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保育士が退職する流れや伝え方は?手続きや円満に辞めるのコツも解説
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保育士のなかには退職しようと決意し、伝え方に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。保育士が退職する場合、就業規則や契約書、職場のルールに従って手続きを進めます。 この記事では、保育士が退職する流れやタイミング、伝え方を解説。保育士の退職に必要な手続きや書類、退職金についても紹介します。保育士が退職する際には、保護者や子どもたちへの伝え方も検討して、円満な退職を目指しましょう。
目次
保育士が退職する流れ
保育士が退職する際は、職場のルールや就業規則に従って手続きしましょう。ここでは、保育士が退職する際の一般的な流れを解説します。
1.直属の上司に退職の意思を伝える
保育士は、まず副主任保育士や主任保育士など直属の上司に退職の意思を伝えます。退職は正式に決まるまで口外しないほうが良いため、個別に話せる機会をもらうのが無難だといえるでしょう。
退職を申し出る際には、家庭の事情や転職など理由も伝えます。口頭でもかまいませんが、退職願で申し出た証拠を残しておくのも1つの手です。園長への伝え方や退職手続きに必要な書類など、今後の流れについても確認しましょう。
2.退職届を提出する
退職の申し出が受け入れられたら、上司の指示や就業規則に従って退職届を提出します。退職届には退職日を記載する必要があるため、事前に上司や園長などと相談し、確認してください。なお、職場によっては退職届のフォーマットが用意されている場合もあるため、確認してみましょう。
3.業務の引継ぎをする
保育士は退職日までに、子どもたちの情報を伝えたり、担当業務の内容を共有したりして後任者に引継ぎを行います。マニュアルやリストを作成すると、漏れなく引継ぎできるのでおすすめです。また、退職日から逆算して、すべての引継ぎを終えられるようにスケジュール管理しましょう。
4.職員・保護者・子どもたちへ退職を伝える
退職が正式に決まったら、職員や保護者、子どもたちへ退職を伝えます。伝えるタイミングや伝え方は、直属の上司や園長などと相談して決めておいたほうがトラブルを防ぎやすくなります。自分の判断で退職するのを伝えてしまうとトラブルになる可能性もあるため、内容やタイミングに注意しましょう。
5.返却物や書類などを確認する
制服やロッカーの鍵、文房具など、保育園から借りているものがあれば退職日までに必ず返却してください。また、退職時に提出したり交付されたりする書類は余裕をもって確認しておきましょう。
6.お世話になった方々へ挨拶する
最終出社の日が近づいたら、職員や保護者などお世話になった人に退職する旨を伝え、お礼を伝えましょう。クラス担任をしている場合は、連絡帳や園だよりなどでもお礼を伝えると、より丁寧な印象につながります。どのような退職理由であっても円満退職できるように、お世話になった感謝の気持ちを伝えましょう。
保育士の退職はいつ言う?
保育士が退職を伝えるタイミングは、契約書や就業規則に従うのが基本ですが、なるべく早めに伝え、職場に負担をかけないように配慮しましょう。退職をいつ伝えるか迷っている方は、以下を参考にしてください。
契約書や就業規則など職場のルールに従う
契約書や就業規則には、退職を伝えるタイミングが記載されているでしょう。たとえば、「退職を希望する場合には、少なくとも30日前までに施設に届け出ること」などと、退職日から逆算して期限が決まっている場合もあります。
法律上は2週間前までに退職を伝えれば問題ありませんが、事務手続きや引継ぎなどに時間がかかるケースもあるため、契約書や就業規則の期限は必ず守りましょう。
退職希望の3ヶ月~半年前など早めに伝える
退職の意思が固まっているのであれば、3ヶ月〜半年前など早めに伝えましょう。就業規則や契約書に記載がある期限より早めに伝えたほうが、職場への負担を減らせる傾向にあります。
特に役職や重要な業務を任されている場合は、後任の採用や引継ぎに時間を要する場合もあります。後任が見つかるまで引き留められたり、退職日を伸ばしてほしいと言われたりする可能性もあるため、余裕をもって伝えましょう。
保育士の退職理由の伝え方
ここでは、保育士が退職する際の伝え方を2つ紹介します。退職を引き留められたり、トラブルになったりしないようにあらかじめ伝える内容を考えておきましょう。
