業や持ち帰り業務が少なく、仕事が終わったら自分の時間をしっかり確保しやすいのが大きな魅力です。保護者のお迎えが遅れた場合でも、次のシフトのスタッフに申し送りを行えば残業することなく、勤務する保育士の負担が軽減されます。
また、院内保育所では大規模なイベントや行事が少ない傾向にあります。そのため、制作などの準備を行う必要が少なく、残業や持ち帰り仕事が発生しにくいといえるでしょう。時間外の業務が少ない点は、院内保育所での働きやすさにつながっています。
5.待遇や条件の良い施設もある
院内保育所は主に病院や医療法人、委託会社によって運営されています。母体となる病院や医療法人の規模が大きく、経営が安定している場合は福利厚生や給与、賞与が高い場合があります。一方、委託会社が運営している場合は異なり、病院職員としての待遇は受けられません。
院内保育所で働く保育士の給料は、保育士の平均よりも低い傾向があります。ただし、院内保育所は24時間開園している場合も。e-GOV法令検索の「労働基準法 第三十七条」によると、午後10時から午前5時の間に勤務する場合、25%以上の賃金が上乗せされます。そのため夜勤で働く場合、基本給に加えて割増賃金を受け取るので、日勤よりも給与アップを目指せる可能性があります。
出典
e-GOV法令検索「労働基準法」(2025年7月18日)
6.行事準備が少なく保育に集中できる
院内保育所は、一般の保育所に比べて行事が少ないことが特徴です。多くの保育園では季節ごとの行事やイベントが盛んに行われますが、院内保育所ではそれに追われることなく、日常的な保育にしっかりと時間を割ける傾向にあります。行事の準備や進行に追われることなく子ども一人ひとりとじっくり向き合い、成長を見守れるので保育士にとって保育に集中しやすい環境といえるでしょう。
院内保育所はきつい?4つのデメリット
院内保育所は少人数制で子どもたちとゆっくり向き合えるため、保育士にとって魅力的な環境ですが、一方ではデメリットも。ここでは、院内保育所で働く際に考慮すべきデメリットについて紹介します。
1.シフト制や夜勤など不規則な勤務になりやすい
院内保育所では、24時間体制の施設が多く、日勤だけでなく夜勤のシフトが発生するのが一般的です。このため、シフト勤務で生活リズムが不規則になり、プライベートな時間の確保が難しくなる場合もあります。家庭を持っている場合は、家族との時間がとりにくいことがあるかもしれません。また、年齢を重ねると変則的な勤務が体力面で負担に感じる場合もあります。シフトや夜勤は生活リズムが乱れやすく、体調管理が難しいと感じる場合もあるでしょう。
2.自分が希望する保育が実現しにくい場合もある
院内保育所では、一般的な保育所と比べて行事が少なく、園庭や音楽設備、プールなどが整っていないケースが多いといえます。「季節の行事を子どもたちと楽しみたい」「外遊びや音楽を通して子どもたちの成長をサポートしたい」などの希望がある保育士にとっては、少し物足りなさを感じるかもしれません。
院内保育所では少人数・異年齢の子どもたちを預かることが多いため、希望する活動を組み込みにくいと感じる場合もあります。
3.保育士として経験できる業務が限られる
院内保育所は一般の保育所とは異なる環境で、業務内容も特殊です。そのため、「将来的に一般の保育園でキャリアを築きたい」「保育士として管理職を目指したい」と考える場合、院内保育所での経験がどの程度評価されるかは不確定な面があります。経験がデメリットになるわけではありませんが、ほかの保育施設で求められるスキルや業務内容とは異なる部分も多いため、「どのようなキャリアを目指すのか」を明確にする必要があるでしょう。
4.感染症リスクに対する注意が必要
院内保育所で働く際には、感染症リスクへの対策が欠かせません。一般の保育施設と同様に気を配る必要がありますが、病院内に設置されているため、周囲に入院患者も多いことから、さらに徹底した感染予防が求められます。
院内保育所で働くのが向いている人の特徴
ここでは、保育士として院内保育所で働くのが向いている人の特徴を紹介します。院内保育所で働くことを検討している方は自分に合っているかどうか、参考にしてください。
子ども一人ひとりとじっくり関わりたい人
子どもたち一人ひとりとじっくり向き合いたい人には、院内保育所の環境が適している可能性が高いでしょう。通常の保育園では集団活動が中心となり、個々の子どもと接する時間が限られる傾向にあります。
しかし、院内保育所では基本的に少人数の場合が多く、子どもたちの成長や個性にじっくりと寄り添いながら保育に取り組むことができます。
アットホームな環境で保育したい人
院内保育所は、家庭的な雰囲気で温かい保育を提供したい人にぴったりの環境といえます。院内保育所は働く職員の子どもたちにとって第二の家となり、ときに保育士は親代わりのような存在として安心感をもたらす場合も。集団での活動よりも一人ひとりに寄り添った家庭的な関わりが求められるため、こうしたアットホームな保育をしたい人は、子どもたちの心にしっかり寄り添えるでしょう。
給与や待遇面で安定を求める人
