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企業主導型保育園とは?施設の特徴や事業所内保育所との違い、働くメリット

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企業主導型保育園の画像

保育士の中には、企業主導型保育園について関心がある人もいるのではないでしょうか。企業主導型保育園とは企業が設置する保育施設で、自社従業員や地域の子どもを対象とするのが特徴です。 本記事では、企業主導型保育園の5つの特徴や、「事業所内保育所」との違いを詳しく解説。また、企業主導型保育園で働くメリット・デメリットや求人を探す際の注意点も紹介するので、転職活動の参考になるはずです。ぜひチェックしてください。

この記事を書いた人

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「レバウェル保育士」編集部

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企業主導型保育園とは

企業主導型保育園とは、企業が自社従業員や地域の子どもを預かるために設置する保育施設のことです。事業所内あるいは企業近くの場所に設置される場合が多く、アクセスが良い傾向にあります。また、認可外保育園の一種であるため、入園のハードルが低いのもポイントといえるでしょう。

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業の定員充足状況(速報版)新規タブリンク」によると、令和7年7月初日時点の企業主導型保育園の数は、4,390施設となっています。この数値は期限内に報告があった施設のみで、すべてを網羅したものではないため、あくまで参考としてください。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)
こども家庭庁「企業主導型保育事業等新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業主導型保育事業が開始された目的

企業主導型保育事業は、平成28年度に創設された保育事業です。「従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援すること」「待機児童対策に貢献すること」の2点を目的とし、内閣府によってこれまで推進されてきました。令和5年度からはこども家庭庁に移管され、事業主拠出金を財源に仕事と育児の両立に向けたサポートが行われています。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業主導型保育園の5つの特徴

新たな福利厚生としても注目を集める企業主導型保育園。企業主導型保育園にはどのような特徴があるのか、5つの項目に分けて見ていきましょう。

1.認可保育所並みの設置基準が定められている

前述のとおり、企業主導型保育園は無認可の施設です。そのため、本来ならば認可外保育園の設置・運営基準等は認可保育園と異なります。しかし、企業主導型保育園においては、認可保育所並みの施設・保育水準が定められているのが特徴です。「認可外保育施設指導監督基準新規タブリンク」の遵守が求められるほか、公益財団法人 児童育成協会による監査が原則的に年に1回行われます。

出典

文部科学省「認可外保育施設指導監督基準新規タブリンク」(2025年7月7日)
公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業主導型保育園の職員配置・設置基準の概要

下記の表は、企業主導型保育園の運営に関する規定をまとめたものです。保育士の配置基準や面積は認可保育施設と同水準であり、厳正な基準をクリアする必要があります。なお、保育士資格を保有していない場合は、子育て支援員研修を修了しなければなりません。

職員数 0歳児3人につき1人、1・2歳児6人につき1人、3歳児20人につき1人、4・5歳児30人につき1人(その合計数に1人を加えた数以上)
職員の資格 職員の半数以上が保育士

※保育士以外の場合「子育て支援員研修」を修了する必要がある

設置基準 事業所内保育事業と同様の基準が原則

出典

こども家庭庁「企業主導型保育事業新規タブリンク」(2025年7月7日)

2.利用地域の条件がなく希望の施設に申し込める

企業主導型保育園は、希望に応じて自由に申し込めるという特徴があります。住民票を置いている地域が優先される認可保育所と違い、企業主導型保育園は居住地域に左右されません。そのため、人によっては送迎が便利になるなど、生活の利便性が向上するでしょう。企業主導型保育園に入るには、就労要件などを満たした上で、施設へ直接申請を行います。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

3.子どもを持つ親の多様な需要に対応している

企業主導型保育園は、自由度の高い保育サービスを提供し、保護者の多様な働き方に対応しています。従業員の勤務シフトは企業によって異なるため、営業時間や休日保育・一時預かりの有無などもさまざまです。中には、病児保育や病後児保育を行う施設もあります。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業側も離職防止や人材確保のメリットがある