家庭の事情により退職する場合の例文
家庭の事情により退職する場合は、可能な範囲で理由を伝えます。以下のように退職理由が伝われば、プライバシーを守るために詳細な事情は話さなくても問題ないでしょう。
お時間をいただきありがとうございます。突然ではありますが、〇月末で退職したいと考えております。実は夫の転勤が決まり、家族でついて行くことになりました。引継ぎや必要な手続きなど今後についての流れを教えていただけますでしょうか
転職により退職する場合の例文
転職により退職する場合は、ポジティブな内容にするのがポイントです。職場への不満を話したり否定したりすると、トラブルに発展するケースもあるので注意してください。円満に退職するには、お世話になった感謝の気持ちを含めポジティブな内容で退職を伝えましょう。
突然ではありますが、転職により12月末で退職したいと思っています。新卒から5年間、クラス担任や行事のリーダーなど、さまざまな経験から保育士のスキルを磨けたこと、大変感謝しております。今後はさらに専門的なスキルを磨きたいと考え、転職により発達支援施設で働くチャンスを得たため、12月末での退職を希望します
転職先が決まっていない場合も、志望している仕事や今後の方向性などを交えたほうが、退職する理由が伝わりやすくなります。次のステップに目を向けて、前向きな退職理由を伝えましょう。
保育士が退職するときに必要な書類
保育士が退職するときには、退職願や退職届などが必要になるでしょう。職場によっては必要ない場合や書式が指定される場合もあるため、就業規則や上司の指示に従いましょう。ここでは、一般的な退職願・退職届の意味や提出方法などを解説します。
退職願
退職願は、職場に退職の意思を伝えるものです。辞める意思を伝える書類であるため、職場が受理しないと退職は確定しません。
なお、職場によっては退職願が必要なく、口頭だけで良い場合もあります。ただし、書面にして伝えると、退職の意思が固いのを示したり、事実を残せたりします。そのため、口頭でOKとされている場合もトラブル防止のために、退職願を提出しても良いでしょう。
退職届
退職届は、辞めることが決まった後に退職日を記載して提出する書類です。退職が認められたうえで、事実を明確にするために提出します。職場によってはフォーマットを指定される場合があるため、退職を伝える際に確認してみましょう。
また、退職届に記載する退職日は、直属の上司や園長などと相談して決定します。退職が正式に決まったら、なるべく早めに提出しましょう。
保育士が退職するときに職場から交付してもらう書類
保育士は退職時や退職後に、以下のような書類を職場から交付してもらう必要があります。
書類 | 概要 |
離職票 | 雇用保険の失業給付を受け取るために必要な書類 |
雇用保険被保険者証 | 雇用保険の被保険者を証明する書類・転職先に提出する必要がある |
年金手帳
または基礎年金番号通知書 | 基礎年金番号を確認するための書類(令和4年4月からは冊子形式の年金手帳は廃止され、基礎年金番号通知書が発行される)・会社、個人どちらが保管しているかは職場により異なる |
源泉徴収票 | 1年間の給与収入や納付した所得税額、控除額などが記載された書類・転職先で提出が求められる |
健康保険被保険者資格喪失証明書 | 健康保険の資格喪失を証明する書類・国民健康保険に加入する際に必要 |
退職証明書(必要な場合のみ) | 退職したことを証明する書類・離職票の発行が遅れた場合、国民健康保険や国民年金への加入で使う場合がある |
以上の書類は、発行されるタイミングがばらばらだったり、退職後に郵送されたりするケースもあります。失業保険を受給したり転職先に必要になったりする場合があるため、忘れずにそろえましょう。
保育士が退職するときに返却するもの
保育士が退職するときは、以下のように健康保険証や職場から借りているものなどを忘れずに返却しましょう。
健康保険証
業務資料(マニュアルや個人情報が分かる資料)
社員証
セキュリティカードや鍵
制服やエプロン
文房具やファイルなどの備品関係
支給された制服をクリーニングに出したり、ロッカーを掃除したり、借りていたものはきれいにして返すのが社会人としてのマナーです。
保育士が退職する際の公的な手続き
保育士が退職する際には、雇用保険や健康保険、年金などの手続きが必要です。転職先が決まっているかどうかで手続きの方法は異なるため、状況に合わせて参考にしてください。
雇用保険