給与や待遇の安定を重視する人には、院内保育所での勤務が向いている傾向にあります。前述しましたが、院内保育所は24時間開園しているところが多いため、夜勤で働く場合もあるでしょう。夜勤で働く場合、割増賃金がつくため給与アップを目指せる可能性があります。院内保育所で保育士として働く場合、条件にもよりますが、一般的な保育園において日勤で働くよりも給与が多く、待遇面で安定を求める人は向いている傾向にあります。
院内保育所で働くのに向いていない人の特徴
保育士として院内保育所で働くには、一般の保育園とは異なる環境や勤務体系に適応する必要があります。ここでは、院内保育所に向いていない人の特徴について解説します。
大規模行事で達成感を得たい人
大規模な行事やイベントで達成感を感じたい人には、院内保育所で勤務するのはあまり向いていないかもしれません。院内保育所は行事が少ない傾向にあります。仮に実施する場合でも、規模は一般的な保育園と比べて小規模になることが多いでしょう。そのため、イベントや行事を通じて大きな達成感を得ることは難しく、そうした経験を重視する人には物足りなさを感じる可能性があります。
規則的な生活リズムを重視したい人
規則正しい生活リズムを重視する人には、夜勤やシフト勤務が多い院内保育所はあまり向いていない可能性があります。保育士として院内保育所で勤務する際には、「自分のライフスタイルに合わせて勤務ができるかどうか」を十分に考慮し、検討するのがおすすめです。
長期的なキャリアや家庭と両立を目指す人
長期的なキャリア形成や家庭との両立を重視する人には、夜勤がある院内保育所で保育士として働くのは向いていない場合も。院内保育所は業務が特殊であり、一般的な保育園とは異なる内容も多い傾向にあります。
また、夜勤が含まれるシフト制の勤務は、結婚や出産後に家庭と仕事のバランスを取るうえで難しさを感じる場合もあるでしょう。「長期的なキャリアを積みたい」「家庭と仕事をうまく両立させたい」と考えている人にとっては、ライフスタイルを考慮して職場を選ぶのが重要といえます。
保育士が院内保育所へ転職する際のポイント
ここでは、院内保育所に転職する際に押さえておきたいポイントを紹介します。院内保育所ならではの特徴や業務内容を理解し、自分のライフスタイルやキャリアの目標と照らし合わせてみましょう。
やりたい保育を明確にする
院内保育所で働く際には、自分がどのような保育を実践したいのかを明確にするのが重要です。たとえば、子どもたち一人ひとりとの関わりを深めたいという方には、少人数での保育が中心となる院内保育所が向いているといえるでしょう。
一方で、行事やイベントの運営に携わりたいと考えている方にとっては、院内保育所の環境では少し物足りなく感じるかもしれません。そうした経験を重視する場合は、別の保育施設を検討するのも1つの選択肢です。
労働条件を確認する
院内保育所への転職を考える際は、夜勤やシフト勤務など労働条件を確認しましょう。夜勤やシフト勤務がある場合、手当についてしっかり確認するのが重要です。また、「シフトによる不規則な勤務が自分に合っているかどうか」も考慮してください。自分の希望に合った環境を選ぶと、ストレスなく働ける可能性が高まります。
自分に合った雇用形態を選ぶ
院内保育所で働く際は、自分のライフスタイルやキャリアプランに合った雇用形態を選ぶのが大切です。正社員として安定した収入とキャリアアップを目指すのか、家庭との両立を重視してパート勤務にするのか、その選択肢は多岐にわたります。正社員の場合、夜勤やシフト勤務で働くことも多く、責任の大きい業務を任される傾向にあります。パートの場合、「週に数回勤務する」「短時間で働く」などが可能なケースも。しかし、キャリアプランは限られる場合があります。何を優先するのかを考え、自分に合った雇用形態を選択しましょう。
院内保育所に関するよくある質問
ここでは、院内保育所で働く保育士についてよくある質問を紹介します。ぜひ参考にしてください。
院内保育所の保育士は病棟保育士(医療保育士)とどう違う?
院内保育所の保育士と病棟保育士(医療保育士)は、どちらも病院内で働く保育士ですが、役割は異なります。院内保育所の保育士は、主に病院で働くスタッフの子どもたちを保育するのが主な仕事です。一方、病棟保育士は、病気やケガで入院している子どもたちの保育や心身のケア、家族のサポートなどを行います。
院内保育所で働くのに保育士資格以外に必要な資格やスキルは?
院内保育所で働くためには、特別な資格や試験は必要ありません。基本的には「保育士資格」を持っていれば、病院や委託企業が募集する求人に応募できます。
まとめ
院内保育所は、少人数制でアットホームな環境が特徴で、子ども一人ひとりとじっくり向き合いながら保育ができる点が大きな魅力です。
また、夜勤やシフト勤務が多いため、給料アップを目指せる可能性もあります。求人を探す際には、雇用形態や勤務時間、給与などの条件をよく比較し、自分のライフスタイルやキャリアプランに合った職場を選びましょう。
「保育士資格を活かして働きたい」という方は「レバウェル保育士」がおすすめです。勤務地や雇用形態、給与条件などの条件を設定して検索できるため、自分に合う求人を効率よく見つけることができます。サービスはすべて無料なので、ぜひお気軽にご登録ください。
執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。