企業主導型保育園を設置する企業は、「待機児童問題に取り組んでいる」「子育て世帯を支援している」というように、外部から好印象を持たれる可能性があります。また、従業員側も、「子育てに理解がある」「職場への早期復帰が可能になる」などのさまざまな利点を感じられるでしょう。組織の魅力が向上すれば、働くモチベーションも高まるはずです。

出典

こども家庭庁「企業主導型保育事業等新規タブリンク」(2025年7月7日)

4.従業員枠(企業枠)と地域枠に対象が区分される

企業主導型保育園は、待機児童問題の解消という役割も担っているため、施設の近隣地域に住む子どもを対象に「地域枠」を設定することも可能です。地域枠を設ける場合は、定員の最大50%までが条件となります。なお、地域枠の開放は義務ではないため、企業枠(従業員枠)のみで定員を構成しても問題ありません。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

5.認可保育所並みの補助金が支給される

企業主導型保育園には、認可保育所並みの補助金が支給されるという特徴もあります。運営費・施設整備費の助成によって、認可保育所と同等の料金が期待できるため、保護者にとっては魅力的といえるでしょう。助成金の額は基準額をもとに算出され、各施設が保育料を設定します。

なお、地域枠を利用する子どもが「保育の無償化制度」の対象になるためには、自治体から保育認定を受ける必要があります。

出典

公益財団法人 児童育成協会「企業主導型保育事業 企業主導型保育事業ポータル新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業主導型保育園の種類

企業主導型保育園の設置方法については、3種類の形式があります。

  • 単独設置型

  • 共同設置・共同利用型

  • 保育事業者設置型

企業主導型保育園は、1つの企業が単独で設置・利用するだけでなく、複数企業が提携して共同設置・共同利用することも可能です。また、運営において自社での直接運営以外に、保育事業者に委託される場合もあります。その際、保育事業者には施設等の運営実績(5年以上)が求められます。

出典

こども家庭庁「企業主導型保育事業等新規タブリンク」(2025年7月7日)

企業主導型保育園と事業所内保育所(企業内保育所)の違い

企業主導型保育園と混同されがちな施設に「事業所内保育所(企業内保育所)」があります。企業内保育事業は、子ども・子育て支援新制度における地域型保育事業の1つです。企業が従業員の子どもを預かるという点は同じですが、企業内保育所は認可保育所に分類されるため、市町村の認可が必要になります。また、以下のような特色もあります。

  • 対象年齢は0〜2歳児まで(3歳児以上は転園が必要)

  • 地域枠は定員の1/4の解放が義務

このことから、事業所内保育所(企業内保育所)は、地域枠の設定が任意である企業主導型保育園に比べて、福祉的な側面が強い施設ということがわかるでしょう。

企業主導型保育園で働くメリット・デメリット

保育士が企業主導型保育園に勤務するメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょう。「企業主導型保育園に転職したら就労時間は変わるのか気になる」「求職中で自分にピッタリの園を見つけたい」という方は、ぜひ参考にしてください。

企業主導型保育園で働くメリット

企業主導型保育園で働く主なメリットは以下のとおりです。

  • 保護者(従業員枠)との連携を取りやすい

  • 小規模な園が多く、きめ細やかな保育が可能

  • 勤務先に自分の子どもを預けられる

  • 設置企業の待遇が反映されやすい

企業主導型保育園は少人数の施設が多く、丁寧な保育を実現しやすい環境といえます。そのため、園児一人ひとりにじっくりと向き合いたい人には向いているでしょう。また、企業枠を活用すれば、自分の子育て負担も軽減されます。駅から近い施設の場合は、通勤の負担も少なくなるはずです。