退職後の転職先が決まっている方は、雇用保険における基本手当給付対象とならないため手続きは不要です。転職先が決まっていない場合は、要件を満たすと雇用保険から基本手当が受給されます。
厚生労働省の「雇用保険の具体的な手続き」によると、基本手当受給の主な流れは、以下のとおりです。
退職後、雇用保険被保険者離職票が交付される
住居を管轄するハローワークで求職の申込み、雇用保険被保険者離職票を提出
受給要件を満たしていることを確認したうえで、受給資格の決定
指定された日時に開催される、雇用保険受給者初回説明会に参加
原則、4週間に1度ハローワークで失業の認定を受ける
失業の認定を行った日から通常5営業日で、基本手当が振り込まれる
なお、ハローワークで求職の申し込みをする際には、マイナンバーカードや身分証明書、預金通帳などが必要です。詳細については、ハローワークのWebサイトを確認して不備がないように注意しましょう。
出典
厚生労働省「雇用保険の具体的な手続き」(2025年6月18日)
健康保険
退職後に転職先が決まっており、マイナ保険証の利用登録が済んでいる場合は、新たな職場でマイナンバーカードの情報を提出し手続きが完了すると、新しい健康保険に自動で切り替わります。職場経由で「資格情報のお知らせ」が交付されると、健康保険の資格手続きが完了している状態です。
転職先が決まっていない方は、退職した翌日から14日以内に市町村の国保窓口で国民健康保険の加入手続きが必要です。手続きには、健康保険被保険者資格喪失証明書やマイナンバーカードが必要です。
なお、国民健康保険だけでなく、「退職した先の健康保険に継続して加入する」「家族の健康保険に被保険者として加入する」といった選択肢もあります。年収や加入可能な期間などには決まりがあるため、状況に応じて選択しましょう。
年金
退職後に転職先が決まっている場合は、新たな職場で厚生年金に加入します。手続きには、マイナンバーカードや基礎年金番号が必要になるでしょう。
転職先が決まっていない場合は、国民年金に切り替えるか、厚生年金に加入している家族の被扶養者になる手続きが必要です。
保育士の退職金
保育士の場合、園によって退職金は異なります。なお、退職金の支給額は勤続年数によって決まるのが一般的です。
社会福祉法人が運営する私立保育園では、独立行政法人福祉医療機構の退職手当共済制度に加入している場合があります。その場合、独立行政法人福祉医療機構の「退職手当金計算シミュレーション」で退職金のシミュレーションができます。
独立行政法人福祉医療機構の退職手当共済制度に加入している場合を例として、勤続年数が10年の場合、計算機訴額は26万4,400円、退職金は130万5,000円となります。
シミュレーションで利用する計算基礎額(退職前6ヶ月の平均本俸月額)は、職業情報提供サイト(job tag)「保育士」の経験年数別の所定内給与額から算出。退職年月は「2025年3月」、加入年月は勤続年数から逆算した年月を入力し、退職理由は「普通退職」を想定して計算しています。詳しくは「保育士に退職金はいくら支給される?公立・私立保育園別の条件や計算方法」をご覧ください。
保育士が職員や保護者、子どもへ退職を伝える際の注意点
保育士が円満退職するためには、保護者や子どもへの配慮が重要です。ここでは、退職を伝える際の注意点を2つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
退職が正式に決まるまで口外しない
退職が正式に決まるまでは、口外しないように注意しましょう。親しい間柄や同期だからといって退職を先に伝えると、噂が流れたり間接的に伝わったりしてトラブルに発展する場合もあります。退職が正式に決まったら、伝え方やタイミングについて上司や園長などと相談して決めましょう。
保護者や子どもたちへの伝え方は上司に相談する
保護者や子どもたちへの退職の伝え方も、直属の上司や園長に相談しましょう。特にクラス担任をしている保育士は、保護者や子どもたちを不安にさせないような配慮が必要です。
たとえば、後任が決まってから伝えたり保護者会で時間を設けてもらったりして、今後の説明をしたほうが不安を解消しやすくなります。また、子どもたちに退職を伝える際には、わかりやすくポジティブな表現を心がけましょう。
保育士が円満退職する5つのコツ
保育士が円満退職するためには、なるべく早く退職を伝えたり年度途中を避けたりするのがコツだといえます。ここでは、保育士が円満退職するコツを5つ紹介します。
1.退職の意思はなるべく早く伝える
退職の意思が固まったら、なるべく早く伝えましょう。早めに伝えたほうが、後任の採用や手続きに余裕をもって対応できるため、職場への負担を減らせます。