企業主導型保育園で働くデメリット

企業主導型保育園で働く主なデメリットは以下のとおりです。

  • 生活リズムが不規則になる可能性がある

  • 保育士資格を保有しないスタッフが多い場合がある

  • 正職員の場合、業務負担が大きい可能性がある

  • 運営が安定せず閉園するリスクがある

企業主導型保育園では、従業員の労働時間に合わせて勤務時間が設定されるため、勤務時間が不規則になる可能性があります。内閣府の「企業主導型保育事業パンフレット (p.13)新規タブリンク」によると、早朝・夜間・日曜開所の実績の割合は、早朝開所施設が22.7%、夜間開所施設が10.6%、日曜開所施設が29.4%です。

出典

内閣府「企業主導型保育事業パンフレット新規タブリンク」(2025年7月7日

企業主導型保育園の求人を探す際の注意点

保育士が企業主導型保育園の求人を探す際は、以下の点に注意しましょう。理想とする将来像や保育園の運営方針などを考慮した上で、働きやすい職場を探すことが大切です。

定員割れの状況でないかを確認する

企業主導型保育園を設置する際は、立地地域の調査が必要不可欠ですが、企業によっては、待機児童が少ない地域に設置したり、利用人数が未知数のまま開設したりと、安易に保育園運営に参入している場合もゼロではありません。需要と供給が成り立っていない施設では、定員割れを起こす恐れがあるため、過去の実績をきちんと調べるようにしましょう

設置企業や連携企業の経営状況を確認する

設置企業や連携企業の経営状態が悪い場合、採算が取れずに休園・閉園となる可能性があります。とくに、定員割れは経営難に陥りやすいため、上記の内容にあわせて事前の情報収集を念入りに行うようにしてください。経営状況の良し悪しは運営母体の大小や雰囲気だけで見極めるのは困難なため、運営元の体質を確認し、実態を把握することが大切です。

保育園の設備や周辺環境を確認する

企業主導型保育園はアクセスの良い立地に開設される傾向にあるため、利便性が高い反面、遊具や園庭などがない場合もあります。そのため、設備の充実度は確認しておいたほうが良いでしょう。認可保育所から転職する場合はギャップを感じる可能性もあるため、働く際の具体的なイメージを明確にしておく必要があります。

企業主導型保育園についてよくある質問

ここでは、企業主導型保育園についてよくある質問を紹介します。

保育士資格がないため企業主導型保育園で働くのが怖いです

保育士資格を保有していない場合は、「子育て支援員研修」を受ける必要があるため、研修を通してしっかりと知識を身に付けましょう。また、企業主導型保育園で働く職員の半数以上は保育士の資格を保有しています。疑問や質問があれば適宜相談するのが大切です。

企業主導型保育園と認可保育園に入園する条件の違いは?

企業主導型保育園の入園条件は、各保育園の設置企業が決定します。入園基準は園によって異なります。また、園に直接入園手続きを行います。
その一方で、認可保育園は入園する際に自治体を通す必要があるため、時間をかけて選考が行われるのが特徴です。

企業主導型保育園の求人募集は多い?

企業主導型保育園は、新規オープンに伴う募集の割合が高い傾向にあるため、求人を見つけやすいのが特徴です。また、パート勤務の募集も多く、「家庭と両立したい」など自分が希望する働き方を実現しやすいでしょう。保育士資格を持っていない方や、ブランクのある保育士も視野に入れやすいはずです。

企業主導型保育園の給料は高い?

設置企業の規模によっては、高水準の給料や充実した福利厚生が期待できる可能性があります。「勤務先の収入が安い」と現在悩んでいる方は、気になる園の企業規模や経営状況も含めチェックしてみると良いでしょう。

まとめ

企業主導型保育園とは、企業が自社従業員や地域の子どもを預かるために設置する保育施設を指します。無認可の施設ながら、認可保育所並みの施設・保育水準が定められており、補助金も支給されるのが特徴です。

企業主導型保育園で働く場合、「きめ細やかな保育が可能」といったメリットがある一方で、「生活リズムが不規則になる可能性がある」といったデメリットもあるため、しっかりと把握して見極めるようにしましょう。

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執筆者

A

「レバウェル保育士」編集部

保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。

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