特に引継ぎ業務が多かったり、役職に就いていたりする場合は、3ヶ月や半年前など早めに伝えたほうが職場への負担を抑えやすくなるでしょう。
2.繁忙期や年度途中の退職は避ける
保育士は、繁忙期や年度途中で退職するのは避けたほうが無難です。特にクラス担任が年度途中に退職すると、保護者や子どもたちを不安にさせたり、後任が見つかるまで時間がかかって引き留められたりする場合も。運動会や発表会など行事前の繁忙期も避けたほうが、職場へ大きな負担をかけずにすむでしょう。
3.退職理由はポジティブに伝える
退職理由は、ポジティブな表現で伝えることが重要です。待遇や職場環境に不満があったとしても、直接的な表現で伝えると退職日まで働きづらくなることもあります。
たとえば、給与や待遇に不満がある場合は、「転職により経験値を高め、スキルアップを目指したい」「乳児保育のスキルを活かして新しい環境でチャレンジしたい」など、ポジティブかつ説得力のある退職理由を考えてみましょう。
4.退職の手続きや引継ぎは不備がないように行う
退職に必要な書類を提出したり、引継ぎのリストを作ったり、退職日までのすべての手続きや業務が完了するようにスケジュール管理しましょう。引継ぎは、漏れがないようにリスト化したりマニュアルを作ったりするのがコツです。退職した後、後任が困らないように工夫しましょう。
5.子どもや保護者を不安にさせないようにする
保育士が退職する際は、子どもや保護者を不安にさせないよう配慮するのが重要です。子どものなかには、保育士の退職により不安や寂しさを感じることも。子どもたちにはわかりやすくポジティブな表現で退職を伝えましょう。不安に感じている子がいれば個別で話したり、ほかの職員へ退職後のフォローをお願いしたりします。
また、退職後の体制や後任の保育士を紹介するなど、園長や直属の上司と保護者対応についても相談しておきましょう。
保育士の退職に関するよくある質問
ここでは、保育士の退職に関するよくある質問として、離職率や伝え方について解説します。退職を検討している保育士の方は、参考にしてみてください。
保育士の退職は多い?
保育士の退職(離職率)は、日本全体の平均と比べて多くはないようです。厚生労働省の「保育士の現状と主な取組 (p.23)」によると、2017(平成29)年時点における常勤保育士の離職率は9.3%です。厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概況 (p.7)
」によると、2020(令和2)年時点で一般労働者全体の離職率は14.2%であるため、保育士の離職率は高くないとわかります。
出典
厚生労働省「保育の現場・職業の魅力向上検討会」「令和2年雇用動向調査結果の概況
」(2025年6月18日)
保育士が退職を言いづらいときは?
繁忙期は退職を言い出しづらい場合もあるため、行事が終わったり業務が落ち着いたりしたタイミングで時間をもらいましょう。また、年度途中は避け、年度末の退職を希望して伝えるのも1つの手だといえます。退職はなるべく早く伝え、職場に負担が掛からないように配慮したほうが言いづらい要素を減らせるでしょう。
まとめ
保育士は、就業規則や職場のルールに従って退職を伝えたり、手続きしたりします。退職の意思は、まず副主任保育士や主任保育士など直属の上司に伝えましょう。
退職の意思が固まったら、3ヶ月〜半年前などなるべく早く伝えたほうが、職場への負担を減らせます。また、就業規則や契約書には、退職日から逆算した申し出の期限が記載されている場合があるため必ず守りましょう。退職を申し出る際には、可能な範囲で退職理由を伝えます。職場に不満があったとしても、次のステップに目を向けてポジティブな表現で伝えるのがポイントです。また、できる限り行事前の繁忙期や年度途中は避けた退職日を希望しましょう。
保育士が退職する場合、職員だけでなく保護者や子どもたちにも配慮しましょう。退職によって不安にさせないように、後任が決まってから伝えたり、子どもたちにわかりやすく話す必要があります。
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執筆者

「レバウェル保育士」編集部
保育士・幼稚園教諭専門の転職エージェント「レバウェル保育士」が運営するメディア。現役の保育士とこれから保育士を目指す方に向けて、仕事や転職に役立つ情報をお届けします。記事を通して不安や悩みが少しでも解消する状態を目指し、皆さんのキャリア選択を支援します。